専業主婦の楽しみ

投稿者: | 1997年1月5日

薮 玲子

 自己紹介をしてと言われて、「私はこういう仕事をしています」とか「こういう研究をしています」と言ってみたいと思う。特に土曜講座の集まりでは・・・・・・。私の場合はこうだもの。「私は主婦をしています」。

 主婦業だって立派な職業だと言う人もいるけれど、私はとりわけプロ意識を持って主婦をしている訳ではない。家にいるから家事はするけれど、職業を持っている人だって掃除や洗濯や炊事はするだろうから、家事が私の職業だとは思えないのである。私は家事をするために家にいるのではない。

 サラリーマンの夫と結婚して21年になる。転勤族で、今の住まいは6カ所目。3年前に夫が大阪に単身赴任して以来、私は横浜で娘2人と暮らしている。高校生の娘たちはもう手がかからない。

 こういう中高年の専業主婦が突如として「生きがい」や「やる気」を失い、「空の巣症候群」に陥る気持ちが私にはよく分かる。際限もなく押し寄せる家事。けじめなく流れてゆく時間。単調で刺激のない毎日。忍びよる体力の衰え。同級生が集まれば必ず出る老眼や更年期の話。「このまま年をとっていくのかしら」と思ったとたんに現れる幻想。バリバリのキャリアウーマンとかツアーコンダクターとか心理学者になって活躍している私の姿!社会に出て働いて自立している空想の中の私は、自信満々に颯爽と歩いている。それに引きかえ専業主婦の私は、家の中で孤独と向き合って単調な毎日を繰り返す。「これが私の求めていた幸せ?」「何か違うんじゃない?」「こんな私でいいのかしら?」という思いが常につきまとう。専業主婦の「生きがい探し」はこうして始まる。

 ところで、私は今この文章を年末の忙しさの中で書いている。あとわずかで新しい年がやってくる。さて、どんな年にしよう。目標はいくつかある。

 まず、週に1度習っている英会話をもっとまじめにやる。「通じればいい」で済ませる癖は改めよう。月に1・2度は映画を観る。小さな映画館でやる小作品にも注目する。感想文も必ず書く。歌舞伎に毎月通う。夢は「待ってました─」と掛け声をかけること。生きているうちに1度はやってみたいと思う。それから毎日散歩もしよう。慢性の腰痛持ちの私はもっと足腰を鍛える必要があるのだ。四季折々の花を見に出かける。これは『友の会』を作っているので、仲間入りしたい方はご一報頂きたい。友人と会って食事やお茶を楽しむ。私には世代や男女を問わず定期的に会う友人がいる。

 外出の日が続くと何も予定がない1日が貴重だ。ただボーッと過ごす。静かに本を読む。手紙を書く。テレビやビデオを見る。音楽を聞く。ピアノを弾く。ケーキを焼く。だれかをお茶に招く。図書館に出かけ時間をかけて本を選ぶ。予定のない日こそ、専業主婦の醍醐味が味わえる。

 考えてみれば専業主婦の楽しみってなんてたくさんあるのだろう。この自由さと解放感は捨て難い。これだから専業主婦はやめられない。当分は月に1度土曜講座に出かけては、「私は主婦をしています」と言い続けることになりそうだ。(1996.12.28)■

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