携帯基地局に関する問い合わせへの対応について
上田昌文(NPO法人市民科学研究室)
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最近、市民科学研究室に「自分の住まいのすぐそばに携帯基地局が設置された/設置されることになった」「健康への影響が気になるが、大丈夫なのか」「(基地局に土地を提供している)地権者に交渉してみたいが、どう伝えればいいのか」といった問い合わせが増えています。
もちろん、基地局設置の問題は20年ほど前から日本全国各地で絶えることなく発生してきました。そのなかには、近隣住民の反対運動が高まることで、その地点における基地局の設置計画を撤回させたり―携帯通信事業者は近隣の他の地点での設置に改めて動くことになるが―、場合によっては既設の基地局が地権者との契約の更新に至らず撤去されたり、といった事例も含まれていますし、そうしたトラブルの多発があったからこそ、全国の自治体で携帯基地局設置やその運用に関して条例を定めるところが少なからずあるのもそれ故です(※1)。
基地局設置数の推移は「WiFi比較ナビ」のグラフでみるように(※2)、4G/LTEと5Gの基地局に関してここ数年でも増加の一途をたどっており、とりわけ各社が新たに5Gの基地局を設置するようになったこと、そして新規参入の事業者である「楽天モバイル」がここ1,2年でその数を急増させていることが、この問題での問い合わせが増えていることと関係しているものと思われます。
基地局に関しては、新たに設置された(あるいはこれからされる)ある特定の基地局がいかなる健康影響を周辺地域にもたらすのかを一概に論じることが非常に難しく、そのアンテナから放射される電波が、他の放射源とあわさって―そのアンテナから周辺1キロ範囲において他の基地局がないと言えるのはむしろ例外的―周辺にどのような電波強度の分布を作っているかを明らかにするのも容易ではありません。ただ、例えば市民科学研究室にとっては、これまで行ってきた20数件の基地局周辺地域での電磁波測定の経験からして、基地局アンテナの位置(地上からの高度や他の建物との接近具合)、放射源に関して公開されたわずかなデータから推測できるだろうこと(出力やアンテナのタイプなど)から、周辺の電波環境がおおよそどんなものであり得るかを、かなり漠然と推測することはできます。しかしこれはあくまで推測で、実際には、(1)住民が事業者との交渉によって引き出す様々なデータ、(2)周辺地域を歩き回って簡易測定器を用いて20から30箇所の地点で測定を行った得たデータ(もちろんこれは基地局が既設の場合ですが、未設置の計画段階で測っておけば、設置後と比較してそのアンテナの寄与分がわかりますから、測定する価値はあります)を得てはじめて、「どれくらいの影響がありそうか」を検討する手がかりを得ることになるのです。
ですから、まずは(1)に関して、
・地権者は誰か(個人か、分譲マンションの管理組合か)
・町会や自治会はこの問題への関心は持っているか
・自治体に何らかの(例えば景観に関する規制などの)関連する条項は定められていないのか
・事業者は何からの告知(事前説明)を行ったか/住民説明会を行ったか
・事業者は次のような情報を提供することに応じたか
(通常はごく限られた情報しか提供しないことになっています)
アンテナの出力
アンテナから放射される電波の届く範囲(基地局の「セル」の範囲)
アンテナの位置(設置地点の住所/設置地点の地上高/アンテナ自体の高さ)
アンテナからの放射される電波は4G/LTEか5Gか
アンテナから放射される電波の周波数帯
何故その設置場所を選んだのか(その場所でなければならない必然性はあるのか)
といったことをできるだけ明らかにするようにしてください。
そのうえで、(2)の実測を行います。実測の事例は、以下のものがあります。
・携帯電話基地局アンテナからの電波を含む高周磁計測(T 市 )
上記の事例のT市とC市にあるような、簡易測定器を用いた測定は、(1)に関する情報を得られたかどうかを確認した上で、ご要望があれば、現地に赴いて実施することになります。
以上のようなことをご理解いただきながら、ご相談に応じてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。