宮城県塩竈市の 「中学生と赤ちゃんふれあい交流事業」

市民科学研究室 「健康まちづくり」ヒアリング報告05

宮城県塩竈市の「中学生と赤ちゃんふれあい交流事業」

塩竈市健康福祉部 健康推進課 課長 草野弘一さん
塩竈市健康福祉部 健康推進課 母子保健係 今野浩子さん(保健師)

塩竈市は宮城県のほぼ中央に位置し、4㎞四方の市内には5万5千人が住んでいます。
平成17年に市健康増進計画「健康しおがま21プラン」を策定し、重要事項の一つに「母と子の健康」を選定され、ライフステージ別 思春期の健康づくりのために「中学生と赤ちゃんふれあい交流事業」が保健センターを中心に他機関と連携して行われています。平成20年度に1校をモデルケースとして始めたこの施策は、現在では市内本土4か所にある中学校の3年生、おおよそ400人を対象とした事業となっています。

事業の発端としては、市が抱える問題に10代の出産・中絶数は県内において高い値を示していたことがありました。出産後も育児の未熟さや不安で育児放棄につながりかねないケースが増え、その背景には性的衝動の他に親からの十分な愛情を受けられなかった寂しさや、家庭や学校等に居場所がなかったことがあるのではないかと考えられています。

事業の目的は、命の尊さや自分に向けられる親の愛情に気づき、自分の存在について考え、親との関係を見直しながら自己肯定感を高めること、妊娠・出産・性感染症になどの知識を深め、自分の命や性を大切にした考え方が大事なことに気づく機会を得ていただくこととなっています。

内容は、体験学習と講演会の2本立てになり、体験学習には赤ちゃんふれあいコーナー、妊婦&パパの出番コーナー、育児コーナーの3コーナーを、生徒たちは数人グループに分かれ、各20分間で回り、実際に赤ちゃん・ママとの交流や妊婦のおなかに触れ、パパへ育児の質問をし、助産師からは受精から誕生までの命の物語が伝えられ、沐浴人形を活用して沐浴体験をします。講演会は市内の産婦人科医師が思春期の心身の状態と妊娠・出産・避妊・性感染症について、最近では様々な性についても講話がされています。事業実施には地域のボランティアが中心となっており、民生委員・健康推進委員・主任児童員や託児ボランティア、PTAなどの地域のボランティア、妊婦さんや育児をしているお父さんお母さんと赤ちゃんに協力をしてもらっています。事前に協力者の方々へ事業の内容や当日の動きについて説明会を行い、安心して事業に参加していただけるような体制が整えられています。学校とは、家庭科担当教務を中心に打合せを重ね、スムーズに事業が進むように準備をしています。

事業の成果を確認する方法として、生徒たちに事業の実施前後にアンケートを行っています。事業目標として、①「自分が好き」「自分を大切にする」者が増加する、②性感染症の知識が深まった者が70%以上になる、③中学生の満足度が90%以上になる、④10代の出産・人工中絶数が減少するの4つがあり、生徒たちの感想には、「自分は大切な存在だとわかった」、「子育ての苦労を体験で学び、自分も親に大切に育てられたとわかったので感謝したい」「生命の尊さやキセキを感じた」等、事後アンケートから体験の学びや気付きが得られた事がわかります。また10代の出産・人工中絶数が減少するは、平成19年度は16名だったのが、現在5~6名、15歳以下は0名となってきています。

参加しているボランティアたちにとっては親や地域で子どもを育んでいくことの大切さを学び、世代を超えての交流ができ、地域の育児力の高まりや地域のつながりが深まっていることを実感される方が多く、継続実施に向けて強い要望が出ているようです。

塩竈市の健康推進課の草野課長は、「子どもたちには、協調性を学び、人間としていきぬく力、命の大切さ、日本古来の文化を学んでいただく必要があり、それは今では家庭では学べず、学校で学ぶ機会が必要。いろんな体験を経て、自己選択ができるようになってほしい。
そのためには、他世代交流、赤ちゃんやお年寄りと一緒に地域での教育活動等も推進し、世代のつながりを自分の心の中に感じられる機会をもっていただける必要があり、この事業が一つの切り口として活用されるように、発信ができたらと思います。」と、話されており、事業の継続、拡大に期待が高まります。

2017年1月23日ヒアリング実施
ヒアリングとまとめ:上田昌文+小林友依