科学技術予算はどう適正化できるのだろうか

投稿者: | 2010年5月21日

上田昌文
pdfはcsij-newsletter01_whole.pdf
事業仕分けでも浮き彫りになったが、国の科学技術予算をどこにどれだけ配分するか――とりわけ、何の役に立つかは今はよくわからないけれど将来的に社会に有用な結果を生むかもしれないものにどう税金を投入すべきか――を誰もが納得がいくように決めるのは大変難しい。
これには主として
(1)国の政策上の他分野(科学技術以外)への投資とのバランス、
(2)研究者コミュニティの意向と将来見通し、
(3)国民の期待と支持の様相、
の3 者がからむだろう。
(1)は(他分野の)省庁と政治家、(2)は科学技術分野の省庁と予算配分機関や研究者コミュニティ、(3)はマスコミと一般市民、が主役とみなせるだろうが、問題はこれらのアクターの間で、互いの役割と決定権限を認め合いつつ、対話的な協議をどう組み入れていくか、その方法が確立できていないことだ。
ベストの案がすぐさま出せるものではないにしても、例えば以下の2 点も踏まえた改善を重ねていくことは必要だと思われる。
●分野・領域・課題といった単位で、その研究の社会的意義や他分野との連関を広く見通せ、一般市民や行政との対話や交渉にもあたることのできる、管理のプロを常置する(「研究課題管理者」(プログラムオフィサー/プログラムディレクター)がこれに相当するが、このプロをどう育て、どういう規模でどう全体的に配置するかは、大学や学会や研究機関を交えた協議が必要だろう)。
●行政の側は、分野や領域ごとの予算の上限枠組み(年次の金額× 年数)だけを提示し、その分野や領域内でどう配分し、どのような成果をもって次につなげるか・つなげないかを決める判断は、研究者コミュニティ内部で決定するようにする(世界的に見て少ない予算枠ながら、その予算を自主運用で徹底活用して大きな成果をあげた、かつての宇宙科学研究所のような例は大い
に参考になると思う)。

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