バイオテクノロジーの応用可能性 : cellFとYCAMの試み

バイオテクノロジーの応用可能性 : cellFとYCAMの試み

津田和俊(山口情報芸術センター 研究員)

iPS 細胞ときくと、2012年のノーベル生理学・医学賞を共同受賞した京都大学の山中伸弥教授や、再生医療や創薬への応用を真っ先に思い浮かべる方がほとんどかもしれません。その一方で、海外ではロックスターに憧れるアーティストがiPS細胞の技術を使って楽器をつくっていることをご存知でしょうか。2017年1月、オーストラリア南西部のタスマニア島にある美術館「Museum of Old and New Art(MONA)」で、その楽器の演奏があると聞き、タスマニアに飛びました。

羽田空港からシドニー空港まで約9時間半、さらにシドニー空港から約2時間飛び、1月19日の夕方、タスマニアのホバート空港に到着しました。ホバート空港は、横長の平屋建てで、飛行機からはタラップで降り立つ小さな空港です。空港からはタクシーで20 分程で滞在先の市街に入ることができます。日本との時差は2時間と比較的少なく、気候も思っていたほど暑くありませんでしたが、20時を過ぎても外は明るく日が長いことでようやく遠方のタスマニアに来たという実感がわきました。また、ホバートは港町であり、散策中のカモメの鳴き声が印象的でした。

翌日20日の朝、あいにく小雨が降って少し肌寒いなか、埠頭から専用のフェリーに乗船して、約30分のクルーズで目的地の美術館に向かいます。人波の流れに従って桟橋から階段を上がり切り、ひずんだ鏡張りのファサードの小さな入り口を抜けると、地上階から地下3階まで、中には洞穴のような美術館が広がっていました。美術館MONAは、賭博師で財を成した大富豪のデヴィッド・ウォルシュが自身の蒐集したコレクションを収蔵するため、2011年にオープンした私設の美術館です。初日はとにかく興奮して館内を巡りました。「Disneyland for Adults」、「Museum of Sex and Death」とも形容されている大胆で挑発的なこの美術館は、雰囲気としては民族学博物館と美術館に秘宝館を掛け合わせた感じでしょうか。