家庭用エネルギー消費製品調査報告書 専門家と市民のコミュニケーションの一例として*

投稿者: | 2008年1月4日

写図表あり
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家庭用エネルギー消費製品調査報告書
専門家と市民のコミュニケーションの一例として*
桑垣 豊 (近未来生活研究所)
*本報告は2006年度のJST社会技術研究助成を受けて市民科学研究室が行った研究の一部として委託されたものである。
家庭で使う電気製品やガス製品について、消費者や環境への影響を性能と関連づけて、どの程度情報交換(コミュニケーション)できているかを検証した。
 特に、「省エネルギー」と「性能」は相反する場合が多い。また、購入時の製品価格と、使っている段階でのエネルギー消費費用との関係でどの製品を選ぶべきかに関する情報は不足してる。そこで、今回の調査結果を、個々の製品情報をふくめて報告したい。
第1章 調査の計画 1
第2章 エネルギー消費製品全般についての提言 3
第3章 エネルギー消費製品個別についての分析・提言 5
資料編 27
第1章 調査の計画
調査の趣旨
 家庭のエネルギー消費製品を電気製品とガス製品を中心に調査し、機器の専門家やメーカーの開発担当者と、使う側の消費者との情報交換に問題がないかを検証する。
 通常の専門家やメーカーの開発担当者は、家庭用のエネルギー消費製品全般の専門家ではなく、個別機器関連の専門家であるため、相互の関連や全体像が必ずしも見えていない。一方、消費者は自分の使っている機器を全体的に見ているが、個別知識はそれほどない。また、冷暖房のように、どのような状態が快適であるかが未解明であったり、生理学や医学の知識を機器の専門家が十分理解していないために、改善の余地がたくさん残っている部分も大きい。
 従って、専門家の知識が消費者にうまく伝わればいいという狭い意味のコミュニケーションだけを改善しても、よりよい使い方や、よりよい製品の買い方が確立するわけではない。今回の調査では、専門家の範囲を、機器の専門家に限らず、医学・生理学、熱力学、伝熱工学、エネルギー工学にも拡大して、そのコミュニケーションの望ましいあり方を調査研究した。
 また、調査者自身が今の冷暖房に快適性、エネルギー消費の面で非常に問題点が多いことから、その改善に取り組んでいる。その成果も今回の調査に盛りこんだ。
評価の切り口
 以下の3つの切り口にわけて、エネルギー消費製品にかかわる望ましいコミュニケーションのあり方を提案する。
A)コミュニケーション問題
B)製品自身の問題
C)消費者の選択段階とコミュニケーションの問題パターン
エネルギー消費製品のリスト
 以下のような機器を評価の対象とした。
冷暖房関連
1)冷房
2)暖房
3)床暖房
4)除湿器
5)加湿器
調理関連
6)炊飯
7)冷蔵庫
8)給湯
照明・表示
9)照明
10)補助照明
11)テレビ・ディスプレイ
家事関連
12)掃除機
13)アイロン
そのほか
14)充電器
15)出力調整
第2章 エネルギー消費製品全般についての提言
 調査結果から見えてきた共通の問題点をここにまとめる。
コミュニケーション問題
 以下のような問題のパーターンがあることがわかった。メーカーや専門家の情報が消費者に伝わっていないだけではないことが判明した。未解明の部分があることも含めて、情報を伝える必要があるが、消費者教育が現在の電化製品の状況に追いついていない。自治体の消費者相談コーナーなども情報の氾濫には頭を痛めている。
1)メーカーはわかっているが伝わっていない
2)専門家はわかっているがメーカーはわかっていない
3)専門家も間違いが多く、本当の専門家が少ない
4)真相は未解明(特に快適性について)
5)メーカーが消費者の理解の仕方をつかんでいない
6)消費者教育が遅れている
7)消費者自身が簡単な測定機器などで検証する方法が確立していない
製品自身の問題
1)機器個別の要素が大きい
 個別機器の問題点は、それぞれに機器自身を改良し、情報の伝え方をよくしていく必要がある。機器共通の対策ではどうにもならない違いが大きいため、今までの専門家のように、一般論で解決しようという姿勢が個別問題の解決を遅らせている可能性が高い。
 このように消費者の生の実態を解決するには、従来の専門家のわくぐみを超えて、NPOなど消費者の立場の利害関係のある組織が調査研究を進める必要がある。
2)消費者の意見や反応を有効に生かす
 メーカーはモニターなどを通じて、消費者の受け取り方、使い方にせまる努力を続けている。しかし、モニターがどうしても無意識にメーカーの意向を配慮してしまうせいか、まだまだ十分である。
 それをおぎなうものとして、第3者や消費者の利益に立つ団体や機関が、商品テストを行っている。これらは、一定の成果をあげて来たが、民間の団体に対してはメーカーが過剰な批判や訴訟も辞さない姿勢を見せることで中止においこまれる事態も生じている。(『暮しの手帖』)国の関係機関も、財政難を理由に商品テストの予算を削減されている。(『月刊 消費者』)
3)開発者が自分の体感をきたえる
 測定機器の測定結果を、自分の体感で体験し検証することが欠けている。照明器具や冷暖房は、体感することが重要な要素となる。
 しかし、冷暖房や照明以外の電気製品が電力を消費する過程で生じる熱が不快感をもよおすことに関しては、メーカーも専門家も関心が非常に薄い。これは、学問の縦割りの問題だけではなく、頭で理解する知識と、からだで感じる体感が結びついていない結果である。
消費者の選択とコミュニケーション
1)商品選択
 いろいろの要求、価格、性能、消費エネルギー、環境などを考えると、案外消費者の要望に沿った商品自体が少なく、商品選択の前に選びたい商品自体がないという選択肢の欠如と言う問題がある。これは、商品開発現場であるメーカーの問題点である。当然、すべての要求を満たすのは原理的に不可能で、コストの問題、人間の体感や生理が未解明という問題もある。しかし、その限界に近くまで、追究できているかと言えば非常にあやしい。
 店頭での説明やパンフレットだけではよく分からない点がある。改善策として、家電量販店などでは、社内で資格を設けて、消費者に説明する知識を教育するなどの改善も進んでいる。調査のときに、あえて製品の欠点も説明して、購入をあきらめる現場も目撃した。
 一方、WEBサイトには制限なく情報が載せられるため、細かい情報を載せることができるが、パンフレットの内容以上の情報が得られないことも多く、その活用はまだまだ不十分である。しかし、製品マニュアルの公開が進んでいるので、改善しつつある面もある。
