市民科学研究室・緊急企画 イラク攻撃に関する緊急アンケートの回答 2003年4月4日~13日/回答者21名

投稿者: | 2003年4月21日

市民科学研究室・緊急企画
イラク攻撃に関する緊急アンケートの回答
2003年4月4日~13日/回答者21名
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市民科学研究室では米国のイラク攻撃のさなかに、会員(購読者)をはじめとする200数十名の方々に以下のアンケートをお願いしました。大変難しい総括的な質問内容であったにもかかわらず、21名の方々がすばやく回答を寄せてくださいました。心より感謝いたします。これらの回答は、4月30日に公開することになりました市民科学研究室の新しいホームページにおいて、全文を掲載させていただきます。また、来る5月24日(土)の第151回科学と社会を考える土曜講座「イラク戦争と私たち~”戦争をしない道”は可能だ」において、討議のための参考資料とさせていただきます。この集会に向けて、イラク戦争に関するさらなるご意見などを市民科学研究室にまでお寄せくだされば、集会資料に追加いたします。どうかよろしくお願いいたします。■(上田)
◆ アンケート呼びかけ文 ◆
世界中の多く人々の反対の声をないがしろにして、米国のイラク攻撃が引き続いています。私たちは、一刻も早くこの戦争を止めさせ、米国に強く抗議する立場から、皆さんの声を市民科学研究室の機関紙『どよう便り』の誌面に集め、緊急の特集号を作ることにしました。大きな規模の商業メディアでの発言も大切ですが、そうした機会をなかなか持てないでいる市民が、今、この戦争に対してそれぞれの立場から意見を表明し、互いの意思を確認しあって、様々な行動の可能性を開いていくことが大切だと思います。
次の3点についてご意見をお聞かせください。(いずれか一つにお答えくださってもかまいません。)
(1)今回の戦争によって世界はどう変わったと言えるのでしょうか。この戦争の歴史的な意味合いについて、あなたが最も重視したいことがらは何でしょうか。
(2)攻撃終結のために、あるいは攻撃終結後になすべき対応のうちあなたが最も大切だと考えることは何でしょうか。
(3)日本政府はこの戦争を容認・支持しています。日本は今後どのように変わらなければならないのでしょうか。あるいは変わることができるのでしょうか。平和を求めていくために日本がなすべきことのうち、あなたが一番肝心だと思うことは何でしょうか。
お忙しいところ大変恐縮ですが、皆様のご回答を心からお待ち申し上げます。どうかよろしくお願いいたします。
2003年4月4日 市民科学研究室運営スタッフ
◆お寄せいただいた回答(到着順)◆
(1)国連に対する世界の目が冷ややかになる。イスラム世界とアメリカの対立が一層鮮明になる。
(2)日本がイラク復興への協力を梃子として、他国と協力して、アメリカによる石油利権収奪の制約に向けた発言権を獲得すること。
(3)日本がなすべき、というより国民がなすべきこと:まず次の総選挙では、この戦争を支持、容認した政治家をすべて排除し、いかなる戦争も支持、容認しない政治家を選ぶこと。■
沖本孝雄(勤務医)
(2)”力”を行使するUSがいけない事ではありますが、ここまで来たら、人民を盾にするフセインがその行為を止めるべきだと考えます。
(3)北朝鮮との関係を、USの力を借りずに、国連を動かして両国の平和的解決に動くべきだと考えます。日本の拉致被害者の会がUSで関係者に会った時、「拉致はテロである」と言ったと報道で聞いた記憶がありますが、日本の外務大臣は「拉致はテロではない」と発言しています。これではこの問題は絶対に解決しないでしょう。それに、経済交流か人道支援かはわかりませんが、北朝鮮の船を入港させるなんて、日本としてのプライドは無いも同然です。■
T.A.(サイエンスボランティア)
