ワークショップ「まちの元気・まちの健康を創発する住民交流とは」

投稿者: | 2017年6月19日


第2 回 健康まちづくりフェスタ in 文京&目黒
ワークショップ「まちの元気・まちの健康を創発する住民交流とは」

主催:NPO法人市民科学研究室
2017年3月4日 FARO COFFEE & CATERINGにて

●上田昌文さん(NPO法人市民科学研究室代表)

市民研では2年半前から、科学技術振興機構の助成を受けまして、「健康まちづくり事業」をやってみようということで、いろいろな地域で取材をさせていただきました。そのなかで、だんだん気が付いてきたことがあります。医療、保健で住民の力を活かして地域をつくっていく活動が、全国の色々な所で芽生えているんですね。それをできるだけ良い形で共有したいという思いがあります。これは医療、介護のみならず、実は様々なことに繋がるような「住民の力」の一つの形を示していると思いますので、今日は具体的な事例を通して、皆さんにも、「自分の地域でもやってみよう」という気持ちになるようなワークショップになればいいなと思います。今日はお三方のゲストをお招きしています。澤登久雄さん、服部満生子さん、朝日光一郎さん、大田区、草加市、水戸市からお越しいただいています。前半でゲストの方のお話しをお聞きしますが、単にお話を聞くだけでなく、聞いた後グループに分かれて、議論してみようと思います。ゲストの方々のお話が終わった後に、全体的にもう一度振り返りながら、自分の地域に何を持ち帰れるか、考えていただければと思います。

まずは「問題意識」ということでまとめてみました。誰もが知っているとおり、日本は超高齢化社会になりました。世界の中でも最も先にいる感じです。そんな中、長生きして「日本に住んで良かった」と言える社会にしていくにはどうすれば良いか、考える必要があります。生活をしている地域の中で、医療や介護、それぞれの専門の壁を越えて生活を支えて、もし病気にかかった人がいたら、地域全体で対応の質を高めていくことが重要だと思います。しかし病気になってからやったのでは遅い。予防的な対策を戦略的に考えていかなければならないでしょう。そしてそれは単なる政策としてだけでなく、私たちの中に根付いて、ある種の文化として、「やって楽しい」ものが必要です。一言で言うならば、「医療に依存しないあり方」。医療には入院と在宅とがありますが、入院すると「生活」が切れてしまって、自分の生きがいを喪失していく人が多いのではないかと思います。そういう意味でも「在宅」は強調されているのですが、もっとスムーズに連携が取れないものか、という話も今日は出てくると思います。介護については、私たちは「困っている人を世話する」という概念として捉えがちですが、決してそうではなく、自立していく人をサポートするものだと思うんです。そのようなあり方をもっと打ち立てられないか。あるいは、当然のことながら高齢者が多くなると、病気や障がいを持った人も多くなってきます。でも、そういった人たちが社会から弾かれるのではなく、その人なりの社会参加ができるようにするのはどうすれば良いか。具体的な例では認知症が挙げられます。認知症の対応で今共通しているものとしては、薬を投与して、困ったことを起こさせないようにするというやり方が主流です。本当にそれでいいのでしょうか?厚生労働省の発表では、認知症の人の数は、数年後には700万人になると言われています。これはもう、誰もが認知症になっても困らない社会になっていないとダメです。そしてもう一つの大きな問題は「看取り」です。私も最近、家族と話し合ったのですが、人が死ぬという時に、家族以外の人間がそこに立ち会えないという現状があります。でも実際は、医者と家族だけではなくもっと普通に、人が亡くなっていくことを社会が受け止め、理解するということがあっていいのではないかと思います。そして、高齢者もやはり、体が弱ったとしても自分の尊厳を持っているのが人間としての生きがいの基本ですから、でも家族が面倒を見るということで、家族に負担がかかる、迷惑がかかるというとお互いが気を遣いあっているような状況が少なくないと思うんです。もっとお互いを尊重し合えるような、社会的な介護をもっと考えられないでしょうか。そして最終的には、「高齢者」という括りが無くても生きていける世の中になれば、一番良いのではないかと思います。それは言い換えるなら、高齢者が社会でその人なりに活躍できるということです。それを念頭に置いて共有していただいたうえで、ゲストの方々のお話をお聞きしたいと思います。

