ナノマテリアルの生態系影響

投稿者: | 2011年2月21日

ナノマテリアルの生態系影響
小林 剛
(東京理科大学ナノ粒子健康科学研究センター)
pdfはcsijnewsletter_006_kobayashi.pdf
1. はじめに
ナノテクノロジーを駆使した製品すなわちナノマテリアル(NM)についてのリスクは、それらに共通する特性である超微小形状から、先ず、懸念されたのは、吸入毒性である。その研究結果は、局所的には、呼吸器官における機能低下・発ガン性・腫瘍誘発性を解明した。さらに、全身的には、NMは細胞膜を貫通して血行中に入り、心臓血管系疾患を誘発し、各臓器における病理学的有害影響の発現が明らかにされている。
最近の東京理科大学ナノ粒子健康科学研究センター(武田健 教授ら)の研究では、妊娠マウスへの二酸化チタンナノ粒子の皮下注射による産仔オスにおける、精嚢への移行による精子生成能力の20%以上の低下と、脳への移行による末梢血管異常や特定部位におけるアポトーシス(細胞死滅)、さらには、機能低下による異常挙動など次世代影響の成果を、世界に先駆けて明らかにしている(ファルマシア:2009年3月・日本薬学会)。
しかし、ナノリスクによる影響の検出が、最も困難視されているのは、環境媒体が多岐にわたり、多種多数の棲息動物を育み、複雑な構造を持つ生態系に対する潜在的なインパクトである。そのため、この領域の研究は少なく、未開発分野として取り残されていた感があったが、最近になって、漸く、これら微視的現象についての関心(懸念)が高まり、昨年末以降、多くの成果が報告されるに至っている。
ここで、最新のNPによる生態学的研究6件を紹介し、その現状と筆者の見解を述べる。先ず、それらの研究概要を参考資料リストとして示すので、ご参照の上、お読み頂きたい。
食物連鎖を這い上がる:ナノ粒子汚染のタバコの葉を食べるタバコツノ虫は胃腸内で化学物質を濃縮する
2. 生態学的評価メソッド
2-1 陸生生態系の影響評価
現在、ナノリスク研究で行われている陸生生態学的影響評価では、主として、食物連鎖の中の捕食連鎖 (predator food chain)を採用している。すなわち、餌食としての植物に始まり、それを食う捕食動物、次にそれを食う小型肉食動物、さらに小型動物を食う大型肉食動物の連鎖である [実際には、この鎖は極めて錯綜しているため、food web (クモの巣)との語を用いることあり]。
参考資料の実例1) 3)では、餌食は、金ナノ粒子(NP)を水耕栽培により濃縮(6-12倍)したタバコ植物の葉で、これをタバコツノ虫が捕食して濃縮(6.2-11.6倍)、この虫を、順次、小型→中型→大型肉食動物が捕食し、連鎖を形成する。
実例 2)では、餌食は、金NP蓄積のミミズである。濃縮倍率の記載はないが、産仔の90%減少は、ミミズそのものの「次世代影響」を意味し、その個体数の激減を予測している。ミミズの存在は土壌の肥沃化に極めて有用であるため、農作物の生産低下を招来する。さらに、実例 6)も、ミミズにおける銅NPの吸収と、食物連鎖への侵入によるヒトと動物への波及的被害を示唆している。
以上で引用した実験は、ケンタッキー大学環境化学部のBertschらのチームによる先駆的な成果であるが、今後、さらに高度なモデルにより、定性および定量的検討を重ね、実際的なフィールド検証を必要としている。しかし、最も基礎的なフェーズにおいて、要注意の毒性サインが出ているため、よりシステマティックかつ大スケールの研究プロジェクトの設定が要望される。
今回の実験で、金ナノ粒子が用いられたのは、その極めて高い安定性(不溶性)と容易な検出性などの点から、優れたトレーサーと認められたためである。しかし、金のような化学的・生物学的に不活性(すなわち「無害」)な金属が、他の重金属ベースの有害性ナノ粒子類に変換された場合には、さらに、有害影響の累進的増加の傾向が懸念される。
2-2 水生生態系の影響評価
水生生態系の食物連鎖の影響評価には、通常、海水中では、プランクトン→イワシ(小型捕食者)→ブリ(大型捕食者)などが典型的なケースである。参考資料の実例4)では、セレン化カドミウム量子ドット標識のバクテリアは、原生生物により捕食され、順次、食物連鎖を上昇するという懸念すべき結果を示している。
