声との関わり 市民研理事による読み切りリレーエッセイ 第7回

投稿者: | 2019年5月30日

声との関わり

瀬野豪(NPO法人市民科学研究室・理事)

少しおかしなことを言うようですが、マイクロフォンを通した声とはなんなのだろう、とよく考えて います。まず、それは直接的に聞こえる肉声ではないと考えられています。しかし、マイクロ フォンからの音でも、生きている相手からのときは「ライブな声」として聞かれています。会 場で聞くときや、電話で通話をしているときなどがいい例です。
 
第二に、音声通信の技術を組み合わせた「メディア」の声があります。放送番組、映画、 音楽などのポピュラーカルチャーでは、いつも声が聞こえてきます。それは、多くの人が聞く「ポピュラーな声」にもなりますが、声の主が生きているのかどうかは調べてみないとわからない。身近な声ではあるが、遠隔的な関係があり、ときに謎めいている。著名な人物の声や、よく知られているキャラクターなどがいい例です。

第三に、従来の聞き方では、おさまりがつかないような声もあります。例えば、かつての人々の声を聞くとき、それは生きている時間をともにはできませんし、かつてポピュラーだったとしても多くの人にとってよくわからない声になっていたりします。また、動画サイトやSNSに投稿されている声は、従来の声の聞き方だけでおさまりがつくのかどうか。こうした声との関わりから「アーカイブされる声」という聞き方が生まれていくだろうと考えています。

「声」は、警戒されるべきものとして論じられることもあります。例えば、視覚的な文化との対比から、過度に「見えざる」ものとして誇張されるとき、声についての過大な捉え方が生まれることがあります。また、現実的な社会生活においても、音声データを「声の証拠」として公開することは、関係者の人生を左右するほどの影響力を持っています。したがって、「声」に関わることは慎重でなければいけません。わたしは、マイクロフォンを使うという具体的な部分に着目して、マイクロフォンによる歴史的で社会的な「声」のあり方を見極めて、声の聞き方を丁寧に作ることが、とても重要ではないかと考えています。

肉声、「ライブな声」、「ポピュラーな声」、「アーカイブされる声」との関わりである、「声」の多層的な聞き方は、科学技術に関する知識のあり方にも関わっているでしょう。多くの人が身近に感じられるような、科学技術に関する「ポピュラーな声」や「身近な声」をテーマにした講座や企画を考えています。

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