子ども料理科学教室「野菜はお友達! 育てる、作る、食べるのわざ」

投稿者: | 2008年11月4日

写図表あり
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報告
子ども料理科学教室「野菜はお友達! 育てる、作る、食べるのわざ」
小林友依(市民科学研究室・食の総合科学研究会)

毎日の食卓にはたくさんの種類の野菜がさまざまな形で並びます。何気なく野菜を選んで料理をしているようでも、旬の野菜を取り入れていたり、調理方法に工夫していたりするものです。また、野菜を育てている方もいらっしゃるかもしれません。このようなことができるのは、私たちが野菜を上手に美味しく食べるための知恵を身につけているからです。今回は、その知恵を子どもたちにも身につけてもらい、野菜を育てたり、野菜に触れたりすることによって、野菜をより身近に感じられる授業を目指しました。
今回の料理教室では、事前に親子で協力をしていただく項目を2つ用意しました。1つは、野菜を育てる体験をしていただくことです。そのために、あらかじめ子どもたちに野菜キットを渡しました。もう1つは、子どもの食事を3日分撮影し、メニューの簡単な説明を添えて送っていただくことです。
 野菜キットは、自分で育てた野菜を味わう体験を通じて、子どもたちが野菜を育てることに興味を持ち、庭先などで作ることで、食卓がよりよくなることをねらいとしたものです。3日間の献立は、普段見ることの少ない他の家庭の食事を見る機会を作ること、そして食事記録を振り返ることによって普段の食事は野菜が足りているのか、野菜を上手に取り入れられるためにはどうしたらよいかを考えてもらう機会をつくることをねらいとしたものです。これらの結果は、野菜についてある程度理解ができた、授業の最後に発表してもらい、深く考えてもらうことにしました。

 授業では、まずどのような野菜をとるとどのような栄養素をとることができるのかを知ってもらいました。さらに、レシピがあるから食材を選ぶのではなく、食材からレシピを考える料理作りの体験をしていただきました。体験方法は、数十種類の100g分の野菜の写真の描いてあるカードを各班に配り、子どもたちはその中から3枚だけ選び、選んだ野菜でどのような料理を作るのかを考えてもらうというものです。子どもたちは真剣に野菜を選んだり料理を考えたりしていました。選んだ3種類の野菜から4つも料理を考えた班、主菜・副菜とバランスよく考えて料理を考えた班もありました。そんな中、どの班でも共通して発表してくれた料理がありました。それは「サラダ」です。そして、その多くは、レタスを用いたものでした。「野菜=サラダ」、さらに「サラダ=レタス」という図式が子どもたちの食生活の中に深く根付いているのかもしれません。

次に、8種類の栄養素に注目して、選んだ食材に含まる栄養量を算出し、棒グラフにすることで、選んだ食材だけで一人当たりの栄養摂取基準量を満たすことができたのかを見てもらいました。野菜に含まれている栄養素についてまったく知識のなかった子どもたちだったので、摂取基準量を満たすことは難しかったようです。

そこで、どうして満たすことができなかったのか、どのような野菜にどのような栄養素が多く含まれているのかなど、野菜に含まれている野菜の栄養量について話をしました。さらに、野菜のカードの裏に記載された野菜100g中に含まれる栄養量を参照し、もう一度同じように3枚選び、料理を考えてもらいました。一度目と違うのは、栄養摂取基準量を満せる野菜を選ばなければならないことです。
二度目の作業では、子どもたちはより力が入っている様子でした。カードの裏を見ては「ビタミンAがこれのほうが多いよ」とか「これはビタミンCだけでなくて鉄も多いよ」とかいう発言が飛び交っていました。野菜にはさまざまな栄養素が含まれていることや、野菜の種類によって含まれる栄養量に違いがあるなどたくさんの気づきがあったようです。さらに、一度目よりも考え付いた料理の品数も多く、多彩になりました。不思議なことに、そこで考え出された料理の中には「サラダ」はありませんでした。子どもが発表してくれた料理の調理形態の多くは煮物、スープ、炒め物などの加熱が必要なものでした。

その後は、栄養素についての話をしました。ここでは幅広く話すのではなく、1つの栄養素だけを取り上げました。しかし、ここで反省しなければならない点があります。せっかく8種類の栄養素に先の体験で子どもたちが触れていたにも課かわらず、それラスb手について詳しく説明をしてあげられなかったことです。次回からは、この8種類の栄養素について学べるようにしたいと思います。
 続いて、家庭でもできる実験を1つ行いました。市販のうがい薬を用いて、野菜に含まれるビタミンCの量を比べる実験です。うがい薬を100倍に薄め、そこに野菜や果物の絞り汁を加えてゆくと赤褐色だった希釈液が透明になります。この透明になるタイミングによって、ビタミンCの量を知ることができます。ここで使った材料は、梨、レモン、トマト、ブロッコリー、きゅうり、黄パプリカです。
 うがい薬の希釈液に絞り汁を加えると液が透明になることは、子どもたちにとって不思議な現象であったようで、「わぁ」と歓声が上がりました。この実験を開始する前の子どもたちは、ビタミンCを一番多く含むのはレモンだと予想していました。しかし、その予想ははずれ、黄パプリカが一番多くビタミンCを含むという結果でした。子どもたちは、このことにとても驚いていました。また子どもたちは、果物のほうにビタミンCが多く存在すると思っていたようで、野菜にたくさんのビタミンCが含まれているという結果にも驚いていました。
 