(1)9.11以後ほとんどのマスコミが報復戦争を指示する中、日本で言えば辺見庸氏、アメリカではチョムスキーなど本当にごく一部の意見がかろうじて報じられその意見を聞くにつけ、かろうじて紙面が自分の意見を確認する救いとなって心の平静が保たれていました。ブッシュの「終わり良ければすべて正義。」というような風潮にまた流されそうになっているのが心配です。ただし、多くの国で草の根の反戦運動が起こったのはうれしかったです。ところが、初めのうちは、ほとんどのマスコミが報道を怠っていました。何とか報道姿勢に変化が見られ始めたと思ったら次の流れが出てきたわけで予断を許しません。ならず者国家だから、征伐する。これからテロが起こらないように予防のために戦争を行う。国連の対応が生ぬるいから自分が相手の大量破壊兵器を暴いてやる。ビンラディンは、いつまでたっても見つからず、途中から変わったフセインはどこへやら。生物兵器も何も使われない。つまり、国連の査察団が機能していたということではないだろうか?次々に、口先だけの侵略理由がマスコミのニュースからも暴かれても何とも動じないブッシュ。このまま一気に軍事的平静さを取り戻したとしても、アメリカの侵略戦争としての本質は変わるものではないと思います。人類は、20世紀に幾多の失敗から学んだ国連という制度(機能)をとうとう破る国が現れたこと。きちんと異議を唱える国が出て世界の多くの国がなびかなかったこと。民主主義は、与えられて得るものではなく、中身を作っていくものだと実感させられます。
(2)アメリカのしたことの意味をきちんとはっきりさせること。これは、しかし、難しすぎる課題かもしれません。侵略戦争をさせないこと。してしまったとき、どうすべきか世界の知恵を出し合うべきだと思います。
(3)日本の市民が望む方向と違うベクトルを向く小泉内閣にまずやめてもらうしかありません。明日は、選挙です。1人1人が、きちんと考えて1票を入れることだと思います。物事には一見思わぬところでいろいろ関連していることがあります。今、平和の声をあげることは、不景気や重税などなどと関わってくることと関係していることなど自分の頭を使って考えられる人間が増えるべく自分の持ち場でがんばっていきたいです。■
鈴木久
(1)アメリカによる一極支配が現実的なものとなった。独仏の反対を押しきってでも、アメリカが単独で国際情勢を動かせた事実は大きい。
(2)アメリカを国連の支配のもとに置くこと。アメリカのおこなっているアラブ系市民への差別をやめさせること。アメリカの行動の是非を、さかのぼって検証すること(国際法廷などで)。
(3)日本は変わらないのではないかと思う。いまや中国のみがアメリカに対抗できる潜在的な力を持っている。日本が中国に対して、アメリカの代理を演じないよう願う。■
平田光司(総合研究大学院大学教育研究交流センター教授)
(1)この戦争を、アメリカやブッシュの暴走としてとだけ捉えることは短絡過ぎるように思う。「帝国」論が盛んだが、昨今のマスコミで盛んに叫ばれるようにアメリカ=帝国と捉えることは間違っている。ハートやネグりのいうように、多国籍企業や情報網、など、国境では括れない巨大な権力が世界に作用しているわけで、この意味では、それらの「帝国」が提供する現代文明を享受している我々こそが、「帝国」の一員なのである。「戦争反対」「NO WAR」とか叫んでる人たちがいるが、もっと深く戦争の意味を捉えてほしい。この戦争を起こした当事者に自分も含まれているということを。あまりにも短絡的な「戦争反対」の大合唱には動員論的な危険なにおいを感じる。以上のような意味合いにおいて、戦争で世界は何も変わっていない。
(2)とりあえずは、その地の地域住民が民主的、自由的に過ごせる環境を作ることだ。石油の利権はすべてその地の人々に提供されるべきである。
(3)金を払うのは仕方がないが、その見返りとして国際的発言権を求めていくべきだ。このままでは、戦争は覇権的に中東全体、朝鮮半島へと進むのだろうが、アジア諸国と協力してそれを阻止せねばならない。アメリカに追従するのではなく、アジアをまとめ、アメリカ、ヨーロッパと対峙しうるパワーを構築するリーダーとなるべく行動すべきだ。朝鮮半島といがみ合っているようではお話にならない。■
N.T.(東京大学博士課程)
(1)力で解決すればいい というメッセージがアメリカから発せられ、日本が追随した。そしてマスメディアがそれをフォローした。世界の表面はそうだが、世界の内面的には、それは違う と感じ、行動に現れ始め、現実的につながりはじめた。1なるものの暴力に対して60億が問いを発せられ、多様性の点火がはじまったこと。