食物連鎖とは別に、水生生態系全般にわたるナノ粒子類の影響として危惧されるのは、排水中と同レベルの二酸化チタンNP により、光合成と窒素固定を司る藍藻類の生育の90%低下という致命的な打撃である。このため、逐年的には、生態系全般の環境相の累積的変貌が危惧されている。
3. 下水処理関連の問題
ナノ粒子類の生産量は、毎年約200万トンで年々増加中であるが、それらを含む下水汚泥は年間約300万トンといわれている。
下水処理場に関する水生および陸生生態系の双方にわたる深刻な問題は、
1)ナノシルバー殺菌剤の流入による有用バクテリアの浄化処理機能低下
2)下水汚泥の肥料転用(毎年300万トンの乾燥汚泥)による土壌汚染
である。
汚泥中のナノ粒子類は植物(農産物)に移行し、ヒトの食品摂取による問題が指摘されているため、肥料として汚泥の利用を禁止すべきであるとの意見が強まりつつある。
4. ナノ粒子類の放出形状の精査
ナノマテリアルの影響に関して、最も精査を要する問題は、ナノマテリアル複合材(composite)の「劣化」状況の物理的・化学的プロセスの解明である。そのライフサイクル(製造・包装・輸送・使用・廃棄・最終処分)のすべての段階における、ナノマテリアルの態様の詳細が把握されない限り、毒性を十羽一からげに云々することは無意味である。また、特定の条件(物質・形状・状態・環境など)を厳密に特定しない限り、的確な科学的結論は創出できない。
複合材からのナノ粒子の分離は全くないのか? 通常時はそうであっても、加工時(切断・加熱・衝撃など)にはどうか? サイズが大きければ無害か?
安全なサイズ(?)範囲は存在するのか? ナノとバルクレベルのサイズによる毒性の比較研究が必要では? など、課題は山積している。
【以下、翻訳ならびに訳注はすべて小林剛による】(写真及びそのキャプションの掲載は割愛した)
ナノ粒子類保有ムシの食物連鎖への経路
-ミミズは、土壌からの金ナノ粒子類を蓄積する-
Chemical & Engineering News, October 7, 2010
Laura Cassiday
科学者らは、毎年、2百万トン以上が生産されるナノ粒子類が、どのように放出され、環境中の生物類に影響を及ぼしているかについては、殆ど知らない。最近の研究は、ミミズ(Eisenia fetida)は周囲の土壌から金ナノ粒子類を摂取し、それらを蓄積し、食物連鎖に大きな影響を及ぼすことを報じている。
メーカーは、化粧品・衣料品・医療器材などに、ナノ粒子類を添加している。衣料品を洗濯するなどの、これらの製品の通常の使用により、ナノ粒子類は排水中に放出され、終局的には下水汚泥となる。米国および欧州においては、農民らは汚泥を肥料として施用している。
米国レキシントンのケンタッキー大学の環境毒性学者のJason Unrineらは、汚泥が畑地に施用された場合に、終局的に食物連鎖に入るか否かを研究した。 Unrineは、「我々は、ナノマテリアルは土壌粒子の上に凝集すると予想したため、当初は、生物によるそれらの取り込みについては懐疑的であった」と語った。Unrineのチームは、食物連鎖の底辺に近いミミズを、金ナノ粒子類を負荷した人工土壌と混合した。我々が、金ナノ粒子類を用いたのは、それらは安定性があり、不溶性で、検出が容易であるためである。「それらは、優れたトレーサーの役割を果たした」とUnrineは述べている。
28日後に、研究者らはナノ粒子類の取り込みを調べるために、ミミズの組織を検索した。彼らは、ミミズの組織中のトータルの金の分布を図示するため、最初に、レーザー蒸発高周波誘導結合質量分析計(laser ablation inductively coupled mass spectrometry: LA-ICP-MS))を用いた。次いで、彼らは、シンクロンベースX線顕微分光法という時間のかかる手法により、製造プロセスで取り残された金の形状が金属かイオン化金であるかが確認された。
