【インタビュー】 日本の食問題

投稿者: | 2007年7月5日

連続講座・シンポジウム「科学技術は誰のために?」
事前インタビュー(その4)「日本の食問題」
郡司和夫さん(食問題ジャーナリスト)
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上田:
食育の一環として子ども料理科学教室っていうものをやっていて、子どもに自分自身の力でどんな食事をしたらいいのかっていうことを判断していくと。さらに判断するだけではなく、自分でその料理を作れるというところに持っていこうと思いまして、そのために理科教育と結びつけたプログラムを開発しているという状況です。
そこで、食の問題を他の分野と横断的に見たときに、たとえば消費者や生活者の側から、何が問題となっているとかということを少し見たいと思いましてお伺いしたいと思います。先生の目から見て、普通消費者で一番関心があるのは食と健康ということだと思うのですが、それ以外にもたとえば流通や生産の問題もありますし、農業に関わる部分もありますし、非常に幅が広いですよね。主に食のどのあたりにこうスポットを当てて活動されているのかということと、日本における食の問題として基本的なものはいったいどういうことがあるのかということをお話いただけたらと思います。
郡司:
スポットという面では、食の崩壊って言われてだいぶ久しいですが、それがどういう風に心や体に影
響を与えてきたのか。とくに子どもたちにどういう影響を与えてきたのかということをテーマとして取材してきました。結論から言いますと、現在、信じられないような様々な少年犯罪が問題になっていますが、かなり食の崩壊が一因としてあるというのが、私が取材した限りでは浮かび上がってきています。
食の崩壊は、家庭の崩壊と直結していると言えます。食の問題を追求するのに一番難しいところは、何をどう食べて、それがどう心身に影響するのかということについて、厳密に確定しがたい点です。また外から目に見えないという点もあります。
たとえば、衣食住だったら何を着ているのか、あるいは家だったらどういう外壁でどうなっているか外部から見えますよね。しかし、他人の家庭の食はまったく外から見えませんから、お母さん方は一番手を抜くようです。早くでき安いという便利性を重視して、なおかつ子どもの好きなもので機嫌を取る。このような現状が、食の崩壊という面だと思います。
それで少年犯罪の加害者の方の親たちが、どういう食生活をさせてきたのかを加害者の親たちに直接聞いたり、あるいは少年の担任の先生などに取材をしました。その結果、ある共通した点が出てきました。それは、茨城県警や群馬県警の「少年犯罪と食生活」の調査と非常に類似した結果でした。
10年ほど前に、茨城県警が県下の少年犯罪で補導されたり逮捕された少年たち200人くらいの食生活と、一般の少年たちの食生活を比較した。これは筑波大の先生が分析したのですが、粗暴犯といわれて少年院、特高少年院に入った少年たちの食生活で共通して浮かび上がっているのは、清涼飲料と肉が好きでインスタントラーメンを多く食べている。野菜が少ない、朝飯を抜いている。そして、鍋料理はほとんど食べたことがない、という特徴になっています。
それから4年ほど前に群馬県警も同様の調査を行いましたが、群馬県警もまったく同じ結果となっています。もちろん家庭が崩壊しているから食生活が乱れるのはあたりまえという意見があると思いますけども、いわゆる普通の家庭で多くなっているのです。異常な少年犯罪がなぜ頻発するのか、警察の捜査員も理解できなくなっている。それで、食生活の影響もあるのではないかということで、食の方から視点を当てたら、茨城,群馬両県警の調査は食生活の乱れが浮き彫りになったわけです。
私の取材は群馬県警の調査の前で、「中央公論」で「17歳は何を食べてきたのか」というタイトルで掲載しました。取材したのは、「佐賀バスジャック事件」「岡山の金属バット母親殴打殺人」。あと愛知県での「ただ人を殺したかった」といって殺す前にコンビニで食事して、それから実行したという17歳少年の事件。
上田:
その言葉が有名になりましたよね。
郡司:
あとは宇都宮リンチ殺人事件。3人の少年が23歳の会社員を引きずりまわし、火あぶりリンチして、銀行からキャッシュカードで何百万円か引きおろした挙句に殺した事件。主犯格の少年も含めて全員無期懲役の判決が出ました。
こうした犯罪の加害者の親たち、中学時代の担任の先生、友人、近所の人、加害者の父親の会社の上司・同僚などに、どういう食生活だったかを聞きました。そうすると、「食に気を付ければよかった」「食がおかしいと思う」などと感じている人が親を含めて結構多いのです。特に宇都宮の会社員リンチ殺人事件の加害者の母親は涙を流しながら、「おにぎりひとつでも握って,夕飯を用意しといてあげればよかった」と、言っていました。この事件は主犯格の少年が地元警察幹部の息子で、捜査に手心を加えたということで、被害者の遺族と訴訟沙汰にもなっていますが、私が話を聞いたのは、主犯の少年の母親ではありませんが、共犯で無期懲役になった少年の母親とやはり無期懲役になったもうひとりの共犯の少年のおばあちゃんです。涙ながらに話してくれた共犯の少年のお母さんは離婚してから、夜勤にも出ていました。で、その共犯の少年は結構気の弱い子で、高校中退して自動車の整備工として働いていたのですけど、交通事故で怪我をして仕事を休んでいるときに、この事件を起こしてしまった。お母さんは夜勤があるので、夕飯代としていくらかをテーブルの上に置いて「これで何か食べといて」と、言って仕事に出ていました。