(2)攻撃そのものの検証からその賠償も含めた地域の命のコミュニティの修復。そしてこの攻撃をチャンスとした、世界(グローバル)コミュニティの創造。これをきっかけとして、地球全体が運命共同体として腹を据え、奪い合いでなくいかに共生するかに行動すること。
(3)イラクが解放されたとプロパガンダされているが、日本は解放されたのだろうか?日本の戦後は終わっていない。ゆえに、日米同盟はあいまいなまま継続され、平和憲法は理想とされ、在日は差別され、難民は受け入れず、戦争責任はどこもとらず、それを天皇制が擁護し、いまふたたび有事法制が顔をだ……。アメリカの下ですべてをあいまいにしながら、強いものについていくという生き方でいいのでしょうか?先の大戦の自己認識とアジア・アメリカを含めた癒し~自立共存のプロセスが必要。■
U.T.(CHANCE!pono2)
(1)新自由主義・新保守主義の路線がソ連・東欧社会主義圏の崩壊後、明確に19世紀的なネオ・キャピタリズムに回帰し、一極集中支配をアングロ・サクソンの伝統の下に、世界戦略として推し進めようとしていること。民主主義の名の下にファシズムが可能であるという「民主主義のパラドックス」を政治経済学の問題として考える必要があること。科学技術は、その一環として大きな役割をはたしていること。軍産学複合体の問題を、真摯に受け止める必要があること。
(2)アメリカ、イギリスのアングロ・サクソン帝国の支配が成立出来ない世界的システムを形成すること。公とは何か、という問題に答えること。その一つとして、国連の存在を、今一度再建・再考すること。
(3)民主主義は与えられるものではなく、勝ち取り、作り出していくものであることを再認識し戦時体制を準備する種々の法案に対し、闘うこと。アメリカの傘の下での平和が如何に無力か、ということを平和憲法のもとで、再構築すること。短絡したMD構想、H2Aロケット開発はむいみであること。外交政策を市民レベルで議論できる風土をつくりだすこと。■
山根大次郎(科学史/非常勤講師)
(1)世界は崩壊した。物理的に破壊されただけではなく、文明社会が拠って立つ根拠も同時に失われた。「戦争の世紀」は20世紀で終わったのではなく、21世紀にも続き、しかもいっそう破壊の度合いを深めるようになった。世界は何によって再生されるのか。その答えを見つけることが緊急・最大の課題だ。
(2)再生の手がかりの一つとして国連がある。瀕死に近いが国連はまだ生き残っている。国連主導によって事に対処すべきである。”戦後復興”に名を借りた火事場泥棒や、第二、第三の「イラク戦争」は論外だ。
(3)戦争に加担した日本政府は、その辻褄合わせを北朝鮮問題を口実にして「有事法」の判定、更には憲法「改正」に求めるだろう。しかし、それは世界の再生に逆行すること甚だしい。多角的、多面的にその逆行を阻止しなければならない。■
大竹多門
(1)アングロ=サクソン圏とヨーロッパ大陸圏の対立を顕在化させたことで、今後の国際情勢に大きな亀裂を残したと思います。
(2)イラク国民の健全な生活の確保、治安維持、経済的安定化。アラブ諸国とイラク戦後政権との友好的関係の樹立。
(3)日本はアメリカ支持を表明してきました。この選択肢には、個人的には疑問を感じますが、北朝鮮など東アジアの状況を考えればアメリカに頼らざるをえない現状ですから、国の政策方針としてはやむなしという側面もあるかと思います。ただ、今後の展望としては、米欧対立の図式の中でどちらか一方に肩入れするのではなく、アジア・太平洋地域を中心とした政治外交体制を確立するべきだと思います。具体的には、中国や韓国などと、より緊密な友好関係を構築していくべきだと思います。アメリカ追従ではなく、アジア諸国を政治外交の最優先課題にするべきなのではないでしょうか。■
佐倉統(東京大学情報学環、助教授)
(1)U.Sのように強大な軍事力とドルに支えられていれば、戦争を起こすために如何に不等な論拠であり、国際的にどんな批判が起こったとしても強引にすすめられるという事。日本が今回のU.Sの行動に対し無批判に賛同した事によって国際社会、特に東北アジアからの孤立が顕著になる事に非常に懸念しています。ブッシュ政権がこの先も戦時政権として維持されるならば実質的なU.Sの経済の落ち込みがさらに進むこと、おそらく日本も無傷でいられないという事。
