AAAS(全米科学振興協会)年会に行こう!

投稿者: | 2012年6月12日
三輪 佳子(フリーランス・ライター)

 2012年5月12日、市民科学研究室談話会で「AAAS年会に行こう!」と題してお話させていただきました。参加者は私を含めて5名、議論と交流が熱く盛り上がる談話会となりました。本稿では、談話会でお話しした内容を中心に、AAAS年会への参加を案内します。
PDFファイルはこちらから→http://archives.shiminkagaku.org/archives/Shiminken-12-AAAS.pdf
■AAASとは?
 AAAS(The American Association for the Advancement of Science、全米科学振興協会)は、世界における科学振興を推進している、世界最大のNPOです。科学雑誌「Science」の発行元、と言えばピンと来る方も多いでしょう。1848年に設立され、本部はワシントンDCにあります。活動の主要な資金源は、会員(正確な会員数は公表されていませんが、おそらく12万人程度)からの会費・「Science」などの出版・助成金の三つです。予算規模は年間一億ドル(現在の為替レートで約80億円)程度です。
■AAAS年会とは?
 AAASは毎年2月、年会を開催しています。世界中から約5000人の参加者を集める、サイエンス・コミュニケーションの祭典で、既に180回近くの歴史があります。会期は4日間です。
 年会の開催地はアメリカのさまざまな都市で、数十年に一度はカナダでも開催されます。テーマは毎年設定されます。2011年はワシントンDC(テーマ:境界なき科学)、2012年はバンクーバー(テーマ:世界を平坦に)でした。2013年はボストン(テーマ:科学の美と利益)で開催されます。
 年会の内容は、多種多様です。どのような人が参加しても interesting な何かを得ることができるように、プログラムが構成されています。プログラムは主に、講演と展示から構成されています。講演会場では、講演・シンポジウムが多数開催されます。その内容は、さまざまな分野の最先端研究成果・科学と社会の関係・科学コミュニケーションの方法論など多岐にわたっています。展示会場ではポスター発表が行われたり、各国の研究機関・学会や市民団体・企業による展示が行われます。会期は必ず土日を挟む設定となっており、土日には「Family Science Days」が開催されます。この「Family Science Days」は、子どもを含む家族連れ(*)を対象としたプログラムで、ステージでの科学ショウ・100~200の実験展示等のブースから成っています。近隣住民の休日の娯楽の一つとして自然に楽しまれている、肩のこらないプログラムです。
 他にもさまざまなプログラムがありますが、注目すべきはミーティングです。会期中には、さまざまなテーマで、多数のミーティングが開催されます。クローズド・ミーティングもありますが、多くはオープン・ミーティングです。誰でも参加して意見を述べることができ、そこで話し合われた事柄は、AAASの運営方針に何らかの形で影響を及ぼします。私は障害者で、AAASの障害者支援に多大な関心を持っているので、障害者支援ミーティングには必ず参加しています。
(注)
このプログラムは基本的に子ども向けなのですが、アメリカ・カナダでは、大人の同伴なく子どもだけで行動させると、ネグレクト(虐待の一種)とみなされて親が法的処罰の対象となるため、この種のイベントに子どもだけがやってくることはありません。これは、「ついでに大人にも」という働きかけが可能、ということでもあります。
■AAAS年会に参加するには? 参加費用は?
 AAAS年会には、特に参加資格はありません。関心ある人ならば、誰でも参加できます。ただし、最大$399(社会人・非会員・全会期)の参加費が必要です。参加費には、一日だけ・会員向け・学生向け といった設定もあります。また「ポスター発表の採点をする」「学生運営ボランティアとして参加する」など、参加費ディスカウントの方法もいくつか用意されています。展示(ポスターセッション・Family Science Daysを含む)だけなら無料です。
 私はフリーランス・ライターとして、プレス資格で参加しました。プレスの参加費は無料ですが、参加に際して審査があります。非英語圏で活動しているフリーランサーが審査を通過するのは、容易ではありません。しかし通過できれば、プレス向けイベント・プレスルーム利用・世界中の同業者との交流などの機会を得ることができます。「審査通過のために払った努力は充分に報われた」と私は感じています。
 その他、旅費を節減するには、さまざまな方法があります。
 最も大きな出費となりうるのは航空運賃ですが、2月はアメリカ方面の航空運賃が一年間で最も安い時期です。各種割引を併用すれば、航空運賃は5~6万円程度まで抑えることが可能です。