 また、照明の例で説明すると、電球と蛍光灯では圧倒的に蛍光灯のほうがエネルギーが少なくてすむが、電球しか使えない用途、電球の特性を生かせる場合を除いて、蛍光灯を進めているかというとそうはなっていない。電球は電球で売る必要があるので、電球の中だけでエネルギー10%削減などという表示をして、その中だけで売ろうという姿勢も残っている。これは第3者の評価や情報が必要であることを示している。さらに、インバーターを使った蛍光灯は電磁波が強いので、顔や電子機器の近くでは使わないなどの情報がもっと必要である。
2)使い方
 エネルギー消費でいうと、使い方によって影響が大きいのは、冷暖房機器や給湯である。冷暖房については、設定温度の意味がほとんど伝わっていないという点で、致命的に努力が不足している。その背景には、メーカーも設定温度について十分な認識がないという疑いがある。
 PL対応は基本的に望ましいことであるが、マニュアルのはじめのほうのページがそれで埋め尽くされ、マニュアルが読みにくくなっている。安全対策は重要であるが、訴訟対策のアリバイ的な掲載方法は、もっと改善の余地があるはずである。
3)捨て方 ごみ問題
 今回はエネルギーの問題であるため、あまり比重を置いていないが、有害物質の問題や、焼却するごみとして処理すれば、エネルギーがむだになるなどの問題もある。海外への流出も大きな課題である。
第3章 エネルギー消費製品個別についての分析・提言
 個別機器について解説します。表の省エネ性については、相対的な評価です。〇がついていても、個別機器の差が大きいので、目安程度にしてください。
冷暖房関連
1)暖房
a)製品の説明
 おおまかに分けて、ヒートポンプを使うエアコン、ガスなどの燃料を燃やして熱エネルギーを得るもの、電気をそのまま熱エネルギーに変えるもの(表の真ん中の6つ)の3種。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 エアコン(暖房) 〇
電気 石英管電気ストーブ ×
電気 放射ストーブ ×
電気 ハロゲンヒーター ×
電気 オイルヒーター ×
電気 こたつ △
電気 電気カーペット ×
ガス ガスファンヒーター 〇
b)評価
ア)消費エネルギー
 電気をそのまま熱エネルギーに変える暖房器具類は極めてエネルギー効率が悪いが、機器が安いため一定の売上がある。電気でもヒートポンプを使っているエアコンは、ガスストーブなどと同等か上回る効率を実現しているが、そのことが消費者にはうまく伝わっていないことが原因のようである。
イ)電磁波
 多くのエアコンは、電磁波を発生すインバーターを内蔵している。頭の位置に近いため、そばに長時間とどまらないほうがいい。子供の2段ベットの上の段では、頭の方向に気をつけるべきであろう。電気カーペットは、電気毛布とともに、電磁波がかなり多い。
 電磁波問題は、未解明の部分があるためメーカーは注意を呼びかけていない。少なくとも長時間あびつづける場合は、なんらかの情報提供を検討する必要がある。
ウ)その他使用者の健康
 エアコンの場合、燃焼にともなう蒸気発生がないため空気が乾燥しがちである。石英管の電気ストーブは、非常に乾燥が進む。メーカーは一定の注意を喚起しているが、加湿器をセットで売るなどの対応が必要となるかもしれない。消費者の乾燥に対する関心は高まっているが、今度は加湿器に関する情報がうまく伝わっていないようである。
 ガスストーブは燃焼にともなって加湿する能力があるが、室温の上昇で相対湿度が下がることで、乾燥がすすむ問題がある。
エ)性能
 扇風機型の放射式電気ストーブが一定数売れている。しかし、正面で放射体感温度を測定したところ、100℃に近く、極めて危険である。扇風機のような放射を集中するのではなく、凸面で拡散させる必要があるのではないだろうか。
 松下電器では、拡散と集中の2段切り替え式の製品を販売していたが、まだまだ拡散の度合いが不足している。その上、切り替えスイッチの表示が、拡散と集中で反対になっていて、消費者は非常にとまどったに違いない。そのせいか、2005年の1年だけでその後、販売していない。あまりにも研究が不足しているとしか言いようがない。
オ)廃棄
 家電リサイクル法で、エアコンのフロンを回収することになった。そのことは消費者に徹底できているようである。しかし、ノンフロンの表示で、代替フロンを販売していることが多いのは誤解を招く。オゾン破壊がなくても強力な温暖化物質である場合がほとんどなので、より正確な表示が必要である。
カ)表示
 エアコンのエネルギー効率をあらわすCOPは、小数点以下2桁という非常に細かい数時をめぐる競争を激化させていたが、経済産業省の指導で2006年度から1桁に改めることになった。メーカーの開発担当者は、このような熱関連の測定は誤差が大きいことを知っているはずであるから、お互いに無意味な競争をさけられたはずである。このような競争をあおった一因に、トップランナー方式の欠点があらわれた。
キ)そのほか
 学生に行ったアンケートの結果、25℃以上でないと寒いと感じる人間の割合が3分の1にものぼることがわかった。関西で行ったアンケートであるので、多めに出た可能性があるが、人間の生理に混乱がおきている可能性が高い。
 25℃以上でないと寒いという状態は、夏のからだの状態である。寒さを感じないために厚着をしたり、季節を先取りするファションのせいで、冬の装いにいち早く転換する傾向がある。人間は、寒さにさらされることで、発汗や体温調節の水準を切り替えて行くため、それができずに夏のからだのまま推移しているようである。
 この問題は、メーカーも追究すべき問題であるが、国が調査研究を行い、国民に啓発していくべき問題である。医学でも、体温調節の研究はきわめて少ないということである。
2)床暖房
a)製品の説明
 エネルギー源はバイオマスや太陽エネルギーなど、今回の研究で対象にしなかったものも含めて多様である。ここで取り上げた3つの方式は、「暖房」でとりあげた方式に対応する。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 ヒーター式床暖房 ×
電気 ヒートポンプ式床暖房 〇
ガス 温水式床暖房 〇
b)評価
ア)消費エネルギー
 電熱ヒーター式は、電気代が高いため設置費用が安いというだけで設置しないほうがいいが、ほかの方式の設置費の高さも問題である。
 一部の住宅では、より費用のかからない窓の2重断熱はおこなわないにもかかわらず、床暖房だけを導入することがあるという。窓や床の断熱が十分であれば、それほど床暖房の必要性はなくなり、本来床暖房がどれほど必要なのかは検討の余地がある。特に関東以西では、温暖なため必要性が下がる。
 これらの検討が不足しているだけでなく、床暖房ということばのイメージだけが先行している可能性があり、行政などが正確な情報の提供を行う必要がある。
イ)電磁波
 ヒートポンプはインバーターを使っているが、多くは外部に設置しているため、人体への影響は少ないだろう。
ウ)その他使用者の健康