(2)今やるべき事:一刻も早く日本の議会で停戦決議を出してもらうための自民党議員へのロビィ活動。また地方議会への特に与党議員への同様の働きかけ。終結後、具体的ではないですが:まずU.SとU.Kを国際司法の場で裁けるかという事。さらにシリア、イラン、北朝鮮への攻撃の可能性を避けるための行動。今の一方的な大手メディアの報道の他に別の視点の報道がある事を社会に浸透させる事の必要性。
(3)(2)の質問に対しメディアのことを書きましたが、まずこれ。日本が今後どう変わるかということについいては(1)に対し懸念ということでて書いています。有事法制や北朝鮮のこともあるが、ひとりひとりが今の状態を冷静に見る視野と知識がなにより必要と思います。本音を言えば日本人の民度の低さには絶望しかけていますが、それも戦後60年この社会では民主主義に必要な思想というのが全く育まれてこなかった。そして反戦は何度も叫ばれてきたが平和の文化を築く事におろそかだったからだと考えています。時間はかかりますが、ひとりひとりが考えることがまず第一歩かと思います。■
岡本俊之(CHANCE! pono2)
(1)ケタ外れの軍事超大国(アメリカ)が、親類筋のイギリスと一緒に、自分の気に入らない国(イラク)に軍事攻撃を加え、政権転覆にいたらしめた。主権国家からなる国際社会の内政不干渉システムをこわし、近代以前のジャングルの世界に戻してしまった。歴史的な愚挙。この愚挙を認めるなら、この後、どの国がどの国に対して同じことをしてもよいことになる。世界には、もうルールはない。
(2)不十分だが国連の機能を回復させ、多国間外交、多文化主義をベースとする世界を取り戻す。アメリカ単独の中東改変、石油支配を阻止する。
(3)日本の米英支持はもってのほかの決定だった。「北朝鮮の脅威があるから、今アメリカにタテつくわけにはいかない」という情けない論理(論理になっていない)で支持する、というのは最低の選択であり、世界にバカにされるがおちである(実際、英仏独を歴訪した川口外相は、どこにも相手にされず、三国の新聞は彼女を無視した)。日本は、世界、とくにアジアの中の自らの座標を正確に認識し、北東アジア諸国との連携をベースに富裕な平和国家としての協力実績を積み重ね、太平洋国家としてアメリカとも協力すべきである。この姿勢を、説得力のある言語と論理を用いて、世界に説明する努力を払わなければならない。■
阿部汎克(非常勤講師/元毎日新聞論説副委員長、短大教授)
(1)戦争を止められなかった国連がこのままイラクの復興にもイラク国民にとって良い方向でかかわることができないと存在意義自体が問われることになると思います。いままでも、それほど各地の紛争をきちんと治めてきたとは言いがたいですが一応、各国の総意の場の象徴的存在が無力化したり、失われたりした場合今後世界的協調をとるための場が無くなってしまうのは大変不安です。
(2)攻撃終結後、一部のイラク人が略奪などしているようですがそれも貧困であるがゆえではないでしょうか? 世界でも有数の石油産出国なのですから国家の資源として石油からもたらされる利潤が国民に広く還元されるような社会システムの構築が必要ではないでしょうか? 貧困から紛争や難民が生まれ、貧困からテロが生まれているのが実情だと思うので経済的にみんなが納得できるような仕組み作りが大切だと思います。間違っても石油の利権がアメリカや特定の民族に渡り富の分配がなされないようになるようだとそれはまた内紛の種となると思います。こういう問題は早急に各民族同士の総意で行われるのが理想だと思います。難しい問題なんでしょうけど。