少年と主犯格の少年は実は,小学校時代の同級生で、少年は主犯格の少年の「パシリ」でした。中学でもそのことは、わかっていて、主犯格の少年とはクラスは一緒にはさせませんでした。それが、偶然,宇都宮の繁華街で二人は会ってしまったんです。夕飯を食べたついでに寄ったパチンコ屋でです。少年は気の弱い面があり、それ以降、主犯格の少年から携帯電話でしょっちゅう呼出されるようになり、外泊も頻繁になった。だからお母さんは「手抜きをせず、夕飯におにぎりだけでも作っていればあの少年に会うこともなかった。夜出歩くような子ではなかったんです」と悔やんだのです。もうひとりの共犯の少年も「パシリ」で、おばあちゃんは、「うちの子は悪くない。やめろと止めたくらいです。悪いのいは主犯の少年です」と、言ってましたが、近所の人によると、孫に非常に甘く、小さいときからコーラとか甘いお菓子をいつも与えていたと言います。
佐賀のバスジャック事件では、中学の時の担任の先生に話を聞きました。唯一、少年が心を開いていろんな相談を打ち明けたんです。先生は彼がバスジャックをしたっていうのが分かったときに、食事のせいだってすぐに思ったといいます。と言いますのは、中学の時、母親のできあいなのかものすごくきれいな色合いの弁当だったそうです。それは着色料なのかなんなのか分かりませんけども。また、偏食がすごかったといいます。先生が少年と最後に会ったのが、事件を起こす少し前です。高校へ行ってすぐに登校拒否となり、引きこもり状態になったころで、母親から「ひきこもりみたいになっているから、なんとか説得してくれないか。先生となら会ってもいいと言ってますので」と連絡があり、先生は少年の家に行った。お父さんもわざわざ仕事を早目に切り上げ夕飯の時間に帰ってきた。そのとき、先生は少年の母親に対する言葉づかいにまず異様さを感じた。「おいお茶」と、母親に命令口調で、しかも、母親は何も注意しない。それで夕飯の時間になって、先生は家族でここでみんなで母親の手料理を食べるのだと思った。ところが、母親は「お父さんと先生と3人でウナギでも食べてきたら」と言う。うなぎ屋での少年の食欲は貪欲でした。そのとき、先生は実は少年は引きこもりではないと思ったそうです。通常ひきこもりになった子は、人前ではほとんど食べられなくなるので、先生は経験からあの子はひきこもりじゃないと感じたそうです。私の取材でも駅近くのコンビ二の公園で少年がたびたび飲食しているのが目撃されています。先生は単なる反抗期を母親の溺愛で対応を間違えたとみている。要するになんでも好きなものを、彼の好きなものを与えていたのではないかと思います。
少年の中学校の時の卒業アルバムには、「コーラばっかり飲むなよ」とか「肉ばっかり食べるな」ということが書いてある。中学の卒業アルバムにそんなことが書かれるというのは、そうとう偏食傾向が強かったからです。ですから、子どもの好きなものばかり、母親が与えていたっていうのが、我慢のできないキレる子っていう1つ大きな要因になっていると思いますね。
上田:
食の問題においては大きくいうと、食べ物自体の問題と社会のあり方自体の問題に分けられると思います。前者は、たとえば、何を食べたらいいのかとか、その安全性をいかに判断したらいいのかという、判断基準に関することを含みます。意識のある人はそういう情報を頼りに物事を見ていくけれども、そういうことができる環境が今なっているかどうかの問題がありますよね。
もう一方では、生活習慣がそもそも崩れていることや、家庭のつながりがない中で、「食」がすごく軽視されていたり、それこそ食の形をなしていないというようなことが起こっています。人間のつながり、また社会のあり方自体の問題が食にも反映しているというのがありますよね。にもかかわらず、これまで消費者が自分の食べているものに対して、そもそもこれは何だろうという意識をあまり持っていなかったとも言えるのではないですか。
郡司:
日本人は企業と政府、特に有名企業は絶対的に信頼しているわけです。農薬でも添加物でも政府が安全だと言えば安全だろうと。また、有名な企業は変なものを作っているわけがない、といういわゆるブランド信仰というものもありました。それが安全神話の実態だと思います。
ただそれが、例の雪印事件をはじめ、ここ5年ほどでその信仰が崩れている。単に食中毒であれば起こりうるし、それは一過性のもので終わることが多いでしょう。ところが天下の雪印が、スーパーで売れ残った牛乳をもう1回再利用したということで、一気に食の安全神話が崩れました。その後、BSEが起きた際の政府の対応のまずさが、完全に政府に対する不信を強めたと考えられます。しかも、問題のある可能性が否定できないアメリカ産牛肉を再度輸入している。消費者の食への不信感は簡単には消えません。
上田:
ただその表示を見ても、その食品がどういう風に作られているか、やはり推測できないというのがありますね。
郡司:
ですからその表示自体の信憑性がなんか変だなと思っているのが、偽装表示から来たわけです。だから何も信用することができないというのが多くの消費者が抱いている実感だと思います。安全性を求めているのと同時に、消費者は、本来はその対極にあるはずの安い、早い、簡単という利便性を求めているという矛盾があるのも事実です。