 ヒーター式は、低温やけどの可能性があり、効率の悪いこともあって、ほかの方式を採用すべきであるが、設置費用が安いために選ぶ場合がある。
エ)性能
 ショールームで測定したところ、設定温度が32℃前後と高すぎることが判明した。冷房温度の目安が28℃であることからわかるように、28℃を超えるとその放射を人間は不快に感じる。どうして、このような高い温度にするかと言えば、床暖房の熱で室内空気も同時に暖めようとするため、熱量としてはこのような温度が必要となるからである。
 この問題を解決するには、空気を暖める暖房と併用すればいい。しかし、部屋をすっきりさせたいということも床暖房導入の動機であることから、適正な情報提供を行政などが行わない限り、是正はむずかしい。前述のように、断熱を十分行えば床暖房が必要なくなる場合が多いのではないだろうか。
オ)廃棄
 建築物の解体ととらえることができるが、今後寿命が来た段階で設置業者や解体業者は、対応方法を検討しておく必要がある。
3)冷房
a)製品の説明
 家庭では、ほとんどエアコン(電気式)が唯一の冷房手段である。ガスによる熱吸収式冷房もあるが、家庭用は存在しないのでここではとりあげない。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 エアコン(冷房) 〇
電気 扇風機 〇
電気 換気扇 〇
b)評価
ア)消費エネルギー
 エネルギー効率(COP)はかなり向上し、消費エネルギーの何倍もの熱を部屋の外に運ぶことができるようになった。ヒートポンプの性能向上である。しかし、2003年夏から、除湿能力を犠牲にすることで効率をあげる競争が始まった。もともと、湿度が高い日本の夏には、除湿がもっとも大きな目的でその過程でおのずと室温も下がっていくものであった。
 しかし、冷蔵庫などでは大きな成功をおさめたトップランナー方式は、ここでは失敗した。一定の除湿能力を前提に競わせなかったために、除湿能力が不足するエアコンを各社そろって販売する事態となった。何人かの知り合いにそのことをたずねると、確かにあまり涼しくないという。調査を行った私自身も体感して見たが、あまり快適ではなかった。
 多くの電気メーカーでは、時価会計方式に変えることで、従業員を減らした方が、会計上有利に見えるようになった。そのため、経験豊な技術者を多く退職させた。その影響が出ているのではないだろうか。湿度の高い地域の冷房の基本は除湿である。そのことを見失っているのは極めて深刻な事態である。メーカーと消費者のコミュニケーション以前の問題である。なお、日本空調衛生工学会もこの問題を深刻にうけとめた形跡がなく、生活と技術の関係を問う大きな問題となっている。(資料編参照)
 消費者がエアコンを使うにあたって、十分知らせることができていないことが多々ある。日差しが差し込む場合、カーテンやブラインドで窓の日よけをする必要があるが、対応しない場合が多い。
 利用者の中には、寒いほどの冷房が豊さの証明と思っているのか、20℃近い温度の場合があり、豊さについて顧みる時期が来ているのではないだろうか。デパートや鉄道車両では、多くの人が寒いと感じていても、事業者側では温度をあげるとイメージに影響すると考えて、現状に対して保守的になるようである。
イ)電磁波
 インバーターの問題は、エアコン暖房のところと共通である。
ウ)その他使用者の健康
 加齢で温度感覚がマヒして、脱水症状になりやすいが、高齢者への周知が足りない。また、若い世代であっても、25℃以下の室温では冷房病になる可能性が高いが、もぱっらエネルギーの節約の観点からしか、設定温度のことを啓発していないので、環境に関心がない層がかなり低温に設定しているようである。(設定温度については、省エネルギーセンターホームページより)
 睡眠中は、ある程度汗をかく程度の温度に設定すべきであるが、そのこともあまり伝わっていない。一部マスコミで啓発する内容の番組がある程度である。(例 NHK生活ホットモーニングなどで放映)
エ)性能
 前述のように湿能力不足が顕著であるが、2006年から除湿能力の強化を一部メーカーがはじめた。しかし、COPを下げたくないために、通常運転での除湿能力強化ではなく、除湿運転時の除湿能力の強化であった。そのため、通常運転と、COPが極めて低い除湿運転の交互運転となり、全体として効率の悪い運転となっている。
 経済産業省は、湿度条件も入れた総合指数を導入する予定であるが、通常運転で一定の除湿能力を制約条件として、その中で従来のCOPを競わせるのが本来の姿ではないだろうか。
 設定温度と実際の温度とは違いがあるが、温度計を見て設定温度を決めている消費者はほとんどいない。経済産業省では、設定温度ではなく室温を28℃にという啓発を行っているが、環境省は設定温度で28℃を主張している。設定温度28℃では、温度むらなどで30℃近くなることもまれではなく、仕事をできる環境ではなくなる。そのせいか、あきらめて始から23℃程度にしてしまうことが多々ある。
オ)廃棄
 エアコン暖房と共通である。
カ)表示
 通常エアコンの能力を消費者が選ぶとき、何畳の部屋向きかで選ぶ。しかし、この基準はエアコンの送風能力だけで冷やす場合を想定している。実際には、扇風機、換気扇と併用しないと温度むらができるなど、快適な空間にするのはむずかしい。扇風機を使うことを前提とすれば、今の表示は過剰能力である。過大な能力の機械を買ってしまうと、設定温度を調整しても省エネが十分できないおそれがある。
キ)そのほか
 メーカーでは、除湿能力など体感で検証できることができていない。計測装置や理屈だけで、体感の裏付けのない製品開発が進んでいるとすると事態は深刻である。考え方の枠組みがまちがっていると、いくらモニターに体験してもらっても、問題点は見つからない。
 この落とし穴は、メーカーだけでなく大学の研究者も陥っているようである。エアコンの基本的な問題は解決しているはずという認識も問題。
4)除湿器
a)製品の説明
 ペルチェ素子を使った除湿器、吸湿剤のシリカゲルを使った除湿器、ヒートポンプ式のコンビニクーラーの3種にわけることができる。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 除湿器 △
電気 除湿器 シリカゲル式 ×
電気 コンビニクーラー ×
b)評価
ア)消費エネルギー
 エアコンがあれば不要となる製品である。効率が悪いが、製品単価が安いため、部分的に使う場合には選ぶ場合がある。効率の悪い順に、シリカゲル式、ペルチェ式、コンビニクーラーである。
イ)電磁波
 単価が安いのでインバーターの使用は少ないようである。
ウ)その他使用者の健康
 特にない。
エ)性能
 室内に暖気を放出するタイプがほとんどで、使い道は限定される。店先などの解放した場所で使うときには有効である。量販店では、この欠点の説明を行うなど、情報の提供には力を注いでいる。
オ)廃棄