(3)5年くらい前に日米安全保障共同宣言がなされたときそんなに反対意見もでず、小泉首相が有事立法を言い出しても目立った行動を起こした人はごく一部だったのに4月5日の寒い日にあれだけの人が渋谷に終結したことがわたしには怖いです。なぜなら戦争の凄惨な映像に刺激されただけというかんじの人が多かったのではないかと思うからです。もし、拉致被害者の人や、北朝鮮帰国事業で北朝鮮にいる日本人妻が北朝鮮にひどいことをされたと大々的にテレビで流されたら、あの4月5日に反戦を訴えた若者たちが打って変わってナショナリストになる可能性はとても高いのではないでしょうか?政府がアメリカとの関係上防御以上の戦闘に踏み込むときにはテレビを利用すればそれでいいんだもの。拉致被害者の人の報道は過剰だなと思っていたけどそれはあの話題が視聴率がとれるからなんでしょう?つまり、ああいうことをワイドショー的に受け止める人が視聴率を左右するほどいるということですよね。やはり、政府を動かすには大勢の国民が結集しなければならないでしょうがそうなる前に一人一人がもうちょっとだけ自覚的に情報の取捨選択をできるようになることが大切な気 がします。なんかえらそうなことを書きましたが、これは自戒も込めて本当にそう思います。■
石橋夏江(ソフトウエア業)
(1)日本が支持し、遠くにいる日本人もアメリカの脅威を実感したことで、軍事などの問題が身近な話題になって来たと思います。沖縄出身の個人的な立場から言えば、在日米軍について、日米安保について、また、その影響から日本は戦争を支持せざるを得なかった事に、今まで関心の無かった若い世代の人々も気付かされたのではないでしょうか。アメリカの「パターナリズム」をこれ以上許しては行けない。
(2)新たな形の国連の強化。アメリカに代わって欲しいリーダー/ヨーロッパ連邦の動きをしっかり見ること。
(3)沖縄で昔から言われているアイディアに「日本から独立して非武装の国になる」と言う物があります。これは、独立して米軍と共に自衛隊も撤去し、非武装によって国連からの擁護を受ける、と言う物の様です。しかし極論に近く、現実味もないので、今までは酒の席での笑い話程度になっていました。ですが、安保理が無視されて日本が支持した辺りから、これを日本一国に当てはめても良いのではと考え始めました。極論には違いないけれど、そう笑い話でもない気がしています。日米安保、地位協定、アメリカが関わる全ての決まり事の見直し。■
桃原樟子(ジュエリー・デザイナー)
(1)まだ「変わった」と過去形で言えるような段階ではありません。この戦争の歴史的根源にはイスラエル建国をめぐる米英VSアラブ諸国の経緯があることを忘れないでほしい。
(2)他の中東諸国に拡大させないこと。
(3)国連を立て直し、アメリカを国際協調の枠組みへ引き戻すための努力をすべきです。■
Y.T.(福祉ボランティア)
(1)人類の”ナショナリズムからの克服”が、さらに遠のいた事件だと思います。異なる宗教・民族を国家というシステムに組み込み、互いの利害や価値観を守るために殺しあう近代という時代からの脱却が求められている中、時代を逆行するような犯罪が行なわれたという認識です。時に、「民族」という言葉で人類を分断させていきたのも国家というシステムを維持するために行なわれた近代社会における人類の愚行だと思いますし、かつての日本、現在のパレスチナやアフガニスタンの問題なども含めてこの戦争の根底にあるものはそうしたことだと思います。
(2)先進国が各国の「国益」を重視して立ち回るのをまず止めるべきだと思っています。テレビで有識者が「国益」という言葉を繰り返していますがいったい「国益」というのはなんでしょうか?人で言えば、自分や自分の家族を守る、ということなのでしょうが、いまや市民レベルでもパブリックな領域をどう皆で考えていくか、という流れに来ているのに国だけが、「国益、国益」と馬鹿みたいに繰り返している。人で言えば、「私益」と繰り返して言っているようなもんでそんなことばかり言う人はたいてい相手にされない。「国益」と使うならば北朝鮮から拉致された人々を救う時にどうどうと使って欲しい。具体的には、国連中心に医療、食料・水・電気、教育、安全の確保などの生活基盤の支援を行い、イラクに住んでいる人々の意見を時間をかけてまとめていきながら必要な”システム”をつくっていったら良いのではないか。
(3)私たち一人一人が「戦争を支持しない」という意志をはっきりさせていく必要があると考えます。小泉さんは、ある意味で大半のこの国に住んでいる人々の気分を象徴しています。パフォーマンスとして、最初はぎりぎりまで「国連中心で」とやってみて、いざとなった時には「米国支持」に転換する、そして、戦後に「国連中心で」とのたまわっている。小泉さんも外務大臣も「事態は刻々と変わっているのだからその時その時で判断をしていった結果」と言って国際社会に説明してもそんな幼稚な考え方がこんなに厳しい状況で通るわけがない。近代社会の歴史の根底にある深い問題を捉えて、日本はこう考える、という哲学がまったくない。日本の多くの人々が、私も自省をこめて、自分の考えを持っていない、あるいは意志をはっきりさせて来なかったと思っています。■
