放射線教育原論

投稿者: | 2013年3月4日

<特集:放射線教育は誰のためのものか>
放射線教育原論 
上田昌文(NPO法人市民科学研究室)
pdfはこちらから→csijnewsletter_016_ueda_radiation_201303.pdf
今年度から(2013年4月~)、全国の小学校から高等学校において放射線に関する授業が、すべての学年において1時間か2時間ほど実施されることになっている。何をどう教えるかについて、具体的な授業内容や授業の組み方の詳細は各地の現場の教師や教育関係者に委ねられているが、1年ほど前に文部科学省が発行した「放射線等に関する副読本」(小学生版、中学生版、高校生版の3種類、及びそれぞれについての「解説本」)(注1)が、教師たちが準拠すべき授業のアウトラインを示していると考えて間違いはない。
注1:文部科学省の「放射線に関する副読本」はテキストと解説本が以下に掲載されている。
この副読本の最大の特徴は、福島第一原発事故のことに、各テキストの「はじめに」でのわずかな言及を除いて、本文中では一切ふれていない点である(注2)。
注2:例えば小学生向けの副読本の「はじめに」では以下のように言及している(図)。
「原発事故が起こって導入する(あるいは見直す)ことになったはずの放射線教育なのに、事故のことに一切ふれないテキストって、何なの?」―誰もが単純にこうした疑問をいだくだろうし、事実、これまでも新聞などでもこの点をめぐっていろいろな場で議論が起こっていることが紹介されてきた。子どもたちに、現実を直視する目を養い、自ら問題解決にあたる力を身につけてもらうのが、教育の目的だとすると、原発事故による汚染の実態や健康影響への懸念に子どもたちなりに向き合い、原子力利用のあり方を自ら問うていくことを可能にする放射線教育でなければならないはずだが、文科省はそうは考えていないように思える。
ここでは、まず放射線教育の基本はどうあるべきかを「誰が、いつ、どこで、何を、どちらを、いかにして」(5W1H)の観点から点検し、その後、私自身がこの2年間、関東圏(千葉、茨城、埼玉、東京、神奈川)と福島県で合計20回ほど実施してきた「親子放射能ワークショップ」の概要を紹介してみる。
1.放射線教育の5W1Hを考える            
1.1 誰が
原則は「学校で理科の教員が担当」ということのようだが、理科に限定する理由は何であろうか。社会科や家庭科やあるいは、「総合的学習の時間」のような教科の枠を超えた授業時間の中で扱ってもかまわないのではないか。というのも、原子力防災や放射線防護の話の中には、社会や生活と関わりが大きい部分があり、従来の理科の枠組みで扱えないものが出てくるだろうからだ。
この点について注意を要するのは、現場の教師たちが、理科の教員といえども放射線について必ずしも詳しくない―というより多くの場合、ほとんどまったく専門的な事柄にふれたこともない―であろうから、外部から講師を派遣してもらうことで対応しようとすることが多くなるかもしれない点だ。放射線のことを講じたり仕事として扱ったりしている(してきた)原子力や放射線分野の技術者や研究者(あるいはそのOB)を「講師」として教室に招くわけだが、容易に想像できるように、その授業が成功する見込みは高くない。生徒から見て理解につまずくかもしれないと思える部分を含んでいても、担当教師は、専門家が語ろうとする中身にあらかじめ注文をつけることは難しいだろうし、専門家は概して、易しく語ろうと努めはするものの、それがほんとに生徒に通じる水準になっているかは自身では判別できない。さらに、専門家は限られた時間の中で教科書的内容を網羅的に喋ろうとするため、生徒は耳を傾けるだけで精一杯で理解にはほど遠い状態に置かれることが往々にして生じる。
担当理科教員や彼らが招く原子力・放射線関係の専門家に限定して考えずに、それ以外の者が放射線教育の教え手としてどう関われるのかを、検討してみることも必要だろうと思われる。
1.2 いつ
