プロジェクト報告◆科学技術評価プロジェクト① 市民の立場からの科学技術評価を探る

投稿者: | 2002年4月16日

プロジェクト報告◆科学技術評価プロジェクト①
市民の立場からの科学技術評価を探る
科学技術評価プロジェクトリーダー
藤田康元
doyou51_fujita.pdf
科学技術評価PJは昨年8月に誕生した新しいPJです。しかも、この半年にまだ三回しか会議をもったことがなく、ちょっとのんびりペースでやってきています。でも昨年12月、思いきって高木基金に助成金の申請書を出したこともあり、今年はより本格的に活動を展開していきたいと思っています。正式メンバーといえるのはいまのところ上田さん、尾内さん、藤田とちょっと少ないのが悩みの種です。この記事を読んで興味を持った方は、どうぞ遠慮無く御参加下さい。
さて、本PJはいったい何を目的に、具体的にはどんな活動をしているのか、以下、簡単に説明したいと思います。土曜講座リーフレットにもあるように、私たちの大きな目的は、「日本の科学技術政策とその具体的展開である研究開発プロジェクトに対し、市民の立場からどのように監視し、評価できるかを探る」こと、「民主的な開かれた意志決定がなされているのか、まっとうな研究開発目標が立てられているか、外部や内部からの評価がきちんとなされているか、無駄なお金が使われていないか、などについて市民として必要なチェックの原理と方法を明らかにする」こと、です。
政府が進める科学技術政策とか研究開発プロジェクトといえば、これまでも、例えば原子力分野のものは、その圧倒的な危険性ゆえに多くの市民から問題化され、批判されてきました。そういった取り組みが今後一層力をつけ、政策を大きく動かすものとなるべきなのはもちろんなのですが、私たちのPJはやや異なるところに目をつけました。私たちは、主たる調査対象を旧通商産業省(現経済産業省)を中心に進められてきた産業技術分野の特定のプロジェクトに絞り込むことにしました。さらに、具体的な取り組みとして、ひとまずはそのプロジェクトに対して経済産業省(旧通産省)の下で行われている・行われてきた評価委員会の活動を市民の立場で「評価する」という方法を採用することにしました。
私たちがすでに具体的な調査対象のひとつとして選んでいるのが「量子化機能素子」プロジェクトです。そのプロジェクトは1991年から2000年までの10年間に70億円を費やして行われたもので、従来のシリコン集積回路を遥かに越える超高速・超高機能の半導体集積回路の基礎となりうる量子化機能素子の開発を目指したものでした。ちょうど今、最終評価報告書の作成が進んでいるところです。私たちはこれまでに、その最終評価委員会を傍聴したり、そこで配布された資料を検討したり、かつて評価に関わった研究者からお話しを伺ったりといった作業を行ってきています。今後、具体的な調査対象とするプロジェクトを増やしていきたいと考えています。
特定の研究開発プロジェクトの評価の評価に加えて、本PJでは、文献の検討を通じた理論的な研究も同時に行ってゆく予定です。これは三つの領域に分かれます。第一に、これまでの科学技術政策論・産業政策論の検討です。特に、それら先行研究において、市民を主体とした民主的な意志決定・評価のあり方がいかに論じられているか・いないかを検討します。第二に、諸外国における民主的で多様な科学技術政策評価の制度作りの現状を把握し、日本での有効性を検討します。第三に、すでにダム建設などの公共事業に対してなされてきている市民の側からの監視・評価の試みを検討し、公共事業としての科学技術研究開発の場合に有効な視点や概念装置はあるか・ないかを検討します。
すべてまともにやろうとすればとても大きな問題であり、私たちの課題設定はちょっと欲張りの観もあるかもしれません。でも、着実に進めうる調査活動と同時に、それと連携した広い視野での理論研究も、初めに掲げた私たちの大きな目的にとって重要と考えています。■

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