 ヒートポンプ式の場合、フロンを使っている場合があり、家電リサイクルに載せる必要がある。
5)加湿器
a)製品の説明
 4つの方式がある。ハイブリッド式は、超音波式と加熱式の併用である。エアコン暖房で乾燥するため、その対策として使うことが多くなった。また、冬のかぜの予防にもなる。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 気化式加湿器 〇
電気 超音波加湿器 〇
電気 ハイブリッド加湿器 △
電気 加熱加湿器 ×
b)評価
ア)消費エネルギー
 気化式と超音波式は、エネルギー消費が20~30W程度であるが、電熱式のエネルギー消費は高く、100Wを超える。当初、超音波式、気化式の価格が高かったが、安いものも登場したので、消費エネルギーを考えあわせると、超音波式か気化式が望ましい。
 しかし、蒸気の供給は加熱式が多いため、まだまだ売上は多い。そこを折衷して登場したのが、ハイブリッド式であるが、価格が高くなるのであまり優位ではない。
イ)電磁波
 あまり発生していないようである。
エ)性能
 気化式は毛細管現象を利用するので、湿度が上がると蒸気の供給は自動的に止まる。ただ、体積がやや大きいのが欠点であるが、水の容量の大きいものを使う場合、ほかとの違いはない。
カ)表示
 この4つの方式は区別がむずかしい。あるホームセンターでは、解説表を設置していた。
調理関連
6)炊飯
a)製品の説明
 3つの方式がある。最近、IH炊飯器が人気を集めているが、価格は高い。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 電気炊飯器 △
電気 IH炊飯器 ×
ガス ガス炊飯器 〇
b)評価
ア)消費エネルギー
 ガス炊飯器は効率がいいが、価格が高く容量が大きいので、家族向きである。電気でもそれほど電力消費は多くないが、宣伝のような電気のエネルギー効率のよさは見かけだけだあり、1次エネルギーで比べるとそれほど効率はよくない。電気は、100%に近く熱エネルギーにかわるが、発電効率は最高でも40%程度なので、燃料からの熱を直接使うガスはロスがあっても電気より効率はいい。
イ)電磁波
 IH炊飯器の電磁波は、かなり大きく、気をつけて使う必要がある。
エ)性能
 火力ではガスのほうが上回るが、電気式でも釜の熱さで補う方法も現れた。暖房ほどは、エネルギー消費の絶対量の違いがあるわけではないので、手軽に使える電気炊飯器(IHではないタイプ)のシェアが多いのはそれほど、問題ではないだろう。IH炊飯器のワット数は大きいので、エネルギー消費は多くなる。
カ)表示
 電気の効率がいいという表現が一部見られたが、誤解を招く恐れがある。
7)冷蔵庫
a)製品の説明
 冷媒にフロンを使う方式と炭化水素を使う方式では、同じタイプのヒートポンプを使っている。アンモニア式もヒートポンプであるが、熱吸収式で圧縮機がない。ペルチェ素子は、電気をかけて熱を低温から高温部に運ぶ方式であるが、効率は低い。これも、圧縮機がない。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 冷蔵庫フロン式 〇
電気 冷蔵庫炭化水素式 〇
電気 冷蔵庫アンモニア式 △
電気 冷蔵庫ペルチェ式 ×
b)評価
ア)消費エネルギー
 断熱材の画期的な改善(超断熱材)で、エネルギー効率は飛躍的によくなった。開発したのは、松下電器であるが、材料を各社に供給したので、メーカーを問わず効率は改善した。そのほか、扉をあけているときは圧縮機を止めるなど、さまざまな改良が加わった。トップランナー方式が非常にうまく機能した例である。
 しかし、容量は増大をし続けているため、消費電力の削減を相殺している面がある。冷蔵庫は大きければ大きいほど、使う方は楽である。中身を取り出しやすくするように扉や引き出しを増やし、ムダがないような管理をしやすくしている。ここは、買い物の仕方や販売方法、調理の仕方を含めて、生活全体で考えなおしてみるべき時期かもしれない。
 当然、扉を開いたまましたり、つめこみ過ぎたりと消費者の使い方の問題も残っている。
 小型のペルチェ式は、効率が悪い。ワイン用の冷蔵庫は振動をさけるためにペルチェ式が多いが、圧縮機のない熱吸収式のほうが効率がいいはずである。なお、家庭はほとんどないが、熱吸収式には、ガスの燃焼熱や太陽熱を使うものもある。
 内部の照明は、電球であるナツメ球である。効率は悪いが、扉をあけているときだけの点灯であるため、価格の高い(50円/400円)LEDは使っていない。ただ、部分的にナツメ球の熱で温度が上がるのを防ぐために、間接照明になっていて効率をさらに悪くいている。LEDなら直接照明にしても、ほとんど熱の影響はない。(自宅冷蔵庫で実験)
イ)電磁波
 圧縮機の周辺で若干電磁波が出ていた。断熱性の向上で、出力が下がり、電磁波のエネルギーも減っているはずである。簡易電磁波計では、区別がつく違いはなかった。
ウ)その他使用者の健康
エ)性能
 本来、夏の間は、冷蔵庫の廃熱は屋外に捨てるべきであるが、断熱により発熱が減り、部屋への放熱は問題でなくなってきた。しかし、圧縮機周辺からの廃熱は無視できず、課題として残っている。
 消費エネルギーの大幅削減は、効率の悪い旧制品は早めに買い替えるべきかどうかという問題をつきつけている。買い替え時には、大きめの容量にしてしまいがちであるので、性能に問題がなければ慎重に考えるべきである。
オ)廃棄
 冷蔵庫のノンフロンは炭化水素を使っていて、実際にフロンを使っていない。国内で家電リサイクル法に基づいて処理する場合は問題ないが、大量に中古品が外国に流出している現状では、区別がつかない。その意味で、ノンフロン普及させる意義は大きい。
カ)表示
 2006年、消費電力表示の変更があり、依然と比べて2倍以上の年間電気料金表示となった。以前の表示の前提となる運転状態が非現実的である、という批判に対応したものである。これだけ大幅改正となると、以前の基準の決め方にどんな問題があったか検証が必要である。
8)給湯
a)製品の説明
 二酸化炭素ヒートポンプによるエコキュートは、電気がエネルギー源であるが電熱式ではない。今回の研究では、自然エネルギーは対象にしていないが、コストも安く普及率が高い太陽熱温水器をあげておいた。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 エコキュート △
ガス ガス湯沸かし器 〇
ガス セントラルヒーティング △
ガス ガス風呂炊き 〇
自然エネルギー 太陽熱温水器 〇
b)評価
ア)消費エネルギー
 二酸化炭素ヒートポンプによるエコキュートは、電熱式でないため電気であっても効率はいい。1次エネルギーで比べても、COPが高くガスよりも効率が高い。しかし、夜間電力を利用するため蓄熱過程があり、それを含めると1次エネルギーベースで、ガスのほうが有利になる。エコキュートが原理的にガスに劣っているわけではないが、原子力発電のベース電力がある以上、このような現状から脱することはむずかしい。