Unrineらは、ミミズの体内全般に、粒径20-55 nmの金ナノ粒子類の分布を見出し、最高濃度は胃腸内で認められた。しかし、暴露されたミミズは、金属-イオン測定蛋白質のメタロチオネインの遺伝子上方調整を示さず、その後、ミミズの組織内から検出された金は、ナノ粒子の形状であることが確認された。
金ナノ粒子類は、ミミズの死亡率に大きな影響は示さなかったが、暴露されたミミズの産仔は90%も少なかった。Urineは、今後の研究において、ナノマテリアルに対するミミズの生物学的反応をさらに詳細に検討することを計画している。
ブラウン大学の環境学者のRobert Hurtは、「この研究は、土壌から組織へのナノ粒子類の取り込みを示すベストの証拠を提示している」と述べている。彼は、「環境中でのナノ粒子類は、通常、低濃度で見出されるが、もし、それらが食物連鎖内で生物学的拡大をすれば、ヒトの健康への有害影響はより大きくなるであろう」と語った。
陸生食物連鎖内における
金ナノ粒子類の生物学的拡大の証拠
Environ. Sci. Technol., December 3,2010
Jonathan D. Judy et al.
米国ケンタッキー州レキシントン
ケンタッキー大学植物・土壌科学部
要約
ナノマテリアル製品を含む消費者商品の数量の急速な増加から、ナノ粒子類は廃水中に排出される。数種のナノマテリアルが、下水処理場の汚泥中に蓄積されるという証拠は増加し、最終的には、バイオソリッド(肥料)として畑地に施用されている。下水処理からのバイオソリッドが,環境へのナノマテリアル製品の主要経路であるにもかかわらず、陸生生態系へのナノ粒子類のインパクトを評価するため、小規模の研究が実施された。この知識ギャップを埋めるため、我々はモデル生物として、タバコ植物とタバコツノ虫(Manduca sexta)を用い、粒径5、10、15 nmの金(Au)ナノ粒子類(NPs)の、植物への取り込みと、栄養移動を検討した。サンプルは、高周波誘導結合質量分析計(ICP-MS)のほか、レーザーレーザー蒸発高周波誘導結合質量分析計(LA-ICP-MS)のような空間解像法およびX線蛍光法(μXRF)により分析された。我々の結果は、最初の製造者から最初の消費者への、金ナノ粒子類の栄養移動と生物学的拡大は、粒径5、10、15 nmの金ナノ粒子類の負荷に対して、それぞれ平均6.2、11.6、9.6倍を示した。この結果は、ヒトの暴露を含む、ナノテクノロジーに関するリスクについての重要な影響を示している。
単純食物連鎖における
ナノマテリアルの生物学的拡大
カリフォルニア大学サンタバーバラ校
プレスリリース
December 20, 2010
カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の研究者らの学際チームは、単純な微生物食物連鎖において、ナノ粒子類はいかにして生物学的拡大ができるか、の先駆的な研究を成し遂げた。
「この研究は、単純な科学的好奇心から始まったが、 ナノテクノロジーと環境とのインターフェースという新分野において極めて重要なことでもある」と、UCSBのブレン環境科学・マネージメント校教授で、この研究の通信担当著者を担当し、Nature Nanotechnology誌オンライン版に発表したPatricia Holdenは語った。
HoldenのUCSB校における共同研究者には、分子・細胞・発生生物学教授のEduardo Orias、化学・生化学教授のGalen Stucky、スタッフリサーチャーのRebecca Werlin、Randy Mielke、John Priester、Peter Stoimenovらが含まれる。その他、カリフォルニア・ナノシステム研究所のStephan Kramer、カリフォルニア大学デービス校Bodge海洋ラボラトリーのGary CherrおよびSusan Jacksonが研究に協力している。
本研究の一部は、米国環境保護庁(EPA)のSTARプログラム、カリフォルニア大学 ナノテクノロジー影響研究センター(UC CEIN)、その他の研究助成を受けた。
