土曜講座 夏合宿特別報告(2) 科学館プロジェクト 生命の星・地球博物館ツアー 「私たちは博物館をこんなふうに体験した!」

投稿者: | 2001年4月22日

土曜講座 夏合宿特別報告(2)
科学館プロジェクト 生命の星・地球博物館ツアー
「私たちは博物館をこんなふうに体験した!」

古田ゆかり(記録:堀井雅恵)

doyou_museum200110.pdf

神奈川県立生命の星・地球博物館を見学しました。ここは、地球史・生命史を主なテーマとし、ほかに環境に関する展示、ミュージアムシアターやライブラリー、実習実験室などをそなえた博物館です。
展示の約1/3を占める地球展示室では、地球科学が専門の高野雅夫さんが解説をして下さいました。

その夜、博物館の展示、メッセージ、見せ方、学びなど、見学の印象、感想、評価できる点、批判的な視点、さまざまな角度から意見を出し合いました。いろいろな立場から自由な発言を求めましたので、多少「言いたい放題」の感もありますが、その分新鮮でもあり、同時に一般来館者の視点での率直で貴重な感想も含まれています。また、見て感じたことをことばで語り、それをさらに皆で共有することによって科学館や博物館の「あってほしい姿」を描くことにつながるでしょう。今後の科学館プロジェクトの資料として蓄積していきたいと思います。

【展示について】
若尾:何かを学ぶという感じがなく、そういう意味ではあれは「科学館」ではないと思う。ライオンやオオカミ、ヘラジカのスケールが正しくないような気がする。生息地の記述もない。
坂上:魚類展示でも実際の寸法が表示されていなかった。
藤田:生物の展示はやたらにものが多いだけと感じた。見学しても何かを会得できない。生物の展示は、系統的に並べられていなかった。生態展示がない。
後藤:植物の展示はリアルにできていたが、よく見ると人工物。リアルに見せる努力はしている。
上村:この科学館は、どれくらいの年齢をターゲットにしているのか? 小さい子はどう思うか? 専門的なことを知らないとわからない展示もある。ホルマリン漬けの標本とか、近寄りがたい雰囲気のようなおどろおどろしさは感じられない。
瀬川:それでは困るのでは? 科学のアンビバレンスを伝えるという意味では重要かもしれないが……。
上村:博物館ではきれいに整理されすぎている気がする。しかし、逆に絶滅した生物の展示では、何の説明もせず、感情に訴えかけていた。涙が出てきそう。これはやりすぎ。押しつけ的で危険ではないか?
藤田:あの展示は、真っ赤な照明で、音楽だけがあって安易な感じだった。
森:地学の部分は、展示自体にも迫力があった。環境問題に関する展示は、説明調で知識の詰め込み的な感じがした。
田中(理):アンモナイトの壁の展示に圧倒された。床の大理石も展示してある石と同じで、館の雰囲気は調和的。蝶の展示の仕方はきれいだった。
高梨:私は、はっきり言ってマイナス評価。高野さんの説明で楽しめたが、もし説明がなかったら、展示物だけではその背後にあるものを十分に表現できていない。博物館を作ることが目的になってしまっている。ものというのは点であり、それを線にするために結びつけるものが必要。点だけではがらくたの山にすぎない。わかる人にはわかるのだろうが、わからない人にわかるようにすることが必要。館側に「これが伝えたい」という最低限のエゴと情熱が必要。
薮:展示はきれいだった。蝶の標本など同じ種類のものをいくつも並べるというのは、個性的。ロンドンの自然史博物館を意識しているのではないかと思われる部分もあった。
森:最後のジャンボブックの展示では、異常巻きのアンモナイトのらせんの作り方について、新しい知識を得た。昔の通説が、今では変わったようだ。一年に一回は博物館に行って知識のメンテナンスをしなければと思った。あれを見なかったら知らないままだった。
瀬川:ジャンボブックの部屋が、全体の展示の整理・関連づけの部屋になっている。ジャンボブックの部屋は常設展示室を出たところにある。なぜ、いったん出たところにあるのか、疑問に思った。
後藤:他の生物の展示は散漫な感じがした。レイアウトに工夫は見られたが……。また、人類による環境破壊の展示は、よく読むとデータに基づいて重要なことが議論されているのに、柱に字が書いてあるだけで目立たなかった。もっと展示に工夫して目立たせるべき。
上田:博物館にはいろいろなニーズを持った人が訪れるが、あの博物館はテーマの絞り方が中途半端になってしまっている。実物の展示は立派で圧倒感があり、好奇心を引き起こすが、説明を読んでも理解は不可能。あれでは、マニアしか感動できない。

