私たちの食べものや農業は この先どうなっていくのでしょうか?

投稿者: | 2016年12月20日


市民科学講座Bコース 第11回
中田哲也さん、私たちの食べものや農業は この先どうなっていくのでしょうか?

(講義編+質疑応答編)

講師:中田哲也さん

「飽食」とも呼ばれるほど表面上は豊かな現在の私たちの「食」。しかし、栄養バランスの乱れ、食に対する不安感の増大、自給率の低下、食を支える国内農業の脆弱化など、多くの問題を抱えています。より豊かな未来の食の実現に向けて「フード・マイレージ」(※)という指標をヒントに、一緒に考えてみたいと思います。
※フード・マイレージとは:イギリスのNGOによるフードマイルズ運動(なるべく身近でとれた食料を消費することによって食料輸送に伴う環境負荷を低減させていこうという市民運動)の考え方を参考に、農林水産省農林水産政策研究所において開発された指標です。

◆中田哲也さんプロフィール◆
1960年徳島市生。岡山大学農学部卒業後、農林水産省に入省。農林水産政策研究所、九州農政局等を経て、現在、統計部数理官。この間、千葉大学大学院園芸学研究科を修了(博士・農学)。著書に『フード・マイレージ-あなたの食が地球を変える』(2007、日本評論社)など。
<参考>ウェブサイト「フード・マイレージ資料室」

上田:
 今日は食・農業の話で中田哲也さんをお呼びしました。中田さんとは大分前からのお知り合いなのですが、私が中田さんを知ったのはこの「フード・マイレージ」という本を通してです。
 中田さんはフード・マイレージという概念を日本で最初に普及させ、その後にもいろんなデータを示されています。私はこの本を読んで、食と環境ということがこのように分析できるのだと刺激を受け、その当時取り組んでいた水の問題にこれが適用できないかと思い、3か月間この本を徹底的に使ってウォーター・マイレージというものを計算し論文を書いて発表したことがあります。
 市民科学研究室の集会にも参加していただいています。市民科学研究室で活動している食のグループのメンバーが一番力を発揮するのは毎年の暮れに行われるクリスマスパーティで、素晴らしい食べものを皆で作って楽しむということを毎年やっているのですが、そのときにもずっといらして下さり、しかもその会の様子を克明にブログで書いていただいています。
 そういうことを通してだんだん親しくなり、中田さんのお話をぜひ一度まとまって聞いてみたいということで、今日お呼びしました。
というわけで、今日はフード・マイレージという概念を通して食と農業についての非常に幅広いお話を聞けると思っています。
 最初一時間半くらい中田さんにお話しいただき、その後休憩を挿んで残り一時間くらい皆さんとやり取りしていきたいと思います。よろしくお願いします。

中田:
 私は農林水産省の職員です。農林省の政策研究所にいたときに、フード・マイレージというものに携わりました。現在は全く違う部署にいてフード・マイレージからは完全に離れているのですが、引き続き個人としてフード・マイレージなり食べ物や農業のことを自分なりに勉強しています。
 今の私自身の問題意識をお伝えし、皆さんと意見交換したいと思っています。
 最初に、今日お話しすることは全て個人の立場からのもので、意見も全て個人の意見であることをお断りしておきます。
 今日のチラシですが、これは私と上田さんが相談してこういうタイトルを作ったのですが、「私たちの食べ物や農業はこの先どうなっていくのでしょうか?」というのを私に聞くというスタイルになっています。
 実はこれは不適切なのですね。何で適切ではないのかという話を今日1時間半かけてしていきたいと思います。
 まず食べ物の話です。
 私たちの食は非常に大きく変化しています。まず問題認識としてそこからスタートします。

 これは食費の支出割合のグラフです。1975年頃は4分の3は「内食」、家庭内での食事でした。「外食」と「中食」(持ち帰りのお弁当やお総菜など)は4分の1強で、食事はほとんど家庭で食べられていました。
 ところが最近は、この緑の「外食」と緑と赤の間の「中食」を足したものの割合を食の外部化率という言い方をしますが、それが今はもう半分近くになってきています。
私たちが食べ物を食べる環境が、まず大きく変わってきているということです。
 外食や中食が増えてきたということは、コンビニエンストアやデパートの地下、あるいはレストランが非常に増えてきている。言い方を変えれば、私たちの食生活は簡便化してきているということです。家の中で料理することを、外食や総菜を買ってくることで代替している。
 「食のコンビニ化」が進んでいる、という言い方も出来ると思います。まずそれが一つです。

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