Holdenによれば、以前に行われたStuckyらとの研究協力が、この研究の基礎になっている。以前の研究では、セレン化カドミウムにより構成されたナノ粒子類は、ある種のバクテリア{プセウドモナス(Pseudomonas)と呼ばれ}に進入し、それらの中で蓄積する。Holdenは「我々は、以前の研究から、既に、このバクテリアは、ナノ粒子類を内蔵することを知っていた。また、共同研究者のOriasとWerlinが、テトラヒメナ(Tetrahymena)と呼ばれる原生動物とナノ粒子類について研究していることも知っていた。そこで、我々は彼らにアプローチし、彼らがバクテリアの餌食の内部に蓄積したナノ粒子類により、捕食者の原生生物が受ける影響の評価への協力に興味があるかどうかを尋ねた。Oriasらは、以前の研究助成とカリフォルニア大学毒性化学物質研究・教育センターへの参加から、ナノ粒子類の毒性について興味を示した。
科学者らは、新しい研究において、量子ドット類とバクテリアの成育との実験を反復し、ある物質の捕食による食物連鎖中で、低位から高位への移動を示す栄養移動の研究に結びつけた。Holdenは「我々は、異なるタイプの餌食を犠牲にして成育する捕食者の影響を、対照として、金属類を含まない餌食、カドミウム塩溶液中で成育した餌食、セレン化カドミウム量子ドットと共存状態で成育した餌食などとの差異により検討した」と述べている。
彼らは、カドミウム濃度は、バクテリアから原生生物への移動を増加させ、この濃度増加のプロセスにおいて、ナノ粒子類は殆ど分解されず、実質的に無変化であった。「我々は、原生生物の内部の粒子類中のセレニウムに対するカドミウムの比を測定し、それはバクテリア成育に用いたオリジナルのナノ粒子類と実質的に同一であった」とOriasは語った。
この研究を通して、カドミウムとセレン化物との比が保持された事実は、ナノ粒子類自体の生物学的拡大を示している。Holdenは「餌食から捕食者へのナノ粒子類のトレーサーとしてのカドミウム濃度の増加、すなわち、生物学的拡大(Biomagnification)が、水生環境中のナノ粒子類で報告されたのは、この研究が初めてであり、さらに、食物連鎖のベースを構成する顕微鏡クラス生物類も含まれる」と述べている。
原生生物内部のナノ粒子類が、食物連鎖の次のレベルの捕食者で見出されたことは、さらに広範囲の生態学的影響への移行を示している。「これらの原生生物は、量子ドット標識のバクテリアの成育により、ナノ粒子類を多量に含むことになる」「本研究での原生生物に対する毒性影響のため、食物連鎖、特に水生環境におけるより高度の毒性影響が懸念される」とHoldenは語っている。
カリフォルニア大学 ナノテクノロジー影響研究センター(UC CEIN)の使命の一つは、環境中におけるナノマテリアルの影響の解明と、科学者によるすべての生物の脅威をもたらすネガティブの影響を、いかにして防止するかの方法の発見である。Holdenは「この背景において、量子ドットがバクテリアに進入する影響を適切にデザインできるならば、我々はこの影響を回避できる」「研究に対して、このように見ることがポジティブな方向であり、今や、科学者らは、振り返り、これから起ることをどうして防ごうか? というべきであろう」と述べている。
下水汚泥中のナノ粒子類は、
最終的には食物連鎖に
Wired Science, January 5, 2011
Dave Mosher
ナノ粒子類は、無数の異なるマテリアルにより製造可能で、それらの安全性は、十分には解明されていない.しかし、超微小粒子は、透明なサンスクリーン(日焼け止め)から悪臭防止ソックスまで、広範囲の数百の消費者製品に添加使用されている。
それらは、洗濯されて排水路に流され、最終的には、下水処理プラントの汚泥中に集結する。その後、毎年、300万トンの乾燥汚泥が肥料として、農業用土壌と混合されている。
ケンタッキー大学の環境毒性学者のPaul Bertschは、「我々は、ナノ粒子類が食物連鎖に進入する可能性を検討し、その結果発見したのは、本当に驚くべきことだった」と語っている。
合成ナノ粒子類のサイズは、約1~100 nm(一部のウイルスと同じ)で、シルバー・二酸化チタン・酸化亜鉛・その他の物資から製造される。それらの小サイズと安定性の長所により、悪臭を消し、食品の腐敗を防止し、有害な紫外線を吸収するなど有用な働きをする。
