CitizenScience.Asia アジア圏における市民科学コミュニティーの紹介

投稿者: | 2020年4月7日


CitizenScience.Asia
アジア圏における市民科学コミュニティーの紹介

宮下絵夢フェリチタス(Emu-Felicitas Ostermann-Miyashita)
Leibniz Centre for Agricultural Landscape Research (ZALF) 博士課程

PDFはこちらから

CitizenScience.Asia(CitSci.Asia) はアジア圏での市民科学を促進するために、アジアに現存しているプロジェクトの可視化や国家間および各国内における市民科学プロジェクトのネットワーキングに取り組んでいる団体です。

CitSci.Asiaの大きな特徴の一つとして挙げられるのは、ヨーロッパのECSA(European Citizen Science Association)やアメリカのWilson Centerなどアカデミック界から成立した市民科学コミュニティーとは異なり、本職を別に持つ「市民」が自ら立ち上げた組織であるという点です。2017年5月に設立されて以来、順次新たなメンバーが加わり現在では9か国、21人が運営チームメンバーとして活動しています。メンバーのバックグラウンドはIT系の専門家や学校教員、市民科学プロジェクトのマネージャー、学生など実に様々です。

CitSci.Asiaが発足するきっかけとなったのは、2016年にアジア圏でのジカ熱の拡大を懸念した香港市民によって立ち上げられたZikathonという市民科学プロジェクトでした。プロジェクト企画の中心人物の一人であったIT専門家が、Mosquitoalertというスペインに既に存在していたアプリを中国語に翻訳したことによって、市民が香港市内の蚊の目撃場所や生息域を地図上に示すマッピングを可能にしたものです。具体的な内容はこのリンクからご覧になれますが、本プロジェクトは政府が発表していたデータよりも正確で緻密な地図を公開し、素晴らしい成果を出した市民科学プロジェクトとして世界的に注目を浴びました。この結果を受けてZikathonの企画メンバーは蚊に関わる様々な国際会議に招かれ、世界各国の市民科学プロジェクトや、それらを地域ごとに束ねているECSAなどの市民科学コミュニティーの存在を知りました。世界的に市民科学の注目度が高まっているなか、アジア圏において未だ市民科学コミュニティーが存在しないことを知ったZikathonプロジェクトの企画者が立ち上げたのがCitizenScience.Asiaという市民による市民のための市民科学コミュニティーでした。香港で既に活動を行っていた市民科学プロジェクト関係者や地元の学校において市民科学を授業に取り入れている教師陣などを中心に、アジア各国において市民科学に関わっている人をスカウトすることで、まずは運営チームを設立しました。私に声がかかったのはドイツに留学をしていて市民科学をテーマに研究を行っていた2018年1月頃でした。当時執筆中だった市民科学論文の調査のため度々訪れていたベルリン自然科学博物館にあるECSAの本部の方からの紹介で、香港在住のCitSci.Asia創設者の一人とWeb面接を行いました。同年4月に帰国予定だったので、以来現在に至るまで二年以上にわたってCitSci.Asiaの日本代表(Japan Ambassador)及び運営チームの一員として活動をしてきました。日本での具体的な内容としては、既存の市民科学プロジェクトの把握や活動紹介、実際に複数の市民科学プロジェクトを招待したワークショップの企画や学会での発表などです。

市民科学アジアは以下の4点を目標として掲げています。

1) 市民科学に関心のある人が必要な情報と資源を得られるコミュニティーを作る
2) 情報の共有や協力のために世界各地の市民科学コミュニティーの公式パートナーとなる
3) 現在のアジア圏における市民科学プロジェクトの活動を発信するポータルを作る
4) 教育活動を通して市民科学の重要性を次世代に伝える

インターネット上では公式Facebookサイト、Twitter、Mediumさらにはニュースレターなど様々なメディアを通して活動の発信を行っています。オンラインジャーナルであるMediumにおいてはプロジェクト情報、最新の活動内容、イベントや会議の報告など、定期的に記事が挙げられています。最初の公式イベントとして2018年9月に、日本の市民科学研究の第一人者である小堀教授を香港に招き、現地の市民科学プロジェクトや市民との交流を目的としたトークイベントを企画しました。CitSci.Asiaにとってターニングポイントとなったのは2018年12月に香港にて行われたNational Geographic主催のワークショップでした。CitSci.Asiaメンバー数人を含むアジア圏で市民科学に携わっている30人が選出され、3日間にわたってアジアで市民科学を浸透させる方法について活発な議論が行われました。このワークショップをきっかけに、新たな国のアンバサダー及び運営チームメンバーが加わり、組織として大きく前進しました。また、現在では国連のバックアップの元、Global Citizen Science Partnership (GCSP) の一員としてECSAやWilson Center を始めとする他の国際的な市民科学組織と協力して持続可能な社会を目指した市民科学の発展に尽力しています。

【続きは上記PDFにてお読みください】

 

市民科学研究室の活動は皆様からのご支援で成り立っています。『市民研通信』の記事論文の執筆や発行も同様です。もしこの記事や論文を興味深いと感じていただけれるのであれば、ぜひ以下のサイトからワンコイン(100円)でのカンパをお願いします。小さな力が集まって世の中を変えていく確かな力となる―そんな営みの一歩だと思っていただければありがたいです。

ご寄付はこちらからお願いします



コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA