現在、国際放射線防護委員会ICRP報告書(勧告改訂)草案「大規模な原子力事故における人と環境の放射線防護」(Radiological Protection of People and the Environment in the Event of a Large Nuclear Accident)への意見募集(パブコメ)がICRPのサイトでなされています。
ICRPは放射線防護の専門家による一種の国際NPOで、現在までに139の刊行物を出しています。その勧告は、医療利用に加えて核開発や原子力発電が始まった時代から国連機関が発出する指針等に反映され、日本を含め多くの国で法制度に取り入れられています。今回の改訂草案は、私たちが経験し、現在も直面している東電福島事故への対処を評価し、今後の事故に備えることを狙いとしています。
報告書の草案は英語なので、ハードルの高いものになっています。ICRPは8月16日付で主要部分の日本語訳をホームページに掲載し、今回は例外的に日本語による意見も提出できるとしました。ウェッブ上での締め切りは9月20日です。日本では、10月25日の東京でのシンポジウムまでの期日で日本語の意見を受け付けることになっています。個人でも団体でも意見は提出することができますし、提出されたすべての意見は、英語であれ日本語であれ、全文を閲覧できるようになりました(ICRPからのお知らせを参照のこと)。
パブコメの投稿の方法については、OurPlanet-TVの「原発事故の防護基準、日本語で意見募集へ〜ICRP」にわかりやすくまとめられていますので、参考にしてください。
この意見募集が始まって以降、8つの市民団体(※)で構成される有志が協力し、以下の取組みすすめてきました。それは、ICRP勧告が放射線防護の国際基準に反映され、日本でも様々な法制度に取り入れられるため、被災当事者をはじめとする日本からの声がきちんと反映されることが重要だと考えられるからです。
・8月23日(金) ICRP新勧告(案)のパブコメ募集に関する記者会見〜福島原発事故の教訓を反映した勧告を〜
→当日の動画はこちらから
・9月2日(月) ICRP委員を迎えての学習会
→当日の動画はこちらから
※ 原子力市民委員会、原子力資料情報室、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、国際環境NGO FoEジャパン、NPO法人市民科学研究室、高木学校、「チェルノブイリ被害調査・救援」女性ネットワーク、放射線被ばくを学習する会
さらに、意見募集を書く際には、草案自体の読み解きが必要ですが、その参考にしていただければと思い、草案の日本語訳を作成しました。上記8団体による共同訳ですが、現時点ではまだ最終的に確定した訳というわけではなく、今後も必要な修正を加える予定です。お気づきの点があれば、お知らせいただけますと幸いです。
【原文(英語)】
【日本語訳】
・ICRP委員(甲斐倫明氏+本間俊充氏)による主要部分の仮訳(目次、要点、総括的要約、結論、表 6.1.)
・本文(第1章から第4章、原文で8頁~53頁)の仮訳(市民団体による共同訳)
・草案の「付属書(ANNEX) A」(チェルノブイリ) 及び「付属書(ANNEX) B」(フクシマ) の仮訳(市民団体による共同訳)
ANNEX A Japanese
ANNEX B Japanese
1.「the order of 1 mSv per year」
要点の下から2番目の「the order of 1 mSv per year」に関して、RSFの第17回 放射線安全検討会〔アリーナ〕で瀬川さんがご質問下さり、本間さんからご丁寧なご説明がありました。
・「the other of」は、地域などにより意味が異なり得るが、ここでは、およそ1mSvという意味(a few mSv per yearであり1-9mSvではない)
・80項での「with the objective to reduce exposure progressively to levels on the order of 1 mSv per year. 」が元
・81項で「The Commission recommends that some types of protective actions should be maintained during the recovery process as long as a significant proportion of the affected population receive exposures above 1 mSv per year」と説明している(目安量が1 mSv per yearであることを示唆)
・860行に「of the order of a few mSv per year」とある。
2.Individual measurements
このアリーナでは、「ICRP委員(甲斐倫明氏+本間俊充氏)による主要部分の仮訳」の「EXECUTIVE SUMMARY」の和訳に関しても、瀬川さんがご指摘なさっておられました(l項)。
「EXECUTIVE SUMMARYの記述」
Individual measurements with suitable devices, together with relevant information, are critical to implement the process.
「仮訳」
適切な線量計を用いて行う個人線量の測定は、関連する情報と共に、共同専門知の過程を実施するには不可欠である。
本文(189)
Continuation of radiological characterisation in affected areas should be complemented by the establishment of a system for monitoring the external and internal exposure of individuals.