「しかし、それらの環境に対するインパクトについての知識は、未だ幼児期に過ぎない」とBertschは述べている。
食物連鎖におけるナノ粒子の吸収を検討するため、Bertschのチームは、水耕栽培の温室においてタバコ植物を育成した。植物を育てる間、チームは廃水汚泥中の消費者製品のナノ粒子類に模した水に、超安定性の金ナノ粒子類を加えた。
金ナノ粒子類は、タバコの葉の組織中に形成され、植物中に蓄積された葉を食べたタバコツノ虫のナノマテリアルの濃度は、植物中よりも約6~12倍を示した(画像参照)。
「我々は、ナノ粒子類は蓄積すると予想していたが、このような生物学的拡大が起るとは思っていなかった」と、Environmental Science & Technology (Dec, 3)の共同研究者のBertschは語っている。
Nature Nanotechnology (Dec.19)で発表された、捕食者としての微生物についての別の研究でも、より小さな微生物を摂取した後に、セレン化カドミウムナノ粒子類の濃度上昇が認められた。
「私にとっては、2種類の異なるモデルと、2種類の異なるナノ粒子類を用いた研究が、互いを補強する結論に達したことは、非常に興味深い」と、カリフォルニア大学サンタバーバラ校環境微生物学者で、微生物ベースの研究の協力者であるPatricia Holden は述べている。
少なくとも、5ヶ所の政府機関 [環境保護庁(EPA)・食品医薬品局(FDA)・国立保健研究所(NIH)・国立労働安全衛生研究所(NIOSH)・国立標準/技術研究所(NIST)]が、 ナノテクノロジーの健康および環境へのリスク研究の取組みを支援し、助成額は毎年増加している。また、汚泥中の重金属やその他の毒性物質類は、連邦により規制されているが、ナノ粒子類に対する法的規制は行われていない。ナノ粒子類が経年的に蓄積される土壌を、農場の土壌への混合の増加しているため、懸念が生じるであろう。
[現時点で、科学は「ナノ粒子類の使用を停止せよ」ということは出来ない」]と、これら二つの研究に関与しなかったNISTのDavid Holbrookは語っている。また、「 ナノテクノロジーの安全研究については、新しい研究が重要であり、我々はこのような種類の研究を継続する」と述べている。
Bertschは、「ラボラトリーコントロールの条件下では、ナノ粒子類は有毒であるとのある程度の証拠が存在するが、健康と環境のリスクの現実的な評価には、より高度のモデルが必要である」と語っている。彼とその他の科学者らは、ナノ粒子類のミミズと線虫への影響を評価するため、下水処理場の排水流を用いた共同実験を、既に、英国クランフィールド大学と
実施している。
Bertschは、「結果はドラマチックではないであろうが、現在までのところ、陪審員はまだ安全圏の外側にいる」と語った。
環境中のナノマテリアル
科学者ら、ミミズによる土壌中廃棄
銅ナノマテリアルの吸収を発見
米国農学協会:ニュースリリース
December 15, 2010
ナノマテリアルの製造は、医療・工業・科学などの分野で、着々と増加している。ナノマテリアルは、100 nm以下の次元に加工されたマテリアルで、それらのサイズの小さいことから、極めてユニークな特性を有している。
米国環境保護庁の助成を受けた研究において、ケンタッキー大学の科学者のチームは、土壌中に存在する銅ナノ粒子類のミミズによる吸収を確認した。
ナノマテリアルの取り込みの決定において、最も重大な段階は、金属イオンの取り込みは、ナノマテリアルからの放出か、あるいは、ナノマテリアルそのものかを見分けることであった。研究者らは、X線分析を用いて、銅イオンと銅ナノ粒子類を、ミミズ組織中の銅の酸化状態により識別できた。
ナノマテリアルの通常の使用あるいは廃棄後において、多くの産物が放出されるであろう。これらの廃棄されたナノ粒子類は、水路に入り、終局的には土壌に達する。この研究者らによれば、環境中におけるナノマテリアルの相互作用は、科学研究の不足により明らかではないが、ヒトおよび動物による非意図的な摂取の可能性がある。
