プロジェクト報告 ◆電磁波プロジェクト① 2002年のスタートにあたり

投稿者: | 2002年4月9日

プロジェクト報告 ◆電磁波プロジェクト①
2002年のスタートにあたり
電磁波プロジェクトリーダー 上田昌文
doyou51_ueda.pdf
電磁波プロジェクトは昨年かなり大きな成果を上げたと言えるでしょう。
携帯電話の電磁波問題を考える上で必読とも言うべき、最新で先進的な内容の『ザルツブルク議事録 携帯電話基地局の健康影響に関する研究』を、プロジェクトのメンバーで共同で翻訳したことが、まず第1の成果です。
次に、4月から開始して10月までの、10日間をこえる日を費やして、東京タワー周辺地域255地点での電磁波強度計測活を行ったことです(主に上田昌文、小牧史枝、坂上友紀、懸樋哲夫が担当)。計測で得られたデータを皆で検討する中で、電磁波問題のいろいろな広がりをとらえていこうという姿勢が生まれてきました。さまざまな報告の機会と発行物・出版物において、私たちの活動の成果を伝えることができましたし、今後もそれが引き続くことになります。
特に、昨年10月27日の研究発表「高周波電磁波のリスクを考える--携帯電話と東京タワー」では、参加者約50人の方々とともに、高周波のリスクについてかなりつっこんだ議論ができ、私たちプロジェクトのメンバーも大きな刺激を受けました。この報告会がきっかけになって、東京タワー計測データとその考察を軸にした次のような活動が生まれてきています。
●当日配布した『資料集』(100部、完売)を改訂して、一般向けの簡潔な資料集を作成中である(編集は懸樋、完成予定は2月半ば)。
●総合雑誌に論文の形で私たちの成果を広く一般に問うた(『情況』2002年1・2月合併号「特集・科学技術とリスク論」において上田が執筆した論文「電磁波のリスクを考えるために--携帯電話と東京タワー」)。
●東京タワー電磁波強度データの電波工学的な解析、健康影響面からみた疫学的考察(海外のタワーの疫学調査との比較)、都市の環境問題としての放送電波のリスク、というそれぞれの観点から別々の専門学術誌への論文(英文を含む)を現在執筆中(上田と小牧の共同執筆)。
●3月に物理系の学会での「環境セッション」での発表(小牧)と5月にNPO主催の「電磁波問題国際フォーラム」での発表(上田)を予定している。
●電磁波リスクの専門的理解ために必要とされる疫学・統計学の勉強を重ね、そのエッセンスを一般の方々に学んでもらえる機会を用意した(1月26日「素人のための疫学入門」(上田+小牧)。
こうした調査研究成果をまとめて伝えていくという活動ばかりではなく、若い人々(小学生、中学生、高校生ら)を相手に電磁波問題への意識を高めるという活動も、大学と連携を生かしながら、実施することができました。すなわち、
● 東京理科大学の「サイエンス夢工房」での展示発表、そして新宿区生涯学習「レガス」主催の「子ども科学教室」(夏と冬の2回)での授業において、家電製品や携帯電話からの電磁波を参加者に計測してもらい、スタッフが直接対話することで、身のまわりの電磁波に対する関心や危険性に関する意識を持ってもらうことができた(上記のメンバーの他に薮玲子、永添泰子ら)。
高圧線や電柱の変圧器からはじまって家電製品(以上が低周波)、電子レンジや携帯電話そして放送電波(以上が高周波)という大きな広がりをもつ環境中の電磁波をとらえていく、確かな手がかりとして計測活動を位置付けることができると思います。若者への携帯電話の普及が著しいなか、単に”言葉”で訴えかけるだけではなく、”作業”をとおして実感してもらうことが、活動をすすめていく際の方法論上のポイントとして見えてきたのではないでしょうか。
こうした経験をふまえて、今年はいよいよ、若い人々が携帯電話電磁波問題を知り、そのリスクについて自身で判断を下すことができるように、読みやすくかつ内容の深い本(ブックレットもしくは新書)を作ることを目指します。これには、専門文献の読み込みを含めてかなりつっこんだ勉強も必要です。でも、仲間で励ましあい批判しあいながら進めていくことで、「苦しい中にも楽しさあり」を実感しつつ、乗り切っていくことができるものです。是非、関心のある方々の新たなご参加を呼びかけたいと思います。
また助成金が得られれば、ブックレット作成と並行しながら、より本格的な調査研究を展開したいと考えています。今のところ想定しているテーマは「携帯電話端末ならびに基地局がもたしている電磁波リスクへの政策的対応に関する研究」で、携帯電話(端末、基地局)のリスクや政策に関する諸外国の情報を整理し、使用者の電磁波被曝の現状を我々自身の実地調査によって明らかにし、それらを比較分析することで、携帯電話について「予防原則」に立った適正な政策的判断を促すための条件を明確にさせたいと思っています。
大きな課題に取り組もうとしている電磁波プロジェクトを、今年もどうかよろしくご支援ください。■

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