上田:
そこですよねぇ。
郡司:
だから本来、食の安全・安心を追求するはずの生協で脱退者が増えている。ある大手生協なんかは、月に3000人くらい脱退しています。
上田:
原因はなんですか。
郡司:
全農チキンの偽装などで,裏切られたということです。組合員だけでなく生産者も生協から離れていっています。農協組織からも結構離れてきています。生産者は、欠品が出たら3倍の賠償をしなければならない。生協が大手スーパーと同じことをやっているようなものです。生産者は欠品が出ないように出ないようにと、原料不足であったら国産・外国産問わず入れろ、と担当者から尻をたたかれている。  
ですから偽装問題はスーパーだけの問題ではありません。食の安心安全を追求すべき生協が要するにスーパーと同じやり方をやって、効率主義に染まってしまっているということだと思います。
上田:
先ほどおっしゃった消費者の意識が例えば持続的な農業を求めたり、それから産直を通じて顔の見える関係で、安全な食べもの確保していこうと。そういう風にしなければ、やはりおかしいよと思っている人が全体の1%くらいしかいない。その1%じゃ問題はどうしても解決しないので、どうやってそういうその意識を広げていくかという問題がありますよね。それは一方で政策に関わっている部分があり、また他方で、今盛んに言われている食育からすそ野を広げるような活動も必要でしょう。どこから手を着けていくのが一番いいのかという、そのアプローチの仕方があると思いますが、その辺のご意見がもしあれば聞かせていただきたいと思います。
郡司:
食育というのは、やはり子どもたちに対して、加工食品も含めて、どういう食べ物がどういう作られ方をしているということを学校や親がしっかり教えるということだと思います。それはいい悪いということではなくて、こういうハンバーグにはこういう添加物とこういう添加物が使われているということをまず知らないことには。
(・・・ですからここ町田市なんかは、夏っていうかこの辺夏は相模川とか結構バーベキューやってるんですよ。登戸でもそうですけれども。前娘なんか連れて行ってね、多少こうすごいバーベキューセットでやってるんですけども、やっているの大人たちなのですよね。焼けたよってこうきてどんどんビール飲んで。だからそういうところがもう今の食の断面ですけども、出てるんですよね。そんなのは子どもたちにやらせた方がおもしろいんだし、そういうところだと思いますけどね。さっき行ったように、やはり外から見えないですからね。)
料理をする、子どもたち自身が作るというのはやっぱり非常に興味示します。だからなにしろ楽しくさせるということでしょうね。食べるということがね。
上田:
そこに持っていかないといけないってことですよね。
郡司:
ですから給食だったらいかに楽しく、楽しい給食にするのかっていう。
上田:
そうですよね。そもそも食を楽しくってこう興味を持たないと、調べてみようという気も起こらないことがありますよね。
日本において、食を改善していくためは、一番基本的な問題の1つに自給率を上げるというのが確かにあります。その時にいかに日本の中で農業を担う人を育て、あるいは持続可能なやり方で、それをどう作っていくかという問題があると思います。ただ非常に心もとないと言いますか、政策としてどこまできちんと出されているのだろうかという気がしています。その辺は消費者がどうやって応援して、農家なりを育てていくかとか、いう意識を持たないと、どうにもならないという気がしています。
また、これから新しく農業でもやってみようという人を、育てていくと言いますか、それを育てた上でちゃんと流通に乗せて広げていけるようなシステムが何もないということがあると思います。
郡司:
新しい魅力的な農業法人に就職していく人は増えると思いますよ。ソニー創業者の盛田家の御曹司が、4年前、農業法人を外国人の留学生も入れて筑波でスタートしました。有機栽培で野菜などをホテル,レストランに出荷しているのですが、全国から20代の若い人が応募しました。盛田本家はもともと名古屋の酒屋さんですが、あそこは家訓で100年に一回勝負するというのがあるようで。だから幕末の時と戦後はソニーの立ち上げたとき、それが今農業だと言って長男が筑波で始めたわけです。法人組織にして給料組織で休みも土日ローテーション組んでいて、そういう形でやっていけば、農業は非常におもしろい職業だと就く子も出てくると思いますけどね。
上田:
なるほど。一方でたとえば星寛治さんのように、個人の志で始めて、それを広めてらっしゃる方が全国に点々といらっしゃいますよね。そういう試みと今おっしゃったような法人化というように人を使って、有機農業を言ってみればシステマチックに広げて、きちんと経営として成り立つようにやっていこうという試みとがあると。そういう中で先ほど少し問題にしました消費者と生産者との結びつきの面から言って、消費者が、今後やはり農業から変わっていくんだ、変わっていかなきゃいけないという意識がどれくらい浸透してきているのか、あるいは団塊の世代の人が、定年迎えたら次何しようかという時に、よしがんばって今までとは違う農業をやってみようという動きが出てきているという話も入ってきます。そういう意味で、今のような動きを希望としてとらえたらいいのか、その辺はいかがですか。
