神奈川大学が発行している雑誌『神奈川大学表評論』の第103号(2023年7月31日発刊)に、市民科学研究室の代表理事である上田は「劣化ウラン(DU)兵器とウクライナ戦争──被曝の観点から考える」と題した総括的な論文を書きました(2段組10ページ)。
以下がその論文の見出しになります。
●英国の決定に口を閉ざしてよいのか [PDF公開]
●劣化ウラン(DU)の放射能毒性と化学毒性
●ヒトを対象とした調査から
●問題の核心にある、疫学による評価
●健康影響否定論の背景
●何を重視しなければならないか
●注と参考文献
書店などでお求めいただき、お読みいただけれれば幸いです。
この論文では疫学の課題も論じられている。
情報が十分に利用できない状況での検出力の低下が懸念されている。
研究デザイン上の欠陥が避けがたいので、見出された影響が信頼できないと切り捨てられる懸念が表明されている。クロであるとの証拠が完璧に揃わないとリスクとして認められないとの懸念が表明されているのである。
さて、被爆者援護法を巡る訴訟では裁判所はどのような判断を下してきただろうか?
疫学研究として質の確保の課題は、文献7でも指摘されている。
筆者はここでのバイアスの指摘をアンフェアと感じているようである。だとすると、その指摘が適切かどうかを吟味するのはどうだろか?
疫学研究の質をよくするには、曝露量とアウトカムの双方の把握の質の確保も有益である。
このうち、曝露量推定の質の確保はこの文献7でも言及がある。
アウトカムの把握の質の確保でもより鋭敏な指標を用いるなどの工夫があり得るかもしれない。
いずれにしても、このような調査を質よく行うには被験者の協力が欠かせない。
この観点でも市民科学の考え方が重要となるのではないだろうか。