市民研発 世界の環境ニュース
第2回 世界の人口
石塚 隆記 (市民研・理事)
pdfファイルはこちらから→csijnewsletter_023_ishizuka_20140225
私は、環境コンサルタントとして働いている。もう働き始めて9年目になる。初めにやったまともな仕事は、日本人の人口の将来予測だった。適当なモデルを作って、統計情報入れて予測したら、2050年に日本人の人口は約9千万人になるとの結果であった。この仕事をしたのは、入社前だった。当時の上司と雑談していたら、「あー、私ならその予測できますよ」とか言った手前引っ込みがつかなくなって、自宅で予測プログラムのコードを書いたことをまだよく覚えている。
環境問題と人口問題は切り離せない。環境汚染とか、資源枯渇とか、生物多様性の減少とかって、結局、人間がたくさんいるから、それで、人間が高度な科学技術を使うから生じてしまうのだと思う。人間がいなくなれば環境問題は解決する、これは自明なことだと思う。だからと言ってはなんだけれど、日本の環境問題はそのうち解決の方向に向かう、私はこう思っている。だって、日本人の人口は減るから。ただ、原子力発電所が再稼働したら、また事故で放射能汚染が起こることがあるかもしれないから、単純に楽観もできないけど。
と、イントロが相当長くなってしまったけれど、国連経済社会理事会人口部門が2013年6月に、2013年時点の世界人口、それと今後の世界人口の予測に関するレポートを公表している。今回は、このレポートを中心に、今後の世界人口の動態を見てみようと思う。
2013年時点で、世界人口は72億。内訳は中国が14億人でトップ、次いでインドの13億人(日本は1.3億人で第8位)。2005年から2010年の期間の出生率の世界平均は2.5人(日本は1.3人)、同じ期間の寿命の世界平均は69歳(日本は83歳)。2013年の世界人口に占める60歳以上の世界人口の割合は、12%(日本は32%)。
これが2050年になるとどうなるか。2050年時点で、世界人口は96億人。内訳はインドが16億人でトップ、次いで中国の14億人(日本は1.1億人で第16位)。2045年から2050年の期間の出生率の世界平均は2.2人(日本は1.7人)、同じ期間の寿命の世界平均は76歳(日本は88歳)。2050年の世界人口に占める60歳以上の世界人口の割合は、21%(日本は43%)。
2013年から2050年までの間での世界人口の変化のなかで、アフリカでの人口の増え方がすごい。2013年時点でアフリカの人口は11億人であったのが、2050年時点で24億人になると予想されている。
国連は、世界人口の今後の動態をどう捉えているのか?ただ単に統計的な予測をして自らの役割を果たしたと思っているのだろうか?そんなことはないようである。国連経済社会理事会人口部門は、今後の長期的な開発目標を作っていく際に、世界人口の動態は欠かすことができない指標であると提案している。その理由として、以下の二つを挙げている。
一つ目は、世界人口の増加、地理的な人口構造の変化、及び年齢構造の変化は、マクロ経済に著しい影響を及ぼすから。
もう一点は、性と生殖に関する健康を保持すること、それと性と生殖に関する権利を守ることは、人間の幸せを高めるという視点から、決定的な挑戦だから。したがい、これについては、ちゃんとできているか、モニタリングする必要がある。例えば、貧しい国では、若い女性に性についての教育がなされていない一方で、子どもを生むことについての要求が高い、などが現実としてある。
国連の考察はここまでにして、以下、個人的な考察を述べよう。要は、増えた人口を地球が養えればよいのだと思う。でも、地球環境のことを考えると、世界人口が増えるスピードはゆっくりのほうがよい。できれば、緩やかに減ったほうがよい。
だから、地球環境のことを考えた場合、私たちにできることは、それで最も効果があることは、これから最も人口が増えると予測されているアフリカ人の人口抑制に努めることなのだと思う。国連の予測によると、上に挙げた世界人口の予測の前提条件より更に全世界の出生率が0.5人減ったら、2050年の世界人口は83億人になるとのこと。アフリカの若い女性に性教育をし、避妊具を配ることは、地球環境のことを考えたら、最も費用対効果のある環境保全活動なのではないかと思う。
一方、子どもを何人生むかほど、個人に与えられた選択の自由に直結しているものはない。先進国がこれまで好き勝手に環境を汚染してきて、それで今後はアフリカに行って、「あんたらあんまり子ども作るな。環境汚染の原因になるから」なんていうのは、先進国のエゴだとも思う。
科学的な判断と、人権への配慮のバランスをとっていくことが今後の世界政治に求められていることなのだと思う。でも、政治のせいだけにするのではなくて、市民レベルでも、こういった答えのない意見の相反する社会的な問題について、問題意識を共有することは大事だと思う。
<出典>
[1] World Population Prospects, The 2012 Revision, Highlights and Advance Tables, United Nations, New York, 2013
[2] UN System Task Team on The Post-2015 UN Development Agenda, Population dynamics, Thematic Think Piece, UNDESA, UNFPA, 2012