どうして液が透明になるのか、またどうして材料よって透明になるのに必要なし彫り汁の量が違うのかについては、パワーポイントで画像を交えて説明をしたので、理解していただけたようです。
 次に、加熱した野菜と過熱する前の野菜のビタミンCの量に変化がでるのかを実験によって調べました。加熱したのはトマトとブロッコリーです。それぞれの絞り汁を加熱し、子どもたちにはその様子を観察していただきました。過熱後のビタミンC量が減るはずでしたが、結果はそのようになりませんでした。ここでもうがい薬を用いた滴定をおこなったのですが、加熱した野菜の絞り汁では、加熱する前と同じ量またはそれよりも少ない量で液が透明に変化してしまいました。この授業が開始する前に行った、予備実験では、うまくいっていました。その時と同じ結果が出なくてとても残念です。今一度、ビタミンCが壊れるエネルギー量を検証し直さなければならなければなりません。

続いて、野菜の特徴と育ち方に関するクイズを行いました。カボチャ、キャベツ、大根、カリフラワー、アスパラガスの成長過程をスクリーンに映し出し、それぞれの種や花がどの野菜なのかを考えてもらいました。図鑑で見たことがあるだけでなく実際に育てたことがある子もいて、すらすらと回答が出てきたことにこちらが驚きました。
また授業のはじめに使った野菜が記載されているカードを10枚だけ使い、旬を当てるゲームを行いました。ゲームを行う前に「旬と言う言葉を知っていますか?」と問いかけたのですが、それにしっかりと答えられる子がいました。その際、収穫量、栄養、食材料費について細かく説明していただいたので、ただただ感心してしまいました。その説明によって、他の子どもたちも旬についてしっかりと理解していただけたようです。そしてゲームを行いました。旬について知っていても、どんな野菜も年中スーパーなどで見かけてしまうので、野菜と季節が繋がらない様子でした。しかし、10枚中7枚の正解した班もありました。
問いかけの仕方によっては、野菜には旬があることを理解させるだけでなく、消費者の満足度を上げるために、さまざまな方法によって、多くの野菜が1年中出回るような努力がなされていることにも触れることができるかもしれません。これは今後の課題だと考えています。
そして、いよいよ調理が始まります。その前に自分たちの育てた野菜の出来具合を観察してもらい、それについて発表してもらいました。廿日大根とベビーレタスを育てていただいたのですが、廿日大根はまったく芽が出なかったようです。子どもたちは種がよくなかったのではないかと想像していました。観察日記をつけてもらい、詳しく野菜とふれられるようにしておけば、どのような原因が考えられるのか、どうしたら野菜が育つのかを考えられる機会を設けることができたかもしれません。今回はこのような観察日記を用意しませんでした。それが、今回の反省点であり、今後工夫すべき点です。また、その野菜でどのような料理を作りたいのかも考えていただきました。

調理では、旬の野菜の甘さを知ってももらうための「秋の根菜を使った蒸し野菜」、自分たちで育てた野菜を味わえる「フレッシュ野菜の和風サラダ」、ビタミンCの実験でできた野菜の搾りかすを活用した「野菜だけの豆腐ハンバーグ」、さらにビタミンCの実験で残った野菜の絞り汁を活用した「野菜とリンゴのくずネクター」を作りました。あまった食材を無駄なく活用することや旬を知ることだけでなく、栄養を効率よく取れる工夫も調理の中に取り入れました。具体的には、野菜の栄養素の損失を少なくするためにゆでるよりも蒸すこと、くるみやゴマをすり合わせて作る調味料によって脂溶性のビタミンの吸収を助けること、レタスなどを水にさらす時間を短縮しビタミンCの損失を避けること、この3点です。
子どもたちは調理が大好きなようで、大人でも手を焼くカボチャにも果敢に取り組むほどでした。おぼつかない手つきでしたが、先生の説明をしっかりと聞くことで怪我することなく、野菜を切ることができていました。すり鉢の使い方も次第にうまくなっていきました。すり鉢をすっている子どもの中にはゴマとくるみに粘りが出てきたという変化に気づき、面白がっている子もいました。
料理が済み、食事をする前に、何種類の野菜を使った料理になっているのかを問いかけると、みんな一生懸命数えてくれました。今回の実験で用いた食材は、調味料に含まれる野菜も含めると22種類になりました。予想以上の数字だったようで驚いている子が多く、食べている間も一生懸命数えている子さえいました。
授業が終わると、子どもたちからさまざまな感想をいただきました。その中でも、「ビタミンCの実験をやりたい」という意見がたくさんでました。また、料理はどれもおいしかったようで、「また作りたい」という感想も多く寄せられました。
普段食べなれている肉や魚などがないため、子どもたちが野菜だけだとがっかりするのではないかと思っていましたが、子どもたちは授業に興味をもち、料理を楽しんだようでした。学校で触れることが少ない栄養について、子どもたちが野菜を育てる体験などを通して知るいい機会を作れたのではないかと考えています。■

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