郡司:
希望でしょうね。ただ先ほど言ったように、退職金がかなりあって、そういう形でやるのだったらできると思いますけれども、本格的にその後も食っていかなきゃいけないってことで農業をするというのは相当きついと思います。
上田:
なんか田舎で日曜帰農とかいう感じでこうね、時々行ってやればいいみたいな…
郡司:
だから事実それが自分の実家や生まれ故郷でふるさとだったら、昔の中学高校の同級生が農協とかあるいはそのOBというような地縁社会につながりがあれば、かなり行くでしょうけども。だからその辺が鍵になるかもしれないですね。
上田:
子どもたちにも食べ物に、農とか食に興味を持たせるという意味で、やはりその田舎とのつながりを上手にもって、そこでいろいろな体験をしてもらうというのが、食育の柱の1つだと思います。
子どもたちの…冒頭にお話いただいた、私たちの目から見てやはり子どもたちが、非常に社会性を失っているといいますか、いろいろな意味でキレる子がでていたり、凶悪な犯罪が目立つようになっているという状況に食がからんでいると。その時にどこから手をつけていけばよいか。もちろん大きい話では、先ほど言いましたように、自分自身で食に興味を持って変えていくことがあると思いますが、まずどういうところを親として気を付けたらいいかとか、それから子どもたち自身が日々、食べるものに
触れていくときにどういうところに一番気を付けたらいいかとか。たとえば単純なことを言うと、お砂糖の過剰摂取とかありますよね。このような点に関して、ポイントになるようなことはどの辺にあるのでしょう。
郡司:
子ども自身は分かっていると思います。子ども自身の方が、これはあんまり食べてはいけないというものを結構知っています。親は、インスタントラーメンでもカップ麺でも、そういうものを置いておかない。私の友人で奥さんが亡くなって、男一人で子ども五人を育てた北海道の人がいるのですが、北海道のおばあちゃんやおじいちゃんがカップヌードルを山のように送ってきたそうです。最初子どもたちは喜んで、簡単でいつでも食べられるって。けれども二日目からもう見向きもしなくなった。そういうものは体に受け付けなくなります。カップヌードル好きという子はあまりいませんが、やはり好きなもの、ハンバーグやカレーライスなどは比較的食べられてしまう。 
ですから、親としては、子供の好きなもの、肉、肉類、肉加工品はせいぜい週に1回くらいに抑えておくのが望ましいと思います。その方が子どももがまんがきくようになりますしね。好きなものをじっと待って、食べる。僕らの世代だと、すき焼きを食べるのは、盆暮れ正月くらいというように。そういうものを作るべきだと思います。それがやっぱり食の楽しみと結構結びつくのではないかなと。
上田:
なるほどなるほど。そういう意味では、伝統的な和食で、たとえばご飯と味噌汁とそれからお総菜が、お漬物が少しあって、魚がちょっとあるくらいっていう感じのものがまず基本になっていて、さらに今おっしゃったような晴れの食といいますか、肉を食べるとかそういうものを食べるのはときどき入ってくると。それらは口当たりがよくておいしいから期待感が高まるだろうけど、頻度は抑えて。というようなありかたでしょうかね。ただ、それを実現するためにはその外食に依存しないことが基本になりますよね。
郡司: 
そう、ですからそれプラス両親がいるところであったら、その日はお父さんが帰ってくるということでしょうね。夕飯なり…だから週に1回なら、1回。それは結構大きいと思います。親父も一緒に食事をみんなでするという。ただこれはなかなか企業社会で難しい面ありますけども。だから食の問題っていうのは、やはりそちらの方まで行きますよね、企業社会がそういうことを理解しているかどうかという。したがって、1つの食育として特にまだ小学校低学年から高学年までの子どもがいる家は、週に一回お父さんは家に帰る日を会社として定めるといったようなことをする。食育に足らないのは結構そこのところだと思います。だから食育基本法に安全な食品を提供しなければならないとかありますけども、親の、父親の役割というのが結構抜けているのではないかなと思います。
上田:
目を転じてその親自体も、いわゆる生活習慣病の問題がありますよね。そうなってくるとやはり今おっしゃった企業社会に組み込まれて、もうそれこそ残業残業の生活の中と言うのは、外食取らざるを得ないということになりますね。その辺が、よくメタボリックシンドロームということで、こういうものを食べなさいってことは言えるけども、実際の生活の中でそれを実現していこうとすると、労働の形そのものが、密接に関わって来ているので、そう容易にはという面もありますよね。その辺で、上手な変え方を見出せたらとは思うのですけども。
郡司:
その点は、今そこがビジネスチャンスだということで、たとえばセコムにしても、あるいはあらゆるところが、低カロリー食ってことで宅配始めています。でもなんかあれもおかしい。確かに、素材は低カロリーですが、それはその生活習慣病や糖尿病予備軍を心配しているわけではありません。そこにビジネスがあるから、という。だから逆転していると思います。
上田:
足りない栄養はサプリメントで取ろうというものと似たような発想ですよね。
郡司:
