人知れず忍び寄る輸入依存型社会の恐怖 -安ければ・効率さえ良ければいいのか?国際輸送の実態に迫る!!-

投稿者: | 2007年6月2日

写図表あり
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第16回 市民科学講座
人知れず忍び寄る輸入依存型社会の恐怖
-安ければ・効率さえ良ければいいのか?国際輸送の実態に迫る!!-
講師:渡邉豊さん(東京海洋大学教授)
はじめに
上田:市民科学講座第16回「人知れず忍び寄る輸入依存型社会の恐怖」を始めます。今日は私たちの生活を支えているいろいろな物資が大量に海外から輸入されているということで、そういう事実そのものはみなさんもよくご存じだと思いますが、それに伴って起こっている輸入コンテナの横転事故が頻発していまして、たくさんの市民が巻き添えをくっています。なぜそういう事故が起こるのか、またどうやってそういう事故を防げばいいのかということが、今日のお話のテーマです。お話しいただくのは東京海洋大学教授の渡邉先生なんですけれども、渡邉先生と私はそれぞれ、科学技術振興機構(JST)の「社会技術」という枠で助成を受けているんですが、研究発表をお互いに聞く機会がありまして、そこで渡邉先生のお話に非常に感銘を受けたといいますか、具体的な技術を開発して現実の社会で起こっているいろいろな問題を解決していこうということで、まさに社会技術というものの1つの典型的な例じゃないかと私は感じたんです。それでぜひ運送関係の方とかにもお声をかけた上でこういう集会を持ちたいということで今日にいたりました。それでは渡邉先生、よろしくお願いします。
渡邉:みなさんこんばんは。東京海洋大学の渡邉です。今日は足場の悪いところお仕事が終わった後に来ていただきましてどうもありがとうございます。今上田さんから紹介いただきましたけれども、私は科学技術振興機構の助成を偶然受けたのでそれで研究がある程度進んだんですが、かれこれ20年間くらいこの問題を追及しています。市民科学さんの方は様々なテーマで国民・市民に対して害のあるもの、もちろんいい方面でも研究なさっていますけど、そういうのを追求しておりまして、私の方は非常に限られた分野なんですが、結果的に罪のない市民が犠牲になっていくっていう点では共通点が完全にありまして、上田さんとお知り合いになってかれこれ2年くらいになりますけども、はじめからこの市民科学の動きは注目しておりまして、いつかこの場である程度私の研究が進んだら紹介させていただきたいなと思っていました。偶然ですが去年、自分が目標としていたことがなされまして、まだ完全に市民のみなさんを今日お話しする問題から助けるまでには至っていませんが、もうその一歩手前のところまで来られましたので、できればそろそろ業界の壁を越えて一般市民の方々の目に触れるような機会を徐々に持っていきたいなと思うようになりました。今日はその一番最初の場でございまして、本当にみなさん来ていただいてありがとうございました。これから私のお話を進めたいと思います。
国内貨物輸送の実態
 今みなさんの目の前に見えている写真なんですけども、これは交通事故ではあります。
一見すると単なる大型トラックの交通事故のように見えますが、これは実は非常に特殊な事故なんですね。これを防ごうとすると、事実上、このあといくつも証拠が出てきますけども、日本の法律では防げません。これはこの辺からすごく近くの、確か新橋だったと思いますけども、みなさんも乗用車に乗られていると思いますが、乗用車に乗ってここを通れば普通の流れで走っていたときに、突然倒れてしまったと。積んでいた貨物をこの後で紹介しますけれども、この下に乗用車がぺちゃんこになっています。運転していた人は当然即死です。たまたま船会社のマークが写真に入っていますが、この船会社が悪いんだという意味ではないんです。どこの船会社もこういう問題には巻き込まれてしまう。実はこれは輸入貨物を満載している、海外からやってきたコンテナです。このコンテナは、日本の道路上では最大です。いわゆる観光バスとほぼ同じ大きさですから、これ以上大きいものはありません。貨物はだいたい25トンから30トン積めますので、下の台車の部分も含めて、トラックのヘッドという引張る部分が転んでいますから60トン超えるぐらいの重さになって、突然隣の車線を走っている車に乗っかりますからたまったもんじゃないと。なんでこういうことが起こるのかということを紐といていきたいと思いますが、これは国土交通省の公表で今から5年前のデータなんですが、日本の国全体では1年間にだいたいその当時で11億トン、今ですと12~14億トンくらいの貿易貨物が日本にやってきています。この内訳を見ていきますが、われわれには何もないんですね。素材系、鉄鋼も含めてエネルギーも含めて、無いというと経済的には成り立たないので、国内ではとったり作ったりできない。石油だって新潟沖にありますけど、あんなの国内で使ったらどうなるか?今ガソリン代は1リッター100いくらですか。日本の油をもし使ったら1リッター3万円とかなっちゃうから、経済的には成り立たないという意味も含めて、われわれには今何も無いんです。ほとんどのものが海外からやってきますし、こういう素材系はもちろんですけども、最近は食料品が多いです。みなさん御存じですか、今日食べたと思いますけど豆腐と納豆は日本の専売特許だと思っていますよね。ところが豆腐や納豆の材料の大豆は今、90%以上外国から輸入しています。スーパーに行けば分かるんです。1パック2パックで100円とかの安い豆腐には何も書いていないんですけど、あえて1個200円とかなっているのは「国産大豆使用」って書いてあります。っていうことは「国産大豆使用」と書いていない1個100円とかの豆腐は全部外国の大豆を使っている。ということは、オリジナルな食品なんですけど、原材料は海外に依存している。他の肉や魚もどんどん外国から来ている。ちょっと前までは日本で作っていたものが東南アジアや中国などの外国の工場に行って、向こうで作られて日本に入ってくるようになりました。こうなるともはや日本というのは、ありとあらゆるものが外国から入ってくるようになる。たまたまデザインは日本の企業かもしれませんが、作っている場所は外国。日本企業が作るけど、外国から持ってくるというような構図になっています。おそらくここにいらっしゃるみなさんの着ているもの、持っているもので完全にメイドインジャパンのものはほとんどないと。
輸入貨物はほぼ100%海から入ってくる
ということはこれから申し上げるコンテナという箱の中に入っているものですが、御覧のように衣食住すべてを輸入に依存していて、ここからが問題なんですが、この貿易貨物が日本の玄関口のどこを通るか。これは本当に不思議な話なんですけども、ここの坂を登って行って、東京大学がありますよね。東大の学生に聞いてもこのパーセンテージはおそらくはずれるでしょう。飛行機で3割、4割、6割くらい日本に来ていると思い込んでいる国民が多いんですが、とんでもない話です。実は99.8%の貿易貨物は海経由で来ています。この数字はすごく重要な数字なんですけども、私はなんで文部科学省が小中高校の教科書にこの数値を入れないのか不思議でなりませんけども、そういう情報がないがゆえに私の研究している問題・事故が起こってくる。それで今13億トン位になっている貨物が海を渡る。海を渡ってくる手段なんですけども、われわれがどれだけ船に依存しているかについては、これは日本船主協会っていうところの資料なんですけども、ちょっと日本系の船の航路に偏っていて、外国の航路まで含めるともっとごちゃごちゃになるんですけども、海上物流ルートで日本に結びついていない全世界の国々がほとんどないです。海に面しているところは必ず外航ルートが日本と結びつく。それは理由は簡単で、われわれがこれほどまでに衣食住すべてに対して外国に依存しているわけで、ちなみに今いろいろ北朝鮮の問題とか出ていますけども、私が大学で学生に絶えず教えているのは、日本は何がなんでも絶対に戦争をしちゃいけない、相手の国が感情的に好きであっても嫌いであっても絶対に戦争をしてはいけないという。理由は簡単で、われわれが食べていけなくなるからです。われわれはまったく自立できていないということで、いろいろな問題があってもとにかく外国のすべてと仲良くしてとにかく戦争・紛争のたぐいは起こさない。そして物の流れを外国とスムーズにしていく。スムーズだけじゃなくて私のテーマなんですけど、安全にしていかなくてはいけない。日本の国の宿命ですね。この宿命というのがなかなか市民一般のところまで伝わっていないなというのが私の感想です。次はこれを見ていただいて…