 消費者の選択としては、夜間電力が安いことでガスとは同じ程度の負担となることで、競争が成り立っている。最近のマンションは、オール電化が多く実際には選択が難しくなっている。オール電化の場合、初期費用がそれなりにかかるがマンション購入費の中に含んでしまうので、コスト意識は働きにくい。ガスでも初期投資が必要で、それが見えるような形でマンションを選ぶことができるのが望ましい。
 いずれの場合も共通であるが、セントラルヒーティングの導入が浪費をすすめる可能性があり、エネルギー効率をあげた効果を相殺する可能性がある。
イ)電磁波
 エコキュートのインバーターが電磁波を出している可能性があるが、今回実測する機会がなく、今後の課題である。
ウ)その他使用者の健康
 ガス湯沸かし器の安全性が社会問題になっている。換気扇をまわすのは常識であるが、自動化していない機器では忘れることもある。換気扇のほうを、24時間運転できるほどの低速になるように速度調整ができるようにするのも一案である。実際に本研究者(桑垣)は、10年間速度調整器で低速連続運転を続けている。実際には、油のいためものを頻繁に調理するような場合は寿命が早く訪れる可能性が高いが、研究の余地はあるであろう。
エ)性能
 セントラルヒーティングの場合、管の中を通って来る間に熱が逃げてしまう問題がある。断熱などの対策が考えられる。
照明・表示
9)照明
a)製品の説明
 家庭用照明器具は、電球、蛍光灯、LEDの3つが実用化している。スターター対応の蛍光管には、点灯管が必要である。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 電球 ×
電気 蛍光灯 インバーター 〇
電気 蛍光灯 電球型 〇
電気 蛍光灯 電球色 〇
電気 蛍光灯 スターター型 〇
電気 蛍光灯点灯管
(スターター) -
b)評価
ア)消費エネルギー
 電球は蛍光灯より、効率が4分の1から6分の1程度である。電球自体の価格が安いため、電力消費の少なく、付け消しが頻繁な場合には、電球のほうが有利な場合がある。そういうことで、電球の中でもレフ球など省エネタイプがあり、消費者の選択を難しくしている。
 LEDは、電球や蛍光灯なみの明るさのものは価格が非常に高く、効率が蛍光灯と同じ程度なので、補助照明や電子機器の表示用が中心である。
 電球型蛍光灯の登場で、電球のソケットでそのまま蛍光灯に変えることができるようになり、省エネのために蛍光灯を導入することが簡単になった。しかし、電球型蛍光灯は、熱に弱いので寿命が短いという欠点がある。長寿命化は、売上減少になるので、開発意欲が少ない。実際に100円ショップで購入した電球型蛍光灯が、数カ月で切れてしまった。
イ)電磁波
 インバーター式蛍光灯の電磁波は結構強い。特に電球型蛍光灯をアームライトに使った場合、頭の近くで長時間電磁波をあびる位置になることもあるので注意が必要である。
ウ)その他使用者の健康
 寿命を迎えたときの安全性に疑問がある。電流がショートしたり、安定器が暴走する可能性があり、そのような注意を呼ぶ宣伝も不足している。実際に本研究中に電球型蛍光灯が切れて、煙が出た。スターター型に比べて、複雑な回路構成となっていることもあり、メーカーの責任を問われる可能性がある。
エ)性能
 蛍光灯のインバーターは、点灯までの時間を大幅に縮め、よりエネルギー消費を減らすことができる。しかし、インバーターの寿命は短い。電子点灯管を導入するとスターター型でも瞬時に点灯させることができる。電子点灯管は、従来のものの10倍程度の価格であるが、寿命が10倍程度で、割高ではない。蛍光灯を使った照明器具に始から使っておけば、使用が増えるはずであるが、スターター型のものは価格が低いため、相対的に割高に見えてしまう。導入しやすい1万円程度の価格帯では、インバーター式がほとんどしめている。
オ)廃棄
 水銀を含む蛍光灯について、メーカー回収を求める自治体の意見は、30年以上続いているが、メーカーは応じる姿勢が見えない。そのほか、電子回路の導入で微量の金属成分の汚染の問題も生じている。長寿命化の努力も不足しており、今後責任を問われることになる可能性は高い。適正処理の表示も不足している。
カ)表示
 蛍光管のタイプが非常に多くわかりにくい。直管の蛍光灯では、表示スペースが狭いため非常に読みにくい。上述のように、使い分けの目安が伝わっていない。
キ)そのほか
 蛍光灯の青白い色を嫌う人は結構多いが、電球色蛍光灯の登場で切り替えやすくなった。暖かみがあるため、暖房温度が低くなったという研究もある。
10)補助照明
a)製品の説明
 電球のナツメ球とLEDのものとがある。同じE12のソケットに入るので交換が可能である。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 電球ナツメ球 ×
電気 LEDナツメ球 〇
b)評価
ア)消費エネルギー
 照明の補助ランプの電球タイプのナツメ球は、5Wと意外に電気を消費する。やや明るさが落ちるが、LEDは3灯式のものでも消費電力は0.5W程度で10分の1である。長時間つけたままにするので、照明器具への熱の影響もさけられる。10倍程度の価格差はちぢむ傾向があり、選択肢に入りつつある。価格は、ちょうど点灯管と同じくらいである。
イ)電磁波
 いずれもほとんど電磁波は出ていない。
ウ)その他使用者の健康
 LEDを見つめると目を痛める可能性がある。注意書きがあるが、輝度の高いLEDは無意識に見つめてしまうので、工夫が余地がある。
オ)廃棄
 LEDの電子部品の廃棄物は、将来問題になる可能性が高い。メーカーの責任で回収するシステムが必要である。
カ)表示
 LEDには明るさの違いでいろいろな製品が出ているが、表示では区別がつかない。
11)テレビ・ディスプレイ
a)製品の説明
 大型テレビの3方式が競い合っているが、50インチあたりを境に、大きい方をプラズマ、小さい方を液晶ですみ分けている。リアプロ(投影式)は、画質が落ちるのでシェアは低い。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 ブラウン管 ×
電気 プラズマ 〇△
電気 液晶(ディスプレイ) 〇
電気 リアプロ 〇
b)評価
ア)消費エネルギー
 液晶と比べてプラズマの消費エネルギーは非常に大きかったが、プラズマ型の改良で同じサイズでは違いがなくなっている。上述のようにサイズの違いですみわけているので、それほど競合していない。リアプロは、価格も安く消費エネルギーがかなり少ないが、投影型であるため画質がやや落ちる。