「小学校~高校において、各学年で年に1時間ないし2時間」というのが想定されている枠のようだが、このことで意図されているのは何だろうか。「毎年必ず放射線について何らかのことを学ぶのがよい」ということであろうか。あるいは「各学年の理科の内容に見合った(それを逸脱しない)放射線の授業を行うのがよい」ということであろうか。前者はその根拠がはっきりしないし、後者は結局「原子や分子や遺伝子……等々の用語は使わない」といった制約が先に立ち、統一のとれた全体像を示すことが難しくなる危険がある。少なくとも学年ごとのカリキュラムにこだわるのなら、各学年での理科やそれ以外の教科での習得内容とのすり合わせができていないと困るのだが、半年かそこいらの準備期間で、それを一気に行うのは、相当大変だと思われる。各地域の教育委員会や理科教員たちの研修会などで、そうした作業がすすめられていることと推測されるが(注3)、以下にも述べるように、原発事故や健康影響に関わる現実の問題にまで踏み込んで放射線教育が組み立てられるべきだとするなら、切羽詰まった中でのカリキュラム作りは、いきおい複雑な社会問題の取り込みは避けて理科的な話に限定しようという傾向を生むだろう。子どもの成長(知識・判断力・経験など)に見合った内容設計は、理数的なものに比して、人文・社会的なものの比重が大きくなればなるほど、難しくなるのが一般的だ。生徒の立場や地域がかかえる問題に配慮して、腰を据えてじっくりと検討すべき問題が、結局はその検討を放棄して、文科省の「指導要領」に準拠しての通り一遍の教案作りに落とし込められてしまわないかと、気がかりだ。
注3:例えば、「どのような放射線教育が必要か」がおそらく最も入念に議論されることになるだろう福島県では、以下の取り組みがあることが報告されている。
1.3 どこで
ここで問題しているのはあくまで学校という場での放射線教育だ。ただ、それ以外の場の可能性にも目を向けてみるのも、決して無駄ではない。言うまでもなく、学校以外の場で子どもたちを対象にした教育実践の例は数多い。受験目的で学校を補完する「学習塾」(近年は”理科実験”も塾で行うところが出てきた)は措くとしても、学校の理科教育を拡充するものには、科学館、プラネタリウム、自然体験教室、企業が主としてボランティアで実施している科学教育プログラムやイベント、そして「科学の祭典」やサイエンスアゴラなどの種々の科学イベントなど、親や教師やあるいは子ども自身がその気になって見渡せば、かなり多種多様なものがある。放射線に関する実験・観察となると、教室で扱えるのは「霧箱」と空間線量計を使っての身の回りの計測に限定されと思われるが、こうした学校以外の場を利用することで、原子の内部構造や核分裂反応、原子力発電所の仕組みやその利点や問題点、福島第一原子力発電所の事故の原因や経緯、放射線防護や除染の実際……などについて、より具体的かつリアルに学ぶことが可能となるかもしれない。学校での放射線教育がどうあるべきかを開かれた議論にさらすことで、こうした学校外の場が刺激を受けて、放射線教育に関連した新たな試みが始まることを期待したい。
一方、福島原発事故前から、意欲ある教員たちによって「核開発や原子力発電の問題を子どもたちにきちんと教えたい」との意向のもと、長年にわたって自主的な教材作りと授業の実践がなされてきた(『市民研通信』第16号の羽角氏の原稿を参照のこと)。じつは、今回の文科省主導による放射線教育の導入で、現場の教員たちにとって一番参考になるし、参考にしなければならないのは、このような自主的な実践であろう。例えば、「原子力教育を考える会」は、核開発・原子力利用に批判的な立場から、じつに豊富な解説をそのホームページで提供している(注4)。原子力の推進であれ、脱原発であれ、その立場は教員一人一人が違っているのが当然だろうが、「立場が同じでない」からと言って、このような長年にわたる蓄積から学ばないのは間違っているだろう。新年度から始める放射線の授業も、文科省の指導要領的な枠組みが、教員たちの自主的な取り組みに対して何らかの制約や制限を課したりすることのないようにしなければいけないし、むしろ、「原子力をどう教えるべきか」の議論が至る所でなされ、自主的な取り組みが広がっていくのにつながることが健全だと言えるだろう。