(映像の解説・音楽)
中身の分からないまま国内に流れ込む輸入コンテナ
今は東京港の説明だったんですけども、これが神戸、大阪、名古屋、横浜、博多など、日本全国の港でも毎日起こっています。観光バスくらいの大きさのコンテナが1日に瞬間的には5,000個はたまっています。船は40フィートのコンテナですと、最大で5000個くらい積めます。もっと積める船もあります。でもこれは道路上に出てくると観光バス1台分ですから、道路上では最大です。これがものすごい勢いで日本の国の中に入ってこないとわれわれは生きていけないです。箱ですから、取扱いがスムーズです。スムーズだっていうことでもう1つ市民のみなさんにわかってほしいのは、この中に入っている輸入貨物、輸出の場合もしかりですけども、当然外国から入ってきたらいちいち港では開けません。そんなことやっていればわれわれが消費するスピードについていけませんから、われわれの生活は成り立たない。ですから箱のままバンバン日本国内に持っていきます。コンテナ輸送はそういう仕組みになっています。これは日本だけではなくて、アメリカでもヨーロッパでもどこでもそうなんですけども、時々内部が密輸じゃないか、危なくないかとか税関でチェックされますけど、税関のチェック率、実物検査・開封検査率っていうのは1%に満たない、抜き打ちですね。みなさんの道路でスピード違反とか飲酒運転なんかの抜き打ち取り締まりやりますよね。ほぼあれと同じような状況です。これだけ膨大に流れていますと、とてもじゃないけど全部あけていられない。だから全世界共通の事故ですね。ではこのコンテナが陸上の方でどうなっているかを見ていきます。
(映像の解説・音楽)
貨物輸送の現状に追いついていない国内法
今のナレーションにありましたけども、日本はまだ(港を)24時間開けられないところもありますけども、海外の多くではコンテナ系の貿易貨物の出入りの時間はほぼ24時間、先進国はほぼすべてですね。東南アジアの国々も開けています。開けている理由はただ1つ、それだけスピーディに流さないと、国の経済が止まってしまうからです。つまり輸入貨物はあの箱に入った状態でどんどん入ってくる。これは市民の皆さんがなかなか気がつかない点で、御覧のように膨大な貨物をなるべく早く市場に出すためにトラックは朝早くから、もしくは昨夜のうちから並んで港からリリースされたコンテナをいち早く荷主さん、倉庫なり工場なりショッピングセンターの裏のいわゆる貨物の積み下ろしのところに持っていこうとします。こういうことでわれわれの生活が成り立っている。ただ、これを見ていただきたいんですけども、この大量の貿易輸送が顕著になってきたのはちょうど昭和40年代くらいからです。こちら側にあるのはすべて日本の国の中だと思ってくださいね。われわれが第二次世界大戦後、戦後の時期にいたころは国も貧しかったしかなり自給自足的だったし、またはじめに生産力の方がついてきたんで海外のものが入ってくるというようりは自分の方から出す方が少なくとも昭和40年代過ぎるくらいまでは続いていたと。私は法律の専門家ではないんですが、日本国内のすべての法律の基礎ができたのが昭和26年だそうです。基本的にはその根幹の部分は変わらずに、いろいろな法律の運用とか解釈の問題で今現在に合わせて使われていますけども、根幹は変わっていないんです。これはあくまでも日本国内のことを見て作られた法律で、日本国内の問題だけになるべく対処しようと作られている法律です。それが昭和26年から始まって今までずっと来たんですけども、この太い矢印の部分が今日問題にしている、過去30年間くらいに膨大に増えてきた海外からの輸入。その部分の黒い矢印ははじめなかったです。矢印の円の左下を見るとわかりますように、これは外国です。外国で始まって箱の中に詰められて、それが日本にやってきまして日本を通り抜けて最終目的地まで行きますので、理想をいうならば太い矢印、外国から日本国内を全部カバーできるような法律があればいろいろな問題を解決できるはずなんですが、いかんせんこれ歴史ですね。日本の貿易依存がそれほど多くなかったころに法律が全部できちゃって、そのあとコンテナによる輸送がどんどん増えてきちゃった。国際条約があるじゃないかとみなさん思うかもしれませんが、国際条約がカバーできているのはこの日本の国の玄関の港の海側のところなんです。詳しくは説明しませんが、たとえば危険物関係の規則は海側では国際条約に基づいて法律ができていますけど、日本の港に上がって国内輸送が始まった途端、その法律がまったく適用除外されます。たとえば消防法というのがあるんですけども、消防法では劇薬物の硫酸っていうのは危険物指定になっていません。理由は簡単です、燃えないからです。ところが国際条約上は、硫酸というのはもっとも危ない危険物の1つに入っていまして、コンテナの表面にいろいろべたべた貼らなくてはいけないものがあるなど大変なんです。ヨーロッパやアメリカですと国際条約が国内の方まで引きずられた体系になっているんですけども、日本は致し方ないですね、戦争に負けてしまいましたから、法律からなにから何まで全部ひっくり返っちゃって、昭和26年に日本のことだけを考えて立ち上げていったんで、致し方がない面があるんですけども、硫酸の例が一番いい例だと思うんですけどね。海の上までは危険な危険物として指定されているんですが、日本の国に上がった途端、単なる貨物でなんの特別の措置もなく国内輸送ができちゃうっていうような例もあります。今日はそういう危険物の話はしませんが、日本の国内法の隙間っていうのが外国から入ってくるものから見ればものすごくたくさんあるんです。
法の隙間がもたらす冤罪
その隙間のところで事故が起きてしまうとどこの法律でもいったい責任は誰にあるのかと、誰を処罰するべきなのか、誰を追求すべきなのかっていうことが、できなくなっちゃうんですよ。できなくなっちゃったら、たとえばそのまま人がつぶされて死んだりしていればほっとけませんから、日本国内ではおもしろいことが起こって、たまたま偶然その場にいた人を処罰しちゃえ、そいつの責任だから刑務所に送っちゃえということを40年間やっています。よく世の中で冤罪だ冤罪だって話題になりますけども、誰も気がつかない冤罪っていうのも私はあると思います。この私の分野なんかもその典型。で、困ったことにその冤罪を被っている人たち自身が冤罪だと思っていなくて、しょうがない、自分がいけないんだと思って刑務所に行っちゃうっていうところまで社会があきらめちゃっている。
コスト削減で犠牲にされている安全性
最近やっかいなのが、東南アジアが全て悪いといいませんけども、日本の今から30年から40年くらい前の日本もそうだったんですが、生産コストが安い国っていうのは、物を安く作れます。だからみんな中国とか東南アジアに行きますよね。でもものが安い国っていうのは他のものも全部安いんですよ。つまり、安全性もめちゃくちゃ低いんです。高い安全性を保とうとすれば人も金も物もたくさん物流・流通につぎ込まなくてはいけませんから、当然お金が高くなります。日本国内の物流は高いって言われますよね。でもすごく信頼性も高いですよね。値段も高いけども日本国内は安全。それとまったく逆のことが、生産するのは中国はものすごく安い。けれども安全性はめちゃくちゃ低いです。私のところの分野じゃなくて、上田さんのところの特集にあったと思うんですけども、中国・東南アジアからの食材の中に非常によくないものが人知れず入っていて、われわれは何も知らずに安い安いって食べていたら、食品検査してみたらとんでもない値が出たっていうのが最近話題になっていますけども、それもしかりですね。安い国で作れば非常に危ない度合いが高まって、それが日本にも入ってきちゃう。結局貨物と同時に危険も輸入されちゃうと。これが市民のみなさんにとっては一番注意しなきゃいけないことです。
