連載:博物館と社会を考える
第7回
世界科学館・科学博物館の日(世界科学館デー)
林 浩二(千葉県立中央博物館)
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連載「博物館と社会を考える」
第1回 科学館は博物館ですか? (2015年5月)
第2回 博物館はいくつありますか? (2015年7月)
第3回 博物館の展示は何かを伝えるのですか? その1 (2015年9月)
第4回 博物館の展示は何かを伝えるのですか? その2 (2016年2月)
第5回 博物館の国際的動向2016 (2016年10月)
第6回 科学館・科学博物館の社会的役割宣言(2017年3月)
●連載の訂正(第6回)
第6回 注6をp.2とp.3の2か所で使ってしまいました。
先にでてくるp.2の注6は
http://www.scws2014.org/home/mechelen-declaration/
を参照してください。訂正してお詫びします。
11月10日は世界科学館・科学博物館の日
今回は、前回少し触れた世界科学館・科学博物館の日について、詳しく見て行きましょう。
連載第6回で紹介しましたように、毎年11月10日は世界科学館・科学博物館の日/International Science Center and Science Museum Day (ISCSMD)とされ、これは昨年2016年に始まったばかりのものです。
国連教育科学文化機関・ユネスコがその総会で11月10日を科学の平和的利用の日にするという決議(resolution)を行ったのは2001年のことです。2001年10月〜11月にパリで行われた第31回ユネスコ総会の20番目の決議で、毎年11月10日を平和と開発のための世界科学の日/World Science Day for Peace and Development(WSDPD)とするよう定めました(注1)。その決議の中では、ブダペスト(ハンガリー)で1999年6月26日〜7月1日に開催された世界科学会議/World Conference on Science の成果文書である科学と科学的知識の利用に関する世界宣言/Declaration on Science and the Use of Scientific Knowledge(注2)を認識して、と述べられています。
ユネスコと国際科学会議/ICSUの共催によるブダペスト会議は、科学と社会の関係、また持続可能な開発を考える上で重要な位置を占めています(注3)ので、いずれ改めて取り上げたいと思います。
平和と開発のための世界科学の日/WSDPDの第1回は2002年11月10日に開催されました。
画像はそのポスターです。
ユネスコの WSDPD のページの右のカラムには各年のページへのリンクが出ています。注5
2016年は、科学館と科学博物館を祝うがテーマでした。2015年ユネスコ博物館勧告を受けて、平和と持続可能な開発のための科学館・科学博物館の役割が期待されています。そして、この2016年から、この11月10日を世界科学館・科学博物館の日/International Science Center and Science Museum Day(ISCSMD)とすることになりました。このISCSMDについては、科学館協会/Association of Science-Technology Centers(ASTC)がサイトを立ちあげています(注6)。
このサイトでは、科学館・科学博物館みずからがどのように持続可能な開発目標(SDGs)を位置づけて発表するのかを解説するページもあります(注7)。SDGsは、2015年ユネスコ博物館勧告よりも個別具体的でコンパクトな説明になっているため、このように科学館・科学博物館の活動と直接に関連づけて考える対象としてとりあげられるのだと考えます。
今年2017年のISCSMDは、世界的な実験として、環境のための地球規模の学習及び観測プログラム/Global Learning and Observations to Benefit the Environment/GLOBE(注8)と共に、蚊をテーマにしています(注9)。「蚊は世界で最も危険な動物」という認識で、蚊の生息場所を探し、蚊によって引き起こされる病気(感染症)について調べることを勧めています(注10)。
日本で2014年に約70年ぶりに国内でのデング熱感染者が確認されたのは記憶に新しいところで、このデング熱はヒトスジシマカによって媒介されます(注11)。同じく蚊が媒介する感染症にジカ熱があり、昨年2016年はオリンピックが開催されたブラジルのリオ・デ・ジャネイロでは同じく蚊が媒介するジカ熱が流行している地域ということで、流行が懸念されました。
今回の呼びかけでは、日本にも分布していて、実際にデング熱を媒介したヒトスジシマカとジカ熱の媒介でしられるネッタイシマカを特に調べるようになっています。
このように先進国・途上国を問わず身近で深刻なテーマを全世界で同時に調べることは、2030年に向けて世界中で持続可能な社会を作ることにつながると考えられます。SDGsのうち、特に目標3の「すべての人に健康と福祉を」、また感染症に言及しているターゲット目標3.3に関連していると考えられます。
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