注4 「原子力教育を考える会」のホームページは以下のサイト
掲載された内容は高校生以上に向けたものだが、「放射線副読本を検証する」のページにおいては、小学校・中学校・高校の各副読本を詳細に検討しその問題点を挙げている。
1.4 何を
「『副読本』に即した内容を」というのが文科省の意向であろう。しかし、これまで述べてきたことからも想像していただけるように、「あたかも原発事故がなかったかのような」(すなわち事故以前に文科省が作成した「副読本」とほとんど変わりのない)内容で通すこと、すなわち、原子力利用につては扱うが、核・原子力事故や被害については扱わないとすれば、それは生徒たちに対して「原子力利用に問題はないのだ」という「原子力推進の是認」を暗黙のうちに受容させるための教育になってしまう、とみなされてもしかたがないだろう。どのような内容を盛り込むにしても、
・核と原子力の利用の現状を知り、そのことの社会的意味を自ら考える出発点を与える。
・原発事故など放射線被害がいかなるものであるかを知り、過去、現在の被害への対処、ならびに将来に起こり得る被害を防ぎ備えるための安全規制や防護がどうあるべきか、について自ら考える出発点を与える。
といった目的がまずは掲げられなければならないし、科学的な知識を身につけることは、その目的に向けての一ステップにすぎないことを忘れてはならない。
具体的にどんな内容を、ということについては、例えば小学生向けには筆者が行っている「親子放射能ワークショップ」の中身が参考になるかもしれないし(注5)、NHKの番組でも紹介された福島県・大熊町の小学校での取り組みも非常に啓発的だと思う(注6)。
注5:福島県伊達市富成小学校で、授業として実施したことがある。以下参照
注6:「目撃!日本列島「自分で調べる”放射線”~福島 大熊町の子どもたち~」」
なお、教える立場からすると、一番のやっかいなことの一つは「放射線の健康影響(あるいはリスク)をどう教えるか」という点だと思われるが、これについては、私は以下のような配慮が必要だと考えている。
リスクに関しては「リスクとは何か」「リスクはどのように認知されるのか」「リスクはいかにして管理できるのか」という広い文脈の中で対話すること―いろいろな事例について様々な見方やとらえ方があり、それらをどう判断するかを互いに議論すること―を基本にして扱う必要がある。「○○についてリスクは△△といった程度である」という一方的なメッセージを伝えるだけでは、一番肝心な、自ら納得のできる「リスクのとらえ方」を身につけていくことはできないだろう(注7)。
注7:こうした点で、高校生くらいの生徒に役に立つだろうリスクに関する教科書(指導教材)の一例は、米国で作られた『Focus on Risks』という演習書だろう。日本語版がERIC国際理解教育センターの編訳で出版されている。
1.5 どちらを
ここで言う「どちら」とは、「原発・原子力利用を前提とする」のか「しない」のか、という立場の選択と教育との関係は如何、という問題を指す。
福島原発事故以降、原子力利用の見直しの機運が高まり、エネルギー政策全般に対しても、多くの市民が関心を持ち、その動向を注視している。とりわけ原発の安全規制の刷新や再稼働性の是非をめぐっては日々報道が伝えられ、政治的な議論が交わされているただなかにある。