コンテナは危険なブラックボックス
おまけにこのコンテナっていうのは、外国でひとたびバタンとドアを閉めると中が見えませんから、私の分野で半分冗談めいたことをいう人がいるんですけども、透明のコンテナを作れば開けなくても大丈夫じゃないかと。今コンテナの価格が100万円くらいなんですけども、透明にすると1000万位かかっちゃう。人工ダイヤみたいので作らないとあの箱の強度は作れませんから、理論的には可能でも経済的には不可能だから。これはアメリカの沿岸警備隊が提供してくれたものなんですけども、みなさんの着ているもの、使っているものはほとんど海外から来ていますが、海外からやってくるコンテナを開けるとどのような状態になっているか。みなさんはおそらく段ボールのようなものがばんばんコンテナに詰まっているとイメージすると思いますが、確かに段ボールの貨物は多いですけどもそれだけじゃないです。たとえば油とか危ないものが入っているドラム缶がびっしりと、これは国際輸送的にはあまりいい積み方じゃないんですけども、こんな状態で。これをバタンとドアを閉められたら何が入っているかわかりませんからね。あと、コンテナの中にはなんでもかんでもいろいろ詰められることがあります。
何でもごちゃ混ぜの怖さ
業界用語でこれを「混載」といいます。どういうことかというと、これはAさんの貨物で東京から、これはBさんの貨物で横浜から、これはCさんの貨物で埼玉からでる。でも、東京から出た貨物はたったこれだけなんです。これだけの荷物でコンテナを丸ごと1つ借り受けるのは経済的に成り立ちません。ですから倉庫会社がやっているのは、ロサンゼルス行きの出荷をしたい人は、まずはなになに倉庫さんの庭先に荷物をもってきてくださいという。そうするとロスアンゼルス行きの貨物をそれぞれが持ってくる。そうすると1個のコンテナが満杯になり、コンテナ1個の値段をお客さんの数で割ればとても安くなります、いわゆる相乗りっていうことですね。国際物流でも相乗りっていうのがあります。「混載」です。こうなるとやっかいなのは、液体を送る人もいれば粉を送る人もいればお皿を送る人もいるなど、いろんな貨物が中で混ざります。荷姿も違いますから、てんでんばらばらに入っていると、ますます中に何が入っているかはわからない。あと、この青いドラム缶に危険な液体が入っているかもしれないんですけども、このコンテナが倒れて貨物の液体が漏れて人に触れちゃったりして大やけどしたっていうことが過去に起きています。今日はトラックがひっくり返る方の話を集中的にやりますけども、神戸で聞いた話なんですけどね、港に放置されて中でどろどろに溶けて、溶けた鉄と液体が漏れ出してきているコンテナがあって、偶然発見されたんですけども、それが発見されないで国内に道路輸送してたとえばこの文京シビックセンターの隣の白山通りなんかでそんなのに走られたら、どろどろに溶けた危険物の飛沫が飛びますよね。それが歩道の人たちにかかれば洋服に穴があくし、女性にかかったらたいへんですね。一生肌にあざができちゃうようなものまで運ばれていますから。ところが、コンテナの蓋を閉めたとたん、まったく同じ箱に見えます。御覧のようにこのような丸い筒もありますね。段ボールだけじゃなくてこのような丸い箱も運ばれます。これはひどい例なんですけども、いっぱい詰めちゃって、丸いものっていうのは動きやすいんですけども、動かないような積みつけは全然、天井までいってあいているところには寝かしちゃって置いていると。これ、危ないのは、荷役の作業員がドアを開けた瞬間、中の荷物が崩れてくることがあるんです。これで実は人が死ぬんですよ。港に着きました、倉庫に着きました。イトーヨーカドーの裏の倉庫に着きました。さあ、開けてって開けた瞬間、ドア側の方に貨物がよっかかってそれを知らないで開けた瞬間にドンっと。中に何が入っているかによりますけど、開けて1トンくらいのものが降りかかってくれば、体が大きくても死にます。これが新聞沙汰にならないのは、港の業務の中で起こっている事故です。人知れず起こっている事故です。あとはご覧のように粉をたくさん詰めた袋のものが積まれることあります。これも全体的な貨物としては重くなります。
「片荷」
これは何かわかりますか。段ボールの貨物なんですけども、外国で詰めるときに一番奥から詰めるんです。ところがコンテナが箱でいっぱいになる前にもう積む貨物が終わっちゃったらその時点でドアを閉めて外国に送っちゃう。そうすると前の方だけがものすごく重くてドアの方が軽くなる。業界では「片荷」といいますけどね。これは輸送中非常にアンバランスになります。もっとやっかいなのは、高く積み上げているのにちゃんと貨物が崩れないような手ほどきをしないで箱だけ閉めて送っちゃうもんですから、相手国に着いたときにドアを開けたら中の段ボールが崩れてきてしまって、商品価値を失ってしまっているようなものも出てきている。こういうような積み方をしてしまうのは、大方安い国で生産をして、安い物流を使っているところが多いからですね。ここがコンテナのセンターなんですけども、この奥に入っているものはなんだかわかりますか。鉄の塊です。鉄の塊なんですけど、これは液体を入れるタンクなんです。タンク自体で何トンもあるんでしょう。液体を入れれば数10トンになります。それが真中からずれて横に左右の横側にずれている。これもふたを閉めた瞬間、中がどのようになっているかわからなくなってしまう。これが道路輸送上最悪の状態となっています。非常に転びやすい状態なんですね。
法定速度を守っても起こる事故
これから5~6年前に起こった新橋の事故を検証するんですけども、残念ながら重さが30トンを超えていますから、乗用車はぺちゃんこです。このときのドライバーの証言を見てみると、面白いんです。首都高速の新橋あたりなんですけど、乗用車は普通80キロくらいでゆっくり流れていく。レクサスとか高性能の自動車であれば、120キロとかでもスピード違反になりますが安全に走れます。でもこのトラックは時速60キロ前後で流れに乗って走っていた。乗用車だったら非常にノロノロした走り方で転んだっていうことになりますと警察に証言しています。残念ながら運転手は日本の道路交通法上、現行犯逮捕です。この段階で業務上過失傷害。ですがこの荷物は海外から送られてきて、満載に積んでいました。で、60キロ以下、おそらく制限速度は守っていたと思います。でも事故が起きた時に、日本の法律ですとトラックドライバーの過失ということになります。この写真の状態から数時間経ってトラックが引き上げられたら、つぶされた乗用車の方っていうのは即死ですが死んだことが明らかになるとその段階で業務上過失致死として起訴されていって、関東ですと前橋の交通刑務所に3ヶ月くらい入る処罰になると聞きました。
積み荷を知らずに走行するトラックドライバー
ですけど、不思議じゃないですか。無謀運転をした事故とは違うんです。トラックドライバーが自分でコンテナの中に貨物を詰めたわけでなく、貨物は全部外国から来ている。ことトラック会社にしてもトラックドライバーにしても、船会社もそうですけど、中がどうなっているかを見ることはできないんです。それができるのは日本の商法上、貨物の持ち主ですから、この中の貨物を、これは冷凍・冷蔵コンテナなので冷凍食品だと思いますけど、ニッスイなのかニチレイなのかわかりませんけども、そういうところの冷凍・冷蔵倉庫で初めてあけることができる。ですからトラックドライバー、運送会社、港の作業員にしても、とにかく最後の目的地に着くまで法律上誰も開けることができない。ところが自分でどうにもならない原因が中にあるのに、事故が日本で起きるとその場にいた人が処罰されてしまう。あともっと大切なことは、みなさん一般市民が何も知らずに渋滞など逃げ場がない状態で大型トラックの横を車で走っていて、たまたまバタンとトラックが倒れて即死したら理不尽な話ですよね。そうやって理不尽に亡くなっていった方々への償いは、誰かの責任にして誰かに償わせないと罪もなく亡くなっていった方々が浮かばれないので、その意味では誰でもいいから責任者にしちゃえっていうやり方しかないのかなという気もしないでもないんですけど、この事故って言うのは当事者が2人とも犠牲者じゃないかと。つぶされた人は本当の犠牲者、トラックに乗っていた人は法律上は加害者なんだけども倫理的には犠牲者なんじゃないかとね。
