第128回 土曜講座 体験学習・調査ツアー 琵琶湖博・ヒアリング報告

投稿者: | 2001年4月22日

第128回 土曜講座 体験学習・調査ツアー
琵琶湖博・ヒアリング報告

古田ゆかり

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5月13日 日曜日。前日の三州足助屋敷訪問と小林一朗さんの研究発表につづき、科学館プロジェクトの最初の訪問調査先である、琵琶湖博物館をたずねました。午前7:30に名古屋市内を出発し、琵琶湖に到着したのは9:30。開館までの約30分、すっきりと晴れた日曜の午前中、琵琶湖は青く美しく光り、気持ちのいい風が湖面を静かにすべっていました。湖畔の広い公園でかるく打ち合わせをしたあと、琵琶湖博物館へ。訪問の目的は、私たち科学館プロジェクトが独自の視点で博物館評価をすることに先立って、評価軸を確立するために多くの方の意見を聞くこと、とりわけ博物館活動ではひときわ評判の高い、琵琶湖博物館の学芸員の方のご意見をうかがいたい、というものでした。もちろん、博物館内の見学も大切な目的です。
この訪問のために、琵琶湖博物館開館までの経緯、運営形態、展示の工夫や開館にたずさわった人たちの思いなどが記された『博物館を楽しむ-琵琶湖博物館ものがたり』(岩波ジュニア新書)と、琵琶湖博物館が昨年行った「博物館を評価する視点」の報告集を読み、博物館の内部の方たちがどのようなことを大切に思いお仕事をされているか、といったことも「予習」して臨みました。

対応してくださったのは、学芸員で企画調整課長の高橋啓一氏。開館準備室時代から現在の事業活動まで興味深いおはなしが飛び出します。
「従来の博物館ではどうしても教えようという意識が先に立ってしまう。でも、やはり博物館は楽しくないと。最初はまったく興味がないことでも、何かひとつでも気づいたり、もって帰ってもらうものがあればいいと考えています」と高橋さん。
では、来館者が楽しむための工夫はどんなところに?と質問すると、
「あまり、来館者に楽しんでもらおうとしてはいけません。自分が楽しんで展示を行うこと。そのことで楽しさが伝わると思います。あまり人に楽しんでもらおうと考えると、結局は自分がなくなってしまいますからね」。表現やコミュニケーションにおいてとても大切なことを短い言葉で語っているように思います。

琵琶湖博物館の展示は学芸員の方たちの研究の成果が軸になっているとのこと。すべての学芸員が研究と博物館事業を兼務し、研究の結果が展示の原型となるのだそうです。
おもしろさへの工夫としては、展示をケースに入れないことを強調していました。「一度ケースに入れてしまったら、二度と出ることはないでしょう?」という言葉は印象的でした。開館当初いろいろな展示がこわれて対応に大変だったが、いかにもこわれそうと思えるものは意外にこわされないものだとか。こんなところにも、人と人の気持ちのつながりを見ることができるような気がしました。

そのほか、開館前の準備室では早い段階で学芸員を雇ったこと、展示や運営については時間や労力を惜しまず議論の上に議論を重ねて何回もの試行錯誤を経ていること、学芸員の中に博物館関係者がほとんどいなかったことなど、直接はなさなければ聞けないようなおはなしも数多く聞くことができました。

ところで、肝心の評価軸については?
「何かを評価しようというときには、生半可な気持ちではできない、そのためにはきっちりとした評価軸を作らなければ」と意気込み、結果あれもしなきゃ、これもしなきゃと要素を入れ込んだ評価軸案に高橋さんは細かい言及をしませんでした。が、「頭だけで考えている感じ」というひとこと。これは心に突き刺さりました。あまりにも私の現状と思考のパターンを言い当てていたので。科学館プロジェクトを進めるにあたり、この言葉は片時も話せないものになるでしょう。

約1時間ほどのおはなしを経て、私たちは展示室へ。参加者それぞれが自分の興味にしたがって、館内をまわりました。
今後の科学館プロジェクトにむけて、さらに活動の展開、方向性の足固めとしつつ、高橋氏とは今後の交流をお約束し、一日の訪問を終えました。

 

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