携帯電話と脳腫瘍の関係に注目を

投稿者: | 2010年6月25日

上田昌文

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待望されていた報告が5 月18 日についに発表された。携帯電話電磁波と脳腫瘍との関係を探った史上最大規模の国際疫学調査であるINTERPHONE 研究(00 ~ 08 年)の結果が『国際疫学雑誌』に掲載された。WHO の付属機関である国際がん研究機関(IARC)が中心となって、日本を含む13 カ国で、共通のプロトコル(実験手順)で進められた症例対照研究だ。終了後2 年近くを経て、しかも、「本論文」「付録1、2」「論評」を同じ雑誌の中で別立てにして、という異例の形での公表だったが、これは、事前に漏れ聞こえてきた、関わった研究者の間でも意見が対立している、との噂を傍証するものとなった。「影響があるとは断定できないが、ないと言い切ることにも無理がある」とでも言えそうな、どう解釈してよいか戸惑ってしまうような「結論」になったのもそのせいだろう。

対象とされたのは、00 年~ 04 年に発症した神経膠腫と髄膜腫(併せて5116 症例)であり、「過去6 ヶ月以上で平均して週1 回以上携帯電話を使用している人」を携帯電話使用者と定義して、その使用者(曝露群)と非使用者(非曝露群)での脳腫瘍の発症率を比較した。日本の新聞では、主として共同通信の配信を使った短い記事で「携帯使用と脳腫瘍の間に関係はみられなかった」「統計の偏りや誤差による限界があり、因果関係があるとは解釈できない」と締めくくるものが大多数だったが、これは論文の「要約」の中の「結論」部分を拾っただけの浅薄な記事である。海外では例えば、AFP(フランスの通信社)の配信記事、英国の『タイムズ』紙や『テレグラフ』紙のように、脳腫瘍リスクが高まる可能性を指摘した長めの記事も少なくない。

おおむね「影響なし」ととる海外政府系諸機関でも、ほぼ例外なくどこも、「子どもへの影響は無視できないので、何らかの対策が必要」と表明している(電磁界情報センターの翻訳文書参照)。日本の総務省、厚生労働省からはいまだにコメントがない。 今号の2 つの翻訳文書を役立ててほしい。

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