コンテナの下敷き=即死
この種の事故で乗用車がつぶされるとどうなるかというと、これは大阪で起こった事故なんですけどもあれも即死です。今から10年前くらいの2000ccクラスの事故なんですけども、ぺしゃんこですね。私、自動車会社に、自動車の強度はどのくらいあるかと直接聞きました。日産系だかマツダ系、自動車の強度はこのように決められてあります。たまたまなんらかの原因で自動車が横転します。屋根が下になって逆さまになったときに、自分の車体の車重は完全に支えられるようになっているそうです。ですから一般の乗用車であればだいたい1トンくらいなのでひっくり返っても1トンは耐えられるように作ってあるので1トンの重さが上からがしゃっときてもたぶんみなさんは助かると思います。いや私は三菱パジェロよとか、ジープで重たいのでも3トンで三菱パジェロも2トンくらいの重さですから、2トンくらいの重さには耐えられるんですけども、3トン超えたらぐしゃっといくわけです。コンテナは30トンで、箱だけで4トン5トンです。箱だけで乗用車はつぶれます。その中に25トンくらい貨物が入っていますから、これはひとたまりもないです。普通の乗用車はぺちゃんこになります。私はコンテナの専門家だから学生に教えているんですけども、毎年フレッシュマンの学生にはコンテナが輸送されていればみなさん車やオートバイで絶対に近づいちゃだめだよと。後ろからあおられたら、その車は先にいかしちゃいなさい。交差点ではコンテナとだいぶ離れたところに止まって、横を通りすぎるならさっさと通りなさい、それしかみなさんを守る方法が今現在はないとずっとこの20年間学生に言い続けてきたんですけども、笑っちゃいますが神戸の大きな海上コンテナのトラック会社の社長が、社長訓辞の時に社員に対して同じことを言っているんです。コンテナ輸送の会社の社長がコンテナトラックドライバーに、おまえらオフの時に乗用車に乗るだろ、そしたら絶対に海上コンテナの輸送の近くに近づくなって、海上コンテナのプロのドライバーたちにプライベートな生活上の注意を社長が与えているんです。悲しいかな、そういう方法でしか今までこの種の事故を止める方法がなかったっていうのは、みなさん驚きではありませんか。この事故を起こしたコンテナの中を見ると、ご覧の通りこのようになっているんですね。これは東南アジアのある国からきて横転してしまったんですけども、積まれてきたコンテナの中身を倒れてから調べたらいわゆる片荷になって天井まで積まれていました。四角い箱の中には液体貨物、ケミカルです。水はだいたい1メートル四方で1トンありますから、似たようなものですね。比重が違っても、これは重さは20トンくらい貨物が積まれていて、箱の重さを足して25、6トンになってしかも天井近くまで積んでいますから、これは物理の計算をしなくてもこのコンテナ貨物の状態は重心がだいぶ高くなって左に寄っている。だから絵に描いたように左側にバタンと倒れて、たまたま朝の渋滞した道路だったので横に乗用車がいてつぶれてしまった。外国の法律と日本の法律の垣根部分で、いろいろ問題があるって指摘したんですが、これが典型的なんですね。
海の上の常識が通用しない陸の上
海の上の国際規則、ガイドラインがあるんですね。イメージで描いてあるみなさんの向かって左側はですね、非常に重たい貨物や背の高い貨物を外国に送る場合はご覧のように絶対に動かないような固縛、英語で言うとブロッキングって言うんですけど、そういう荷造りをちゃんとやりなさい、あと前後左右センターに貨物が来るように、これが今から30年以上前にロンドンになる国際海事機構というところで条約化された中のいわゆる指針として、いろんな貨物の絵がきちんと描かれているんです。ところがそれが行くのは船会社までです。っていうのが、海の上での国際規則ですから、各国の陸に揚げても効力がないんですね。ですから海際の人たちはみんなよく知っています。その当時は、今のように箱ではなくて貨物をむき出しのまま直接貨物に積んでいた時代なので、目に見てどういう積み方だっていうのがわかるので、その意味では陸の上に上がるときに安全にするとか、危ないものは陸に流さないということができたんですが、今はもう上の写真のようにコンテナの中に入っている状態であってもふたを閉めた瞬間にわかりませんから、それがずっと流れてきていしまう。しかも商法とか契約の問題でコンテナには鍵がされていて、それは途中で開けることができない。また無理に開けようとすれば、法律的にできなくもないんですけども、経済的な流通を阻害しますから、いろいろなところに損害が出てきて、損害賠償してくれるなら止めていいよ、開けていいよっていうことになる。結局こういう海の上での法律って言うのが徹底されていない。さっきの引用している新橋の事故の新聞記事がそうですし、こちら側は埼玉県の三郷インターで、もう枚挙にいとまがないですね。液体を積んでいるコンテナが炎上した例もありますし、上の写真は炎上しなくて済んだ、下の写真は燃えてしまった。
これは3年前くらいですけど、港区の東京海洋大学の品川校舎のすぐそばなんですけど、これはラッキーでした。後でラッキーじゃなかった例を見せますけども、トラックドライバーの方は助かりました。首都高速道路の縁石に引っかかって落ちたのはコンテナだけだったんです。
落ちたコンテナは一般道に落ちたんですけど、ぎりぎり車に当たらなかった。もし車がたくさん並んでいるときにコンテナが落ちたら、何人死んだかわかりません。これは横浜の保土ヶ谷バイパスで、残念ながらこれは即死です。海上コンテナの横転事故に巻き込まれたときに、軽傷、重傷で終わった例はないです。必ず100%全員が即死します。理由は簡単で、車は1トンしか耐えられないのにそこに30トン、40トン降ってくるわけですから、ぺちゃんこになります。助かる可能性はゼロです。たまたまぶつからなかったか、ぶつかったら即死という事故なんです。まったく収まる気配がありません。ショッキングな報道を見ていただきますが、去年、非常にショッキングな事故があり役所も動かざるをえなかったんですが、今まで亡くなったのは港で働いている人とかドライバーなど、同情を誘うにはトーンの低い人々だったんですが、この事故はみなさんも聞いていて身につまされると思います。
(映像の解説)
歩道の20歳の女性が下敷き巻き添え
コンテナ輸送システムの構造的欠陥
