連載
市民研「TV科学番組を語り合う」に参加して
その1
第124回(1/24),第125回(2/7),第126回(2/21)
湯沢文朗(市民科学研究室・会員)
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2020年11月に開始して、ひと月に2回のペースで実施してきた市民科学研究室の「TV科学番組を語り合う」ですが、2026年から毎回の講座に参加しての感想を、皆勤の参加者である湯沢文朗さんにご執筆いただくことになりました。とても活発な議論が交わされる楽しい講座ですので、ぜひご参加いただければと思います。(編集部:上田昌文)
2026年1/24(土)9:00-10:00 第124回 TV科学番組を語り合う
BS TBS 噂の東京マガジン【噂の現場】
「迷惑施設か?!地域の起爆剤か?!データセンター建設と誘致に住民困惑」

まず皆さんへの質問です。普段どのくらいAIを使っていますか?
私の場合は、グーグルで検索するときにAIモードで答えが返ってくることがあり、何か調べ物をするとき、まずCopilotに質問して全体像をつかもうとするくらいで、平均すれば、週一度くらいの使用頻度です。対話型のAIはほとんど使っていません。しかし「何でもAIに相談して、友達みたいになっている」という友人を三人知っています。
AIの爆発的普及を背景にして、データセンター(DC)の建設が進んでいます。日本では、地方自治体として見れば、固定資産税の増加が見込まれるので、誘致しているところも多いです。しかし、番組で「日本データセンター協会」の事務局長が述べていたように、過疎に悩む自治体が誘致しても、電力供給が伴わないとDC建設はできないとのことです。土地がある過疎地にデータセンターを誘致するためには、同時に原発や火力などの発電所の建設が必要になります。
よって、現在建設可能なのは、首都圏など、大都市の近くで大きな電力供給が可能な地域に限られます。番組で紹介された千葉県印西市は東京や成田空港にも近く、「データセンター(DC)銀座」と呼ばれるほど、DC誘致に成功し、固定資産税を大幅に増やしてきました。その印西市の北総線駅から徒歩5分、イオンモールそばの駐車場跡地にDC建設が計画され、真ん前のマンションの住人を中心に反対を訴えています。駅前の中心地に地上6階、延べ床面積約3万平方メートルの巨大な建物が建ち、騒音の心配や膨大な量の水の消費などを住民は心配していました。
DCは事務所扱いなので、法律上は建設を阻止する規制等はないそうです。今後も大都市圏である程度の空き地があれば、DC建設は進むと思われます。
DCと電気はセット、ということは、AIを使うことは電気の大量消費と必ずセットになります。もちろんAI利用の省エネ化研究も加速しているのですけれど、毎日AIを使い、AIを友達のように相談することが当たり前になると、いったいどれだけのDCと発電所が必要になるか、見当もつきません。さらにはいろいろな製品にAIが組み込まれ、何をするにも気づかずにAIを使うことになり、身近な端末とDCの間で常にデータのやり取りが発生し、必ず電気が消費されます。
AIのための電力消費増加に対応するために原発を再起動し、新設を進めようという議論があります。日常がAI漬けになれば、データの往来が加速し、ますます電力を使わなければならなくなります。そのうち議論が反転して、AIのためにエネルギーを確保することが、一番緊急で大事なこととなりかねません。
個人が一回のAIとのやり取りでどのくらいのデータを参照し、電気を消費するのか、それ自体は微々たるものかもしれません。しかし、日常の生活を普通に送るということが、今後ますますAIに依存する方向に向かっているのは確実で、このままでは電力消費をさらに大きく増やしていくことになると、私は痛感させられました。
2026年2/7(土)10:00-11:00 第125回 TV科学番組を語り合う
NHK BS 「フロンティア 脳に忍び込むナノプラスチックを追う」

ナノ(nano)は、10億分の1(マイクロの1000分の1)を示し、ナノメートルとは1ミリの100万分の1だそうです。ウイルスと同程度のサイズにまで微細化したプラスチックが、脳内に入り込んでいるという論文が2025年に発表されました。
番組では、その論文に関連する研究を行う科学者たちが紹介されました。環境中のナノサイズのプラスチックを検出する方法、マウスにナノプラスチックを投与する実験、脳の異物を遮断する生体システムである「血液脳関門」を通り抜けるメカニズム、プラスチックの劣化状況などを、それぞれが探っています。
論文では、認知症にかかった人の脳にナノプラスチックが多く取り込まれているという発見がありました。ナノプラスチックが認知症の要因になっているのか、認知症だから多くのプラスチックを取り込んでしまったのか、現状ではまだ判断できないとのことです。
直観的には、ナノプラスチックが脳にたまることが、認知症をはじめ様々な害を人間に及ぼすような気がします。しかし現在の科学は、ナノプラスチック自体を測定する方法を確立し、どのように脳に取り込まれていくのかを探っている段階です。ナノプラスチックが脳に入り込むことによって、人間にどのような影響を与えるかを検証する前段階にとどまっています。
日々の生活のプラスチック依存が進み、買い物に行けば、必ず何らかのプラスチックを持ち帰ることになります。それ以前に、空気中にもナノプラスチックが漂っていて、脳や各臓器に取り込まれ続けています。長期的にどのような影響が出るのか、まったく未知である状況なのです。
まだ研究は始まったばかりで、番組を見ていて、結論に簡単にたどり着けない、もどかしさも感じましたが、科学者たちそれぞれができることに取り組み、真実に少しでも近づこうとする真摯な姿勢を感じることができました。
NHKの「フロンティア」という番組は、様々な分野の多種多様なことを研究している科学者を紹介し、世の中にはこんなことを研究している人がいるのかと毎回感動させられてきました。どんなことに対してでも、一生の仕事として、日々研究を続けている人を知ることは、私にとって大きな楽しみです。
2026年2/21(土)10:00-11:00 第126回 TV科学番組を語り合う
NHK「こころの時代~宗教・人生~ 地面の下に宇宙があった 自然再生家・高田宏臣」

開発や災害で損なわれた土壌を蘇生させ森林を復活させる達人として注目を集めている高田宏臣さん。番組では、全国各地での活動や高田さんのお生い立ちが、紹介されました。
高田さんの手法は、建物の土台をコンクリートで固めるのではなく、様々な石を置き、木や藁を敷き、隙間のある土にして、水と空気の通り道を作ります。樹木の根が伸び、菌糸がからまり、様々な微生物が生きる、地面の下の宇宙を創る、伝統的な土木方法を再生する試みです。
「土木」という日本語は、civil engineeringの翻訳で明治時代にできた言葉です(中国の古典から取ったという説があります)。土と木を基本にして、科学としては認識されなかったけれど、伝統的に培ってきた考えの大切さを現していると感じます。
西欧近代科学に基づくcivil engineeringは、コンクリートが劣化しないような数十年単位では、素晴らしい強度を保つ巨大な建造物を次々と構築してきました。しかし百年、数百年ともっと長い目で見れば、はなはだ脆弱です。
最近多発する洪水や土砂崩れの多くが、地下の水脈を断ち切ってしまったことが原因であると指摘されています。地面の下の水の流れを守り、育てる、高田さんの思想=伝統的な考えは、しごくまっとうで、もっと広めていくべきだと感じました。そして高田さんの周りには多くの若者が集まってきていて、未来への希望を抱かせてくれます。
今回、番組を制作したNHKの方にも参加いただき、番組で高田さんを取り上げた経緯などを聞くことができました。率直な意見交換ができ、特別な会になりました。■
