報告 植物園×大学~小石川植物園の公開例から【前編】

投稿者: | 2020年4月7日

市民科学講座Bコース(2019年12月7日(土)実施)

報告 植物園×大学~小石川植物園の公開例から~  【前編】

報告者:三河内彰子

◆講師◆
池田博(東京大学総合研究博物館 准教授)
根本秀一(東京大学大学院理学系研究科附属植物園 キュレーター)
◆ファシリテーター◆
三河内彰子(市民科学研究室 理事 / 東京大学総合研究博物館 研究事業協力者)

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<概要>

市民科学講座Bコースで今回取り上げたのは植物園。花の季節、新緑や紅葉など四季折々に楽しめ、市民の憩いの場、行楽の場として利用されている植物園。公開の仕方は様々ですが、植物学的な視点から体験を深める機会はどの程度あるのでしょうか? 今回は、東京大学大学院理学系研究科附属植物園(通称、小石川植物園)という大学の一施設としての植物園を事例として、植物園×大学が公開する場合、どのような特徴と可能性があるのか、このテーマを2部構成で行うこととなりました。2部とは、午前に小石川植物園の植物見学および、園内の柴田記念館と収蔵庫の見学をし、昼に東京大学総合研究博物館に場所を移してお茶を挟み談話、ミニ実習を交えた交流を行い、さらに博物館が所蔵する押し葉標本や植物画を見て交流しました。実は小石川植物園と総合研究博物館の植物部門は同じ東京大学植物標本室という組織でもあるのです。このことは後半のティーブレイクの後の話の中で池田さんが触れています。

今回は定員を設定しての募集を行いました。これまでにも講師の池田さんと三河内は、小石川植物園で市民科学研究室の企画を含む、複数の植物園見学会を実施してきました。見学者が10人を超えると列が長くなり、植物を見ながら話を聞くことが難しくなることを度々経験していました。特に今回は、久しく工事中だった温室が11月19日に新たに公開される機会を利用して、見学のメインを温室にしたため、通路が狭いということもあり定員を設定しました。10名から多くても15名でということで募集を行ったところ、植物園では講師の外に10名、博物館では8名(時間の都合で2名が途中で退席)となりました。

見学会を少人数でできたことで、顔や名前の分かる間柄になり、さらにティーブレイクがアイスブレイクとなって談話しながらレクシャーをしたり聴いたり、質疑応答も和やかな雰囲気の中で出来たように感じました。見学後に参加者の方から感想が寄せられ、また同じメンバーに再会したいという声を寄せていただいたり、それと共に「(柴田記念館に)柴田先生の父である柴田桂太先生の肖像画がありました。桂太先生の本はありますが写真を見たことがなかったので、驚きました。後で調べてみると柴田家のいろんなつながりが見えてきました。」と家に帰られてからもご自分で調べられ、その経緯や結果を報告してくださいました。是非今後も今回の出会いをゆるやかに継続し、活動を共にしたいと感じました。以下当日の報告をいたします。

<小石川植物園見学>

まず、正門を入ってすぐ近くのソテツの前で足を止め、池田さんより、このソテツは、1896年(明治29年)に当時植物園の画工だった平瀬作五郎によってイチョウに精子があることを世界で初めて明らかにしたことに刺激を受けた池野誠一郎博士が、翌年にソテツにも精子がある事を発見した株から分けた株であることが紹介されました。よく中心を見ると、栗の実ぐらい大きさの実(種子)がついている。どうやって実ができるか、池田さんの声にも力が入り、皆入れ代わり立ち代わりソテツの実を観たり写真を撮ったりしました。

真冬の花が少ない時期に、背の丈以上にもなるダリアの花が満開でした。キダチダリア、コダチダリア、またはコウテイダリアと呼ばれる種類で、メキシコからボリビアにかけてが原産です。いまでこそ各地で植栽されていますが、この株は場所を変えながら20年以上栽培されています。
小石川植物園には科学者にちなんだ植物も生えています。なかでもニュートンのリンゴとメンデルのブドウとは隣同士に植えられており、根本さんから木の前でこれらが実際ニュートンとメンデルにゆかりのある場所から分けられたものだと解説がありました。物理学者ニュートン(1643-1727)が、庭にあるリンゴの木から実が落ちるのを見て「万有引力の法則」を導いたという逸話はよく知られているところですが、ニュートンの生家にあったリンゴの木が接ぎ木によって、イギリス国内だけでなく、アメリカ、ドイツ、スウェーデンなどの科学に関係ある施設に贈られ育てられているそうです。日本国内でも、他の研究所や植物園、学校などに分けられているので、どこかで見たことがあるかもしれません。
その中で、小石川植物園とニュートンのリンゴの木とは他の場にはない深い縁があります。もともとは、昭和39(1964)年に英国物理学研究所から日本学士院長柴田雄次博士に贈られた枝でしたが、ウイルスに感染していたので、小石川植物園で隔離栽培し、ウイルスを治療した後で、昭和56(1981)年に園内に植えられました。 国内の他の場所にはその後、その木から接ぎ木で分けられたのだそうです。

メンデルといえば、エンドウマメによる交配実験から遺伝法則を見つけたことが有名ですが、ブドウでも実験を行っていたことはあまり知られていません。小石川植物園の第2代園長を務めた三好學教授が、大正2(1913)年チェコのブルノーにある、メンデルがブドウの交配実験をしていた修道院を訪ねたとき、旧実験園に残っていたブドウの分譲を願い出て、その翌年に送られてきたのだそうです。 この後、本国のブドウが消滅したことがわかり、このブドウの木から里帰りをさせたそうです。この時期は両方ともに葉は落ちてしまっていましたが、冬芽がついているのを見ることができました。3月には葉が出はじめ、リンゴは4月から5月頃まで花を咲かせることでしょう。

【続きは上記PDFにてお読みください】

 

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