 「曲がった時の速度が速すぎたかもしれない」というのは、業務上過失致死で警察にしょっ引かれて尋問を受けているからそう答えざるをえないんですけど、60歳のベテランドライバーが毎日運んでいるんですよ、毎日毎日何十年も。この瞬間だけ無謀運転するなんていうのはおかしいと思いますよね。ですから、いつもだったら曲がれていた速度でまったく同じ箱を積んで運んでいた。ところが、今日たまたま運んでいた箱の中身がおかしかったと考える方が私は妥当だと思います。ちらっと出ましたが、これ清水港で木材を積んだんじゃないんです。輸入コンテナですから、清水港でコンテナがおろされた。そのコンテナに木材をまるまるいっぱい詰め込んだのは、どこかの国です。インドネシアのボルネオ島とか、あっちの木材を輸出する国で丸太をいっぱい詰めて、そうするとコンテナは35トンから40トンくらいになります。非常に高い重心になります。でもふたを閉めたら木材会社に着くまで開けられませんよね。みなさん信じられないかもしれませんが、この海上コンテナの道路輸送では、多くの場合、トラックドライバーがいったい後ろのコンテナに入っているものがなんだろうという情報さえ与えられずに運んでいる。船会社までは情報がいくんですけども、船会社の情報は多くの場合そのまんま輸入をした荷主さんまでいっちゃうんですね。トラックドライバーはコンテナの箱のナンバーだとか識別情報だけで、中に何が入っているか全然わからない。あと、これはいいか悪いかは別として、トラック業界というのは元請けの会社があります。元請けの会社は、注文を受けるだけです。それは実際の実運送では、ちょっと手数料というかピンハネをして子受けというトラック会社に流します。子受けというトラック会社もある程度自分で運ぶんですけど、トラックの台車は当然足りませんから、孫請けっていう零細企業が実際に多く運ぶんですね。そういう構造ですから、船会社から実際にトラックで運ぶ会社まで情報がいかないのは当たり前といえば当たり前です。国際物流上の商業経済的には船会社から荷主さんまで情報がいけばそれでオッケー、最終目的地は荷主さんですからね。ですから中に何を積んでいるか、このトラックドライバーも事故が起こって初めて知ったんですね。この事故で、交差点でメールなんておちおち打っていられないっていうことで、死んだ方もおそらくアナウンサーと同じくらいの歳の人ですよ。さすがに国土交通省もこのあとガイドラインを作って、通達で安全を高めなさいとか貨物の中身をチェックしなさいとか平気で言っています。チェックできないから、こういう事故が起きているのですね。科学技術振興機構から助成をいただいた時に、まだこの事故は起きていなかったんですけど、審査員の方々にはっきり申し上げたのは、私が研究期間にどこまでできるかは別として、助成期間中に必ずこの事故で人が死にますよ、毎年人が死んでいますから注目していってくださいということです。みんな何でか分からないからぽかんとしていましたけども、明らかに事故が起こってからみなさんのトーンが、色が変わったなと。本当だったら私はこの事故を避けたかったんですけども、このあとみなさんに評価していただく私自身の研究が間に合わなかったんですね。この段階ではまだ特許も出願できていませんでしたし、理論の解明もできていなくて去年の7月この事故を知って歯がゆい思いをしました。それからこの事故が起こったちょうど一ヶ月後に、このあとみなさんに見ていただく技術の理論の部分が解けてきたんですね。そうこうしているうちに、つい最近また事故が起こりました。これは今年の2月22日、みなさんも記憶に新しいと思います。巻き込まれた方はいませんでしたが、トラックドライバーは亡くなりました。
(映像の解説)
前触れ無く起こる横転
 ここで見ていただきたいんですけども、これは私の研究の核心部分なんですが、ここでトラックがバッと行っていますよね。この辺のところでもしトラックドライバーが異常に気づいているのであれば、ブレーキングの跡がつきますよね。あとハンドル切って事故を回避しようとしてところが間に合わなくてタイヤの跡が残るとか。何もないんですよ。これは典型的ですね。
(映像の解説)
 ここは確かに高速道路で、曲がりのきつい部分であることは確かなんですけども、決して急なカーブではありませんので。NHKが何を考えたかわかりませんが、首都高速はちゃんと都市高速道路の企画で作られているので、一般道よりきつい道路はありません。乗用車で走ればなんていうことはない。乗用車がここで横転してぶつかった事故なんていうのはほとんどないですから。だからトラックドライバーは突然ふわーといくまで、何が起こっているか気がつきません。下から浮力のようなものを感じたときは、一貫の終わりの状態です。ハンドルを切る、ブレーキを踏む時間もない。それだけ短い間にドンといったんです。これも不幸中の幸いで、橋脚があったから下にコンテナが落ちなかったし車も直撃しなかったんですけども、積んでいたものが何かすぐにわかりました。今、IKEAなど輸入家具がすごく人気ですよね。輸入家具は車で行ってセットで買ってきて組み立てるやつです。ニトリもそうですね。すごく安いですよ。それがどうやって入ってくるかというと、段ボールの中に板がびっしり詰まって、ねじも入って1つの長方形のセットになっています。それをコンテナにびっしり積んで外国からやってくるんですけども、そういう輸入の組み立て家具系の貨物をコンテナに積むと、貨物の密度がものすごく高く、重くなります。たとえば皆さんが使っている机のようなものをそのままコンテナに入れれば、空間がありますから貨物全体はそんなに重くなりません。それをたたんで空間がない状態にしてコンテナの中にびっしり詰めていきます。その方が輸送費が安いので。そうなるとこのコンテナっていうのはすごく重たくなります。場合によっては40トンを超えてしまう。実は私だけじゃなくてコンテナ輸送の専門家の方たちがこの写真を見た瞬間、いったいこの貨物は何だって見切っています。
コンテナトラック横転実験
それでは、私の研究を紹介したいと思います。以上のように事故は延々と続いています。女性が亡くなって半年経たないうちに赤坂で事故が起こりました。こういうのは心苦しいんですけども、必ず今年もどこかで大きな事故が起こります。来年も再来年も。人知れずどこか忘れたころに横転が起こると。このままじゃいけないということで、私の研究の一環でやったのは、まずはとにかく本物のコンテナを倒してみないとわからないだろうと。実際にコンテナの横転事故を起こしてしまって、そのときにいろいろデータがとれますから、それを研究のスタートにしようという計画を立てました。それが今から2年前です。結局は神戸港にお世話になりましたけども、日本全国どこでもそうなんですけども、同僚が事故を起こして刑務所に行ったとか、港で貨物の荷崩れにあって同僚が死んだとか、みなさん港湾、荷役関係で近場であるいは遠い関係で多かれ少なかれみなさん悲しい思いをしてきているんです。ですからそういうものがつもり重なって、渡邉先生がそういう気でいるならばみんなで協力しようって手を挙げてくれたところがたまたま偶然神戸で、今から2年前の4月13日のことだったんですが、本物のコンテナを用意してひっくり返す実験に成功しました。
そのときの状況を今日はみなさんに見ていただきたいと思います。私は学者だったので、とにかく実際の事故と同じことをやりたいと言い張ったんです。大阪で起きたこの事故をモデルにしたかったんです。コンテナに20トンに貨物を積んで、片側に寄せて、天井まで貨物を積んでくださいと。それでコンテナを引っ張って走って、ひっくり返してみましょうという計画を立てたのですが、いざ実験をやるとなるとやはりみなさん非常に心配になって、生身のトラックドライバーがあとで出てきます。日本で一番腕が良いというドライバーを使うことができましたが、その方は非常に人望が厚いので、その方が死ぬかもしれないとみんな思って、貨物の重さをとにかく少なくしてくれと。そこで泣く泣く貨物は9トンになりました。あと、天井まで貨物を上げててくれといったんですけども、高すぎるということでこのくらいまでしか上げてもらえなかったんです。
ですから9トンの貨物であの程度ですから、非常に安全な状態になっちゃってこれでコンテナがひっくり返るのかな、人命が優先だからしょうがないなと複雑な思いで。うわさによると、いろいろな神戸の港湾関係の業界関係者は、トラックドライバーのために内々に葬式まで用意したそうです。笑い話じゃなくて、このあとの実験の映像を見ると、そのくらいしないと危なかったなというのがあります。
(映像の解説)
保税区域で実験…時速たった35キロで横転