教育は、もとより政治の意思決定の動向に左右されない、あるいは教える側がいかなる政治的立場に賛同しようとそれには影響されない、”中立で公正な”内容を教え、生徒自身で価値判断ができるように仕向けるのが理想だが、現実には、教える内容の選択やその伝え方一つとっても、教える側の価値観が多少なりとも反映せざるを得ない。しかしだからと言って、そうした政治的立場が絡みそうな事柄を一切扱わず、「あたかも原発事故がなかったかのように」(あるいは原子力利用の見直しの動向を無視するかのように)、政治的な”脱色”を図ろうとするのは、これまた従来の「原子力推進を暗黙のうちに受容させる」ことと何ら変わらない選択となる。教員が自身の「推進/反対」の主張に好都合な内容だけを”教える”のは、むろん中立とは言えないが、自身の立っているあるいは立とうとしている立場に可能な限り敏感になりつつ、「なぜ今の世の中に立場の違いが生まれてしまっているのか」「それぞれの立場が自らの正当化するための根拠にしていることは何なのか」「その根拠はどれくらい正しいと言えるのか」といった事柄に可能な限り客観的に迫ってみることで、”中立で公正”に近づくことは可能だと思われる。
1.6 いかにして
私は、東日本大震災と福島第一原発事故という、小学生くらいの子どもたちも含めて、ほぼ全国民が大きな衝撃と動揺を覚え、被災者をはじめ生活の激変を強いられた(そしてそれが今も終わっていない)人々が多数いる、という無類の体験に対して、この体験から喚起される問題意識を出発点とする教育が求められていると考えている。
教育が成立する根幹には、社会的存在としてのヒトが持つ「学びの駆動力」があり、それは「好奇心(curiosity)」と「問題意識(problem consciousness / awareness)」という二つから構成されている、と私は普段から考えている。大震災と原発事故という大きな負の事象に対して、子どもなりに持っている問題意識を生かしつつ、よりよい社会―例えば大震災や原発事故がもたらした負の重荷を乗り越えていくような社会―の形成のために、社会の一員として参画する意欲と知恵を、どうやって身につけてもらうか。これは非常にチャレンジングな教育的課題であり、放射線教もその一環として位置付けることが大切ではないだろうか。こうした根本的な認識があって、「いかにして教えるか」という方法の議論も意味をなしてくるだろう。
2. 「親子放射能ワークショップ」~参加型放射線教育の試み
このワークショップは、福島原発事故後5か月ほど経った時点で、世田谷区在住の阿部佐紀子さん(小学生の息子さんと娘さんのお二人の子どもさんがいらっしゃる)から「放射能の影響は子どもの方に大人よりも大きく出て、大人よりも長くそれとつきあっていかねばならないのなら、子ども自身でそれをしっかり学び、考えていけるようにしないといけないのではないでしょうか」「子どもに放射能のことをどう伝えたらよいか、とまどっている親がとても多いので、共に学べる何かよい方法はないでしょうか」との相談を受けて、共同で開発したものである。
世田谷区のお母さんたちに呼びかけて第1回目を実施したのを皮切りに(2011年9月3日)、その後1年半ほどで、東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城の各県で(地元の母親たちの活動グループや労働組合や自治体などの学習会で)10数回、そして環境省が創設した「除染情報プラザ」(福島市)やいわき市や伊達市立富成小学校など福島県でも数回、実施してきた。
2.1 ワークショップの特徴と概要
このワークショップのねらいは、次の3点に要約できる。
(1) 放射能についての基本的な知識と、放射能汚染の現状や影響、対策などについて、親子で学び、一緒に考えようというもの。
(2) 放射能に関する一番基礎となる概念や知識を手がかりに、今自分が置かれている状況を把握し、前向きに対処していく方策を探る、という姿勢で貫かれている。
(3) 単なる”初歩的知識のわかりやすい伝達”ではない。対話や手作業をとおして、子どもと親とがともに了解し合って、放射能に向き合うための、きっかけとする。
その概要は、
(4) 2部構成で、「第1部 親子ワークショップ」(90分)「第2部 子ども:線量測定のフィールドワーク/大人:講師との質疑応答」(同時並行で30分)からなる。事情に応じて、第2部を割愛することも可。
(5) 親子20組までで、3つ~5つのグループを作る。
(6) 対象は小3~小6 (できれば保護者同伴)を想定しているが、内容を若干高度化して中1~中3(保護者なし)でも実施可能。