似ていますね。サプリメントなんていうのもおかしな話で、みんな宇宙飛行士になるのだったら話は別ですけども、サプリメントで1年くらいは生きていけるでしょうけど。あるいは寝たきりになって点滴だけで十何年生きている方がいらっしゃるので、それはそうですけども。
アルカリイオン水っていうのがあります。いわゆる下痢とかにいいという。厚生(労働)省の指定にもなっていますが、世田谷の国立大蔵病院というところで、そこの大洞先生という医局長が臨床実験したのですが。胃腸が悪くて通院している患者さんと、あと普通の患者さんにそれを1ヶ月間飲んでも
らった。そしたら通院している患者さんの軟便だとかの症状はかなりよくなったという統計が出ました。かたや普通の方はほとんど影響がなかった。それで、アルカリイオン水は軟便などには効果があるということで、アルカリイオン水を作る精製器が医薬部外品に指定されたわけです。
それで、大洞先生に取材しましたら、「だから健康な人がアルカリイオン水を飲んでも、意味が何にもないわけですよ。逆にそういう効果があるということは、逆の副作用が出るのを心配すべきです」というわけです。
今、健康サプリメントやあるいは特保だとか、市場はもう1兆円超えたのですが、厚生労働省が、この効能、この機能成分はこの機能があるという全部お墨付けをつけています。それがほしくて月に80件以上依頼がきています。けれども間違いなく過剰摂取の問題が出てきますし、特に例えば、少し前にブームになったアミン酸は、確かにアミノ酸がなければ生きてはいけないですが、アミノ酸だけを外部から取って、たんぱく質になって健康増進に本当に効果があるのかっていうのはまだ解明できていませ
ん。逆に言うと、アミノ酸インバランスを起こすのではないかという懸念があります。ところがそういう学者の声は全部封印されてしまいす。確かに点滴でアミノ酸効果はあります。ただそれが本当に栄養になっているのかは別ですからね。この点を勘違いしているということです。
それに市販アミノ酸は、すべて化学合成されたものです。自然の食物に含まれているアミノ酸と同じと考えてはいけないと思います。いま、亀の子(化学分子構造式)が、自然界のものと同じだから、安全性も同じという考えがますます強くなっています。でも、それには疑問があります。
たとえば、アスコルビン酸は合成ビタミンCのことですが、天然のビタミンCと亀の子(化学分子構造式)は同じです。しかし、合成ビタミンCの方が活性酸素を発生する量がはるかに多いのです。天然のビタミンCには活性酸素を抑える酵素が含まれているからでです。これはコエンザイムQ10という補酵素です。補酵素がそういった活性酸素を抑える作用を持っている。それが天然の恵みというものです。それを勘違いして、じゃあこれだけを抽出して、あるいはこれと同じものを合成して、化学式、分子構造、亀の子が同じだったら安全性は同じという、その考え方がどんどん強くなっています。
遺伝子組み換えでもそうです。遺伝子組み換え作物は、アミノ酸の生成構造が従来の作物と違います。アミノ酸の生成が違えば、できるたんぱく質も若干違ってくるはずなのです。例のBSEの異常プリオンは、螺旋型で通常のプリオンと若干違うだけです。それだけでBSEが発生する。でも、遺伝子組換え作物は、植物だから当てはまらない、そういう説明をしているわけです。しかし、BSEも今までは牛から人間には感染しないといわれてきた。けれども植物と動物の壁は本当に越えないのかと言った
ら、それはわかりません。でも何か変だなというのは確かです。
上田:
なるほど。今の科学の言ってみればひとつの成分なり分子なりに着目して、それを自然のものと同等のもの作れば、同等の効果が生じるだろうという前提で進んでいるということですよね。ところが実際は、その人間が摂取する食べ物はそういう単独成分の寄せ集めではないことが、関係しているという話ですよね。
郡司:
遺伝子組み換えの問題ですと、アメリカでは、ほとんど圧倒的な量を家畜に食べさせているわけです。今のところ家畜の異常は報告されていないですが、ただ今回のBSEでたとえば向こうの豚やいわゆる日本にある屠場のそれのデータが結構出てきて、やはりかなり異変は多くなっています。それが遺伝子組み換えと関係するのかどうかは難しいところですが。
日本の場合だと、福岡で起こった豚の出産異常。それはコンビニであまったものを餌にして食べさせたと出ていますけども、あの原料はほぼ遺伝子組み換えですからね。組み換え食品の問題は、まず家畜の影響から調べていく必要がありますね。人間の場合には食経験が最低やっぱり30年から50年必要です。だから健康食品の問題はそこです、あまりにも食経験が少なすぎます。健康食品の中でも食経験が50年以上あるものは、大丈夫というか問題ないと思いますけども。それが安全のひとつの目安ではないでしょうか。
上田:
すこし話が飛躍するかもしれませんが、たとえば牛乳ひとつとってもヨーロッパ人の体質に合っている部分と、日本人には合ってない部分がありますよね。戦後に日本人が牛乳をとるようになってから、未だにお腹を壊してしまう人も当然いるわけで、よその食べ物を取り込むことの中では、短い時間で適用できないようなことが起きてきますよね。
郡司:
