報道記事からまとめた「大槌町・データ」

投稿者: | 2011年7月7日

以下は、大槌町という町を知るために、新聞記事を中心に、基本的だと思われる事実を、データ集のようにまとめたものです。

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報道記事からまとめた「大槌町・データ」

青山峻丈

PDFはこちらから→csijnewsletter_008_aoyama.pdf

■大槌町について(震災前)

【地理】
大槌町は、陸中海岸国立公園のほぼ中央部に位置し、西は川井村と遠野市、南は釜石市、北は山田町に隣接し、東は北上山系の支脈が斜面となったリアス式海岸の太平洋に臨む。
面積:200.47km2 (山林原野が90%)

【漁業】
・大槌町を母港とする沿岸漁業
・ホタテ、ワカメ、カキなどの湾内養殖を中心とする基幹産業
・サケ・マス人口孵化場(明治42年創設)
・東京大学海洋研究所誘致
・ヒラメ、マツカワの中間育成施設(「全国豊かな海づくり大会」の跡地)
⇒「獲る」漁業から「つくり育てる」増養殖漁業
⇒生産・販売一体の戦略や農業・観光と協力した流通・販売体制の整備(水産基盤整備事業計画?)

【情報発信】
・平成9年「全国豊かな海づくり大会」開催
⇒水産のまち大槌
・自然と共生するまちづくりシンボル「イトヨ」
・アメリカ西海岸のフォート・ブラッグ市との交流(海づくり大会が契機)=中高生のホームスティ交流
⇒鮭と観光を基幹として共通項が多い

【主な津波歴】
・1896年(明治29年)「明治三陸津波」、1933年(昭和8年)「昭和三陸津波」、
1960年(昭和35年)チリ地震津波

■大槌湾について(震災前)

【概要】
・岩手県大槌町と釜石市にある面積20.2km2の閉鎖性海域。
・流域面積120km2の大槌川と流域面積63km2の小槌川、流域面積155km2の鵜住居川の3河川が流入する。
・人工林率は、大槌及び小槌川47%、鵜住居川49%
・大槌川及び小槌川、鵜住居川流域の下水道整備率は、約41.2%(大槌町34.5%、釜石市43.8%)
⇒現在は?

【漁業】
・カキ、ホタテ、コンブなどの養殖

【課題】
・岩手県の海岸総延長709キロのうち、護岸や港など人口の海岸線は74キロに達する。藻場(エゾノネジモク)が茂る天然の海岸は減る一方のため、港湾施設に傾斜を付けて浅瀬を造ることも必要。

■【大槌町】震災前の振興事業例

◎<農業>中山間地域夢づくり総合支援事業
・ベゴニア栽培試験やマツタケ増産対策、認定農業者の研修の組織化、新規就農者対策、産直活動などを盛り込む
背景:平坦地の少ない大槌町の農業は、生産規模、生産性ともに県内の低位
課題:農業集落環境整備、グリーンツーリズムによる農家・集落間役割分担・地域連携システム、
複合経営体制構築
取組:園芸システムの構築、花き生産組合の設立による育苗・生産販売の一貫体制、
高収益作物団地の形成促進
◎<観光>まちづくり型観光の推進
・サケの一本釣り/鮭のつかみどり(冬季の観光の目玉)
・農業体験や農産物を直売する「まるごと市」の開催
・ヨットハーバーと海浜公園が一体となった「吉里吉里フィッシャリーナ」
・リアス式海岸と漁り火が眺望できる道「リアスシーニックライン」の整備

■【大槌町】震災前の有望資源・資産

◎珪石
・セラミックなどの原料となる地下資源「珪石」の活用に期待
◎海洋深層水
・釜石市の箱崎半島沖合20キロの水深250~300メートルの海底から日量4,000トンの海洋深層水を採取し、海底に敷いたパイプラインで大槌町内の基地に送る。
・海洋深層水は陸上でのアワビなどの養殖や製氷、ビールや日本酒、自然塩、海洋療法などさまざまな利用を考えられる。
・2005年頃の事業化を目指す。
・数十億円の巨額の資金調達を、市民対象の講習会やホームページを使って一般会員や企業などの賛助会員を募り、県、国にも協力を呼びかけていく。

