ミサイル防衛と「宇宙基本法」 国民が知らない間に進行する新たな軍拡

投稿者: | 2007年2月6日

●巻頭言
ミサイル防衛と「宇宙基本法」
国民が知らない間に進行する新たな軍拡
「宇宙基本法」(仮称)をご存知だろうか? 自由民主党が中心となってこの2月にも国会に提出しようとしている法案だ。その骨子で、「わが国の総合的な安全保障に寄与する」宇宙開発を是とし「非軍事」から「非侵略」への転換を謳っている。これをあと押ししているのが経済界で、国際競争力を失っている日本の宇宙関連産業に活を入れるべく「毎年一定の公的需要による受注確保」を要請し、「2006年度予算では約2,500億円となっている。これは、米国(NASA)の6分の1程度にすぎず、欧州(ESA:欧州宇宙機関)よりも低い水準である」という”比較”まで持ち出している(経団連の「わが国の宇宙開発利用推進に向けた提言」2006年6月20日)。
 この動きと密接にからんでいると思われるのが、米国のミサイル防衛(MD)への日本の加担だ。ブッシュ政権は国家宇宙政策を10年ぶりに改定した。その中で目立つのは、「宇宙を制するものはそうでない国に対して実質的優位をもつ」「宇宙での行動の自由は制海権や制空権と同様、米国の国益にとって必須のものである」とする姿勢だ。この”宇宙覇権”の前哨として位置づけられるのが、巨費を投じて進められているMDだろう。
 MDは1980年代レーガン政権時のSDI(=戦略防衛構想)に起源を持つ。敵国から発射され弾道ミサイルを自国の迎撃ミサイルで撃ち落すシステムだが、ブースト(上昇)段階・ミッドコース(中間飛行)段階・ターミナル(最終)段階に応じて、地上・海上・空中・宇宙に迎撃兵器を配備するという「多層防衛」である点が特徴であり、米軍が宇宙・地球規模攻撃を行う際に、敵ミサイルによる応戦を封殺するための「盾」になるものだ。現在、かつてないほど緊密な日米一体の研究・開発・配備が進んでいて、日本が導入するシステムは、図のように、北から飛んできたミサイルをまず海上配備のSM3が大気圏外で迎撃し、もし撃ち損じた場合は地上配備のPAC3が迎え撃つという二段構えになっている。昨年10月に嘉手納基地に初のPAC3(1発で5億円以上)、8月からSM3(1発20億円ほど)を搭載したイージス艦が横須賀基地に配備が始まっている(この3月には航空自衛隊入間基地(埼玉県)にもPAC3が配備される)。
『北海道新聞』2006年8月5日「もっと知りたい」より
http://www5.hokkaido-np.co.jp/motto/20060805/
 この軍事化に刺激された反応とも解釈できるのが、1月12日に中国が実施した自国の人工衛星を弾道ミサイルで攻撃し破壊するという実験だ。この臆面もない宇宙空間での兵器使用は、軍拡の新しい次元を意味するものかもしれない。かつてのSDIと同様、アニメーションばりのMDが技術的に本当に機能するのかは多くの専門家が疑問視しているが、それが存続する以上、「防衛」の名の下での軍拡の進行は避けられそうもない。
 MDに必要な軍事衛星を持たない日本は、敵国のミサイル発射の情報は米国に頼る他なく、海上自衛隊のイージス艦が捕捉したミサイル情報も米国に提供することになる。軍事一体化が不可避のシステムであるMDは、その開発においても、三菱重工がPAC3のライセンス生産を開始するなど、一部の大企業が紛うべくもない軍需化に突き進んでいる。米国のシンクタンク「ランド研究所」は日本への導入で最大5兆9千億円もの経費がかかると見込んでいるが、この途方もない規模の税金の投入で誰がうまい汁を吸うことになるのかを、私たちは見抜かねばならない。
1967年の国際的な宇宙条約とそれを受けての1969年の我が国の平和利用決議(「宇宙の開発および利用は平和の目的のために限り」(衆議院決議)「かつ自主・民主・公開・国際協力の原則の下にこれを行う」(参議院付帯決議))が理念と現実の両方から、今崩されようとしている。■

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