東京外環道「騒音・振動・低周波音の測定に関する要望および公開質問状」とそれへの回答

投稿者: | 2022年5月20日

以下に掲げました「要望および公開質問状」を、国土交通省、NEXCO東日本、NEXCO中日本、東京都、調布市、狛江市、三鷹市、練馬区、杉並区、世田谷区の各担当部署(合計30箇所、下記参照)宛に5月16日を回答期限として送付しました(2022年4月8日付)。

その結果を冒頭に示しておきます。

それぞれの宛先をクリックすれば、回答文書がPDFで開くようにしています。

<回答をいただいた機関>

東京都 調布市 狛江市 三鷹市 武蔵野市 練馬区 杉並区 世田谷区

<回答をいただけなかった機関>

国土交通省 NEXCO東日本 NEXCO中日本

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東京外環道路建設におけるシールドマシンによる地下トンネル工事に伴う騒音・振動・低周波音の測定に関する要望および公開質問状

提出者:上田昌文(外環振動・低周波音調査会、NPO法人市民科学研究室)
菊地春代(外環振動・低周波音調査会、外環被害者住民連絡会調布)
籠谷清(外環振動・低周波音調査会、外環ネット)

提出先:国土交通省、NEXCO東日本、NEXCO中日本、東京都、外環道に関連する各自治体など計30箇所(下記参照)

送付した文書のPDFはこちらから

【要望および公開質問状の送付につきまして】

前略
私たちが所属します「外環振動・低周波音調査会」は、2020年10月18日に発生した東京都調布市の東京外環道トンネル工事現場直上での陥没事故の、被害の実態の究明とそれへの適正な対策の実施を求めることを目的に、現地の住民と特定非営利活動法人市民科学研究室が共同で発足させた組織です。現在、外環道の各エリアからの住民を含む20名ほどが参加しています。これまでの調査活動の成果の一端は以下に示しましたウェブのサイト(※)で公開しています。
外環振動・低周波音調査会では、陥没事故をふまえての、国、関係する自治体、そして事業者によってなされてきましたこれまでの対応のうち、とりわけ振動ならびに低周波音による被害に関連して、以下の要望ならびに質問を、それぞれの担当部署に提出することといたしました。上記【回答返信先】に記しました宛先に、同封しました返信用封筒を用いての書面もしくは電子メールにて、ご回答いただくようお願い申し上げます。
なお、回答につきましては、まことに勝手ながら、2020年5月16日(月)を期限とさせていただきます。もし、回答にさらに時間を要する場合は、予めご連絡いただければ幸いです。またいただいた回答は私たちのウェブサイトなどで公開させていただくことにしています。その点もご了承下さい。

外環道大深度工事で発生した振動・騒音・低周波音による被害の実態把握とそれへの対策に関する調査

東京外環道路建設におけるシールドマシンによる地下トンネル工事に伴う
騒音・振動・低周波音の測定に関する要望および公開質問状

2020年10月18日、東京外環道トンネル工事現場の真上にあたる、調布市東つつじヶ丘二丁目の住宅街で突然陥没(縦横深さ約5メートル)が発生しました。その後、そのルートに沿って最大30メートルの3つの空洞が発見されました。周辺の住宅街一帯には、陥没が起こる2か月以上前から振動や騒音が伝わり、住宅や壁のひび割れや、低周波音による健康被害の訴えが続いていました。

その事故を受けて、国及び中日本、東日本の両高速道路株式会社(NEXCO)は2021年3月、「有識者委員会」による報告書を公表しました。しかしそこでは、陥没や空洞が工事に起因すると認めたものの、事故に関わる振動の発生と伝播や地盤崩壊に至るメカニズムが明らかにされず、住民から寄せられた住宅・地盤などの破損、振動・騒音などの体感・健康被害についての記述も一切みられませんでした。

トンネル直上のみならず周辺地域において、建物などにみられる多数の物理的被害、そして地下での工事に起因する低周波音によるものとしか考えられない特異的な症状を含む様々な健康影響が、実際に発生している以上、工事の責任を負う事業者(国土交通省、NEXCO東日本・NEXCO中日本)が被害の徹底的な実態調査を行い、また住民の環境と健康を守る立場にある自治体(東京都ならびに沿線自治体)がそれを促し指導するのが当然です。ところが現実は、事業者による建物の損壊部分についての限定的な補修作業が個別の住民に対してなされるだけで、必要な実態調査が一切なされない、という異常な状態が引き続いています。

2022年1月に国土交通省は、自ら設置した「シールドトンネル施工技術検討会」において「シールドトンネル工事の安全・安心な施工に関するガイドライン」を公表しましたが、この中で述べられている事故再発防止策は、先の有識者員会の報告書をそのまま踏襲するものとなっています。すなわち、これまた、住民の間に生じている被害の実態調査を行わないまま、工事の再開が可能だとしているのです。

被害の実態を詳細に把握しないまま作られたこのような「再発防止策」は、有効に機能するものとはなりえず、見直すべきだ、と考えます。陥没事故に至る経緯で、トンネル工事直上ならびにその周囲の住民からの様々な苦情や被害の訴えを、事業者は軽視しました。そのことが陥没事故を招く一因となったことは明らかです。このような事業者の姿勢は、事業者による自主規制的な「ガイドライン」を定めただけでは改善される保証はありません。もし工事が仮にこの「ガイドライン」に沿ってなされるとするならば、その運用を事業者にのみ任せるのではなく、住民合意や、事業者とは独立した専門家の審査、そして自治体による監視の機会などを新たに設けて、事業者に「ガイドライン」を厳格に守らせるようにしていかねばならないと考えます。