■【大槌町】震災前の循環・共生型社会の構築と市民参加

◎大槌町地域新エネルギービジョンの策定(町が主体となって推進)
・城山公園風力発電
・温暖な気候を活かした太陽光発電導入
・清掃事業所廃熱利用⇒何に利用?
・クリーンエネルギー自動車導入
・長い海岸線を活かした波力エネルギー導入⇒何に利用?
・新山高原と筋山における風力発電プロジェクト
◎「イトヨ」の調査・保全
・イトヨは、体長8センチほどのトゲウオ科の魚で、海で成長し春の産卵期に川にのぼる降海型と、一生を淡水で過ごす陸封型があり、大槌町源水地区の湧水池には全国的に希少な淡水型が生息。
◎「海づくり少年団」「金沢森林愛護少年団」
・次世代を担う子供たちの環境保全活動
◎NPO法人ぐるっとおおつち
・各種団体・企業の支援協力活動、豊かな自然を守る活動、地域情報化を推進する活動、地場産品の発掘や特産物の企画・開発を活動内容とするまちづくりグループ。
◎海洋深層水の活用
・NPO法人サポートさんりくは、ミネラル分に富み雑菌が少ないとされる海洋深層水の大量採取と利用に向けた支援事業を目指す。

■【大槌町】震災前の課題

◎大槌湾水質悪化
・湾内の根浜海岸海水浴場の水質は2004年から二年連続で県内唯一のBランクと判定、海水浴や漁業体験に影響。
・2003年汚れを示す環境基準の化学的酸素要求量(COD)が一つの調査地点で類型Bに下がり、2004年には調査地点三カ所すべてが類型Bに低下した。
・根浜海岸海水浴場は1996年、大腸菌群が原因でBランクになった事があるが、大槌町の公共下水道整備により、大腸菌群の数値が向上にAランクに回復した。

■【岩手県】震災前のプロジェクト、等(1)

◎岩手県沿岸の海洋資源を生かし産業振興を図る「いわて海洋研究コンソーシアム」
・沿岸に集積する海洋研究機関の知能を結集し、石油・天然ガスや風力、海洋深層水、海洋バイオテクノロジーにつながる深海生物など本県沿岸の海洋資源を生かす「海洋版シリコンバレー」の実現を目指す。
・代表に東大海洋研究所国際沿岸海洋研究センター長の道田豊教授を選任。
・①海洋研究のネットワークの形成、②海洋環境研究、③海洋バイオマス研究、④海洋資源・エネルギー活用を4本柱
・中国大連市の大連水産学院との技術交流や海洋微生物資源を生かした創薬などを企業と共同研究。

【海洋資源】

・久慈:石油・天然ガス、風力エネルギーが有望視
・宮古:海洋深層水の実用化
・釜石・大船渡:日本海溝(深度7千メートル)の深海生物、海洋微生物に存在

【連合体】

・東大海洋研究所国際沿岸海洋研究センター、北里大海洋生命科学部、北里大海洋バイオテクノロジー釜石研究所、水産総合研究センター宮古栽培漁業センター、県水産技術センター、岩手県、宮古市、大船渡市、久慈市、陸前高田市、釜石市、財団法人さんりく基金、釜石・大槌地域産業育成センター、5市の商工団体の計24組織。

■【岩手県】震災前のプロジェクト、等(2)