 だいぶ物々しかったんですけども、これ横転実験をやりたかったんですけども、日本の法律の問題に私も直面しました。この横転実験で見ている方でもいいですしマスコミの方、ドライバーの方もそうなんですけども、どなたかが傷ついたときに日本の法律ではどの法律も責任能力がないということがわかったんです。ですから陸地のどこでもいいから道路でやるっていうことはできなくて、いろいろ考えあぐねた結果、偶然私の分野で港の中はいわゆる日本の法律の適用除外地、保税区域っていうのがあるんです。保税区域っていうのは、日本の法律の適用対象外になるので、いわゆる外国状態になるんです。コンテナターミナル、埠頭なんかはそうなんです。外国から貨物をおろしてまだ通関を切る前はまだ外国状態なんです。そういうようなところをよく保税地域にするのですが、神戸港には保税地域がいっぱいあってたまたま空き地に近い状態だった埠頭を神戸市からお借りして、ここでは日本の法律が適用できませんから、日本の法律が宙ぶらりんになることはない。ところが何の法律もない状態なんで、やばいだろうということで、税関、警察、消防、国のお役所の神戸の支所、神戸市、だから日本の法律権限持っているのが全員いっせいのせで立ち会うと、なんかできるらしいんです。それでいいよってなって、ですからこういう物々しくなってしまって、あと消防隊のレスキューチームとか、おもしろいのは消防隊のレスキューチームってなかなか活躍の場がないんですけど、本当に危ないことをやって彼らがドーンってぶつかったらドライバーを救出しに行ってくれたんで、消防署の消防練習よりよっぽどためになったっていう副産物があったということもありました。で、倒れる瞬間、あとで結果を見せますけども、ぶつかった時は35kmを超えたくらいで、非常にゆっくり来てどーんといきました。しかも9トンしか積んでいないんです。本当の事故は20トンとか30トンを積んでいるわけですから、それが一番この実験の価値といえると思います。次の映像は非常に貴重なんですけども、これ車載映像です。
(映像の解説)
無茶苦茶な実験だったが大きな成果
 私も必死だったんで、あとで考えたんですけども、これでトラックドライバーになんかあったり、たまたま大破したものが飛び散ってマスコミの人がけがしたとしたら、大学にいれなくなったと思いますね。あとにも先にも本物のトラックで貨物も積んで生身のトラックドライバーに運転させて、本当に横転事故やっちゃったっていうのは国内ではもちろん初めてですし、海外でもないです。海外では自動車メーカーがトラックの横に長い枝をつけて枝の先にタイヤをつけて、倒れそうになって傾くと枝のついたタイヤが押さえてそれでおしまいという、横転想定実験です。それはベンツとかもやっていますけども、これはアメリカやヨーロッパ、中国の人に聞いても、こんなことをやったのは聞いたことがないと言います。まあ、無事に終わってよかったとしか言えませんけども、これによって非常に大きな財産を得ることができ、このあとの話につながっていくんですが、これはトラックについていたタコグラフです。これによってスピードがいつの段階でどう出たかっていうのがわかります。タコグラフはみなさんあまり慣れ親しんでいる方がいないので、もうちょっとこれを倍率上げて見てみますと、タコグラフにはこういう風に線が残るんですよ。ちょっとぐちゃぐちゃと残っているところでスピードが終わっていますが、ここでどうやら横転が起こったようです。だいたい10キロの幅で線がついていますので、このラインを紐といていくと、だいたい30キロのラインを超えて40キロの手前なんで、実際の速度は37キロくらいの速度でひっくり返った。このときの仮想道路の半径が35メートルです。35メートルというと、文京区の白山通りの右折の半径が25メートルくらいです。ですから大きな白山通りの交差点よりももっとコーナーはゆるやかです。国土交通省のビルの日比谷の方からぐるっと回っていくところがありますよね。いわゆる赤坂の方に抜けていく、あの霞ヶ関の交差点っていうかコーナー、あれがだいたい35~40メートルくらいなんで、あそこで時速40キロくらいで転ぶ可能性もあります。今日は時間の関係で技術的な話は省きますが、コンテナがどうやったら倒れるかという理論開発は過去5年くらいやってきました。それで私がこの段階でたどりついていたのは、貨物の積載状態がわかればコンテナの大きさは均一の大きさで重心は真ん中ですし、トラックの大きさっていうのは、全部標準化されていますから、ほぼどこでも同じです。あと、引っ張っているトラクターも標準化されていて車検証もありますから、すべての情報さえわかっていれば、貨物がどう積まれたかがわかっていれば、全体の重心の位置が出てくるのでそれの物理学的な計算を細かくやれば、時速何キロ、または半径が何メートルで何キロでコーナーで倒れるかというのがわかります。
仮説の実証
まずこの計算がちゃんといくかどうかっていうことを実験の結果でやってみたんですね。その計算結果なんですが、この社会実験をこの開発してきた理論に当てはめると、だいたい35メートルくらいの半径のところでこの斜めのルートのようなカーブを超えるとトラック車両が転んでしまうという計算なんですが、限界の速度を下回るだいたい40キロくらいのところで、実験の時に倒れたタコグラフとほぼ同じところでした。もしこの実験車両をあのまんま事故現場にもってくるとしたら、こういうことになりまして、なんと時速60キロ以下でも転ぶ可能性が出てくるんですよね。理論ですからもちろん誤差も含んでいますけれども、絶対に道路標識に書いてあるような法定制限速度なんて守ったらそれだけで自殺行為みたいなものがある。ここでもう法律と現実の乖離ですよね。法定制限速度を守って普通の流れにのって走っているのに、事故が起きちゃう。ところが起きたら事故の責任はトラックドライバーと運送会社になる。その貨物は自分たちが積んだんではなくて外国で詰められて何が入っているかわからない。また、なんとなく危ないなとわかったところでそれを開けて積み直すっていうことも許されない。何もできない状態で運ばざるをえないんですけども、事故が起きたらその場にいた当事者が道路交通法違反で現行犯逮捕される。私はこれは非常におかしいと思います。
質問:(次ページグラフを見ながら)これはさっきの横転したトラックの実験結果をもとに解析したものがここであるということですか。
渡邉:そうです。神戸の実験を事故の起こった道路にそのまま持っていったら、この速度で危なくなるんだというのを計算したものです。
実際にトラック車両を持っていったものではありません。持っていっても、倒れるおそれがあるので、低いスピードでしか走れません。新橋の事故だったか、ドライバーが警察に陳情しているのは、確か時速60キロくらいだったか、車の流れに沿って走っていたんだがなあというコメントがありましたけど、あれは9トンではなく20トンを超える冷凍冷蔵食品を満載にしたコンテナでしたから、おそらくあの事故の計算をしたらこのラインはもっと下がると思います。時速50キロくらいのところに行っちゃうかもしれない。そうなるともうトラックドライバーに対してはたまたま後ろに積んだコンテナ1つ1つに合わせた横転限界速度を仕事が始まる前に伝えてあげるしか事故を防ぐ方法はないと。もしくは法律全体を変えて法定制限速度を海上コンテナ用にいろいろなところで作り替えて乗用車とわけてやると。本当はその方がいいのかもしれませんけども、残念ながら日本の法律体系では残念ながらすぐにはできない。あと5年か10年かかるのかなってこの段階で私は法律で頼れないなと気づいたのは2年前です。
重心の位置を探って横転限界速度を導く
それから私は自分ができるのは何かと考えたのは、私は工学の技術者ですから、とにかく技術で貢献できることが何かを探すしかないと。法律が改正されて法律によって市民が守られるような社会を待っていたら、20年、もっとかかるかもしれない。その間何をするのかと。あの女性のような方が毎年毎年死んでいくんですからね。それはもう待てないなと思ったんで、法律に代わる方法で自分は貢献するしかないと思いました。それで考えていったのは、このあとの話なんですけども、技術で横転の限界の速度をトラックが仕事を始める前に解決できないかなと考えています。この段階までわかっていたのは、貨物の重さと積んでいる場所、あとはコンテナの箱とトラックは規定のサイズの重さですから、それははじめから定数としてわかります。問題は中の貨物の状態がどうなっているかをコンテナの箱を開けないでもしわかればコンテナの箱を開けないで解決できると。一番技術的にもっと簡単にいっちゃうと、車両全体の重心の位置はたまたまその中に積まれている貨物の積載コンディションによってずれるわけですよね。その重心の位置さえわかればそれで横転限界速度っていうのは、すべてのコンテナのふたが開かなくてもわかるそういう技術を開発したいなと思うようになりました。