「ガイドライン」の「5.周辺の生活環境への配慮」では、地下のシールドマシン工事がもたらす恐れのある生活環境への影響について次のような対策を謳っています。

5-1 周辺の生活環境への影響のモニタリング
住宅地等市街化された地域におけるシールドトンネルの施工にあたっては、施工の安全性確保、周辺の生活環境への影響の低減だけではなく、地域の安心を確保するために、地盤変位量、地下水位、騒音・振動等について定期的にモニタリングを行うこと。
5-2 騒音・振動対策
住宅地等の市街化された地域におけるシールドトンネルの施工にあたっては、施工に起因する騒音・振動の低減に努めること。

これらに実効性を持たせるには、具体的にどのように「定期的にモニタリングを行う」のか、また、どのように「騒音・振動の低減」するのかを提示することが必須です。その提示の中には、該当するそれぞれの地域の住民が納得できるやり方で、地上部で精密かつ広域的に振動を測定することが含まれていなければなりません。

そこで、私たちは、騒音・振動・低周波音対策として、以下の5点を要望します。そして、
東日本高速道路株式会社ならびに中日本高速道路株式会社には、(1)(3)の実施に対する、
各自治体には、(2)(3)(4)の実施に対する、
東京都には、(2)、(3)、(4)、(5)の実施に対する、
国土交通省には(5)の実施に対する、
それぞれの見解を、5月16日(月)までの期限で、文書で示していただくよう求めます。

この要望ならびに公開質問状は次の各所に出しています。
●国土交通大臣 斉藤鉄夫 様
●国土交通省 関東地方整備局 局長 土井弘次 様
●東京都知事 小池百合子 様
●東京都 都市整備局 都市基盤部街路計画課 外かく環状道路担当 御中
●東京都 三環状道路整備推進部 整備推進課 御中
●東京都 環境局 環境改善部 計画課 御中
●東日本高速道路株式会社 代表取締役社長 小畠徹 様
●東日本高速道路株式会社 建設事業本部 建設部長 堀圭一 様
●東日本高速道路株式会社 関東支社 支社長 良峰透 様
●東日本高速道路株式会社 関東支社 建設事業部長 加藤健治 様
●中日本高速道路株式会社 代表取締役社長 宮池克人 様
●中日本高速道路株式会社 技術・建設本部 建設企画部長 山口直宏 様
●中日本高速道路株式会社 東京支社 支社長 中井俊雄 様
●中日本高速道路株式会社 東京支社 建設事業部長 前川利聡 様
●調布市長 長友貴樹 様
●調布市 都市整備部 街づくり事業課 事業計画係 御中
●調布市 都市整備部 外環担当 御中
●調布市 環境部 環境政策課 御中
●練馬区長 前川燿男 様
●練馬区 都市整備部 交通企画課 交通企画担当係 御中
●三鷹市長 河村孝 様
●三鷹市 都市再生部 まちづくり推進課 御中
●杉並区長 田中良 様
●杉並区 都市整備部 都市企画担当課長 野澤 巡 様
●武蔵野市長 松下玲子 様
●武蔵野市 都市整備部 まちづくり推進課 御中
●狛江市長 松原俊雄 様
●狛江市 都市建設部 まちづくり推進課 御中
●世田谷区長 保坂展人 様
●世田谷区 道路・交通計画部 道路計画課 御中

【要望事項ならびにこの要望に対する見解を問う質問事項】

(1)事業者は、「シールドマシン施工ガイドライン」が示している再発防止策に即して、「どのレベルの振動・低周波音がどのエリアにおいて計測できれば、事業地内ですでに再開している、あるいは今後予定している工事を、どう変更し、どのような具体的な対応をするのか」を示し、その場合に当然必要とされる、振動計の設置とそのデータの解析方法をあわせた計画書を作り、工事を開始する前にそれを公表する。

(2)工事がすでに再開している、あるいは今後予定している事業地となっている各自治体ならびに東京都は、(1)に述べた計画書を事業者に提出させるとともに、住民の意向を反映した振動測定網(モニタリング体制)を構築するために、その計画書をめぐって事業者と地元住民が協議できる場を設ける。その際に、事業者とは独立した、振動・騒音に関する専門家をその協議の場に招聘し、事業者と住民が合意できる計画を策定できるように協力を要請する。

(3)その計画で示されることになる、計測器の手配、その測定、測定データの解析などを、事業者と、工事がすでに再開している、あるいは今後予定している事業地となっている各自治体ならびに東京都が、費用を含めてどのように担うのかを、(2)で述べた協議会において決めることとする。

(4)事業地となっている各自治体ならびに東京都は、振動・低周波音によって、建物への被害や住民の心身への影響が出ないように、あるいはそれが発生するようなことがあっても最小限に留められるように、事業者に対して、振動・騒音に関する現行の法規の遵守を求めることはもとより、地域の住民と協議によって必要だとみなされた場合は、見回り調査や聞き取り調査などを実施する。

(5)国土交通省ならびに東京都は、(1)から(4)の実施を全面的に支援し、工事の進行中に地元住民から事業者に寄せられる、振動・騒音・低周波音に関する苦情や意見を真摯に受け止めながら、計画書において取り決められた事柄を事業者が怠りなく実行するよう監視していく。

以上

 

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