◎【釜石】「かまいしエコタウンプラン」(2006年3月時点)
・収穫期を迎えたワカメなど海藻類の煮汁、未利用部分を利用した健康機能食品原料などの製造。
・同市内で漁業者から煮汁などを収集、運搬する実証試験を行い、収集システムを検証。
・貝殻や煮汁など水産系廃棄物は海洋投棄など不適正処理が多く、リサイクルの確立を期待。
システム:塩蔵ワカメの加工で発生する煮汁廃液を耐熱仕様の専用吸収車で集め、釜石市平田のリサイクル事業者、協同組合マリンテック釜石に運搬→加工残渣は漁業者が地区内の保管用コンテナに持ち込み、トラックで事業者へ。
・マリンテック釜石は、国内初の酵素・微生物分解方式で水産物の未利用部分や加工廃液から機能性アミノ酸類などを製造する。
将来:悪臭が問題になっているウニ殻、カキ殻などに対象を広げる
課題:釜石市内の漁村から排出される貝殻など水産系廃棄物は2,000年度で2,039トン、煮汁廃液も1,168トン。
◎【釜石】大槌湾AAプロジェクト(2004年時点)
・大槌湾の水質向上を目指し、釜石地方振興局と釜石市町などが、住民一体となった活動に取り組む。
・大槌・小鎚地域環境保全の会や地元の海や川の漁協が参加する。
・人為的汚染の拡散状況を把握し、対策に役立てる。
◎【宮古湾・大槌湾】「森・川・海のつながりを重視した豊かな漁場海域環境創出方策検討委員会」(2004年時点)
・水産庁、国土交通省、林野庁は、森、川、海を通じた栄養分の供給機構とそれが漁場海域生物に与える影響を把握。
・①漁場海域の健全な生態系の維持・構築からみた森・川・海のあるべき姿の整理、②森・川・海のつながりの評価項
目等の整理、③モデル地域における検討、④漁場海域の健全な生態系の維持・構築のための基本的な方針、を検討委員長:高橋正征東京大学大学院教授
⇒この成果はどうなった?

■【岩手県】復興の動き

◎【気仙沼】NPO法人「森は海の恋人」代表畠山重篤氏(カキ養殖業者)
・「当初は森を切り開いて皆で高台に団地のように住むのが良いと思ったが、自然との調和したまちづくりがなければ漁場も再生しない。小さな戸数ごとに暮らし、地元産材を活用。漁師が森で間伐すれば、年間の仕事が生まれる」。
◎【環境省】「三陸復興国立公園」構想
・環境省は、青森県から宮城県に至る沿岸域を国立公園にする構想を5月に発表。
・震災廃棄物を再利用した骨材で防災用の丘を造り、植林して魚付林にし、豊かな漁場を取り戻す。
◎【岩手県】漁船や養殖施設の共同利用化
・リアス式海岸沿いの小さな漁港が多い岩手県は、漁協が核となって漁船や養殖施設などを一括購入し、漁師が共同利用するシステムの構築を目指す。
・宮古市や山田町の漁協では漁船の共同利用をすすめている。
・岩手県漁連では、漁船約2000隻を発注し、年内にも各漁協で漁を再開できる体制にする方針。
◎【岩手県・宮城県】海のがれき除去の発注
・岩手県や宮城県などは民間業者に海のがれき除去を発注しているが、5月中旬までに作業が始まったのは、3県で被災した258漁港のうち3割程度にとどまる。
・がれき撤去は、9月頃までの目標にするが、クレーン付き作業船による作業は高波や強風で中断することも多い。
◎【水産庁】がれき撤去を漁師に発注
・2011年5月2日に成立した補正予算で、定置網や養殖場など漁場のがれき撤去を行う漁業関係者に日当1万2000円、漁船チャーター代1日2万1000~9万2500円などを支払う仕組むをつくった。
・休漁中の所得補償の意味合いも含む。

■【その他】復興の動き(1)

