【翻訳】大気汚染と自閉スペクトラム障害: 環境リスク要因に深く探りを入れる

投稿者: | 2019年1月8日

【訳者コメント】
一昔前の自閉症といえば、米国においてすら、母親の育て方や遺伝に世間の目は向けられていました。それが今や産業革命以後の大気汚染が自閉症の発症あるいは悪化と関係があるかもしれないことが学者たちにより明らかにされつつあります。中国の大都会の重篤な大気汚染は住民にとって心配なことであろう。米国の自閉症に対する取り組みは時空を超えて、すなわち広域にわたりかつ長期的にコホートをつくり遺伝的データに基づく調査研究を行っており、目を見張るものがあります。これらのデータはやがて最先端の脳科学研究とつながっていくと思います。

Environ Health Perspect. 2018 July 126(7) doi: 10.1289/EHP3430

Air Pollution and ASDs:
A Deeper Dive into an Environmental Risk Factor
大気汚染と自閉スペクトラム障害:
環境リスク要因に深く探りを入れる

Lindsey Konkel
ニュージャージー州を本拠地とするジャーナリストで科学、健康及び環境について書いている

原文はこちらから

翻訳者:五島廉輔、五島綾子、上田昌文

PDFはこちら→csijnewsletter_048_201901_goto_02

 自閉スペクトラム障害(ASDs)(注1)に罹患する子供たちの罹患率は、世界平均が約0.7%であるのに対して(2)、アメリカ合衆国では推定で2.24%です。(1) ASDsの正確な原因はわかっていませんでしたが、遺伝的及び環境的要因の両者がその一因になっていると考えられています。「環境的要因を理解することは重要です。何故ならば、それによってこの疾病にどう介入すればよいかが見えてくるかもしれないからです」と、研究がEnvironmental Health Perspectivesに掲載された著者たちは述べています。(3) 新しい研究では、研究者たちはASDの診断と重症度について155個の危険な大気汚染物質の潜在的影響を調べています。

 過去12年間で確認されたASDsに対する潜在的環境的要因の中で、最も研究されているのは大気汚染だと言えそうです。(4,5) 「全体的に見て、 我々は大気汚染の測定値がより高い地域で生活し、呼吸している人々がより高いリスクにさらされていることがわかります」と、カリフォニア大学のDavis, MIND研究所で“自閉症と神経発生についての環境疫学プログラム”の指導者であるIrva Hertz-Picciottoは述べています。Hertz-Picciottoは最近の研究には携わっていませんでした。
 
 危険な大気汚染物質には、金属、揮発性有機化合物および微粒子状物質が含まれています。ASDsに大気汚染が関係していると報告された場合に、実際にどの汚染物質がその原因になっているのかを導き出すのは困難であるかもしれません。ASDsと微粒子状物質とをつなげる証拠はかなりしっかりしたものです。(5,6,7) しかし、大気汚染は全体として地域がどんな地理的な場所であるか、あるいは季節はどうなのかということによってでさえ、その化学的成分を変化させます。そして個々の大気汚染を構成する化学物質を調べた調査結果にはばらつきがありました。(8,9)

「この研究に対するモチベーションは“危険な大気汚染物質”のどれが潜在的な悪いアクターであるかを同定することでした」と,ウィスコンシン大学ミルウォーキー校の疫学者で、研究を指導している著者のAmy Kalkbrennerは語っています。

 Kalkbrennerと共同研究者たちは自閉症遺伝資源交換(AGRE)(注2)コホート(注3)に登録された2017人の子供たちのグループを研究しました。その研究グループにはASDと診断された子供たちと影響されていない兄弟姉妹の両者が含まれていました。AGREはASD支援団体であるAutism Speaks(注4)によって1997年に開始されました。その研究はアメリカ合衆国でASDに罹った子供を持つ2000以上の家族の遺伝データを調べたのです。(10)

 研究者たちは1994年と2007年の間に生まれた子供が少なくとも一人はいる家族を含めるようにしました。彼らはその研究期間の間の大気汚染物質濃度をアメリカ合衆国環境保護庁(EPA)のデータから得ました。これらのデータから、彼らは子供の誕生時の各家族の自宅住所における年平均の大気汚染物質濃度を推定しました。

 その結果は6つの危険な大気汚染物質の曝露によってASDと診断されるリスクが有意に高くなることを示しました。しかし一方では、4つの他の物質の曝露については、そのリスクは低くなることがわかったのです。ASDに罹っている子供たちの中で、2つの汚染物質がASD重症度のより高い数値と有意に相関していることがわかりました。他の4つの物質はより低いASD重症度との相関を示していました。その4つの内の1つはASD診断でもより低いリスクを示していました。

 プロピオンアルデヒド(注5)とメチルtert-ブチルエーテル(MTBE) (注6)の二つはASD診断により最も強い陽性の結果を得ました。MTBE曝露による四分位範囲(注7)の増加はASDと診断されるその範囲の2.33倍の高いリスクを示し、プロピオンアルデヒド曝露は1.92倍のリスクの増加を示しました。

【続きは上記PDFでお読みください】

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です