【望ましいと思われる表現案】
外部と内部被ばくに関する個人の線量評価に役立つように適切な機器を用いた測定が実施可能とすることと測定に関連した役立つ情報を提供するとともに、課題解決のための健全なコミュニケーションを機能させることは、事故からの回復過程における関係者間の協働による課題解決において不可欠なものである。
リスク情報を提供することが危害を与え人々を抑うつ状態に陥ることの危惧も指摘されているところですが、県内の自治体では、様々な職種が連携し、地域住民とともにこのような状況に対しても効果的な事業が展開されていたので(ただし自治体職員への負担を伴いうる)、その情報も共有されるとよいのではないでしょうか。
ピンバック: ICRP「大規模原子力事故後の放射線防護」勧告草案に意見を出そう!(9/20まで) | FoE Japanブログ:Mobilize - Resist - Transform !
(85)
> したがって、中期は一般にオフサ イトよりも長く続く(付属書 A および付属書 B 参照)。
Therefore, the intermediate phase generally lasts longer off-site than on-site (see Annexes A and B).
→したがって、中期は一般にオンサイトよりもオフサイトでより長く続く(付属書 A および付属書 B 参照)。
私の友人で、以前東大宇宙線研究所に勤務中に実験で被ばくした方が、少ない線量でも危険だと3.11以後、九州に移住しました。安全基準を下げることは賛成できません。
原発は生命(いのち)の問題だと思います。
原発は生命(いのち)を育むことと対極にあると思います。
今回の新勧告案が「長期的には年1ミリシーベルト程度をめざす」とありますが、程度とは基準があいまいで、いかようにも、都合よく解釈されてしまします。
未来世代の生命(いのち)、それを育む、空気、水、大地、もちろん海、食べ物・・・・・それより大切なものがあるのでしょうか。
ICRPは多くの市民の声に耳を傾け、今より厳しい勧告となるよう基準を設けてください。
図 2.2. 最適化プロセス
→タイトルは図の下側に
> 防護措置をとることが決定されていた 被ばく状況の評価
あらかじめ考えていた放射線防護対策を実行すべきかどうか検討できるように、今の被ばくの状況を評価する。
> 代替の防護措置の同定
あらかじめ考えていたものに加えて、代替となる防護対策があればそれをリストアップする。
> 優勢的な状況下での最良の防護措置の選択
人々への放射線曝露の経路としてどれが支配的かも踏まえて、考えた中から最良の防護対策を組み合わせて選択
(7)
> 曝露状況の特性化
characterisation of the exposure situation
曝露がどのような状況になっているか(characterisationやcharacterisedは特性化という訳語では馴染まないのではないか)。
(71)
> しかしながら、自助による防護策も破壊的な場合 がある
However, self-help protective actions may also be disruptive
しかしながら、自助による防護策は役立つだけでなく、状況を混乱させる場合もある
> それらは、与えられた状況下で合理的に達成可能な限り被ばくを減らし、低く維持するという野心のレベルを反映している。
They reflect the level of ambition to reduce and maintain exposure as low as reasonably achievable in the given circumstances.
参考レベルは、もたらされた状況を踏まえて、現実的に達成できる範囲で線量を減らし、そのレベルを維持しようと目指すレベルを示している。
(80)
> 年間 1mSv オーダーへの段階的な被ばく低減を目的として、
with the objective to reduce exposure progressively to levels on the order of 1 mSv per year.
年間 1mSv 程度への段階的な被ばく低減を目的として(ここでの訳語はICRPでの検討の結果が反映されていない)、
(83)
> 特に、その地域から人が排除され、人の 被ばくにつながる食物連鎖が絶たれている環境条件との関連において有用になり得る。
However, DCRLs may be useful in communicating the implications of the situation to stakeholders, particularly in relation to environmental conditions where humans have been removed from the area, and food chains leading to human exposure have been discontinued.
事故の影響を受けた地域から移住することやその地域での食材を人々が摂取することを控えることの意義を伝えることにおいて特に役立つかもしれない。
>緊急時計画中にも
The environmental reference values will also have value during emergency planning in order to help frame considerations of the potential consequences of proposed protective actions in the different phases of the accident on the environment.
これらの環境に関する参考値は、緊急時の対応を計画する際にも、環境への配慮として、事故の様々な 段階を想定して、提案された防護対策が環境に対してもたらしうる影響を考慮する枠組みを作るのに役立つだろう。
(85)
> したがって、中期は一般にオフサイトよりも長く続く(付属書 A および付属書 B 参照)。
Therefore, the intermediate phase generally lasts longer off-site than on-site (see Annexes A and B).
したがって、中期は一般にオンサイトよりもオフサイトでより長く続く(付属書 A および付属書 B 参照)。←オフサイトが大変なのはその通りだと思いますが、オンサイトも大変では…(比較して記述することに意義はあるのか?)