 従来のブラウン管はエネルギー消費が多いが、安いために一定の消費がある。しかし、地上派デジタルに移行するため、すべてハイビジョンテレビとなり、ブラウン管テレビはほとんど生産しなくなる可能性があるが、当面はコンバーターを通して、従来の受像機は使い続けることになる。
 パソコンのディスプレイも同様であるが、ほとんどが液晶となった。色の再現性が必要な印刷分野では、ブラウン管式の需要は残っている。
イ)電磁波
 ブラウン管の電磁波は強く、問題になってきた。液晶ディスプレイについて、店頭で40台ほど調査した結果、製品間のばらつきが大きいことが判明した。少し離れると弱まるが、バックライトの蛍光管の端に強力な磁場を生じているものが多く、こどもがあたまをちかづけることができる場合は注意が必要である。(表参照)
ウ)その他使用者の健康
 消費エネルギーが多いと、表面温度が高くなり、不愉快な熱放射対策が顔をほてらせる。この問題については、対策も問題意識も遅れている。特に顔に近いパソコンのディスプレイはテクノストレスの大きな割合をしめているのではないか。夏の顔の体感温度は、放射熱のせいで40℃にもなる。(表参照)
 大型プラズマ画面の場合、表面温度が60℃で面積が大きく、居住環境を損なっているが、メーカーは、まだそこまで手がまわらないという。部屋全体の温度管理を目指しながら、この点では非常に遅れている。
エ)性能
 液晶の画質が向上し、ブラウン管に近づくであろう。開発中の有機ELが実用化すれば、省エネと性能の両方が改善する可能性もある。プラズマ型の改良も進み、将来予測はむずかしい。
オ)廃棄
 液晶などには微量な有害元素があり、そのほかディスプレイにはたくさんの電子部品に有害物質がある。今のところ、回収義務のあるのはブラウン管だけであるが、将来、すべて回収できるように対応をせまられるであろう。
カ)表示
 電磁波や表面温度の表示が必要となるだろう。
パソコン液晶ディスプレイ調査状況 2006年12月
 パソコンディスプレイ比較表 家電量販店で実測
No. メーカー サイズ 型番 60センチ放射温度 表面最大温度 最大電磁波
  室温26度 インチ   ℃ ℃ mG
1 IO 24 LCD-TV231X 37 44.4 1
2 EIZO 24.1 S2410W-R 35 43.4 300
3 EIZO 21 L997R 33 38.0 200
4 SHARP 23 SPM-P234 34 44.8 300
5 IO 20 AD2039 35 49.2 20
6 BenQ 23 FP231 35 37.2 横40
7 MITSUBISHI 21 RPT214S 34 40.6 50
8 EIZO 20 FP2002W-V3 35 44.6 2
9 MITSUBISHI 20 RDT2024 34 46.0 250
10 EIZO 21 S210V 31 40.8 200
11 EIZO 20 S2000 33 42.0 300
12 MITSUBISHI 19 L19DG-V2 30 40.2 300
13 BUFFALD 20 W2023A 32 49.8 300
14 IO 19 AD191X 31 45.2 300
15 COREGA 19 CG-L19DSBV2 31 43.6 100
16 MITSUBISHI 19 L19DSB-V2 30 44.6 200
17 BenQ 20 FP209 位置が測定不能 46.4 100
18 SHARP 19 LL194B 31 40.6 50
19 EIZO 19 S1931SA 30 36.4 50
20 EIZO 19 S1921 30 40.4 150
21 MITSUBISHI 19 RDT194LM 30 41.4 50
22 MITSUBISHI 19 197S 29 46.6 1
23 MITSUBISHI 19 RDT197V 32 46.4 50
24 BenQ 19 FP91GB 30 46.4 1
25 BenQ 19 FP91V 30 47.2 200
26 グリーンハウス 19 ACP193 30 44.6 0.5
27 IO 19 LCD-AD1943B 32 49.0 300
28 EIZO 19 S197 30 44.4 100
29 EIZO 19 S1901 29 43.4 150
30 EIZO 17 S1731 29 39.2 40
31 プリンストン 19 FTFWAE19 30 44.4 50
32 MITSUBISHI 19 AD1959W 位置が測定不能 40.0 200
33 SHARP 19 193A 位置が測定不能 48.0 2.5
34 IO 19 LCD-AD195GW 30 45.0 100
35 BenQ 19 FP92E 28 43.2 2.5
36 BenQ 19 FP93V 30 43.8 0.5
37 SHARP 19 LL-193G 31 52.2 横50
38 サムソン 19 960BRF 30 44.2 300
39 SONY 19 X95FS 29 42.0 20
家事関連
12)掃除機
a)製品の説明
 原理的にはモーターを使ったものしかないが、インバーターでパワーを調整できるタイプがある。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名
電気 掃除機
電気 掃除機 パワー調整可
b)評価
ア)消費エネルギー
 パワーが大きいので、稼働を短時間ですませないと消費が大きくなるが、あまり消費者に伝わっていない。掃除機をかける半分の時間は、家具を動かしている時間であるので、まとめて家具を動かして、部屋を半分ずつ掃除するなどの工夫が必要であるが、そのような情報も不足している。
 充電式は、一般に力不足であり、補助的用途に徹した方がいいが、買ってからパワー不足で不満をもつ場合が多い。
イ)電磁波
 インバーターを使っているものは電磁波が出ている。
ウ)その他使用者の健康
 排気ガスが問題になったためフィルターを改良しているが、一方で抗菌剤でアレルギーになることもある。消費者には、抗菌剤などの薬品を使っていないものの存在があまりしられていない。
エ)性能
 ダニ対策などで過大なパワーのものを買ってしまう傾向があるが、重くて扱いにくくなる。パワーブラシなど、重くなる要因は増えている。
オ)廃棄
 将来的にはリサイクルシステムの構築が必要である。どのように廃棄するかについて、消費者にはとまどいがある。
13)アイロン
a)製品の説明
 最近の主流はコードレスタイプである。コードレスであるが、充電式ではない。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名
電気 アイロン コード付
電気 アイロン コードレス
b)評価
ア)消費エネルギー
