「発酵であそび、発酵で学ぶ」第2回 ~酵母って???~

投稿者: | 2004年8月4日

大塚典子(グラフィックデザイナー)
pdfはdioyou_otuka_02.pdf
 こんにちは!大塚です。暑い日が続きますね~。こう暑いと酵母パン作りは大変!ちょっと気を抜くと過発酵で「マズ~!」と顔をしかめるくらい酸っぱいパンになってしまいます。酵母の活動に適している温度は一般的に2 5-2 8 ℃と言われているのですが、暑いと発酵が早まったり、高温が大好きな酢酸菌が入り込んだりしてしまって酸っぱくなってしまうそうです。
 私が酵母パン作りを始めて約1 年半…はじめは酵母に振り回されっぱなしでした。発酵のタイミングが分からず酵母はいつも過発酵、時間が読めず会社にパン生地持って出勤したり、パンの発酵に合わせて平日の夜中3 時にパン焼いたり… 本当にダメ女!ってくらい酵母に溺れて(?)振り回されていました…思い出しても辛い日々です(笑)
 あのころの私は酵母についてあまり知識がありませんでした。何となくイメージで分かっていたつもりでも、酵母がどんな生き物でどんな時にどんな変化をするのか、少しずつ分かって経験を踏んでから、やっとパンがまともになってきたような気がします。
 でも… 日々の酵母との付き合いの中で、今でも時々「あれ…これはどういうこと?」という疑問や難問にぶつかることがあります。思いもよらない酵母の反応、違う菌(?)の出現、普段何となく行っていることの意味…まだまだ、酵母をちゃんと理解できていないんですね。何だか難しそうで遠ざけていたけど、やっぱり知らないと前に進めない!というわけで、まずは初心に帰って酵母について調べてみることから始めることにしました。
 酵母について書いてある本は、正直ほとんどチンプンカンプン。D N A ? R N A ?ゲノム?レセプター?…さっぱり分からないまま、何となく知りたいことが書いてありそうなところを抜粋して、自分なりにまとめてみました。酵母を知るために、まずは微生物のことを知らなくてはならないようです。
■ 微生物とは?
 地球上に存在する生物を大きく2 つにわけると「原核微生物」と「真核微生物」に分けられます。原核微生物(細菌や藍藻)は細胞の中にそのまま遺伝情報(D N A )が浮遊しているのに対して、真核微生物(動物、植物、菌類)は二重の膜に囲まれた核の中にD N A があり、その細胞質の中には膜に囲まれたたくさんの細胞小器官(オルガネラ)があります。
 酵母は真核微生物です。単細胞の微生物とはいえ、高等動植物のように細胞内の構造はなかなか複雑で、人間の細胞内にある主要な構造体が酵母の細胞内にもあったり…ということもあって、酵母の研究は発酵食品ばかりでなく、生物全般の理解に対して、大変役にたっているそうです。酵母がそんなにメジャーな生き物だったとは…驚きです。
■ 酵母の種類
 酵母の種類は3 5 0 種類くらいありますが、一つの種類の中に様々な酵母がいるため、莫大な種類の酵母が存在しています。ただ、人間が活用している酵母はその中の3 ~ 4 つくらいだそうです。
 酵母は増える時の形の違いにより、出芽酵母と分裂酵母に分かれます。身近なところだとパン酵母やビール酵母などが属するサッカロミセス・セレビジエは出芽酵母、分裂酵母はスキゾサッカロミセス・ボンベが代表的です。出芽酵母は細胞の一部から芽を出し、その芽がポコッとこぶのように膨らみ、くびれた部分がちぎれて増えていきます。分裂酵母は隔壁で細胞が仕切られて分裂し、増えていきます。
■ 酵母の働き
 私たちの生活に身近な酵母といえばサッカロミセス・セレビジエでしょう。この酵母の働きで知られているのは、アルコール発酵。パンもビールもワインも、この酵母のアルコール発酵が作用して作られています。酵母は甘いものが大好きで、自然界では甘い果実や花の密・樹液などによく付いているそうです。糖分→二酸化炭素+アルコールに分解します。
 また酵母は、えさとなる増殖培地から吸収した糖分を分解してエネルギーにするために、酵素を使います。酵素が働くためには、補酵素ビタミンやミネラルが必要なので、増殖培地からそれらの栄養も吸収します。酵素が働いた結果、ブドウ糖はビタミンB 群やアミノ酸に変化されます。酵母が関わっている発酵食品は、日本酒、酒粕、味噌、醤油、酢、ぬか漬け、みりんなどなど…。アルコール発酵だけではなく、酵母は栄養満点の食品を作りだしているのですね。次回は酵母について、もう少し深く調べてみたいと思います。
【参考資料】
■ 酵母[究極の細胞] 柳田充弘 編/共立出版
■ 酵母菌の生活 PHAFF,MILLER,MRAK 永井進 訳/学会出

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