東京都大田区 おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)

投稿者: | 2017年2月18日


市民科学研究室 「健康まちづくり」ヒアリング報告03

東京都大田区 おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)

大田区地域包括支援センター入新井 
澤登久雄さん、後藤陽子さん

平成20年から医療・保健・福祉分野の専門職、民間企業、行政企業が地域の高齢者の安心・健康をテーマに活動している「おおた高齢者見守りネットワーク(みま~も)」は、地域の住民による見守り支えあいによる「気づきのネットワーク」、医療・福祉・介護専門職による「支援のネットワーク」の連携により、安心して暮らし続けられる地域づくりを目指しています。みま~もは任意団体であり、会の趣旨に賛同した、医療・介護をはじめ、大田区外の様々な業種の企業・組織の賛助会費により運営されています。

そのみま~もが発行している、住み慣れたまちで元気に過ごしていただくために必要な情報を届けるフリーペーパー「みま~も」は16ページフルカラー、年2回発行され、累計2万部が地域住民の手元に配られるようになっています。

このフリーペーパーは、協賛団体の広告掲載費などでまかなわれていますがこの協賛団体は単に広告掲載目的で協賛しているわけでなく、超高齢化社会になり、組織や企業は社会にあわせた方向転換が求められており、みま~もに加わることで専門職の意見や住民のニーズなどを知ることで自分たちのデザインを作る機会が得られると思い、協賛している組織や団体が多いようです。また、街づくりを目的としたみま~もに理解した組織や団体が協賛することで、そこに属している専門職が地域で活躍する機会を得られるようになっています。例えばみま~もと柳本通り商店街(ウィロード山王)が協同で行っているサロン事業である「みま~もステーション」内の講座「みま~もレストラン」。運営に地域のケアマネージャーが関わり、準備、片づけまでを終えてから地域へ訪問に出かけていきます。地域のために活動したいという専門職の思いを、組織や団体が理解しているからこそでき、さらにみま~もの活動を通して、本来、要介護の方やその家族としか関わることのない専門職が、地域の住民が元気な状態からその人を知り、身体状態などの理由から社会との繋がりが薄れてしまう前からよい関係を築きサポートするという、地域づくりという視点をもった専門職を育てることができるようになっています。

みま~もの活動は10年目を迎えています。大田区の包括支援センターに訪問される方は1ヶ月に1万件を超え、全国にある4500を超える包括支援センターでもその人たちの対応に追われている現状があります。医療・介護を必要としていてもセンターにたどり着けない・来られない人が同じくらいの数が存在しているのではないか、地域に住む人たちや地域で働く人たちに現状を伝え、見守り支えあう地域をつくるシステムを構築しなければならない、という思いが、みま~も立ち上げのきっかけだったようです。

主な活動は、地域の専門職から地域全体での見守りの重要性や気づきの視点を学ぶことを目的とする「地域づくりセミナー」、高齢者が安心して外出できるためのツールである「高齢者見守りキーホルダー」、地域の誰もがいつでも集え、楽しみや役割を持って活動できる場である「みま~もステーション」があります。

地域づくりセミナーは、毎月第二土曜日に開催し、毎回100名を超える方が参加します。セミナーの講師、日程、内容については、年度単位で決め、年間を通してどのようなことを行っているかを住民に知って頂いています。講師には「みま~も」の協賛団体の専門職や地元の専門機関で、運営も協賛団体が月々交代で、講師との連絡・打ち合わせ、当日の仕切り・司会・毎月の会議の議事進行を行っています。そうすることで顔がつながり、事業所同士が密に連絡を取り合うようになり、新たなつながりにより、多職種連携、医療・保健・福祉連携、専門機関間連携のネットワークが生まれていきます。また住民はセミナーに参加することで、健康にかかわるノウハウが獲得でき、元気なうちから専門職とつながることで、何かあれば気軽に相談できるなど、安心して暮らすこと。を目指しています。

「高齢者見守りキーホルダー」は、事前に地域包括支援センターに本人情報、緊急連絡先、かかりつけ医療機関等を登録し、個人番号が記載されたキーホルダーをもって外出することで、もし外出先で倒れ緊急搬送された際にも、迅速に本人の確認がとれるシステムです。みま~もから生まれたこのシステムは、平成24年4月から大田区の高齢者施策となっています。

みま~もステーションの活動には「みま~もサポーター」と呼ばれる住民が活躍しています。現在100名ほどのみま~もサポーターは講座に参加したり、講座の講師をしたり、ボランティアとして活動したり、各々のライフスタイルや身体状況に合わせ講座を自由に選択し、時には役割を担っています。サポーターには、主体的にかかわってもらうために、登録料を頂いています。

講座は年間に350講座行われ、サポーターだけでなく、協賛団体が自分たちが得意とする分野についてのイベントも企画されています。

生きがいを見つけられるみま~もステーションにはもう一つの役割があります。それは専門職が、参加する高齢者の変化を確認していく場としての役割です場。専門職が日常的に関わることで、その人の変化について気づきが早く、介護保険の申請に繋げたり、独り暮らしであれば成年後見制度に繋げたりと、早期に対応できるようになっています。顔を知って、信頼できるからこそ病院では聞けないような相談もできるようになっています。

みま~もの活動は全国に広がりつつあります。各地域でも協賛という方法は必ず取り入れているようです。多くの地域でも、専門職同士の繋がりはできていますが、その他の分野や企業等との繋がりはできにくい現状があります。医療介護だけではない、農協や郵便局、商工会議所などの企業と分野を超えて繋がり、住民のためにできることは何かを探し、地域の特性を生かした対応が求められています。

東京都健康長寿医療センター研究所が、2013年からみま~もの取り組みを調査し(「高齢者の健康と安心な暮らしに関する調査」)2016年に結果報告を出しています。その中には地域に対する認識についての調査がされ、2013年と2015年が比較されています。近隣の人は信頼できると思っている割合や近隣の人は他人の役に立とうとすると思っている人の割合が増え、地域の中で住民同士の信頼感やお互いに助け合う意識が向上していると報告されています。

みま~もの取り組みにより、住民は安心して生活でき、日常生活が健康で生きがいのあるものになっているのが、うかがえました。

2017年1月19日ヒアリング実施
ヒアリングとまとめ:上田昌文+小林友依

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