「市川市・大町自然公園観察会3『湧き水がはぐくむ春の生命』」参加報告

投稿者: | 2024年4月9日

市民科学入門講座野外特別編

「市川市・大町自然公園観察会3『湧き水がはぐくむ春の生命』」 参加報告

杉野実(市民研「千葉県市民活動プロジェクト」世話人)

「千葉県市民活動プロジェクト」世話人の杉野です。千葉県生物学会編『千葉県自然観察ガイド』(たけしま出版1998)に、「大町公園は、南北およそ1kmにおよぶ谷津の地形を軸とし、周囲に動物園、植物園(温室)、自然観察園などの公営施設(中略)を配した広域的な公園である。生物面では八の環境を保全した自然観察園が見どころで、豊かな自然を堪能することができる。」と解説された市川市の大町自然観察園(通称「長田谷津」)をふたたびたずね、この文章を書かれた同市自然博物館学芸員の金子謙一さんにまたご案内していただきました。

午前10時集合のところ、私は9時半ごろ大町駅につきましたが、そのすぐあとに来られた一般参加者の宮崎さんには、都会らしい大きい建物がほとんどない駅周辺にあって、そこだけいやにめだつパチンコ店に、すでに行列ができていたことがかなり印象深かったようでした。
金子さんが「な~んもない」とおっしゃるように、本当に人家さえ少なくて梨園ばかりめだつようなところなのですが、ただそんな場所でもよくみれば、梨園のむこうにゴルフ場があることがわかったりもします。しかしそのゴルフ場に関する金子さんの説明が、ちょっと意表をつくおもしろいものでした。「南房総あたりのゴルフ場は山をくずして作ったものですが、この辺のは自然に開けた谷津地形に作ったものであって、梨園と同様に雨水をしみこませて、地下水をゆたかにすることに貢献してもいるのですよ。」

パチンコやゴルフに関する談義から始まった観察会でしたが、駅から少し歩いて観察園に入ろうかというところで、一般参加者である八木さんの、小学校低学年ぐらいのお嬢さんが、スズメガのさなぎをみつけるという思わぬ活躍をみせました。「成虫が羽化するのを見てみんな感動するけど、幼虫が動かなくなったと思ったら、ほら、こんな『成虫の鋳型』みたいなのができることの方がよっぽど不思議なんだ。」金子さんの説明はやはりおみごと、大人も思わず聞き入ります。観察園入口すぐそばの、湧き水が流れてごく浅い小川になっているようなところを金子さんが掘り返して、オニヤンマのヤゴと、その餌にもなるカワニナをみつけました。ところが金子さんが「このごろ目が悪くて小さいヤゴは見えないね」というなか、八木さんのお嬢さんが小さなヤゴを次々とみつけたりして、参加者一同をまたおどろかせたものです。

もう少し奥に入ると林の斜面ぞいに、さらに土砂が高くつもり、湧き水の流れが細くなってところがあって、そこを掘り返したらサワガニがぞろぞろ出てきました。ここでもお嬢さんが小さいのを続々みつけて、もはや金子さんのお株をうばってしまった感さえあります。ですが、「サワガニはこういうところが好きですけど、ヤゴだとか、同じようにカワニナを食うホタルの幼虫などは、もっと水が流れていないとだめですね。ここでは『絶滅危惧種』になっているスナヤツメ(ヤツメウナギの類)にももっと水が必要です。」このほか、大きな水路が土砂にうまらないように木の板で「護岸」した話とか、「ヒキガエルの卵のチューブは、吸水ジェルみたいな非生物的部品だから、破れても卵は死なない」という話など、お年をとって子供より目は悪くなっても、ここをおもしろく説明できる人はやはり金子さんしかいないみたいです。

今回は練馬区に住む私のいとこふたりが、うちの墓参りもかねて参加してくれたのですが、このふたりもまた、「あの女の子がもりあげてくれたのが。すごくよかった」といっていました。前回参加された市川市の大蔵さんが、ご自身でも環境保全(と幕末史「見直し」)に関与されていることがわかるなど、参加者同士の交流も少しずつ深まりつつあるように私には思われます。

*参加者のお一人の吉田幸之さんから寄せていただいた感想はこちらに掲載しています。

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