【高野氏の説明について】
山中:地質の展示では、高野さんが面白く話してくれたので、ありがたかった。バクテリア=汚いものというイメージがあったが、それらが地球の酸素を作ったということを初めて知った。身近なことと関連させた説明はよかった。
森:我々のグループ以外の人も説明を一緒に聞いていた。あのような説明をゲリラ的にやれれば面白い。
猪野:自分の仕事は理科の教員だが、これまで内容についてはあまり理解していなかった。
説明を聞いて、よく理解できた。自分もこのように説明ができるようになりたいと思った。
後藤:説明がおもしろかったせいもあってか、地学関係の展示は良かったと思う。
古田:後藤さんはこれまでにもいろいろ博物館を見学されているが、他の博物館についてはどうか?
後藤:具体的には理想の科学館像というのはない。水の博物館では人間の水分の展示が面白かった。科学未来館も画像に迫力があって面白かった。生命の星地球博物館も他と比べて悪くないと思う。ただし、専門的な研究に利用するには、どの博物館も不十分。
瀬川:先日見学したロンドンの科学博物館では、イヤホン方式の説明があったが、多くの人はわからないと思う。やはり今日のように人による説明があったほうがよい。展示のテーマによって、伝えたい気持ちの強さが異なるように思う。
科学者は、自分の専門以外はわからなくて、しかも専門は細分化されている。それはいいことなのか、悪いことなのか……。

【ミュージアムショップ】
薮:ミュージアムショップは買いにくいし、商品もあまり考えられていないようだ。展示と関連づけたり、知識を深めたりできる魅力的な品物がないように感じる。

【施設について】
坂上:建物のバリアフリーについて気になった。車椅子用のエレベーターのボタンはあったが、エレベーターのドアは狭すぎて、うわべだけのバリアフリーのようだ。科学館プロジェクトの評価軸では、バリアフリーに関する項目はあるのか?
古田:項目に含めていない。ほかに解説パネルの高さ(大人の視点、子供の視点)なども評価軸に入れることを検討してみる。
瀬川:表記は英語とハングル語があったが、観光ルートだからか? 中国語などもあっていいと思う。
後藤:途中で疲れてしまって、休憩室で休憩した。外のバルコニーはよかった。展示室には座れる場所がなかった。でもあそこは展示物に腰掛けられるか?
藪:この博物館の建物には、センスがないと感じた。

【その他】
田中(浩):今日、見学した生命の星地球博物館は、科学館というより博物館ではないか? 科学館プロジェクトでの科学館の定義は?
古田:博物館が科学館と異なる点は、コレクションを伴うことという一般的な定義はある。
科学館プロジェクトは、最初、博物館プロジェクトと言う名前でスタートしたが、市民がサイエンスを学ぶ場と言う意味を強調するために、科学館プロジェクトとした。プロジェクトの中では、広い意味でサイエンスの情報を得られる場として博物館的なものも扱う。
田中(浩):日本では科学と自然史を混同しているところに問題があると思う。科学と自然は分けて考えるべき。
瀬川:博物館業界でも科学と自然は分けて考えられていないのが現状である。
感想を聞いてーかなり考えられ、コンテンツも流れや分量などできるだけきれいに絞って作られた博物館ではあったと思う。作り手の想いやメッセージを伝えることと、来館者の受け止め方のあいだに大きな隔たりがあり、多くの人のニーズに応えることや、知識、学びを提供することはむずかしいものなのだということだ。展示のうち地球史の部分が皆に共通して印象に残り、学びも多く興味を持てたのはやはり高野氏の解説があったためだ。ここに、今後の科学館・博物館の役割があるといえるだろう。フレキシブルで生き生きした語りとコミュニケーションの中に科学館の可能性があることを確信した。情報の階層化、つまり対象年齢や来館者の知識レベル、期待にそった情報提供が可能になるのも「人」が介してこそだ。当該館の入り口付近には、学芸員や解説を担当する人の顔写真と名前が貼りだしてあり、この点にも意識があるのかと期待したが、夏休みの土曜日でありながら展示室で解説員に会うことはなかった。科学館プロジェクトでやることはたくさんあるゾ、というのがわたしの感想だった。

 

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