それはいわゆる地域性というか風土によって、日本人は肉がもともと合わないとか、言われています。けれども牛乳の問題で言いますと、牛乳論争というのが異常に起こっていますが、日本の牛乳の質の問題だと思いますよ。ここまで牛乳を、雪印ではないけれど、それまでは再利用で、その後どう変わったかと言えば、再利用しなくなっただけで、牛乳の製法自体は変わっていないわけです。だからこの点が問題だと思います。本当に牛からの絞りたての牛乳は飲めないわけですから。
ところがテレビで見ればコマーシャルでいかにも乳から飲んでいて。また、たとえば雪印が、この前マザー牧場でいかに牛乳が体にいいのかといって、子どもたちに飲ませたら、O157なってしまって大変な問題になった。したがって牛乳の質を良くして、本当にこう生に近い牛乳にする。廃棄したキャベツもそうですけど、大人でもおかしいなと思うわけですから、子どもたちが見たらね……。余った牛乳でどうしてチーズができないのかと、誰でも思うわけですよね。なぜかというと、チーズ工場がないのです。森永乳業では、北海道で今年の9月にチーズ工場が完成しましたが圧倒的にまだ不足していま
す。
また、中国で自給率を高めるということで、日本がナチュラルチーズを輸入していて、中国国内でも買うため、ナチュラルチーズの取り合いになり、チーズが高騰したというように、農政の問題になってしまいます。では、なぜ日本でチーズ作れないのかと言ったら、チーズ工場を作っても牛乳の助成金がでないのです。だから実際、生産者はチーズを作ろうとは思いません。こういった問題もあるのですよね。もし一気に自給率を上げるのであったら、生産者が本当にできるような自給率の上がる政策を取ら
なければ、ちょっと無理ですよね。
上田:
たとえば、日本の中で、もちろん農林水産いろいろありまして、今言われているのは、魚、マグロが食べられなくなるのではないかといった危機の問題や、今おっしゃったように中国の生産量、消費量が非常に増えてきた場合、輸入品の圧迫が起こって、結局日本の取り分が少なくなるのではないか等、いろいろありますよね。そういう中で持続可能ということを考えたときに、何を基本にして作ったり、食べたりしたらいいのかと。この点は、やはり見据えておかなければならないと思えるのです
けどね。
郡司:
食生活の面では、やはり日本が少なくとも高度成長前に食べていた食生活を基本にすることではないでしょうか。それが基本で、言葉を変えれば和食の力ということでしょうけど。それが民族としては当たり前のことですよね。やはり主食は、その土地で取れたものが一番。ですから日本の自給がおかしくなったというのは、一言で言えば米の主食の場が奪われてきたこと、ですかね。
たとえば、イスラエルに行くと、よくみんなびっくりするそうです。イスラエルがいい悪いということではなくて、あそこは砂漠の国というイメージがあるわけですが、広大ないわゆる麦畑、小麦畑があります。海水は淡水にしたりと、コストは非常にかかっています。コストを計算すると、国民がパン一切れ食べられない程の高コストですが、これをやっているので主食のパンは諸外国、アメリカにも依存しないで自分のところで作ることができています。したがってアラブに囲まれても何百年もの戦争が可能だったのです。この点、特に日本は海に周りを囲まれていて、米の問題を考えると、さきほどのような意識がないと、結構自給率は上がらないと思います。
だから難しいというか、グローバル主義だと自給率は上がりにくいと思いますよ。海外から買ってきて、友好的な貿易を行っていれば、輸入先も潤うというような、いわゆる世界平和では、米も米文化圏という東アジアでの自給率の向上を考えなければ、日本だけの自給率向上というのはありえないのではないかと思います。
上田:
今の話で行きますと、亡くなった有名な経済学者で森嶋道夫さんが、東アジア安全保障といいますか、防衛圏、防衛の問題で、そういうこと捉えていらっしゃる面もあったし、それから立場は違いますけども、梅林さんといいましてピースデポのことやってらっしゃる方も、やはり東アジアで非核地帯を作っていくという構想を持たないと、これからだめだろうというようなことをおっしゃっていますが、似たようなことが食糧でも言えるかもしれないみたいな、あるかもしれませんね。
郡司:
圧倒的に輸入先は東アジアですからね。もちろん鳥インフルエンザも、当然日本だけで防ぐというのは不可能ですから。
上田:
私たちは今回のシンポジウムで、できるだけ消費者、あるいは市民として今の食の問題を改善していくときに、どういうものを知り、判断し、自分の生活の中で直接的に変えていけるものとして見据えていけばよいのかということを少しでも明らかにしたいと。
それは、各分野で思っていますが、最後に、郡司さんの方からたとえば一消費者として、心得ておくべきこと、そういうことをいくつかまとめていただけるといいかなと思うのですが。
郡司:
1つは、あまりにも安い、常識外という場合に、何か変だなっと思ったのは、やはり変ですよ。
上田:
食料品だけの100円ショップのようなものができていますよね。
郡司:
それがまず1つですよね。それとこれはよく言われますけど、食に関しては簡単で便利というのは、やはり裏がある。確実に裏があるという。後は親としては、子ども達の好きなものをそのまま言いなりにあげない。言いなりになれば、本当に餌化、子どもの餌化ということになります。
