参加報告
市川市・大町自然公園観察会『湧き水がはぐくむ初夏の生命』
「認定NPO法人行徳自然ほごくらぶ」を訪ねる
杉野 実 (市民科学研究室「千葉県市民活動プロジェクト」世話人)
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千葉県生物学会編『千葉県自然観察ガイド』(たけしま出版1998)にも、「南北およそ1kmにおよぶ谷津の地形を軸として」云々と紹介されている市川市の大町自然公園(通称「長田谷津」)をたずねるのも、はや4回目(私が報告を書くのは3回目)となりました。今回も案内してくださったのは、上記の引用文を書かれた、市川市自然博物館学芸員の金子謙一さんです。金子さんも相当入念に準備されたらしいのですが、私の力およばず、またすでに猛暑気に入ってこともあってか、今回の一般参加者は、私の高校同級生であった畑中憲さんただひとりという、少しさびしい結果になりました。
ところが、です…われらが畑中氏(親しみをこめて「憲さん」とよびましょう)は、取り網こそもっていなかったものの、半そでに半ズボンの動きやすい格好であらわれ、「真夏でも長靴を欠かさない金子さんとは対照的だなあ」と思う間もあらばこそ…金子さんが「ちょっとサワガニやヤゴやカワニナを取ってきます」とはなれたらすぐに、憲さんは私にかけよってきて、彼が地元葛西で直接間接に見聞きしたメダカの話や、同僚から聞いたというハクビシンの話などをしだしたのです。もどってきた金子さんもすぐ話にくわわり、サワガニやカワニナの説明もそこそこに、「カダヤシに駆逐されることばかりさわがれるけど、自然種と飼育種の交雑も大問題」など、ひとしきりメダカ論をたたかわせました。
なんか金子さんがお株をうばわれたみたいな書き方になりましたが、本当はそうでもなくて、「観察園入り口付近のがけの上から、十数メートル下まで水がしみ出すのに数十年かかる」と、憲さんの質問に答えて説明するなど、金子節はしっかり健在でありました。さらに今回は、「虫や魚を取るなとすぐいう大人や、特にお年寄りは、実は『自分の聖域』をけがされたくないだけではないか」とか、「私があれこれ説明するより、みんなに自分で手を動かしてもらって、自分で整備した環境の中で自分なりの発見をしてもらった方が、参加者も楽しかろうと思う」とか、少人数ゆえの気楽さもあってか、いつにない本音もうかがえたと思います。
大町駅近くのお気に入りの食堂にだけ立ち寄り、行徳の「近郊緑地保全地区」までは「まっすぐ」行ったのですが、市川市を鉄路で「南北縦断」したうえに行徳駅から少し歩いて、着くまでにはちょっとかかりました。かつて葛西から船橋にまで広がっていた「野鳥の楽園」のおもかげをとどめるこの地区で、野鳥観察舎の一時閉鎖、千葉県から市川市への移管等の変動にみまわれながらも、冨栄養水源の揚水による浄化などの地道な活動を1980年前後からおこなってきたのが「行徳自然ほごくらぶ」です。同山口誠さんが、上田さん(市民研・代表)と私を、保全地区内のあちらこちらに案内してくださいました。
「いろいろな水鳥がみられるのでは」という期待とは少しちがって、カワウ営巣地の巨大さにただただ圧倒されたりもしましたが、この「保全地区」の真の魅力は、「さまざまな環境がならんでとまりあっている」ところにあります。地面に穴をほっているのがモグラではなくカニであったのは、海岸であればまあ当然でしょうが、しかしそんな海岸の地面に、山のものとばかり思っていたアケビの木が生えているのを見たときには、やはりおどろいたものです。護岸にならんだトビハゼと、竹の子やタヌキのため糞を2時間以内に続けて見るなんて、そうたびたびできる経験ではないでしょう。くらぶのもっとも特徴的な施設である「野鳥の病院」についても、語ればきりがありませんが、ここでは「オオタカは臆病」など、「鳥の性格」表示がおもしろかったとだけいっておきましょう。いっしょに巡りながら上田さんも歓声をあげることしきり。それだけに、一般参加の方をおつれできなくて残念との思いがつのりました。さいわい山口さんは大変協力的でいらっしゃるので、今後も企画を続けていこうと思います。