市民研発 世界の環境ニュース 第5回 エボラ出血熱

投稿者: | 2014年8月30日

市民研発 世界の環境ニュース
第5回 エボラ出血熱
石塚 隆記 (市民研・理事)

pdfファイルはこちらから→csijnewsletter_026_ishizuka_20140819.pdf

昨日(2014年8月8日)、世界保健機構(World Health Organization, WHO)が、現在西アフリカでエボラ出血熱が流行している事態を、「国際社会が懸念すべき公衆衛生上の緊急事態」と宣言した。では、具体的に、エボラ出血熱とは何か、今西アフリカで何が起こっているのか、WHOは何を気にしているのかを簡単に見た後、このニュースから垣間見られることを考えてみたい。
WHOによると、エボラ出血熱とは、ウイルス性の疾病である。今のところ、認可された治療法またはワクチンはない。血液、体液、または体の組織を介して、動物•人から人へ感染する。感染した場合、2から21日後に発症する。症状としては、発熱、頭痛、喉の渇き、さらにこれに続き、嘔吐、下痢、体内での出血、または体外への出血があり、悪い場合、死に至る。致死率は90パーセントにのぼることもある。自覚症状がなくなった後も体内にウイルスは残る。例えば、男性は、自覚症状がなくなった後7週間以内であれば、性交時の精液を介してエボラウイルスを拡散し得ることがWHOにより報告されている。

次いで、今西アフリカで何が起こっているのか見てみよう。2014年8月6日時点で、1,070人のエボラ出血熱の罹患者が確認されており、うち932人は既に亡くなっている。罹患者は、いずれも西アフリカのガーナ、リベリア、シエラレオネ、ナイジェリアにて発症している。エボラ出血熱は1970年代からアフリカで発生しているが、なぜ今回こんなに注目を集めているのかと言うと、その理由は罹患者数の多さにある。過去最大のエボラ出血熱の流行は2000年のウガンダで発生したが、その時の罹患者数は425人である。今回の流行での罹患者数は1,000人を超えており、既に2000年の時の倍以上の罹患者数になっている。

WHOの2014年8月8日付の声明によると、WHOはエボラ出血熱の現況を以下のとおり捉えているようである。
•西アフリカで発生しているエボラ出血熱は、「異常な事態」であり、他の国に対する公衆衛生上のリスクになっている。
•コミュニティまたは治療施設内での感染パターン、現在罹患者を抱える国及び今後罹患者を抱えるであろう国の脆弱な衛生システム、それとウイルスの病原性を考えると、今後の更なる国際的な拡散は特に深刻な結果をもたらす。
•協調された国際的な協力は、エボラの拡散を止める上で、欠かせないものになるだろう。
このニュースから何が見えるのだろうか?もちろん、いかにして家族と自分の身の安全を守るか、という点が第一だろう。そのためには、まず、よっぽどのことがない限り、西アフリカへの旅行は控えたほうがよいだろう。また、西アフリカに限らず、海外に行く場合は、外国人と接する機会も増えるだろうから、感染に気をつけたほうがよいだろう。こういう家族や自分のことを守るという文脈の中で、アフリカでのエボラの流行をいかに早期に食い止めることができるか?ということを考えることも大事だ。エボラウイルスの拡散食い止めのため、われわれに何ができるか?分からない。分からないけれど、まずは想像し、考えることくらいなら、できるだろう。
出典:World Health Organization

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