この研究のリーダーのJason Unrineは、「この研究は、ナノマテリアルが土壌や土壌生物に取り込まれ、食物連鎖に入る可能性を実証した最初の研究の一つであり、ヒトおよび生態学的レセプター生物類の双方が、ナノマテリアルに暴露される可能性について、重大な意義を有している」と述べている。
Unrineは、進行中の研究では、加工ナノマテリアルの陸生生態系における移動・生物学的利用能・栄養移行・有害影響などの実施を確約している。
ナノマテリアルは、保護用衣服および太陽電池などを含む多様な機器や消費者製品に用いられている。
これらの結果は、2010年11月/12月のEnvironmental Quality誌に発表されるであろう。
環境中の二酸化チタンナノ粒子類
ナノマテリアル:明白色の色素成分は水生生態系の
窒素サイクルを破壊するであろう
Steve Miller
Chemical Engineering News
American Chemical Society
September 30, 2010
二酸化チタンナノ粒子類に暴露された右のアナベナ属バリアビリス(訳者注:窒素固定能を有するラン藻)は、ラン藻グラナ蛋白質顆粒(黒点)の成長を示す。
二酸化チタンナノ粒子類にコーティングされた製品は、純粋の白色に輝くため、1990年代以降、製造業者らは、この化学物質を、化粧品・ペイント・サンスクリーンなどの広範囲に、さらには食品にまで添加している。現在、ナの二酸化チタンは、下水処理の排水を介して開放された水路に放水されることが多い。最近の研究では、このナノマテリアルが光合成生物にストレスを与え、水生生態系における窒素と炭素のサイクルの破壊を誘発すると報告されている(Environ. Sci. Technol., DOI:10.1021/es101658p)。
ナノ二酸化チタンの毒性についての大多数の研究は、それらが河川や湖沼に到達した際の環境インパクトよりも、ヒトの健康影響の可能性に焦点が当てられている。その点から、ボストンのノースイースタン大學の April GuとCarla Cherchi は、水生生態系のモデル生物へのナノマテリアルの影響を研究した。
この研究者らは、このバクテリアは光合成と窒素固定を行うため、一般的なラン細菌門で、ラン藻類とも呼ばれる Anabaena variabilis を選択した。 Gu博士は、「それは窒素と蛋白質その双方のサイクルにおける不可欠なステップを代表している」と語っている。
GuとCherchiは、ナノ二酸化チタンの量を変えた懸濁液中でラン藻類の培養を行った。ナノ粒子類の影響を評価するため、研究者らは、ラン藻グラナ蛋白質(CGP) 顆粒などの細胞成長や細胞構造の変化をモニタリングした。以前の研究では、この生物は、窒素の蓄積の方法として、環境ストレスの期間中に、この窒素リッチの蛋白質の合成を示した。
排水中で見出される類似レベルのナノ二酸化チタンにおいて、ラン藻類の生育は 90% の低下を示した。また、研究者らは、ナノ粒子類の濃度の増加と暴露時間の延長の双方により、CGP顆粒のサイズの増大を認めた。ハイレベルのナノ二酸化チタンに暴露した場合には、96時間内に、CGP顆粒は細胞の直径部分で 16%以上を占め、対照は1%以下を示した。
研究者らは「これら双方の観察は、ナノ二酸化チタンは水生生態系の炭素および窒素のサイクルを破壊する可能性があることを示唆している」との結論を下した。細胞成長が遅滞する時間中では、光合成は中止し、細胞の二酸化炭素取り込みは低下する。一方では、SGP顆粒合成は、通常は、バクテリアが環境中に排出する無機窒素化合物の生成から固定窒素にシフトする。  
「ナノ二酸化チタンの水生生態系への実証により、本研究はナノマテリアル毒性学における重要なデータギャップを埋めている」と、エストニアの国立化学物理・生物物理研究所の Ann Kahruは述べている。また、彼女は、ナノ二酸化チタンの毒性は、閉鎖された水システムにおけるラン細菌門の成育を阻害するような適用も可能である、と指摘している。■

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