(文中の写真はPDFファイル文書にて紹介)
大町自然観察園を訪ねて2025年8月23日
杉野実(市民科学研究室・「千葉県市民活動プロジェクト」世話人)
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今回はじめてご紹介しますが、市川市の大町自然観察園への玄関口にあたる「北総公団線・大町駅」につくと、「市川かるた」に登場する、「市川市動植物園」の動物たちがむかえてくれます。ただこのサボテン君(図1)は「ん」なので読み札はなんだろうと思って調べたら、実は読み札はなく絵札の方が駅オリジナルでした。まあ「植物園」の方のかわいい代表が、駅にだけでもいるということでよしとしましょう。サボテン君がいるのは熱帯温室で、これから行く自然観察園とはあまり関係ありません。むしろ駅近くの歩道橋にからまるツタ(図2)の方が、雰囲気をもりあげてくれるでしょうか。ツタと名のつく植物はいろいろありますが、これはブドウ科なのですね。
今回は市民科学研究室会員の松田美恵子さんが参加してくださいました。現在は京成線沿線の、ただし東京都側にお住まいだという松田さんとは、京成ともなじみのある私は話がはずみましたが、さらにお話をうかがえ多摩地区のナシ産地もよくご存じとのことで、そうなると俄然、地元のナシのことにもくわしい、案内役の市川市自然博物館の金子謙一さんが関心を示され、「背景が山か海か」といった産地の比較論に話が広がりました。ナシ園など見ながら話をするうちに観察園に到着、むかえてくれたのはキツネノカミソリ‘(図3)でした。これはヒガンバナの仲間ですよ、と金子さん。それならと私はまた調べて、毒性のことや「3倍体」で実がならないことなどを知りました。
図4は「微地形」です。私の趣味で、「地層がはっきり見える崖のミニチュアが、そのまま小さな水流にしずんだような」ものを撮影しましたが、これだけが注目すべきものだというわけでは無論ありません。図5の水流は、金子さんが「ここにはスナヤツメがいる」というのでとったのですが、この写真に写っているかどうかは心もとないですね。スナヤツメは「ヤツメ」というからにはヤツメウナギの仲間で、「円口類」という原始的な脊椎動物。ただ「吸血魚」の印象があるヤツメウナギらしからず、スナヤツメは子供のころに泥中の有機物などを食べているようです。彼らとならぶ当地の希少生物に淡水紅藻カワモズクがありますが、今回は会えませんでした。
図6のカナムグラは、「はびこってこまる」と金子さんがいっていました。そんなこといわれても都会人にはピンとこない?いや実は、うちの庭でもノウゼンカズラやアカメガシワがはびこったりしているので、まんざらわからないでもありません。小動物は気をつけて見ればいろいろいたのですが、ここでは金子さんが「色」に注目された、「黄色い」フクログモ(図7)と、「赤い」ハラアカハキリヤドリバチ(図8)をあげておきましょう。フクログモは、「巣をはるけどそれは『すみか』であって、獲物は地面でまちぶせしてとる」少しかわったクモです。ハラアカもヤドリバチとはいうものの、サムライアリみたいに他種の「労働成果に」寄生する変なヤツです!
図9が水田なのはおわかりですね。もともと観察園の土地は谷津「田」というぐらいでほとんど水田だったのです。水田とナシ園(の水源)に守られた、むかしはあたりまえだった光景が「奇跡的に」残っているわけですが、昨今の「コメ騒動」を経験してみれば、「今にそんなこともあろうかと思って、コメ作りをずっと続けてきた農家さんも実は各地にいる」という金子さんのお話も、意味深長に聞こえました。とはいえ水田整備や流水地の崖くずれ対策など「都会人」に手伝ってもらおうとしても、「そんな作業がなぜ必要か」がなかなか理解されないといいます。当地名物のホタルにしても、外部から幼虫を放流しようという動きまであったのを、なんとか止めたとのことでした。
図10はヨシ原ですが、ガマの穂も小さく写っているのがわかりますか。写真には写せませんでしたが、すでにガマの穂は割れて、羽根のついた種が飛んでいました。「でも変なんです。普通なら秋になってずすしくなって、北風に乗って飛ぶんですが、今年はまだ暑いのに南風で飛んでる」と金子さん。たしかに不安を覚えますね。まあ帰り道、暑い暑いといいながらも歩きながら空を見れば、高いところにありそうな雲には秋の気配も感じましたが。図11ウナギのほかドジョウその他さまざまな生き物も飼育している、「自然博物館」でも松田さんに楽しんでいただきました。最後は園内で配られていた、保護猫活動のうちわ(と水、図12)でお別れしましょう、さようなら!■