プロジェクト報告◆科学技術総合学習プロジェクト① 2002年のスタートにあたり

投稿者: | 2002年4月18日

プロジェクト報告◆科学技術総合学習プロジェクト①
2002年のスタートにあたり
科学技術総合学習プロジェクトリーダー 小寺昭彦
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2002年。いよいよ新体制の土曜講座がスタートをきる。と同時に、4月からは総合的な学習の時間(以下「総合学習」と略す)のスタートでもある。昨今私は、学校教育に関わることが増えてきて、決して順調とはいえないながらも緊張感が高まってくる現場の気配を感じている。この様に先生方はもちろんのこと、総合学習に関わる多くの人の期待と不安が入り交じる中、本プロジェクトをどう進めていくべきかについては悩み多き年の初めとなった。
総合学習プロジェクトについては、一昨年の暮れの「21世紀の土曜講座を語る会」において、学校現場で科学技術社会教育に取り組みたいとの思いを持つ人間が盛り上がり、上半期に一気に走り出したプロジェクトである。プロジェクトの最終的な目標は、総合学習の時間に「先生が」使える科学技術社会教育のプログラムを、土曜講座が提供することであった。そこで一月より営業活動とプログラムづくりについて、前例のない試行錯誤を繰り返しながら四月に研究発表を行った。さらに一般を対象にテストを繰り返してきたところで壁にぶつかった。昨年の八月頃のことである。もっとも大きな問題は、私たち土曜講座の取り組んできたプログラムと、総合学習の授業という場に二つの点で大きく乖離があるということが顕現化してきたのだ。
一つめは、これまでの土曜講座のプログラムが広く市民全般を対象とするよりは、どちらかといえば関心がある人と一緒に研究をしようという中で進められてきたことである。この点は本質的には素晴らしいことであるが、こと学校教育の場などで、いわば義務として授業に取り組む子ども(具体的には高校生以下であるが)を対象にするにあたっては、そのノウハウは十分ではなかった。もちろん一般向けの講演を数多くこなしてきた上田氏や優れたワークショップをつくる経験をもつ小林氏のスキルにより、これを修整することは決して不可能なことではない。しかし、それには十分に時間が必要である。この点に関しては、私たちがこれまでつくってきたプログラムが、多くは大人向けであったという点が更に問題を大きくしている。関心のない子どもに対して何らかの「気づき」を与えるプログラムの創出には、労力と時間と経験をつぎ込まねばならないと言うのが、昨年一年の正直な感想ではないだろうか。
もう一つのポイントは、総合教育の場,つまり相手中心である学校の授業に入っていくことの難しさである。これについては、一年かけてかなりその状況を理解したが、決して本質的な問題ではないだろうし、環境は好転しつつある。しかし、やはり時間をかけて実績とコミュニケーションを積み重ねて行くことは必要であろう。
ざっくばらんにいって、何とか今年四月の総合学習スタートに間に合わせようと力んでみたが、そんなに甘いモノではなかったといえば良いだろうか?
そこで2002年。これからどうするのかである。一言で言えば、焦らず着実に進めようということである。最終的にめざすモノに対してのルートと階段をいくつか設定して、少しずつ成果を出していくこととしたい。まず、一つめのルートが関心を持つ子供に対する働きかけである。これに関しては、すでに上田氏が昨年から「レガス」(新宿区主催の子供科学教室での電磁波の授業)などで精力的に取り組んでいるし、理科大の「サイエンス夢工房」(大学祭での科学実験ブース)もそうした場の一つであっただろう。ぜひ、このような「場」をさがして、経験を蓄積していきたい。二つめのルートは、多くの人に働きかけるプログラムの検討である。昨年、小林氏がつくった「ワークショップ:21世紀の予言」(20世紀の科学技術の進歩を振り返り、科学技術社会の未来像を考えるワークショップ)のような、面白いプログラムをいくつか増やしていきたい。そして三つめのルートは、メンバーあるいはサポーターの補強である。昨年は当初のメンバー四名のまま、一年間を走り息切れした感がある。二つめまでのルートを通じて、このプロジェクトに関心を持つ人のネットワークを強化していくことが大事であろう。
具体的な動きのひとつには、科学館プロジェクトのプログラム作りと連携をとり、ノウハウの共有、アイデアの交換をするといったことも視野に入れていきたい。道のりはまだまだ長く今年一年でゴールが見えてくるかは甚だ疑問である。しかし、他のプロジェクト同様に「土曜講座がやらずに誰がやる」という取り組みである。ぜひ、年末には何歩階段を上ったかを確認して、見守り支えて下さっている会員のみなさまにお伝えしたいと思っている。■

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