N.H.(社会的事業の計画や立上げ、実行・実施にかかわる仕事)
(1)世界がどのように変わったかを客観的に述べることは難しいので、私に見える世界がどのように変わったかを書きます。
・世界政治における権力の一極集中の問題点、行使可能な力とそれに伴うべき責任の欠如がもたらす問題が明らかになった。今回の戦争の結果として国連の価値が再確認されたのかもしれない。また、世界政治の仕組みが長期的に何らかの形の新しい多極構造に向かうきっかけになったのかもしれない。
・ 現代の戦争では非戦闘員である一般市民の死傷者が戦闘員を大きく上回ることを統計のデータとしては知っていたが、これが事実であることが残酷な実例を通じて示された。
・ 戦争は人種差別であることが示された。米軍がバグダッドを制圧した翌日に「今回の戦争の犠牲は最低限に止めることができたから、これらの犠牲は払う価値があるものだった」などという意見が英国のマスメディア、特にBBCに出現した。犠牲の圧倒的多数はイラクの非戦闘員の一般市民であるにもかかわらず、どうして上記のような判断を英国に住むものが下すことができる(と考える)のか、私には理解できない。
・ 物質的な力に加えて、「情報」も重要な政治的な力であることが明確になった。米英軍に同行した「従軍記者」とバグダッドに駐在した特派員との双方がそれぞれ自己検閲をしていたことがそれを示していたと考えられる。
(2)国家のレベルでは、以下の政策を国連を通じて行うこと。市民のレベルでは、以下の政策を実現する方向に向けての物質的・財政的支援、人的支援、および世論作り。
・ 市民生活を安全に営むための社会秩序の回復。
・ 市場経済導入に伴い発生する所得の格差を減らすための配慮。
・ 「イラク国民」一般のニーズのみならず、女性・子どものニーズへの配慮。
・ 物質的な「復興」に並行して、戦争の結果として社会に存在するトラウマを癒すための努力。
・ 公正に実施された秘密投票を経ての複数政党制の導入。
・ 近隣諸国との間の武力紛争の予防。英国のある歴史学者は、今回の戦争がもたらす予期せざる結果として、将来はパレスチナ国家ができるかもしれない、ただしそこにたどり着くまでに深刻な武力紛争が中東で発生するかもしれないと「予測」をしている。
(3)日本政府は北朝鮮(朝鮮民主主義人民協和国)の「開国」を外交努力を通じて実現すること。日本の市民社会はこうした外交の積み重ねを支持する国際・国内世論を築くこと。人種差別の発言・行動を防止すること。■
滝知則
(1)国連の決議を待たずにアメリカが攻撃を開始したことに重大な意味があると考える。私は、世界に戦争や暴力がないことが望ましいと考えており、国家や個人が戦力や武器を持つべきではないと考えているが、実際には戦力の保持を制限すれば、戦力を隠し持って優位に立とうという国があり、個人の武器の所持を制限しても違反して所持するものがあり、規則を守っているものが犠牲になったりする。そうしたことを防ぐために警察的な権力が必要となってくる。世界の中にはアメリカが世界の警察の役割をしていると思っている人もいるし、アメリカ人の多くはそう思っている。しかし、アメリカは世界の中の一つの国家であり、国家としての利害を持っており、世界の意見を代弁しているとは言い難いし、そもそも特定の一国が警察的権力を持つべきではない。警察的機能が期待されるとすれば、存在意義から見て国連であろう。しかし、これまでのところ、国連もアメリカの意見に追従しているようなところが見られ、実際に国連の介入がなされるのは、アメリカ及びその他の大国の利益が見込まれる場所に対してであった。しかし、今回の武力行使に対し、フランス、ドイツ、ロシアなどが反対しており、アメリカの行動が国連の支持が得られないことが確実であった。今回、多くの国がアメリカへ追従せず、戦争の開始に反対したことで、戦争が始まる前までは、世界平和に対して希望が持てる状況にあった。しかしイラク戦争がはじめられてしまったことで状況は一変した。世界の警察を自負する国が国連の決定を待たずに武力行使をするようなことが許されるのなら、ルール違反をする国が続出し、第3次世界大戦の危険すら考えられる。取調中に容疑者を銃撃するような警察は困る。