また、できるだけ食肉加工品、食肉加工品は添加物も多いし、どういう作られ方をしたかという点が分からないという面が非常に多いですから、やはりそれを食べるのは月に1回か2回にして、そのときに本物のおいしいものをしっかり選んで食べる。そうすると子どもたちもこれはおいしいと非常に喜ぶ、待ち遠しい食事ができる。さらにはお父さんも忙しい中、帰ってくるという。
上田:
本物と偽者の違いを体で覚えさせるということですね。
郡司:
そうですね。それが大事ですよね。
上田:
今おっしゃった食肉加工の面で、添加物なりいろいろな食のカラクリが最も著しいという話ですが、もう少し具体的に教えていただけますか。その辺は多分みんな興味持つことだと思うので。
郡司:
20年程前、故・日本マクドナルドの藤田全会長が、NHKのドキュメンタリー番組で、「うちのハンバーグは本物ではありません、牛肉以外にいろいろな種類の肉を使って、添加物含めて、添加剤は約70種類使用しております。でもうちのをずっと食べていただければ、これが本物のハンバーガーだと思うでしょう」と言及しています。今、現実はそうなっています。
もう1つは、やはり食肉加工品で、テレビでもいろいろ取り上げていますけども、例の注射器、大豆タンパクを増量剤として、あるいは添加物に一緒に入れて、横隔膜から取れた肉など、いろいろな種類の肉を集めて成型肉を作っていくという。たとえば肉屋さんでどう考えても100g500円とか600円の国産牛肉が、ステーキになって200gで850円というのはありえないことを最初に、やはりおかしいと思うべきですね。それが一番大事なことではないでしょうか。
上田:
その辺は変だなと思ったときに、直感的にそれを避ける選択もできるでしょうし、さらにさまざまな情報を寄せ集めて調べて、やはりおかしいみたいな。
郡司:
それには、もう1つ同じ商品を買ってみることですね。何か変だなと思って、非常に安いものと、もう1つ同じ商品で値段が違うものを買ってみて、両方の表示を比べてみる。それは、子どもに食べさせるものであるなら、なおさらです。そのときに自分の知らない表示が書いてある、要するに、自分が中学・高校で習ったことがないものが書いてあれば安くても絶対に買わない。あるいは肉類であったら原料肉以外に変な化学物質名が書いてあれば、それは分からないので買わない。
上田:
そのような比較によって、自分があまり耳にしたことがない新規のものが、使われているということが、分かるということですよね。食にどれくらいお金をかけるかという問題が、根底にあると思いますが、食に対する意識が高くなければ、安く済ませてしまうことに流れていくという面がありますよね。
郡司:
逆に安いものを買っていた方が、食費は上がりますね。というのは、いろんな人に聞くと本当に大事にしないでバンバン捨ててしまう面が多いですね。だから肉の場合、いい肉を買った方が大事に最後まで食べるという。トータルで考えれば、大して変わらないと思います。
上田:
それはおもしろい指摘ですね。
郡司:
ですから、安物買いのなんとかという昔からのことわざが当たっていると思います。
上田:
お菓子なども安くてわーっといっぱい買ったとしても、食べずにそのまま捨てしまうこと結構ありますもんね。そういう意味で自分の食生活をもう1回そういう目で見直してみるというのは大事かもしれません。黒田さんと松井さんどうですか。お二人は実は食のかなりいろいろな意味での実践者なんですね。ちょっと今のお話を受けていろいろなんか聞かれたらと思いますけども。
松井:
私は、郡司さんご自身の食生活に興味があります。
郡司:
これはね、アサヒグラフでね(写真を見せる)、食生活を紹介してもらったのです。ただそれを出したらそこにエビ天ぷらがあって、関西の人がエビ天ぷらなんていうのは、どこの食材かわからないものを食べているのですかという抗議がきたのですよ(笑)。一番大きな基本は、やはり化学調味料が入っていない食品を選ぶということです。
今、外食でもラーメンでも、ここは化学調味料を使っていないというところは結構増えてきました。弁当を買うときは、コンビニなども、そこは化学調味料使っていない店を選びます。化学調味料の害等は言われていますけが、やはり使っているところは、原材料が悪いです。その一言です。そうすると当然いろんな添加物も使わざるを得ない。ですからそれは使わないものを選ぶというのが良いと思います。
松井:
さきほどお肉とか加工品などは、ものすごく危険なものが多いとおっしゃっていましたが、郡司さんご自身も週1回に制限なさっているということはあるのですか。
郡司:
うん肉はね。学生時代はすごく食べましたけどね。だんだん食べられなくなったというのが自然で(笑)、でもそうですよ。食べられなくなるのですよね。でもアメリカ人はそうではないです。ずっと肉食だから、食べていくという。だから今の子どもたちは僕らの世代になっても肉を食べるかもしれないですよね。非常に肉が好きだからね。女房もあまり肉が好きではないから、月に2回くらいですね。
黒田or松井:
お魚は積極的に食べられるのですか。
郡司:
うん、お魚は大好きですね。
黒田or松井:
お魚も選ばれるときに、たとえば養殖ではないものを選ぶとか、そういった何か…
郡司:
必然的に秋刀魚とか鯖とか、海遊魚だから、養殖というのは、ないですからね。海遊魚を選んだ方が養殖は少ないし、ダイオキシンの汚染も少ないっていうのはそれはあります。ただそれも食べられなくだんだんなってきますけどね。
黒田or松井:
なんか養殖の方がむしろそういうものの方が安全だとおっしゃる方もいらっしゃるのですけど…
郡司:
それは天然の魚のダイオキシン・PCBも含めて、蓄積の問題です。養殖の方が安全だと言う主義によりけりですが。マグロは圧倒的にやはり蓄業より、海遊魚の方がいいと思いますけどね。日本の四国沖の蓄業には行ったのですが、もうものすごいです。餌のぶち込み方と、後は抗生物質か何かは言わなかったですけど。それはちょっとね。
黒田or松井:
本に書かれていた養殖の状況なども見ていると、本当に食べたくないなという風に思うはずですけれども。
郡司:
確かにきれいになりましたけどね。なりましたけど、でも基本的にやっぱり養殖の方が病気も多いし、それを防ぐには何かしないと防げないですからね。
黒田or松井:
あと2点だけちょっと伺ってもいいですか。自分の健康のためだけではなくて、環境のためにも私は肉も魚も食べませんというベジタリアンの方がいらっしゃいますけど、そういう考え方はどういう風…
郡司:
それは、キリスト教がいて創価学会がいて曹洞宗がいて、それと同じだと思います。1つの信念というか、考え方で、いろいろな宗教の人がいるのと同じことだと思います。
黒田or松井:
あともう1点は、牛乳の質が問題だと言う風におっしゃりましたが、質というのは基本的に鮮度の問題ですか。
郡司:
鮮度の問題もあるし、あと殺菌の問題もあります。殺菌論争というのも結局まだ決着ついていないですけども、牛乳をいかに取りたて(3日以内)で早く飲めるのかという問題です。それから牛の飼育方法。自然に近い飼育で、抗生物質を使わないか、農耕飼料をなるべく与えない、牧草飼育・低温殺菌をする等。牛乳瓶やパックになるまで東京では、北海道の牛乳は1週間以上かかっていますから。
けれどもコマーシャルでは、とりたての牛乳だと。あれはもう誇大広告です。誇大広告というか、偽装広告ですよ。雪印のあるいは森永の牛がいるわけではないですから、全部同じではないでしょうか。
上田:
意識の高い人が全体の1%という数値に驚いてしまったのですが、その1%の根拠っていうところ…
郡司:
西日本新聞の連載企画記事でアンケートをとった結果です。有機農業と普通の農業、あるいは無添加食品と添加物食品、それぞれ対比させて、有機農業と無添加食品を絶対に買うっていう人は1%台でした。
黒田or松井:
こういう世界にいると、身の回りにはそういった積極的な人たちが多いので、割と多いように思っていたのですけども、逆に99%の人たちに対して何か行動起こす…
郡司:
ですからあと99%の人が、全部そういうものを否定しているということではなくて、あとはグレーゾーンですよね。ただその中心になって絶対的に動いて活動しているのはその1%の方です。
だから、有機で、減農薬でもいいですが、産直をやっていてそういうグループ(メダカの学校など)がどれくらいのシェアを占めているのか。現実がどうなっているのかという認識が必要です。
上田:
消費者でよく話題になる問題としては、たとえば自然食品店で、安全だと言われるものを買おうとするときに、2割3割、割高になっていると。そういうものは、やはりお金がもったいないから、本当は買った方がいいのだろうけど、そこまで出したくないというような選択の仕方がありますが。そういう問題として、位置づけられているところがあると思います。
郡司:
それは流通の問題で、有機農産物は、一般市場、大田市場とかそういうところでまったく評価されません。昔からよく言われますが、普通の生産物より形が悪ければ企画外で安くなってしまう。流通としては、そこが一番問題ですよね。計画的には、やはりどうしても天候に左右される、虫が出るときなど、そうすると欠品っていう問題が出て、そういう生産者をたとえばその環境循環型だとか、意識してやっていく生産者に対して、本当は一番熱い手を出さなければならない生協などが、先ほど言ったように、スーパーと同じように、欠品になると罰金を取るという。意欲はなくなるし、どこかで手を抜くということになると思います。
だからどのくらいのシェアというところが結構大事です。有機農業の生きる道みたいな。ほとんど法人化してやろうとしているところは、有機で行こうと思っていますね。今のところレストランなどさらに付加価値をつけて。本来ならそれも有機だから付加価値がつくこと自体がね、本当はね。だから指摘しないと直さないというのはあります。やはり無農薬・完全有機でやるというのは、ものすごい付加価値がつきます。先ほどの1%の人は、非常に欲しいという。だからその層は購買層が大変高いです。そこに企業が入ってきていて、今の有機レストラン、自然食レストラン、五反田にも出来ましたけど、町田にもデパートにできて、すごいですよ、若い人が。バイキング方式で。そういうところは、結構できています。ヘルシー・ブームと一緒に。
上田:
なるほど。何か矛盾を感じますよね、そういう話って。ようするにヘルシーのものを食べること自体はいいですけれど、高いお金を出して買う層が限られているという中で、なんていうんでしょう、一種こう広がっていくようなことがね、変だなとどうしても思えてしまうわけで。
郡司:
食品はね、ずっとそうです。おかしいですよ。日本の食品企業が巨大になりぎたということで……。■

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