私が色々と取材した中で、特徴のある三つの事例を紹介したいと思います。

一つは、全国的にもたいへん珍しい事例だと思います。宮城県の塩竈市による、「中学生と赤ちゃんのふれあい事業」では、中学生が赤ちゃんを沐浴させます。ただし、色々とリスクが高いので本物の赤ちゃんではなく人形を使います。そのほか赤ちゃんや妊婦さんとおしゃべりするなど、実際に触れ合います。きわめて単純な内容ですが、これが実は、たいへん著しい効果を生んでいると思います。塩竈市は、宮城県の他の地域に比べて、中絶する人の数が若干多かったそうです。育児放棄も見られました。それらの原因を調べてみると、親の愛情をしっかりもらっていなかったり、居場所がない、といった「孤独」の問題があることが分かりました。それらをなんとか改善したいということで、中学三年生を対象にして、事業をスタートしました。2008年に1か所の学校から始めて、現在は、塩竈市内にある4つの学校全てで行なわれています。一年間の授業で、生徒、ボランティアを含めて約700人の方が参加します。コーナーを決めて、赤ちゃんと触れ合って、妊婦さんのお話を聞いて、沐浴などの体験をします。最後は、「子供を育てるってどういうこと?」というタイトルで専門家の講演を行います。学校教育の場に入り込むにはとても敷居が高いので、実に色々な工夫をされていることが、お話を聞いて分かりました。全国的に広めるには、教育委員会を含めて、どうやって学校にプログラムとして組み込むのかを考える必要があります。ただ、生徒たちに与える効果は非常に高く、「自分が赤ちゃんだった時、自分の親がこんなふうに面倒を見てくれていたんだ……」と気が付くということが非常に重要です。周囲の人への敬意や尊敬の気持ちが強まるというのが、大きな効果だということです。

次に、体操です。体操も実は自治体の中で、「○○体操」のような形で普及させようとしている所は非常にたくさんあります。その中でも、凄い成功事例だと思います。川崎市多摩区で行なっているご当地体操です。区内の公園30会場で2万7000人が参加しています。30分~1時間かけて、オリジナルの体操をします。区民がどんどん、色々な人を引っ張って、参加者を増やしていきました。なぜこんなにうまくいっているのかというと、じっくり検討する期間があるということです。自治体の中にもともと、運動普及推進委員の方々がいるのですが、それをもう少し拡大して、新しい体操をつくる「体操作成委員会」を立ち上げました。そして色々な情報交換や交流をするために、さらに規模を拡大して運営委員会を作って、単に体操をやるのではなく、「この体操にはこういう効果がある」とか、「こんなふうに運営していこう」という学習会をやりました。地区ごとにグループ会議を設けて、地区を超えた代表者会議をやったら200人くらいの方が集まったそうです。さらに、行政だけではまかない切れないので、ボランティア養成教室を開いて広めていく。現在は「子ども外遊び事業」と連携することで、体操を通じた世代間交流も行なえるようになってきています。同時に、「防災と組み合わせてみよう」ということで、親子の絆とか、お年寄りと若い世代の絆が薄いということに気が付いた方が、体操で人が集まるのならば、そこにお母さんと子どもを呼び込む時に、防災ウォークも取り入れてはどうかということで、体操の側の協力を得てやってみたら、なかなかうまくいっているそうです。東日本大震災が大きなきっかけになっていると思いますが、規模はまだ小さくても、地域を実際に歩いて、災害時の自分たちの避難コースを確認しながら3時間ほど歩きます。

最後は非常に包括的に取り組んでいる事例です。皆さんのように、市民で集まって勉強したいという方はたくさんいるんですが、行政側がつくるのではなく、市民が講座を自主的に運営して、この規模を達成するというのは、凄いことだなと思います。千葉県浦安市で行なわれている「うらやす市民大学」です。グループに分かれて、色々な勉強会を行なっています。その大本にうらやす市民大学があって、受講生は合計260名で15講座、助成を受けて運営しています。専門の講師を呼ぶだけでなく、自分たちで運営して、自分たちの中から講師を決めて講座を持つこともあります。行政も後押しを行う良い仕組みをつくっています。市民大学ができた経緯や、他とどのように繋がっていったかを見ると、行政の仕組みとしては、市民参加型協働事業をサポートする制度があって、まとまった予算がつくんですね。その枠を利用して、市民の側からどんどん応募して、良い活動は活動資金が取れるという仕組みが確立しています。そのような中で、市民大学や「介護予防アカデミア」が事業を行っています。私も1月に「2017年介護予防フェア」というイベントに行きましたが、介護予防アカデミアで活動している様々なグループが、全て同じ施設のワンフロアを全部使って、ブースを出します。そこに市民が1000~2000人規模で訪れて、各ブースを体験するというものです。浦安という地域は、ある時期になると埋め立て、また埋め立てと繰り返すので、更地の所に全国から人が入ってくるんですね。奇妙なことに、団地のような横の繋がりができます。調べたところ高齢化率が高い所が要介護の人の率が高いのかというと、決してそうではありませんでした。浦安市に「地域包括ケア評価会議」というのがありまして、どこの地域に要介護の人が多いのかを調べたら、古くからの住民が住んでいる所でない、新しく埋め立てた一帯の地域に人が流入してきて20~30年経っているような所は、高齢化率は高いが、横の繋がりがとても強くて、その影響で要介護の人の率が下がってきているらしいということが分かってきました。

形やテーマは様々ですが、このような活動が全国に点在しているということで、そういった力を他の地域が吸収していくことが必要になってくるのではないかと思います。

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