なんでこう思ったかっていうと、横転実験で運転してくれたドライバーもそうなんですけども、エキスパートのドライバーっていうのは、コンテナを港で後ろの台車に載せられます。そうするとアクセルを踏んで時速30キロもいかないうちに、有能なドライバーはああおかしいなと思うそうです。これ気をつけようっていって、コーナーとか交差点とか要所要所で十分低い速度で走ります。ただ直線道路は問題ないので、要所要所をおさえることで事故は起こらない。ところが最近は若いドライバーとか女性もたくさん入ってきています。事故が増えてきたっていうのは、この牽引トラックの性能アップですね。これはいまや400馬力はざらで、500馬力に達するものもあります。あと、サスペンションはエアサスがついています。後ろにどんなに重たいものが積まれても、ある一定の高さを並行してギュッと上げてしまうんですね。トラックの横でシューっていう音を聞いたことがあると思いますけども、あれはエアサスが踏ん張っているんです。ですから、昔のトラックは単なるばねだったので、重たいものを積めば積むほど沈みます。左右に重心がずれていれば傾きます。今、傾かないんですよ。エアサスが踏ん張っちゃうから。あと、乗り心地もすごくよくなっています。トラックのフレームの上に運転席があるんですけども、運転席がフレームに直結していないんです。フレームと運転席の間に、また運転席用のサスペンションがついているんです。ですから運転席が非常にふわふわふわっとなっていて、居住環境はとてもいいんです。ですから後ろの振動がほとんど伝わらないんですね。おまけにパワーが500馬力ありますから、30トンの海上コンテナで片荷になってもアクセル踏んでしまえばギュンと行くんです。ですから今は後ろの状態がドライバーに伝わりにくくなっています。これも市民科学の面では、技術の進歩によって、居住環境がよくなっているのが仇になっています。危険が逆に伝わりにくくなっているんですね。運転しだしたら安全か危険かを判断できるのはドライバーしかいないんです。ところがそのドライバーに対する情報を遮断してしまう技術が進んでしまったと。
匠の技をITで解析
私の場合は昔貧弱だったころのトラック、それにめがけてですね、まずは熟練したドライバーとか港湾運送業者にいっぱいヒアリングをしました。困ったのは、これも市民科学系の問題なんですけども、こういうところにいるエキスパートの方は、中卒や高卒など、学歴社会の中では一番底辺の人なんですよ。横転社会実験でハンドルを握っていただいた方もそうなんですけども、「後ろが危ない状態ってどうしてわかるんですか」と聞くと、「なんでか分らないけど分かるんだよ」って言われて。これほど貴重な情報、ノウハウを、能力を持っている人たちが、どうしてなのかっていうのは自分では分かるんだけども、相手に伝える能力がないことが多いんですね。私これは非常につらかったですけども、何度も丹念にいろいろお話を聞いて、やはり後ろから伝わってくる何かを微妙に感じ取りながら、五感を駆使してみなさん何か変だなということを感じているんです。的確な表現ではなくて、「何か変だよ」とかね。そういうような微妙な表現でしかない部分を、アクセル踏んで引っ張っていると、何かハンドルを取られるなとか、トラックの方でいいますとアテカジっていう、乗用車ですと普通まっすぐ走っているとハンドルが遊んでいる状態になりますけども、後ろの状態がよくないトラックの場合はなんとなくまっすぐなのにちょっとあて気味にしないとまっすぐ走らないとか、そんなこともあるらしいです。それらは人間の感覚でそれらを処理しているんですけども。私が求めたのは、彼らの持っているノウハウ的な匠の部分を引き出すような情報を、ITといいますかね、先端技術を使って引き出せないかなと。人間には叶わないかもしれないけど、おそらく核となる部分はいくつか見えてきて、それを組み合わせることによって、後ろがなんだかわからないけど、技術的に現在運んでいる荷物の積載状況はこのくらいで、だとすると交差点では時速何キロ以下にした方がいいとか、そういうところまで近づけるんじゃないかなということで。これが私が実験途上でやっていった仕組みなんですけども、とにかく何が効いてくるのかわからないので、理論を先行させませんでした、この1年半はね。とにかく現場の方が一番有能ということで、彼らが何かを感じているなら、世の中にある動揺とか振動をすべて測れということで、これは航空機についている姿勢制御装置の中のセンサーです。三次元空間上に物が浮かぶと、物理学的には6個のまったく異なった種類の動きが物体には加わります。その6個をとにかく全部とっちゃえと。それでその6個を取った後、後で分析すればいいじゃんと。どっちみち人間にはかなわないんですから、6個の中の全部なのか、1個なのか。1個ならしめしめですよね。2個なのか3個なのかおそらく一番効いてくるものが複数以上あるだろうと。それさえつかめれば少し人間に近づけるかなということで、去年1年間かけてトラックの一番真ん中に積んで、運転席にあるパソコンにつないで、どんどんデータを取りました。
理論よりも現場の実態に即したアプローチ
貿易貨物の現場を知らない方によく言われるんですけども、失礼な意味で言っている訳ではないんですけども、コンテナの貨物が原因だから、こういうセンサーは引っ張っているほうじゃなくて、コンテナの台車とかコンテナそのものにつけた方がいいのではないか、正確じゃないかとよく言われました。みなさんもそう思いませんか。それは理論的にはそうなんです。私もコンテナの箱にセンサーを直接付けたかったんです。喉から手が出るほど。ですがこれは実際の物流のお仕事の面で考えると、それは理論的には可能であっても、お仕事上意味がなくなります。トラックドライバーが運転するのは、ヘッドと呼ばれている牽引車両のみです。毎日台車が変わります。毎日コンテナが変わります。しかもコンテナは外国から来るのにコンテナにセンサーなんかつけられるわけないですよね。物流の実態が許さない。あと台車も、今日は船会社の台車、今日はあのトラック会社の台車、何を引っ張るかは分からないんです。それなのにその台車にセンサーを付けてうまくいったからって言って、物流のお仕事が成り立たないんです。よくよく考えてみると有能なトラックドライバーっていうのは、後ろの台車もコンテナも毎回毎回違う、初めて出会うものばかりなのに、朝アクセルを踏んだ時におかしいぞって分かっているわけですから、それに近づけないと事故を撲滅できないとすれば、トラックの台車じゃなくて引っ張っているトラックの方につけなきゃ意味がないです。当然誤差のある情報がこちらにやってきますけども、それでもやらないと実際の物流で使ってもらえない、そういう理由です。横から見るとこういう感じで、
コンテナや台車にセンサーをつけた方がそれはそれでその方がいいんですけども、それじゃ物流上は無意味、まったく使えないので、トラックのヘッド、引っ張る方につけてあります。ここである情報を検知できれば、それを物理学的な計算に埋め込むことによって、中の貨物の積載情報が分からなくても垂直断面で見るとセンターからどのくらいずれていますね。あとどのくらいの高さに全体の重心があるかとか、あと前後方向でどのくらいの重心にあるかとか、この三次元空間上の重心が出るんです。
たった2つの情報で三次元空間の重心を導き出す
これを出すに必要な情報が、運がよかったんですけども、6個の空間上の情報のうち、2つですね。私が見出したのは、2つ組み合わせるとうまくいくようになりました。人間の場合には口で表現できなくても、もっと情報を総合させながらいろいろな方は判断しているんですけども、理論的にやるとすると、2個を情報として取り出して、それをうまく加工していくと三次元空間上の重心が分かって、重心が分かったら横転計算ができて式はややこしいですけども、それはどこの研究者でもやることができます。問題はこの重心を見つけることができるかどうかっていうことです。それが一番大きい。今のところプロトタイプまでできているので、現在の状態のシステムをみなさんにお見せします。これは今年3月29日に神戸で行った実験です。