(2)今のところ自分は何もしていないので、お恥ずかしいのですが、市民としては地道に戦争反対の声を上げていくことが大切だと思います。また、世界の経済界の動きにも目を向けて、どうした消費行動をとれば、戦争回避につながるかを考えて見ることも大切かと思います。本当は攻撃継続中も言い続けるべきですが、攻撃終結後には、アメリカが国連の決定を待たなかったことを追求すべきです。攻撃終結後のイラクの復興は国連主導でなされるべきで、その中で、従来中東諸国とうまくやってきた日本は積極的に協力すべきだと思います。
(3)世論調査で国民の大多数が今回の戦争に反対であることが示されており、地方自治体レベルでは、反対の決議が多数出されています。反対運動も盛り上がりを見せており、街でNo Warの落書きを見かけます。政府の態度が国民の意思を反映していないのは明らかです。その割には小泉政権の支持率の下がり方が小さいのが不思議ですが。国民として出来ることは、署名、運動等で政府に戦争反対を訴えていくこと、また世界に日本国民は戦争に反対であることを示していくこと、次の選挙の結果にこの思いを反映させることでしょう。戦争開始直後のBBCのニュースがNHKを通して流れたのを見ました。日本の戦争反対運動も日本政府の表明も両方とも外国で注目され報道されていることがわかりました。日本が西側の主要国の一つであり、アジアの経済大国であるという他に唯一の被爆国であるとか憲法で平和主義をうたっているとかいう形容詞をつけて語られることも多いのだということも感じました。そういう意味で日本は世界の平和に対して努力する義務があるのではないでしょうか。東アジアも難しい状況がありますが、なおのこと過度のアメリカ依存は考え直す時期に来ていると思います。■
堀井雅恵(市民科学研究室・ダーウィン会員031)
(3)今回の攻撃は、日本の決断次第で止めることができたかも知れない」このことにボクたちが実感を持てるようになることが肝心だと思います。そのためには、マネーゲームと化した現在の世界経済、お金の流れに目を向けて考えてみることがよいと思います。米国政府は、端から「日本はカネを出すものだ」と確信して攻撃に踏み切りました。今や米国は金額だけでみれば、フローに見合わぬ世界最悪の貧困国です。しかし、ドルが基軸通貨となっているがゆえにドルの新規発行、米国債の乱発によって負債を実質的にチャラにしています。日本の政府と民間が保有している米国債は総額で1兆ドルになるのではないかという話さえあります。日銀は詳細を明らかにしませんが、外貨準備高を米国債保有額と近似できると考えれば、到底返済できるようなものではないことがわかります。プラザ合意以降、年々その額が膨れ上がっており、2003年3月末には4,962億ドルにまで達しています。日本はイラクに対し官民合わせ6,730億円の債権を持っていますが、どうやらこれもチャラになるようです。一方で米国はイラクの資産を「テロ資金になっている」という理由で凍結、没収しています。日本の対イラク債券も、いわば日本から米国への献金の一部なってしまうといえるでしょう。政府に米国債をこれ以上買わないように、また売却してしまうように働きかけましょう。財政改革は、保有していても使い道のない米国債の売却から始めるべきなのです。外貨準備を、ユーロやユーロ建て独国債、豪ドル建て北欧投資銀行債券に切り替えていくことだってできるのです。そういう政府を選ぶのはボクたち自身です。デモクラシーの帝国の人々は、民主主義による戦争は正義だ、と考えているようです。それは大きな勘違いであり、日本をはじめとする国々が言いなりになっているから成り立つ米国だけの特権です。米国債を売ってしまうことで、日本の民衆はデモクラシーの帝国の言いなりにならないことを帝国の人々に伝えることができるのです。このように、ボクは世界で唯一、日本だけが今回の攻撃を止める実行力を持っていたのではないかと思うのです。しかし、政府も官僚も、そして人々の多くもボクたちにそんな力はないと考えてしまっています。想像力と創造力、そしてちょっとの実行をもって、変えていくのはボクたち自身なんですね。■
