【巻頭言】 終末期医療について

投稿者: | 2013年3月5日

終末期医療について
小林友依(市民研・理事)

日本は1950年代以降、最期を迎える場所が在宅から病院へ移行していった。今では年間死亡者のうち8割が病院で迎えるというデータがある。
人生の終末期を過ごすとき、人は病院と関係を持つと漠然と思っているだろう。しかし、病院がどういうものなのか、病院で最期を過ごせるのかどうかもよくわかっていない人が多いのではないだろうか。
2007年4月厚生労働省は終末期医療に関するガイドラインを整備した。その中では、終末期医療の進め方として、医師らによる十分な説明と患者の意思決定を基本とすることを最も重要な原則と位置づけ、その上で治療開始や中止について患者の意思決定を踏まえて、医療チームで慎重に判断するよう求めている。また、治療方針の決定は患者の(1)意思が確認できる場合、(2)意思が確認できない場合、の二通りに分けている。
しかし、多くの医療従事者からこのようなガイドラインの整備を望まれる声があったにもかかわらず、普及率は低い。

また、終末期になったその時に、重大な決断に迫られてから考えても間に合わないこともある。本人の意思が確認できない場合は本人の意思が反映され難く、家族が判断を行う場合、そうなると少しでも長く生命の維持を図られ、終末期医療は誰のためなのかわからない。今後は、医療従事者から患者へきちんと説明する必要があり、その上で患者の生前の意思表示(リビングウィル)の普及啓発などに取り組むことが課題となるだろう。また治療中止の要件を定めることの是非も含め、そのあり方や方法について議論が重ねられることが求められるのではないだろうか。■

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