「チェルノブイリ事故後電離放射線に被曝した人々の健康影響」国連総会に提出された国連原子放射線の影響に関する科学委員会(UNSCEAR)報告のデータと結論の分析

要旨

チェルノブイリ惨事15周年を前に国連総会への科学委員会の報告書 “電離放射線の線源と影響”と、チェルノブイリ惨事の問題と直接的に関連する“チェルノブイリ事故の被曝レベルと影響”という付属書が出された。報告が出たことは、15年を経て、電離放射線とチェルノブイリの問題が国際社会にとって無関心ではいられないということを物語っている。
報告書の分析はウクライナ医学アカデミーの放射線生物学と放射線医学分野の指導的専門家によって行われ、次の事が示された:

● 報告書(付属書J)において、ウクライナの学者の研究をもとにウクライナの汚染地域(㈵章)と、住民の種々のグループの線量負荷(㈼章)の詳細な特徴が提供された。;

● 報告書の第Ш章では急性放射線症になった237名の初期の放射線影響について詳しい特徴が示された。
UNSCEARの報告書は原則的な面での制約を有している:

● 放射線量の差異、放射線量のきわめて危険な住民グループの存在を無視している(1986−1987年事故処理作業者、n=126,000;胎内被曝した子ども、甲状腺の過剰被曝の子ども、n=500,000);

● 第㈿章は、まず、被災国において客観的データの取得不可能なことのイメージをつくるために、登録システムの欠点と制約に向けられている。

● 被曝の晩発的影響に関するV章の準備に際し、多分、ウクライナ語、ロシア語の研究出版物で公開された被災者の健康状態に関する情報は使われなかったようである。委員会専門家の結論は、ウクライナ、ロシア、ベラルーシにおいて論文、書籍、国内外の学会等でのテーゼ、報告資料として非常に多く出版され、公表されており、それらチェルノブイリ惨事の著しい医学的、心理社会学的影響の存在に言及しているウクライナ、ロシア、ベラルーシの学者の研究結果を完全に無視している。

● 1999−2000年に現れた原爆被爆者の研究に基礎を置く放射線の身体的影響についての研究、またイギリスの原子力施設の労働者コホートの疫学研究データは利用されていない。これが不十分な報告書の情報へと導いた。

● 確率的影響(白血病、固形癌)分析において、腫瘍プロセスに誘導する長い期間を考慮に入れることなく結論が作られており、それが根拠のない結論に導いている。
ウクライナの専門家の考えによれば、チェルノブイリ事故の医学的影響の問題は、チェルノブイリ原発と同様に閉じられるものと考えてはならない、15年たって今なお焦眉の問題なのである。電離放射線と、被曝、ストレス、食品、社会的要因の組み合わさった効果との影響について研究を続けることが必要である。
本分析書類に提示されたデータは、すでに形成された影響の存在、また、将来の研究方針を示している。国連科学委員会報告への公式付属文書としてこの資料の普及が必要であると考える。
第一に、援助を必要としている主なグループは、事故後処理に参加した人、そのなかでも線量25cGy以上の人たち、胎内被曝の子どもたち、血液障害に苦しむ人、また労働能力を失うようになる身体的疾患の人である。我々は近い将来にフルスケールの確率的影響、とくに白血病についての研究を行う必要がある。実施された国際的研究によって信頼できる科学データを得る可能性が証明されている。
将来の放射線の影響研究は次の方向で行われるべきと考える;

● 放射性発ガン(事故処理作業者および汚染地域の住民の固形ガン、事故処理作業者と住民の甲状腺ガン、白血病)

● 事故処理作業者と住民の、事故の影響による主たる種類の非腫瘍性疾患での死亡率と発病率(心血管疾患—虚血性心疾患、アテローム性動脈硬化症、高血圧性心疾患;呼吸器系疾患、消化器系および非腫瘍性内分泌系疾患)

● 発達の様々な段階における脳の放射線障害

● 放射線影響の細胞分子学的アスペクト
国際科学組織に対し感謝しなければならない −国立がん研究所(アメリカ合衆国)、ドイツ原子炉安全協会(GRS)、フランス放射線防護原子力安全研究所(IPSN)、日本放射線影響研究所(RERF)その他、ウクライナに対し科学的、方法論的、技術的および資金的支援を被曝影響の研究に供与してくれた。