 電気を熱に変えるので、パワーは結構大きいが、長時間使わなければ、エネルギー消費はそれほどでもない。コードレスタイプは、充電ではないがそのことがわかりにくい。充電器からはなしている時間が10秒程度なので、一定の熱容量の大きさで十分コードレスが可能となった。コード付きのほうが温度の上下が少ないので、エネルギー損失も少ないはずであるが、今回は実測する機会がなかった。
イ)電磁波
 充電式ではないので強力な電磁波は生じない。
ウ)その他使用者の健康
 アイロンを置く台がうまく先端をカバーしていないタイプが多く、改良の余地がある。
カ)表示
 充電池がないので、交換や廃棄時の配慮が不要であるが、そのことがよくわからない。量販店のホームページには間違って充電式と書いてある場合もあった。充電池がないことは、環境にいいという宣伝の仕方もあるはずだが、他社との差がつかないせいか、そのような情報は広告でも見られなかった。
そのほか
14)充電器
a)製品の説明
 携帯電話と充電地用の充電器をとりあげたのは、代表的な例として2つを選んだ。このほかにも充電器は非常に多種類がある。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名
電気 携帯電話用充電器
電気 充電池用充電器
b)評価
ア)消費エネルギー
 充電後のエネルギー損失が少ない型を代表として取り上げる。ナショナルと三洋の2社のものを使って試して見たが、容量や持続性にちがいはあまり見られなかった。ナショナルのほうが2時間で充電でき、三洋の半分ほどである。
イ)電磁波
 携帯の急速充電器は電磁波が巨大である。FAXのメーカーは、誤動作の問い合わせに対して、まず携帯電話の充電器がそばにあるのではないかと指摘するという。
 電池用の充電器でも、30分以内の急速充電器では大きな電磁波が出ている可能性があるが、実測するに至らなかった。
オ)廃棄
 充電池はすべて業界で回収している。筒形電池を中心とした使い捨て電池は、ボタン電池などを除き回収しないのとは対照的である。自治体では、使い捨て電池の回収リサイクル費用が高いことに頭を痛めている。
カ)表示
 充電後のエネルギー損失が少ない型では、三洋はエネループという商品名で特徴的な青いパッケージを使っているので、見分けることができる。松下は文字で説明してあるだけで、わかりにくい。一方、三洋は以前の充電池も充電できるにもかかわらず、できないように見える。購入後中に入っている説明には、旧タイプのものでも可能なものがあるとしている。
 エネループなどは、規格はまもっているものの少しだけ長いため、セットできない器具がある。そのような表示はない。
 一般的に充電池は、容量の種類が多すぎて見分けがつかない。性能アップの段階を踏んで、いろいろな製品が併行して市場に出回っているので、競争があるとは言え、もう少しステップを少なく商品化しないと消費者は混乱する。どの充電器にどの充電池が対応するかわかりにくくなっている。
15)出力調整
a)製品の説明
 熱抵抗で出力を調整するタイプと、消費エネルギー自体を減らすサイリスタなどの方式がある。
 製品の種類一覧
エネルギー源 機器名 省エネ性
電気 サイリスタ出力調整機 〇
電気 熱抵抗出力調整機 ×
b)評価
ア)消費エネルギー
 換気扇や電球などに使うと省エネに役立つが、あまり売っていないので入手がしにくい。熱抵抗の方式は減っているが、まだ販売している。省エネには役立たないが、使っている消費者には伝わっていない。
 換気扇や扇風機のこまめな速度調整は、エアコンと併用することで省エネになる。そのような使い方の情報が不足している。
イ)電磁波
 簡易測定器では、電磁波はそれほど強くないようだが、精密に計ってみる必要がある。
カ)表示
 パワー調整の原理が書いていないので、製品選びがむずかしい。専門的になるという懸念があると思えるが、買ってみないとわからない状況は改善すべきではないか。
資料編
●ヒアリング
2006/9/20近未来生活研究所実施
 ★経済産業省の回答と近未来生活研究所のコメントを加えました。
2006年7月24日
経済産業大臣 二階俊博様
NPO法人 近未来生活研究所 代表 中山 靖隆
冷房に関するトップランナー方式についての質問状
 日頃、産業と技術の発展のために努力されていることに敬意を表します。
 私たちは、エネルギー問題など近未来の生活のあり方を考えているNPO法人です。その中で特に、より快適な冷暖房とはどのようなものかを追求しています。経済産業省が、日本社会の省エネルギーに果たしている役割を高く評価しています。中でも、家電製品などのトップランナー方式に注目しています。冷蔵庫では、その効果の大きさに驚いています。
 しかし、疑問点もあります。エアコンによる冷房に関して、除湿能力や冷房での快適性について、どのようにお考えでしょうか。できましたら、8月8日までにご回答をいただきたいと存じます。お忙しいと思いますが、よろしくお願いします。
1.除湿を条件とされていない理由は
 2003年以降発売のエアコンは、冷房時に室内機の冷却部分の温度が25℃前後と、結露温度をうわまわっています。室内機の冷却部分の温度を高くして、送風量を増やせば、COPは上昇しますが、除湿能力が激減します。実際には、通常運転では除湿が不十分なため、ときどきドライ運転を行うことが一般的になります。その結果、平均的なCOPは、かなり下がってしまいます。ドライ運転時のCOPは、2以下だからです。
 トップランナー方式では、COP値を競わせていますが、除湿能力を失わない範囲で効率をあげることが必要だと思います。なぜ、除湿を条件にされなかったのでしょうか。
●経済産業省回答要約
 メーカーは、除湿不足を認めている。そのため、これ以上COPをあげないと言う議論になっている。
○回答への近未来生活研究所の評価
 一旦、COPをさげて除湿能力を回復するまでの認識はないのは問題。
●経済産業省回答要約
 冷却部の温度が25度かどうかは把握していない。
○回答への近未来生活研究所の評価
 25度では露店温度を上回るので除湿能力はゼロ。実際には、もっと低い温度で除湿もできているはずなので25度は極端だった。その後の調査でもっとも冷えている部分は、以前5℃だったものを、最近13℃にしたということである。最終的に除湿能力が落ちることになるという点では同じ。
2.除湿能力の不足は、メーカーの研究不足とお考えですか
 経済産業省がトップランナー方式で、除湿を条件にあげていなくても、夏の湿度が高い日本では、除湿が必須の能力です。除湿を十分考慮しないのは、メーカーの研究不足なども原因であるとお考えでしょうか。
●経済産業省回答要約
 必ずしも除湿能力が不足しているとは思っていない。
○回答への近未来生活研究所の評価
 除湿能力不足は明らか。自分で体験して見たことがないのだろうか。
3.エアコンのトップランナー方式に条件をつける予定は
 今後、トップランナー方式の指導の中で、エアコン冷房時に除湿能力を維持することを条件にする予定がありますでしょうか。
