五島綾子さん、 「科学ブーム」って誰がどう仕掛けているんですか?

投稿者: | 2016年10月12日


市民科学講座Bコース第4回(2015年9月25日)として、後藤綾子さんをゲスト講師にお招きし「五島綾子さん、<科学ブーム>って誰がどう仕掛けているんですか?」と題してお話いただきました。

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◆この講座のねらい◆
科学研究には金がかかる。どんな研究にいかなる成果を期待してどれだけの金をかけるか―そのことの、適正で誰もが納得のいく決め方を、いまだどの国も見出していないように思える。一方、科学技術での覇者である国が国際的にも優位に立てる、という世の中であるため、多くの国において行政サイドが科学技術政策によって達成目標を掲げ、それに応じて大規模な資金を重点的に配分することが慣わしとなった。かかる状況で大きな役割を果たすのが、「”奇跡の”科学技術◯◯◯」が実現するだろうことを社会に印象付ける「科学ブーム」の勃興である(例えば90年代~2000年代では◯◯◯はナノテクノロジーだったと言えるだろう)。いくつかの科学ブームの例を取り上げて、その仕掛けから幕引きまでを調べると、行政、研究者コミュニティ、企業、ジャーナリズム、市民のそれぞれが何を担い、何を共有し、何を議論できるようにしておくべきかが、みえてくるのではないか―五島綾子さんの『〈科学ブーム〉の構造 科学技術が神話を生みだすとき』で示されているデータや分析を手がかりに、科学技術を育て方向づけることにまつわる諸問題を、著者とともに考究してみたい。(進行役の上田(市民研・代表)より)

◆五島綾子(ごとう あやこ)さん プロフィール◆
薬博、理博。スイス連邦工科大学高分子科学研究所客員教授(1993)、静岡県立大学経営情報学部助教授(1998-2001)などを経て、同大学教授(2002-2008退官)。IUPAC Fellow。市民科学研究室会員。専門はコロイド化学、化学史、科学技術論。おもな著作に『ブレークスルーの科学』(日経BP社 2007、パピルス賞受賞)、『ナノの世界が開かれるまで』(共著、海鳴社2004)、『〈科学ブーム〉の構造 科学技術が神話を生みだすとき』(みすず書房2014)監訳書にベルーベ『ナノ・ハイプ狂騒』(熊井ひろ美訳、みすず書房2009)、編著にIUPAC-NIST Solubility Series(AIP, 2011)ほか。

五島綾子さん、「科学ブーム」って誰がどう仕掛けているんですか?

五島:
このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
今日はまず30分お話をいたしまして、後は上田さんから頂いた質問をお答えする形で話を進めて行いたいと思いますが、途中で疑問があればすぐにその場で聞いてください。そしてその時お答えするという形で、対話形式でやらしていただきたいと思います。よろしくお願いします。
科学技術政策が生み出す「科学ブームと神話」という主題は、みすず書房で昨年の7月に出版しました『〈科学ブーム〉の構造―科学技術が神話を生みだすとき』を中心にお話をさせていただきたいと思います。
この研究は静岡県立大学に在職していました時に、家族の関係で東京―静岡を行き来からしながら、大学図書館および国会図書館、国立の研究機関、国際学会などで調べたものですが、一番気をつけたことは資料の収集と、その資料が正確であるか、引用したものが正確であるかどうかでした。みすず書房の市原加奈子さんという優秀な編集者と議論を重ねて作り上げたものです。

科学ブームの何に注目したか

まず科学ブームについて定義しました。特定の科学技術に対する社会的な関心が急激に高まって個人・企業・組合・自治体に対してその関連する商品への投資や購買があおられる現象を指す、としました。「科学ブーム」を、英語では「ブーム」とは言わないで。「buzz」と言ったり、「hipe」と言ったりします。……

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