私たち市民ができることは 市民研理事による読み切りリレーエッセイ 第5回

投稿者: | 2019年2月18日

私たち市民ができることは

橋本正明(市民科学研究室・理事)

今年もはや2ヶ月が経過した。

昨年は私にとって実家との繋がりを今までにないほど深める一年となった。突然の父の余命宣告、想い出の海を見に行く最後の家族旅行の計画、その旅行の前々日に発生した大地震とブラックアウト、涙を呑んで旅行を諦め、想い出の海を二度と見ることなく失意のうちに間も無く他界した父、そしてその父との最期の別れ。何度も帰省を繰り返し色々な手続きや片付けを行うなかで、気が付いたことがいくつかある。

先ず、行政書士などの専門家のアドバイスは非常に参考になるものだということ。次に、普段とかくいろいろ言われがちな役所の職員の方々も、いざという時にはとても頼りになる存在であるということ。そして言わば「身内」にあたる人たちに頼らなければ自分一人では何も成し得なかったということ、である。

だが今、巷ではかつてないほど、公的機関の信頼性が根底から相次いで覆されている。

科学の世界もまた例外ではないだろう。その信頼へのゆらぎは、地球気候変動やマイクロプラスチック、ゲノム編集、AIなど、科学技術の進歩が必ずしも全て正の効果を発揮するとは限らないということにも由来しているように思える。

こうした状況において、得てして私たちは単純な正邪の二元論に陥り、対立する相手との間に「壁」をつくるという愚を犯しがちだ。大切なのは、多種多様な意見や立場を尊重しつつ、「最適解」を探ることではないか。政治経済のみならず科学の世界に於いてもまた。 

市民一人ひとりが、誤った道に進む気配を察知したらお互いに声を上げ、注意を喚起し、行動を起こすこと。それがたとえ小さな気付きであってもその声に呼応するたくさんの声があるかも知れない。今年は皆さんにどのような気付きをお伝えできるだろう。そして皆さんからどんな気付きをいただけるだろうか。

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