 宿泊にユースホステルを利用すれば、宿泊費は一泊$35で済みます。安上がりなだけではなく、AAAS年会参加のためにやってきた世界中の人々と交流することができます(アメリカでは、学会参加者がユースホステルを利用していることは珍しくありません)。ユースホステルには自炊のための設備があるので、食費も節減できます。また、食材の調達のために現地のスーパーマーケットなどを利用することで、その地の人々の生活文化を垣間見ることもできます。
 もし、参加費の最高額$399を支払ったとしても、現在の為替レートなら、15万円あれば充分にお釣りが来る計算になります。もし、何らかの形で参加費をゼロにすることができれば、10万円あれば何とかなります。
 費用を除けば、最大の不安材料は英語力に関するものでしょう。もちろん、英語力は高ければ高いほど良いのですが、「聴講してちょっとした質問をする」「ミーティングに参加して拙くとも意見を述べる」程度だったら、TOEIC700点程度の英語力があれば充分です。会場は無線LAN環境が整備されていますので、不明な用語があったら、その場でWeb辞書を参照することができます。
■参加して得られるものは?
 各人各様であろうとは思いますが、私の場合は以下のようなものを「得られる」と感じています。
日本という国・日本のサイエンス・コミュニケーションを客観的に見る機会
 日本の中で語られる「アメリカでは……」「ヨーロッパでは……」の多くは、嘘ではありませんが、当を得てもいません。同じことは、日本の中にいて考えたり語ったりする「日本では」「日本とは」に対しても言えます。日本は・日本のサイエンス・コミュニケーションは、善戦しているのでしょうか、ダメなのでしょうか。日本の状況に適しているのでしょうか? それは世界的に見てどうなのでしょうか? 
 AAAS年会は、数多くの問題意識と気づきを与えてくれる場です。国ごとの展示を見て比較してみるだけでも、多くの知見が得られます。
世界中の同業者との出会いと交流、職業機会
 プレスルーム・プレス向けイベントで、世界中の同業者と交流することは、私の仕事の幅を広げ、刺激を得るために非常に重要です。プレスルームで行われるプレス向けサービス・各大学や研究機関の広報担当者による広報活動に接するだけでも、大きな刺激を受けます。また、積極性と能力のある人には惜しみなく機会を与えるのが、アメリカの伝統です。リーマン・ショック以後の不況で、状況はかなり変化してきていますけれども、それでも数多くの場面で、その伝統を感じます。「日本がダメならアメリカがあるさ」と楽天的になれる、というわけです。
性差別・障害者差別などからの解放
 アメリカに差別がないわけではありません。障害者差別は現在も深刻な問題です。しかしながら、日本のさらに深刻な性差別・障害者差別から、一年のうち一週間程度といえども解放されることは、私の精神衛生にとって非常に重要です。日本では障害はスティグマですが、アメリカではキャラの一つ。それほどの違いがあります。
 また、プレスルームでは、バギーに赤ちゃんを乗せてきたお母さんジャーナリストの姿や、その赤ちゃんをあやす近辺の男性ジャーナリストの姿を見ることができます。自然に「このような風景が当たり前にならなければ、日本の少子化は解決しないだろうなあ」と思われてしまう場面です。
 以上、駆け足ながら、AAAS年会について紹介させていただきました。
 皆さん、ぜひAAAS年会に行きましょう。そして、参加しましょう。
 数多くの日本市民が、AAAS年会に参加し、シンポジウムやミーティングで意見を述べ、各国からの来場者と交流し、展示や発表とは異なる形で世界のサイエンス・コミュニケーションに貢献する近未来を想像するだけで、私はワクワクするのです。
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PresidentであるNina V. Fedoroff氏による基調講演の様子。(2012年・バンクーバー)
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先住民による民族音楽演奏も行われた。
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現地の科学館を探訪することも楽しみの一つ。バンクーバーの Science World は、大人も童心にかえって楽しめる場所。
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プレスとして招待された University of British Colombia の生物多様性研究部門で見つけた一般向け展示の一つ。「猛毒のフグを食べる日本の食文化」が紹介され、フグ刺しの食品サンプルが展示されている(右下)。「フグ」としてそこに置かれているのが、トラフグではなくハリセンボンなのはご愛嬌(左上)。

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