(映像の解説)
ではこれから実際に走行中にこのシステムがどう作動するかということを見ていただきたいと思います。
(映像の解説)
30秒ですべてが分かる
これはできたてほやほやのシステムなんですけども、先日の3月29日なんですけども、社会実験を行いまして、失敗してしまったらここに来るのも気が重かったんですけども、このあと新聞記者を代わる代わる乗せて何度やっても小数点の部分は若干ずれますけども、だいたいこのシステムが正しいということを新聞記者の前で見せることができてよかったなと思います。この特徴なんですけども、取りあえず内部はわかりません。積んだものを蓋を開けないで引っぱるだけでいいんですけども、引っ張るのもまあ一般道も30秒でいいです。時速40キロくらいに車が流れにのった段階で、そのくらいで直線で走っているだけでいいんですね。ですからコーナーに入る前に、だいたいすべてが分かってしまうので、そういう面ではトラック業者が朝仕事を始めてコンテナを積んでまだ港を出ないうちに、すべてが分かるという面では重宝するんではないでしょうかね。今のように1分少々で曲がり方・速度が分かってきますから、あとはいろんなことに応用できるんではないでしょうかね。今日走るルート上にどういうコーナーがあるかとか、交差点だったら半径20メートルくらいですから、交差点ではこのくらいの速度に下げればっていうことが分かっていますし。あとこの技術は、後ろに引っ張ったものをたまたまトラックの引っ張る背中に乗っけて測っていますので。トラックは何でもいいんですよ、いすずでも日野でも日産でも。この辺のところはトラック製造会社に嫌がられるかもしれませんけども、別に昭和40年代のトラックでも何でもいいんですよ、仕組み的には。馬を5、6匹連れてきて台車を引かせても馬の台車の方につけておいてもそれでもいいと。ですからこの技術をトラックメーカーに渡すと車体に埋め込んで車両の値段を100万円高くしちゃったりとか、そういう可能性があるので市民科学的にはあまりよくなくて、いかにこれを市民科学的なものにして広めるかというのが課題ですね。たとえば今道路のところにITSとか言って道路の曲がる手前に情報発信をして、情報発信は地方公共団体がすればいいんですけども、道路の半径くらいわけないことなんです。料金所のETCばかりやっていないで、こういうことも考えろって行政に言っていきたいんですけども、私のシステムでは道路の曲がり角のだいぶ前に三次元の重心位置が分かって、それから曲がり角に近づいてきたときに、地方公共団体側から電波で「ここのコーナーは半径何メートルだよ」とトラックに知らせる。そしたらもう時速何キロで曲がると危ないって出ますから。これ安全だと思うんですよね。
技術任せでなく人を信頼する
私はトラックドライバーを信用しているし、人間を大切にした方がいいと思っています。何でも自動化していますけども、そうではなくて、トラックドライバーは「この先コーナーだから35キロに下げろ」と言ったら下げますよ。暴走族のお兄さんじゃないんですから。仕事で働いている人ですから。それでも言うこと聞かないで事故ったら、正々堂々と道路交通法違反、業務上過失致死傷害でしょっ引いても冤罪にはならないと思います。僕は将来的にはこの方法が一番いいんじゃないかと思っていますけども、みなさんはどうですかね。これができれば、多くのトラックは安全に通過すると思います。そうすればあの女性のように交差点でつぶされることもなくなりますし、全部の事故がなくせないとしても、安全性が高まるなと。残念ながら、国はこういう方向で行っていないです。
後手後手の行政-業界の人たちは実験の意義をちゃんと分かっている
私のプレゼンの最後として、やはり行政を批判する必要が市民科学ではあるかなと。ここには行政関係者もいらっしゃると思いますけど、その局の方はいらっしゃらないと思うんで。これがこないだの実験の報道のところに、もう新聞社は気づいているんですね。これと同じことをやってくれた新聞社が三社くらいありました。私の実験の報道の横に国土交通省のこの問題をやっているところをクローズアップして、同じ紙面に、なぜか横に載っているんです。何の関係もないのに。このガイドラインっていうのは、実は国土交通省の海上コンテナの事故対応の部署が載せているガイドラインなんですけども、これは2年くらい前に海上コンテナの事故が多くなってきたんで作ったんですけども、結局この役所は海上コンテナは開けられない、実態上開けることはできない、トラックドライバーが危ないから開けろっていっても開けられないとか、全部外国ですべてが終わって入ってきている。もし、そのガイドラインに沿えというならば、日本の膨大な物流を止めざるを得ないんですよね。そういうようなことがここでは平気で書かれている。それでも事故が起こったんでガイドラインを強力して徹底させていくっていう具合に、「安全輸送におけるガイドラインの徹底」って書いてありますよね。現場の方や業界は分かってきていますけども、開けられないものを開けろ開けろとか、中が異常だったら止めろとか、そんなことは不可能じゃないかっていうことで、これがもう笑ってしまうんですけども、「コンテナの内容物に関する総重量。コンテナの内容物に関する総重量、コンテナサイズ、危険物の有無及びその内容、積み付け状況が明確となる写真等荷姿に関する情報等、トレーラーによる安全輸送に必要となる情報を確実に取得して(トラックドライバーに)伝達すること」って書いてありますけど、できるわけないですよね。学術教育機関最高府を出た方々がいっぱい集まってこういう通達を作って、これを現場に徹底しないから事故が起こるんだということだそうです。私はちょっと意見が違います。「事前情報と重量が異なり過積載となるおそれがあるコンテナや偏荷重等の不具合により安全輸送に支障をきたすおそれのあるコンテナが判明した場合の取り組みを確実に実施すること」。判明できないから事故が起きているわけなんですけども、判明した場合は輸送不可能ですね。これはいかがなものでしょうか。こんなんで事故が減るのかな。「コンテナの輸送の際必要な情報の問い合わせがあった際には、(船会社は)把握している情報を漏れなく回答すること」。船会社が分らないんだからトラックドライバーに流せるわけがないですね。どうするんだろうね。「受荷主(輸入者)及び船社は、過積載や偏荷重等の啓発を行うこと」って書いてありますけど、世の中はサードパーティロジスティック、サプライチェーンマネジメントで、現地ですべて金払って任せてやっているんですよ。荷主もあいつらに任せているんだからっていうのが、物流の実態です。国内にいる発注者がこんなことをやるわけないですよね。向こうに任せてある。中国の現場ですべてがオッケーになってきているはずだっていうのが、荷主の気持ちなんですね。全部がちぐはぐですよね。業界紙は気づいてきているんで、ただ僕が思うには、行政は業界紙をいっぱいとっているので、あからさまに批判はできなくて、僕の実験の横にそれを載せれば読者が分かるということを狙っているんじゃないかと思いました。
横転事故の犠牲者をゼロに…
今現在の私の研究の状態はここで、まだ残念ながら横転事故の人を完全に助けるところまでは行っていないんですけども、一応社会実験レベルのプロトタイプはできました。今後は実験車両を全国から募って、もうちょっとコンパクトなやつを作って、試験的に使ってくれるっていうところを探して、なるべく社会的に意義あるものにしていきたいと思います。今日みなさん何かお気づきの点はご遠慮なくいただければ、市民のみなさんからの声が一番、今後の私の研究の推進、安全の向上に役に立つと思いますので、よろしくお願いします。長い時間どうもありがとうございました。■

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