また福島県など汚染度が高く避難を強いられている方々も多くいる地域で実施することもふまえて、次のような点に特に配慮するようにしている。
(7) 線量のかなり高い所に1年以上住んでいる、そしてこれから住み続けることになる人もいる、という現実ふまえて、「今何を不安に思っているか」を対話をとおして的確に引き出し、子どもたちなりに前向きに放射能と向き合っていってもらうために、「今何を伝えるべきか」を見定めていく。
(8) 政府の防護基準や食品暫定基準で「安全」が確保されている、とのメッセージを直接伝えるものではない。放射能の基礎概念を知りつつ、身の回りの汚染状況や人々の被曝状況を把握し、例えば除染の必要性や効果、あるいは、健康面での留意すべき点などを、自分なりに考えていくための出発点を提供する。
(9) 参加する子どもたちとその地域のことを事前に把握しておく。すなわち、その地域の空間線量や土壌汚染の現状、ミニホットスポット(セシウム集積地点)の存在、除染計画とその進展の具合、学校などでとられた対策のこと等である。そのためには、その地区・地域の学校の先生や親から、子どもたちの状況についてお話を前もって伺っておくことも必要となる。
2.2 ワークショップの構成と進め方
このワークショップは次のように進行する。
① 放射能について知っていること、聞いたことがあること、気になることは何?
まず、子どもたちに福島原発事故以来、子どもなりに見聞きしたり、体験したり、不安に思ったりしたことを、じっくりと付箋に書き出してもらうところからスタートする。ここを丁寧にやることで、講師は”子どもの状況”を把握し、この後の「何を重点的に伝えるべきか」を見定めることが、ある程度できるようになる。
② 目には見えないけれど、離れているのに伝わってきて、体に「なにか」を与えるものには、どんなものがある?
子どもたちに再び付箋紙を使って答をいろいろ書いてもらい、それを聞いて回る。「風」「ウイルス」「匂い」といったものから、中には「気持ち」「うわさ」「怨念」などというユニークな答も出てくる。こちらで紹介する事例は、「電球の光(可視光)」「太陽の光(紫外線)」そして「電子レンジや携帯電話(電波)」「レントゲン(X線)」……など。どれも印象的な写真を使って推測させる。そして、今問題になっている放射能も、同じように「目には見えないけれども、エネルギーを持っていて、体にも影響を与える」ものだと説明していく。
③ 「放射能のつぶ」にもそこから出る「放射能の光」にも仲間がいるよ。どんな仲間かな?
放射能を「つぶ」(放射性物質)とそこから出る「目に見えない光のようなもの」(=放射線)にわけてとらえることができることを示す。「つぶ」の仲間のうち、今回の事故で環境に放出された主だった放射性物質を、「元素周期率表」を使って紹介する。なかなか一度には覚えきれないカタカナの名前がたくさん出てくるが、そこはゲーム感覚で、「エレメントランプ」を使ってチェックし(覚えている名前をカードから選んでもらう)、暗記できたかどうかを競わせる。一方、「光」の仲間には、α線β線γ線などがあることを伝え、それぞれの特徴を図解で説明する。そして今身の回りにある問題の「つぶ」が放射性セシウムであることを知らせる。余裕があれば、ここで【霧箱を使った観察】も10分程度入れることもできるだろう。
④ 「放射能のつぶ」は「どこからやってきたの?」「どこにたくさんきたの?」「いつまでひかりをだしつづけるの?」
こうした問いやそれに関連した派生的な問をぶつけながら、身近な現象との類比やわかりやすい図解を使って、原発の発電の原理、福島第一原発事故で放出された放射能の流れ、半減期のこと(注8)、広域的な汚染状況(マップを使って)……と現状を知る鍵となる情報を提供していく。
注8)視覚的に印象深い「半減期」を説明したものに以下のサイトの動画がある。
「半減期ってなあに?(動く図を使って)」 
⑤「ふってきた ほうしゃのうは どうやってみつけるの?」「どんなところに たくさん あつまってくるの?」
