2014年5月19日 市民科学談話会 開催報告
危機に瀕する大学―「改革」ばかりでどこへ行く
柿原 泰(市民科学研究室・理事/東京海洋大学・教員)
PDFファイルはこちらから→csijnewsletter_025_daigaku_kakihara_20140707.pdf
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→csijnewsletter_025_daigaku_20140705.pdf
近年、日本全国の大学は、常に「改革」が求められ、いたるところでさまざまな「大学改革」がなされている。改革につぐ改革で、はたして大学はどう変わったのだろうか? これからどこへ向かおうとしているのだろうか?
2014年5月19日、市民科学研究室にて市民科学談話会が開催されました。今回の談話会のテーマは「危機に瀕する大学――「改革」ばかりでどこへ行く?」。筆者による話題提供の後、参加者を交えて活発な議論が続きました。ここでは、簡単に、今回の談話会のテーマのねらい、話題提供した内容の概要を報告します。市民科学研究室では、大学問題に関する企画を今後も考えていきたいと思っておりますので、この報告が今後の取り組みにも繋がっていくことができれば幸いです。
今回の談話会の開催通知では次のように趣旨を説明しました。
ここ10~20年間、日本全国の大学はいつも「改革」をしてきた(するよう仕向けられてきた?)ように思われます。確かに、大学をめぐる環境は大きく変化し、「改革やむなし」の面はあるでしょう。しかし、昨今の大学改革をめぐる論議や掲げられる政策が前提としている、環境の変化や目指される方向性は、誰にとっても自明で納得のいくものなのでしょうか。この談話会では、大学をめぐってさまざまな期待や批判があるなか、現在の大学政策が教育・研究の現場にどのような困難な状況をもたらしているのかを、大学内部の問題としてだけでなく、より広い社会的な問題とも絡めながら、考えてみたいと思います。
現在の日本の大学の状況をどう捉えるか? 一言で「大学の現状」と言っても、どういう側面に着目して見るのか、どのような立場から見るのか、などによって、見え方は異なることでしょう。今回のテーマは、上記の開催通知文にも記されているように、昨今の大学改革によって、かえって大学の現状は惨状とでも言えるような危機的状況に陥っているのではないか、という問題意識の下、そうした現況について大学教員の立場から現場報告をすること、現在に至る大学改革政策がどのように進められてきたのかという流れを整理し、現状をその流れのなかで捉えようと試みること、を主な目的としました。そして、そこで見出される問題は、構造的問題であり、単なる大学内部の問題であるというわけではなく、より広く、さまざまな社会的・政治的な問題とも通底するような問題であるのではないか、ということを問題提起しました。
最近の大学改革政策の状況
まず、国家レベルの大学改革政策の動向について、最近の状況を簡単に報告した。
ちょうど2014年5月現在、学長(や副学長)の権限を強化し、教授会の役割を限定的にする、経営協議会の学外委員を過半数にするなどの学校教育法改正・国立大学法人法改正が国会審議の俎上にのせられていたところであった。そこでは、学内の方針決定をよりトップダウンで、迅速に改革できるようにすることが謳われていた。現場の問題点をよく議論し、課題に対する取り組みを<下から>積み上げていこうとするよりも、外部から持ち込まれる方向性に沿った方針を<上から>下ろしていくやり方にするよう仕向ける改革と言えよう。状況が深刻なのは、法律の改正によって、そのように変えられてしまうというだけでなく、それ以前から、実態としてはそのようなやり方にすでに変わりつつあったのであり、法改正によってその傾向をさらに強めること、その方向性を正当化することが図られている、というところにあるのではないだろうか。
昨年(2013年)11月には、文部科学省による「国立大学改革プラン」が示され、改革加速という号令の下、予算配分の大幅な変更(いま以上に<選択と集中>の度合いを強める)という脅しを通じて、全国の大学の種別化・序列化をさらに進める方向に政策誘導が図られている。そうした際に柱とされる政策は、グローバル化、イノベーションの創出、ガバナンス機能の強化、人事・給与システムの弾力化などである。
【続きは上記PDFファイルにて】