図書館総合展2024に参加して
林 浩二 (千葉県立中央博物館 共同研究員)
PDFはこちらから図書館総合展
図書館総合展2024

図書館総合展2024の会場案内図
ブース(https://www.libraryfair.jp/booth)には図書館関係の企業など事業者、行政組織、図書館組織、その他が出展しています。それぞれのブース内でトークセッション等を自由に企画・運営していました。他にポスター(https://www.libraryfair.jp/poster)のスペースがあり、個別の図書館、大学の研究室、学内サークル等々きわめて多様な主体が出展していました。前述の開催概要によれば、 非営利団体・個人向けのアカデミックプランなら、会場3日間とオンラインの両方でのポスター展示が2万円で行えます。 イベント(https://www.libraryfair.jp/forum)のうち、フォーラムはパシフィコ横浜の別棟アネックスホール等で行われ、主催者企画および団体企画が午前1枠・午後2枠あり、多くは事前申込制で参加を募っており、賑わっていました。ほかにスピーカーズコーナーや、ブース内でのイベントなどもありました。越境・Openのための逗留地

「越境・Openのための逗留地」説明ポスター
この企画は、次世代型文化施設フォーラム(注3)とOpenGLAM JAPAN(注4)のメンバー6名、大向一輝(東京大学)・呉屋美奈子(恩納村文化情報センター)・佐久間大輔(大阪市立自然史博物館)・佐々木秀彦(アーツカウンシル東京)・花田一郎(大日本印刷株式会社)・福島幸宏(慶應義塾大学)によるものです。 わたしも参加している小規模ミュージアムネットワーク(愛称;小さいとこネット、注5)でもパネル1枚と机スペースを使わせてもらいました。
「小さいとこネット」ポスター
越境・Openのための逗留地のブースでの発表から

「デジタルな社会の博物館、国際動向をにらみながら」セッションの様子
・ 博物館のOpen化、進めるには何が足りない? CivicTechにできることは? 話題提供者はいずれも自然系・自然史博物館系の学芸員だったため、自然史系に絞って博物館資料の公開について話されました。GBIF; Global Biodiversity Information Facility)(注8)、JBIF; 日本生物多様性情報イニシアチブ(注9)、S-net; サイエンスミュージアムネット(注10)などが紹介されました。市民が使う/使える技術で課題解決に取り組むCivicTechの例1; 生物分布情報を集めるスマホアプリ「iNaturalist(注11)」 のデータは専門家等による確認を経て上記のGBIFに接続しているとのこと。例2;市民参加の生物写真で生物の分布を確認する「BioBlitz」(注12)はアメリカの国立公園で1990年代に始まった、24時間というように時間を決めて探す生物調査イベント。BioBlitzはスマホ時代の最近でも、駒場地区とか、白神山地などでも行われているようです。 ・ 小さいとこ図書館総合展に集まろうジャン 小規模ミュージアムネットワーク(小さいとこネット)とは何かの説明と、わたしも加わった図書館総合展で2018年、2019年に小さいとこネットが行ったポスター展示についての説明から始まりました。話題としては、小規模館では職員が少なく手が回らないため、標本づくりや標本資料の公開などについては、大きな館とつながる必要が指摘されました。資料の保存に関して、中性紙箱は高価なので別の手段を工夫する必要という指摘があり、資料を中性紙の畳紙(たとう)で包むのは有用かもしれません。他に、小規模ミュージアムでも退職職員の記録・技術や暗黙知、さらにはネットワークの継承も必要と指摘がありました。 ・ 速報! ColBaseの利用目的アンケート集計結果(2024年度上半期) 独立行政法人国立文化財機構(https://www.nich.go.jp/)が公開しているデータベースのうち、 ColBase; 国立博物館所蔵品統合検索システム(注13)の利用について、2024年4月から9月の利用者アンケート集計(半数程度が回答)の超速報でした。そのうち、利用1件という資料がたくさんあり、一部の資料だけが利用されているわけではないというのは驚きで、この結果からは、著名な資料の画像だけ公開すればよいわけではないことになりそうです。 ・ AIによる絵本推薦システムの活用 同じ物語でも異なる挿絵で刊行されている絵本について、タッチパネル式に選んでいくことで、自分好みの絵本が選べるシステムを構築・検証中という話でした。沖縄県恩納村の子どもの言語発達に図書館ができることを模索しているという話題もありました。 ・ DH権利問題ガイドのご紹介 『デジタル・ヒューマニティーズ(DH)研究に関する権利問題ガイド』(2024年4月、注14)についての紹介でした。たとえば個人情報の取扱に関して、ガイド9ページに掲載されている各種のガイドラインなどを詳細に参照する必要があることがわかります。 ・ 図書館・博物館の動きを国際的視点から眺めてみる ヨーロッパあるいは米国の図書館が社会の分断にどう対応しようとしているのかが紹介されました。加えて国際博物館会議ICOMの規約における博物館の定義の改定についても併せて議論されました。越境・Openのための逗留地のフォーラム(11月7日午前、第3会場)
博物館と図書館の越境を模索する2つのフォーラム