線量計の実物を紹介した後、身の回りでセシウムがたまりやすいところはどこかを想像してもらう。写真を使って、そうした集積箇所を確認。「除染」がなぜ必要か、その結果どうなりそうか、をも考えさせる。次に、ワークショップの目玉の一つとして、【一番身近な地元地域の汚染マップを作る】という作業を行う。これは、主として地元自治体が公開している空間線量データや、それで不十分な場合は市民グループなどが発表したデータの最新のものを予め整理しておいて、用意した白地図(居住地近隣の一番詳細な地図を模造紙サイズに拡大したもの)の上に、データを強さごとにグレードを付け、それを色分けしてプロットしていくものである。地名から地図上の場所を特定するのに意外と時間がかかるが、地元の地理に詳しい人がいたりするととても早くなる。データ数は数十~百箇所程度あるとよいと思われる。除染をした箇所があれば、その効果についてもデータで検証するようにする。
⑥「ほうしゃのう を あびたり たべたり すったり すると からだは どうなるの?」「びょうきになるの? ならないの?」
環境中のセシウムの挙動と生活への影響を考えてもらうために、いくつかの写真や図解(下水処理場の汚泥、川から海への汚染の移行、田畑や海の中でのセシウムの動き、など)を見せながら、「これは何でしょう?」と尋ねて、意見交換させる。そして外部被曝、内部被曝の概念を理解してもらったうえで、人体への影響(がもたらされる仕組み)の話をする。細胞や遺伝子についてまだ習っていない子どもが多いので、あくまでイメージでの理解にとどまるが、それでも、「放射線防護には何が必要か」を想像してもらうためには、やはりこうした生物学的な面の話をうまく取り込んでいく必要があるように思う。そしてもう一つの目玉となる【10種類の買い物クイズ】を実施し、内部被曝に関連して、食材選びでセシウム摂取量がどの程度変わるかを具体例で示し、「食材に関する情報をきちんとみて判断することの大切さ」を感じ取ってもらうようにする。この買物クイズとは、写真で掲げた40種類前後の食材(コメ、野菜、魚、牛乳、肉類、きのこ類、果物など)から、「今日の夕食を作るために10種類を選んで買ってもらう」ことにして、選んだ後に、公表されている最新の測定データのうちのその品目についての最大の数値を提示し、自分の選んだ食材10種類での摂取ベクレル数を総計する(「◯◯は市場に出ているものでは△△産のものが一番汚染度が高くて、キロあたり□□ベクレルのセシウムが含まれているから、食事では××ベクレルを摂取することになる」)。いわば、現時点で”最も不運な食材選びをしたら、1回の食事で自分は何ベクレルくらいを摂取することになるのか”という量的な目安を提供するわけである。
⑦「みんなで これから どんなことに 気をつけていけばいいかを 考えてみよう」
今日学んだことを思い出しながら、各グループで意見を出し合ってまとめてもらう。汚染度がかなり高い地域に住み続けることを前提にしている場合、生活に大きな負担をかけることのない、前向きな暮らし方のための対策を、子どもたちなりにイメージしてもらうよう、配慮する必要があるだろう。こちらから「~すべきだ」というメッセージの押しつけはしない。ただ、子どもたちから放射能をめぐる現状に対してなんらかの疑問が出てくるのであれば、それはきちんと受け止めて、それを科学的にどう判断できるかについて、できる限り正確に情報提供する。
⑧子どもたちは本物の空間線量計を持って外へ/大人は部屋に残って講師と質疑応答
第2部は、⑤のスライドでも出てきたような「放射能がたまりやすい場所」を探すフィールドワークである。線量計の扱いに慣れた案内人(大人)と一緒に、建物や敷地の周辺を計測する。建物周辺のマップを予め用紙して、計測値をそこに書き込むことができるようにしておくとよい。計測した結果を後で子どもたちから報告してもらう。■

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