プロジェクト報告◆科学技術評価プロジェクト② 産業技術政策に焦点をあてて

投稿者: | 2002年4月18日

プロジェクト報告◆科学技術評価プロジェクト②
産業技術政策に焦点をあてて
科学技術評価プロジェクト 尾内隆之
doyou52_onai.pdf
当PJの活動がのんびりペースであるため,先月からの大きな進展はないのですが,まずは,「高木仁三郎市民科学基金」への助成金申請が落選という結果になったことをご報告します。残念ではありますが,この結果が活動に決定的に影響するというわけでもありませんので,今後も地道に進めていきたいと考えています。
私見としては,当PJのような取り組みは,抽象的なものとして映ってしまう気もしますし,また成果の面でも短期的なアウトプットを期待することは難しいと思われるので,年次単位で実施されるこうした助成制度にはなじみにくいかもしれないと感じました。それでも,当PJの取り組みが,科学技術と社会の関わりを考える上での非常に根本的な問題を俎上に載せることは間違いないのですから,継続的かつ実効的な取り組みが可能になるように,資金面でも,人的な面でも,活動体制を整えていく必要性を痛感します。相手(研究対象)の巨大さに呆然としているばかりではいけませんから……。
さて,2月15日の先の勉強会では,量子化機能素子研究開発PJに対する経済産業省の事後評価(案)を読みました。評価資料に伺える特有の文体・表現には非常に興味をそそられましたし,実質的な内部作業として行われる「評価」の限界も明確に見て取れました。こうした資料を実施者のコミュニティからどれだけ引き出していけるかが,当PJの取り組みを大きく左右するのは間違いないのですが,情報公開法が成立したとはいえ公開する側主導で制度が運用されている現状では,資料収集に相当に汗をかくことになりそうです。もちろん,入手した資料を十分に読み抜いていくセンスを養うことが重要なのは言うまでもありません。また,個別の科学技術PJについて分析すると同時に,これまでの日本の科学技術政策(および産業政策)の流れを概観し,問題点を明らかにすることも,これから科学技術評価の制度を構想する上で大切だろうという考えもあります。
そこで,次回の勉強会は,合宿という形で開くことにしています。まず,今後のPJの進め方を整理する予定です。もう一つ基礎的な作業として,上に挙げた,日本の科学技術政策・産業政策の展開を,いくつかの文献を読み合わせながら確認するつもりです。ご参考までに,予定している文献をいくつか挙げておきますと,
1.リチャード・J・サミュエルズ/奥田章順訳『富国強兵 技術戦略にみる日本の総合安全保障』
2.山田敦『ネオ・テクノナショナリズム グローカル時代の技術と国際関係』
3.ダニエル・I・オキモト『通産省とハイテク産業』
4.大嶽秀夫『現代日本の政治権力経済権力』 などです。いずれも基本的には旧通産省の産業政策を取り上げた文献ですが,日本の科学技術政策は産業政策に従属してきたので,その実態を知るためにもこうした文献を読むことに一定の意義はあると思います。ちなみに1は航空産業を,2と3は半導体産業を,4は鉄鋼・自動車などの基幹産業を対象にしています。
合宿をする以上は,ふだんの勉強会ではなかなか十分には満たせないメンバー間のコミュニケーションを図ることも,もちろん大きな目的になります(と書くと何やら立派ですが……笑)。合宿の成果については,次号でまたレポートいたします。■

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