フォーラム「図書館総合展で博物館を語る」の様子
・ フォーラム「博物館学芸員vs図書館司書~本気の”越境”を目指して」 (11月7日午後、第3会場) https://www.libraryfair.jp/forum/2024/1316 河瀬裕子(大阪府泉大津市立図書館シープラ館長)と持田誠(北海道十勝郡浦幌町立博物館学芸員)の対談で、コーディネーターは神代浩でした。まとめに代えて

saveMLAK(注18)によるポスターの例。会場3日間でこのスペースと、オンラインでの公開でアカデミック枠なら2万円で出展できる。
注 ※リンクはいずれも、2025年2月にアクセスしたものです。 注1 出展要項・出展申込表・開催概要(第26回図書館総合展2024)のご案内 https://www.libraryfair.jp/news/2024-02-21 注2 https://openglam.github.io/LF2024.html 注3 次世代型文化施設フォーラムについては以下のサイトを参照。 https://sites.google.com/view/jisedaiforum/home https://www.facebook.com/groups/315435901976434 注4 OpenGLAM JAPANサイト(https://openglam.github.io/) のうち、「図書館総合展2024」は上記注2へのリンクであり、「図書館総合展2019」は2019年の「〈Open〉のための逗留地」の記録である。なお、GLAMとは、Galleries, Libraries, Archives, and Museumsの略。 注5 https://chiisaitokonet.jimdo.com/ 注6 文学通信のブログサイトでPDFが無償公開されている。書籍版の販売もある。 https://bungaku-report.com/iiif.html 注7 https://www.tdwg.org/conferences/2024/ 注8 https://www.gbif.org/ja/ 注9 https://gbif.jp/ 注10 https://science-net.kahaku.go.jp/ 注11 https://www.inaturalist.org/ 注12 全般としてhttps://en.wikipedia.org/wiki/BioBlitz 検索すれば白神山地や駒場の例が出てくる。 注13 https://colbase.nich.go.jp/ 注14 https://drive.google.com/file/d/1G2rfNSCWTEp-mWPD7wfAJkV9_IQD_unT/view 注15 Reasons (Not) to Release Data https://sunlightfoundation.com/2013/09/05/reasons-not-to-release-data/ 注16 https://www.libraryfair.jp/booth/2024/373 注17 https://www.libraryfair.jp/booth/2024/378 注18 https://savemlak.jp/ 文献 今井福司. 2019. 図書館総合展の20年. カレントアウェアネスCA1944 (2019年3月20日) https://current.ndl.go.jp/ca1944 図書館総合展運営委員会. 2024年3月. 図書館総合展の組織と運営につきまして. https://www.libraryfair.jp/sites/default/files/2024-02/LF_about_240229.pdf