●経済産業省回答要約
 除湿を条件にいれるのはむずかしい。有効温度や部屋への熱負荷条件を定めるという回答。9月に新しいトップランナー方式の基準が決まる。COPにかわってAPFを使うというが、湿度条件は入れない。外部からの熱負荷に対する効率を考える。
○回答への近未来生活研究所の評価
 一定の除湿能力を制約条件として、COPで競えばいいと言ったが、制約条件の意味が伝わっていない。除湿も考慮するなら、それも含んだ一つの数字を指標にしないといけないという認識がある様子。最低守る条件を別に設けるという発想にはならない様子。
●経済産業省回答要約
 COPは、小数点以下2桁だったのを1桁にするという。
○回答への近未来生活研究所の評価
 誤差の範囲の細かい数字で競わせていた。やはり経済産業省が無用な競争をあおっていたことは否めない。
4.室温28℃は現実的でしょうか
 省エネルギーと冷やしすぎ対策として、室温を28℃に設定するように環境省とともに薦めておられます。しかし、実際には、28℃で仕事をするのは不快です。
 28℃をどこで測るかという問題があります。人間の近くに温度計を置いて、それを目安に温度設定をすればいいのですが、実際にはエアコンの温度設定で行ってしまうため、28℃を上まわることが多いのです。また、28℃が平均温度であるという問題もあります。部屋の中には温度分布が生じ、29℃や30℃の部分ができてしまいます。
 このような問題があっても、がまんすれば、不快であっても省エネルギーにはなります。ところが、28℃が不快であると、実際には温度設定をさげて仕事の能率をあげることになります。このとき、25℃以上ならいいのですが、だいたい23℃以下に下げてしまいます。非現実的な推奨温度の設定が、結果として省エネルギーにも役立っていない現状をどのようにお考えですか。
●経済産業省回答要約
 28度が非現実的という指摘には、あくまでも室温が28度であってエアコンの設定温度でないので、それを啓発していくとのこと。
○回答への近未来生活研究所の評価
 クーラーの設定温度でないとわかりにくいので、「26度や27度としたほうがいい」というのは通じなかった。やはり、まちがいでなければ直さないのか。ちなみに環境省は、設定温度で28℃なので、さらに非現実的。
5.冷やしすぎが健康に悪いことをもっと知らせるべきでは
 25℃未満になると多くの人間は、放熱パターンが変化して、春や秋のモードになります。その結果、25℃未満では寒いと感じる人が多くなります。屋外と室内でこのような放熱パターンの違いが生じることが、体温調節機能をそこなわせます。
 このように温度設定を下げすぎると健康に悪いことをもっと知らせるべきではないのでしょうか。涼しさを感じられないのは、冷気の流れが不十分であるためです。扇風機との併用を訴えるべきだと思います。この点についてもお考えを聞かせてください。
●経済産業省回答要約
 25度未満で人体が保温モードになり、冷え性の原因となるという情報はよくわからないとのこと。
○回答への近未来生活研究所の評価
 もっと調べることが必要ではないかと指摘した。壁や窓の放射温度が高いと室温が28度でも暑いと言っておいた。
●経済産業省回答要約
 からだの部分によって温度に関する感覚が違うとはメーカーもわかっているようだ。赤外線で人間の体温を探知しているらしい。
○回答への近未来生活研究所の評価
 しかし、人体が血管の収縮や、血流量の変化で放熱を変化させるようなメカニズムは、メーカーも経済産業省も知らない。
6.湿度が高いときの冷房の必要性
 公共の施設や公共交通機関で、冷房をつけるかどうかを室温だけで判断しているため、湿度が高いにもかかわらず、冷房を行わないことをたびたび経験しています。梅雨どきに、列車の中で気分が悪くなる人が多いのは、室温が25℃以上28度以下の湿度が高い状態で、冷房を行わないからではないかと思います。
 湿度が高いときには、温度がやや低め(25℃以上28度以下)でも冷房を行うべきときがあることを公共交通機関などには知らせるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
7.湿度のことを重視すべきではないでしょうか
 上記の質問の多くで湿度のことをとりあげました。夏、湿度の高い地域では、冷房の役割は、除湿が大きな位置をしめます。ヨーロッパでは、夏はそれほど暑くならず、しかも夏は乾燥しているため、日本にそのままあてはめると、見当違いの結果になります。
 経済産業省も日本のメーカーも、このような冷房と気候の関係を十分考慮していなかったのではないでしょうか。いかがでしょうか。
○回答への近未来生活研究所の評価
 この2つは、5.までの回答の繰り返しでした。湿度を考慮しないといけないという認識はある様子。
文献リスト
暖房アンケート結果(一部) 学生62名 2007/1/19実施
◆外出中
問6 暖房が暑くて困っている場所は 62 100.0%
1. 電車 19 30.6%
2. デパート 20 32.3%
3. スーパー 2 3.2%
4. コンビニ 3 4.8%
5. ファミリーレストラン 8 12.9%
6. 特にない 22 35.5%
7. そのほか 8 12.9%
問7 暖房がきかず寒くて困っている場所は 59 100.0%
1. 電車 9 15.3%
2. デパート 0 0.0%
3. スーパー 4 6.8%
4. コンビニ 0 0.0%
5. ファミリーレストラン 1 1.7%
6. 特にない 45 76.3%
7. そのほか 2 3.4%
問8 大学での暖房の効きはどうですか 61 100.0%
1. 暑すぎる 33 54.1%
2. あまり効かないので寒い 0 0.0%
3. ちょうど良い(不満はない) 28 45.9%
◆自宅で
問9 暖房に不満はありますか。 62 100.0%
1. 効きがわるい 5 8.1%
2. 湿度があがる 1 1.6%
3. 暑すぎる 5 8.1%
4. つけると暑いが、切るとすぐ寒くなる 18 29.0%
5. かび臭い 0 0.0%
6. 乾燥しすぎる 12 19.4%
7. うるさい 1 1.6%
8. 特にない 25 40.3%
問10 暖房の設定温度は何度にしていますか。 52 100.0% 52 100.0%
16℃ 1 1.9% 32 61.5%
17℃ 0 0.0%
18℃ 2 3.8%
19℃ 0 0.0%
20℃ 8 15.4%
21℃ 2 3.8%
22℃ 5 9.6%
23℃ 3 5.8%
24℃ 11 21.2%
25℃ 8 15.4% 20 38.5%
26℃ 7 13.5%
27℃ 1 1.9%
28℃ 3 5.8%
29℃ 0 0.0%
30℃ 1 1.9%

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