小林一朗(市民科学研究室運営委員)
(1)歴史的というより短期的な視点だが、欧州をはじめ、各文明圏内でも戦争に対する立場が割れていることが示されたことだと思う。アラブ、欧州、アジア圏をそれぞれひとくくりに見ることができないことが明らかになった。 そのようなステレオタイプの世界観は自分自身についても言える。先日、イラン帰りの友人に「戦争で大変だったでしょう」と聞くと、「何言ってるの。日本だって北朝鮮が隣にあるけど、平和でしょう。」と言われて、自分が他の「文明圏」に向ける視点が、ステレオタイプにまみれていることに気づいた。
(2)攻撃終結後にするべきことについて:ライフラインをはじめインフラの整備、直近の衣食住の援助はすべきだが、それ以外はできるだけ介入しない方がいいと思う。イラクの人たちが、イラクの文化、統治の伝統にそって合意形成をすればいい。その結果、非民主的な政権が選ばれたとしても、外から手取り足取りで民主的に見える方法を注入するよりと思う。民主主義は、唯一の姿があるのでなく、不満を持った人が発言して行動していくプロセスの積み重ねである。もちろん、その過程でおこる人権侵害について他国や人権NGOが非難したり亡命を受け入れたり何らかの方法で闘争を助ける必要はある。しかし、国の体制や、政権、政党そのものを他国が作ることでは解決しないと思う。
(3)何であれとった政策とその意味を国内外に「知らせる」ことだと思う。ただ情報公開するという意味ではなく、(なぜ「日本が」そのような政策をとるのかということを含めて)説得力のあるPRをしていくことを指す。たとえば、度重なる首相の内向きな発言は自己充足的で、人に耳を傾けてもらいたいという意志を全く感じない。「できるだけ聞きとがめられないように発言しよう」と考えている発言者は、他の人の反論も聞こえないふりをする。政府が選択を選択として論理だてて説明することで、反論もしやすくなるのではないかと思う。■
高重治香(東京大学大学院学際情報学府M2)
(1) 国連憲章、国連の存在意義をおびやかしたこと。先制攻撃、大量破壊兵器使用などアメリカの強引で無法なやり方。アメリカングローバリズムが世界平和を壊す、ということ。
(2) イラク国民の合意によるアメリカに偏らない新政府の樹立(難しそう)。イラクの「悪=大量破壊兵器」が本当に存在するのかどうか。=アメリカの戦争犯罪?
(3) 平和憲法の意義を見つめなおすこと。大国に頼らないで、アジアの一員としての主張をすること。基地返還などアメリカからの自立すること。■
柳澤典子(政治団体事務)
(1) 国連の存在意義など、歴史的に重要な点はいくつもあるかと思いますが、個人的には、戦争による不安をごく身近に感じるという点です。飛行機に乗るのが不安だとみんな思っているのではないでしょうか。北朝鮮問題とあいまって、テロや拉致の恐怖を肌で感じています。
(2) 攻撃終結のために、あるいは攻撃終結後になすべき対応のうちあなたが最も大切 だ と考えることは何でしょうか。NPOで職業訓練や農業指導などに携わっておられる方がいらっしゃいますが、このような実質的な活動が重要だと思います。反戦運動というのはコンセプチュアルではありますが、実質あまりワークしていない 気がします。「明日食べるものがない」「仕事がない」という現地の方との温度差があるというの が実情であると、アフガン問題に携わっている方が、おっしゃっていており非常に感銘をうけました。
(3)今回も情報戦ということで報道姿勢が非常に問われたようです。ショッキングだったこととして、日本ではないですが、カメラマンが報道写真を加工していたというニュースがありま した。メディアにしても政治家にしても職業的役割というのに熱中するあまり、モラルやポリシーといった一番重要な視点が欠けているのではないかと思いました。立場上とか仕事上などといって、モラルの視点を忘れて行動すると一生後悔すること になると思います。■
沖本優子
【4月17日到着分まで 21名】

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