【翻訳】アメリカ合衆国環境保護庁における子供の環境衛生保護を向上させた20年間

投稿者: | 2017年2月20日


【訳者よりひとこと】
 この論文はアメリカ合衆国の官庁のレポートですから,わくわくするような展開はありません。しかしアメリカ合衆国環境保護庁(U.S.EPS)が自国の子供たちの健康を守ろうと,20年間最善を尽くして活動してきたその経緯と成果が丁寧に書かれており,アメリカ合衆国の公衆衛生・環境問題に対する取り組みの姿勢を直接うかがうことができます。
 子供は臓器組織の代謝能力が十分発達していないのですが,よく食べ,飲み,呼吸し,その上,子供特有の習性で動き回ります。そのために環境化学物質に曝露されやすく,喘息,肥満症などばかりでなく,注意欠陥障害,学習障害などにも及ぶ可能性があることを警告しています。おそらく,近年の脳科学の進展と相まった科学研究の賜物でしょう。
 なお,トランプ政権はパリ協定を脱退するという報道もありますが,気候変動が子供たちの健康に及ぼす影響を克服するための見事なシステムづくりはアメリカ合衆国の科学者と政策立案者の連携を示していて注目に値します。
 医療関係者ばかりでなく,保育士,教師,子育て中の御両親など多くの方々に読んでほしい報告です。
(五島廉輔、五島綾子)

アメリカ合衆国環境保護庁における子供の環境衛生保護を向上させた20年間

要約
この論説は過去20年間のアメリカ合衆国環境保護庁(U.S. Environmental Protection Agency; U.S.EPA)による環境ハザードから子供の健康を守るための公衆衛生活動の概要を述べており、これは環境保護と健康アウトカム1)を改善するための具体的な段階と成果について実例をあげながら強調して述べられている。これらは公共政策、規則と規制を通して、科学的理解を高め公衆衛生のメッセージを普及させて成し遂げられたものである。 加えて、子供の環境衛生をより良く理解し改善する将来の挑戦の事例が議論されている。

序論
子供の臓器組織や代謝能力が十分に発育していないので、彼らは環境化学物質の曝露に対して大人のようには対応できない。その理由は、子供は大人より体重に比例してよく食べ、呼吸し、飲むこと、そして子供の環境化学物質による曝露は大人とは異なる子供特有の習性、すなわち手から口およびモノから口への行動、はいはい、そして母乳で育つことによる。同時に、今までの研究では環境化学物質の曝露が家庭、学校、食物および普通の家庭用品にまで及び、喘息、糖尿病、肥満症、注意欠陥障害、学習障害や自閉症のような慢性疾患とも関連しているかもしれないことが示されている(OUP 2013)。
U.S. EPAは1993全米研究協議会の“幼児と子供の食事中の農薬”(1993 National Research Council’s “Pesticides in the Diets of Infants and Children”) (NRC 1993)とその後の1996食品品質保護法(1996 Food Quality Protection Act)(FQPA 1996)から出発して、若齢期の化学物質に対する感受性の可能性についての考えを深める努力を始めている。20年前の農薬規制に向けた立法上の変化によって大人の曝露経路に対して子供特有のそれを明らかにするためU.S. EPAによる前例のない運動が展開した。今年の夏、オバマ大統領はFrank R. Lautenberg 21世紀化学安全法(Frank R. Lautenberg Chemical Safety for the 21st Century Act (2016))に署名した。これは市場の参入が認められる前に新しい化学物質または現存する化学物質の重要な新しい使用法の安全性について、その安全性を裏付ける事実を見出すためにU.S. EPAを指導して1976有害物質規制法(1976 Toxic Substance Control Act (1976))を改正したものである。作成に40年かかったこれらの改定は、子供や妊婦を含めて最も感受性があるかもしれない人々に対する不合理なリスクに取り組むことを官庁に要求した。この行動により子供の環境衛生を改善するためにU.S. EPAは新たな機会が与えられている。

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『環境健康展望』124巻12号、2016年12月より
翻訳:五島廉輔、五島綾子、上田昌文

原題:Two Decades of Enhancing Children’s Environmental Health Protection at the U.S. Environmental Protection Agency

【著者】
Michael Firestone, Martha Berger, Brenda Foos, and Ruth Etzel(米国環境保護庁)

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