◎林野庁
・復興に必要な国産材の安定供給と、間伐材によるバイオマス(生物資源)発電を推進する。
・海岸林も再生し、防風や防潮の機能を持たせる。
◎全日本漁港建設協会
・津波の被災地のがれきを再生利用して人口リーフや海藻礁を整備するなど、がれき処理事業を鵜宇治手海域再生事業の提案を行う。
・被災した漁船の漁礁としての活用のほか、コンクリートがれきの漁礁や海底山脈造成への再利用などを検討。
◎【宮城県】「水産業復興特区」を検討
・漁協に優先的に与えられている漁業権を民間企業が取得しやすいようにし、養殖漁業などの門戸を広げるもの。
・企業が被災した漁業者を雇用し、早期に操業再開できるようにする狙いがある。
・収入安定化や後継者不足の解消などへの期待。
・水産業に携わっている人たちの約4割は60歳以上。
・宮城県漁協は強く反発。「民間企業は不採算なら撤退してしまう」。
◎その他
・森を間伐して生態系を保全し、切り出した地元産材を住宅や木質系エネルギーに利用する。
⇒木質系ENG?
・植林して魚付林にし、漁場を再生する。
・森・里・海の生態系の循環を生かし、農業と漁業を再生する考え方。

■【その他】復興の動き(2)

◎【宮城県】漁港集約化
・全142港のうち140港が被害を受けた宮城県は漁港を最終的に3分の1程度に集約し、気仙沼、石巻、塩釜など5漁港
を「水産集積拠点漁港」として、加工、冷凍冷蔵施設なども一体的に整備する案をまとめている。
◎【水産庁】中核漁港と周辺の小規模漁港をネットワーク化し、漁港の集約化を推進。
◎保険・共済の支払い
・漁業被害に対する補償としては、漁船の破損に備える「漁船保険」や、不漁や養殖施設などの損害に備える「漁業共済」があり、これらに加入していれば津波被害も支払い対象になる。
・漁船保険は、船を所有する漁師のほとんどが加入する。
・支払い対象は全国で2万隻以上と過去にない数字に膨らむ見込み。
・漁船保険組合などの保険料収入や、大規模災害に備えた国の準備金などでは賄いきれない見通しで、水産庁はこれらの不足分に対して1次補正予算で940億円の財政支出を決めた。
◎【政府】漁港の施設集約化・高層建築化を推進
・被災した青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉6県の漁業と養殖業の09年の生産量は全国の24%を占める。
・防災機能強化や生産性向上の具体例として、漁港の中核施設である魚市場や加工場を集約した上で、耐震性のある高層建築に移すことを提言。
・高層建築の一部は住宅として利用することも盛り込んだ。
・地域に点在する漁港は役割分担を明確化。
・中核となる漁港への投資を増やし、大規模化する必要も示した。
・漁業就業者の減少や高齢化が進み、09年の就業者が前年比4.6%減の21万2千人となり、このうち65歳以上が35.8%を占める。

■【その他】要望・課題、等

【要望】
・大槌町の漁師:「一日も早く海に出たいが、船がないと始まらない。行政の支援で、船を貸し出しする仕組みを作ってほしい。」

【課題】
◎海のがれき障害
・漁港施設の損壊だけでなく、漁再開の大きな障害となっているのが、海に流出した大量のがれき。
◎風評被害
・福島原発から海に大量に流出したとされる放射性物質に関する風評被害。

【大槌町状況】
・人口約1万5000人。
・今回の震災で、人口の1割を超える約1700人が死亡、または行方不明。

【大槌町の避難率】
・チリ地震後、岩手県と岩手大学が沿岸12市町村の住民を対象にしたアンケートで大槌町の避難率は52.2%、12市町村平均の60.8%を下回った。
・東京海洋大学岡安教授「のど元過ぎれば熱さを忘れるかのように、30年、50年たつと、低地に家が建つようになる。津波のタイムスパンは50年、100年。同じ惨事を繰り返してはいけない。」

【海外における排気ガス規制強化】
2009年12月に、アメリカ環境保護庁(EPA)は、大気浄化法に基づき、アメリカ船籍の大型船舶について、エンジンや燃料の基準を強化する規則を最終的に確定している。2030年までに、ディーゼルエンジンを搭載した大型船舶からのNOx排出量を約120万トン、粒子状物質排出量を14万3000トン削減するとしており、カナダも米国に追随する見込みだ。
また、アメリカとカナダは、両国の沿岸域数千マイルを大気汚染物質放出規制海域(ECA)に指定するよう、国際海事機関(IMO)に求めている。⇒日本は?

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