科学館プロジェクト 土曜講座「科学館で何が学べるのか」 科学館プロジェクトコンテンツ調査報告より

投稿者: | 2004年4月12日

科学館プロジェクト
土曜講座「科学館で何が学べるのか」
科学館プロジェクトコンテンツ調査報告より
文責:古田ゆかり
doyou82_furuta.pdf
1.科学館で扱っている内容を調べてみた
 科学館とひとことで言っても、天文に関することや生物の進化、人体や地質学的な内容などその内容はさまざまです。広い範囲にわたるテーマをひとつの科学館でカバーすることは、不可能です。自ずから科学館によって展示内容のばらつきや、重点的に扱うテーマが生じてくることは想像するに難くありません。しかし私たち一般の市民は、それぞれの科学館ごとの特徴や得意分野、自分自身の学びたいことがらごとに科学館を選ぶといったことはあまりないのではないでしょうか。市民は科学館に行ってそこでなにが学べるのでしょうか。漠然と「科学について」といった目的から一歩進め、テーマを絞り、ニーズを明らかにした上で踏み込んだ学びをするためには、どのような科学館が求められるのでしょうか。
 この調査では、全国にある科学館がどんなテーマを扱い、どのような学びを提供しており、一方でどのようなテーマが扱われていなかったり少なかったりするのかを明らかにし、生活に役立ち市民が主体的に科学とつきあうための科学館のあり方を提案するための基礎調査となるものです。
2.生活に密着した理科の知識を得るために
 私たちの暮らしはたくさんの科学の成果に囲まれています。つまり科学やそこから生み出された技術を使って生活しています。生活になくてはならないものも数多くあります。家電製品はもちろんのこと、携帯電話やインターネットをはじめとする情報・通信技術、自動車技術、建築や住まい、医療や薬、食べ物や衣服にいたるまで、多くの科学の知識や技術が投入されていることは間違いありません。そしてまた、ときによって問題を引き起こしていることも事実です。その中には、私たち自身がよりよく生きるためによく考えて選び取ったものではないものも含まれているのではないでしょうか。私たちは、いろいろな側面からの正しい情報を得ると共に、考え、判断する能力を身につけることが必要なのだと考えます。今年の科学技術白書でも、「これからの科学技術と社会」がとりあげられ、科学技術と社会との関係が変化していることを指摘しています。「科学技術と社会、特に個人との関係が密接不可分になって、個人が否応なく科学技術の発展の影響に巻き込まれるようになってきている」という認識を示していることも、社会の中で個人が科学と主体的にかかわる必要性に対する認知度が上がってきたことを示す一例といえるのではないでしょうか。
 科学と社会のまなびのツールや窓口、ガイドとして科学館が機能すれば、生活に密着した疑問を学んだり、解決したり、新しい学びの機会を見つけたりといった生き生きとした学びの場が必要なのだと思います。
 では、話は戻って、科学館が提供している学びとはいったいどのようなものになっているのでしょうか。
 今回の調査内容はそれぞれの科学館が扱っている分野と、運営体制についてです。分野については、生活に密着した科学、ということを念頭において、できるだけ広い分野を網羅するように選び、学校の教科単元で扱われているものだけではなく、生活的な視点から情報通信やエネルギー、環境、交通、そして食物や建築、医療、また、スポーツや娯楽、農林水産業といった分野まで、今まではどちらかというと学校では家庭科で扱われてきた部分も含んでいます。全国の135館を選び、事前に電話でお願いし、2003年10月に担当の方あてに郵送しました。うち、85館から回答を得た結果について報告します。
3.多いテーマは理科の教科単元、やや多いは産業振興型
 調査の結果、扱いの多いテーマは順に地球科学、生物、身近な科学、そして天文でした。いずれのテーマも「重点的に扱っている」「扱っている」を合わせて70%前後の館が扱っていると回答していました。次いで、やや多いテーマは、エネルギー、情報通信、機械、環境、交通で、50%程度の館が扱っていると回答しています。
 扱っている科学館が多いテーマ、それに次ぐテーマには、なんらかの背景があるのではないかと考えられます。たとえば、小学校の理科の学習指導要領には、大きな三つの柱があります。それは、「自然の理解」「物質の性質の理解」「天体・天文・地質に対する理解」です。科学館において、地球科学、天文、生物の扱いが多いのは、教科単元の学習と深い関係があるといえるでしょう。身近な科学という項目も扱っている館は比較的多いという結果を得ました。身近な科学の中には、「地域の自然」「生活の中の科学」「ニュースの科学」の3つの項目がありますが、ほとんどが、「地域の自然」「生活の科学」によるもので、「ニュースの科学」の扱いは非常に少ないといった内容です。扱っているニュースも、ノーベル賞や最先端科学に関することといった記述が見られましたが、生活の中で起きる科学的な問題を取りあげている記述は見られませんでした。
 また、やや多い、エネルギー、情報通信、機械、環境、交通は、産業や技術部分に関することが多く、ここでは、「産業振興・先端型」として分類しました。一方、扱いが少なかったのは、食物、農林水産業、医療、建築、娯楽・エンターテインメントなどです。
 食物には、料理や栄養、発酵食品といった項目が含まれており、また、医療には西洋医学のかその他の医学、医薬品、医療機器といった項目を設定しました。建築には住宅、土木、建築技術などを含んでいます。
4.求められるこれからの「科学の学び」とは?
 どちらかというと、これまでは家庭科、生活科学に属する領域で、「理科」とはなかなか認知されてこなかったテーマがやはり少なくなっています。しかし、食物や農林水産業は、人が生きることと直結しており、かつ、化学物質やエネルギー消費、加工や保存のための技術導入が行われ、安全性や環境問題にまでつながる身近で大きな科学のテーマです。
 私たちは、科学館では、こうしたテーマの学びを充実させることが必要だと思われます。そのときに必要なのは、学びのプログラムです。私たち科学館プロジェクトは、今後どのようなまなびの内容や伝える方法が必要なのかといったことを軸にして、科学館などで実践できるイベントや実験デモ、展示のツールといった「学びのプログラム」を実際に開発しようと考えており、2005年の活動の最重要課題として、準備を進めております。
 今回の集計は中間発表として示したもので、現在ではさらに館の数を増やしデータを充実させるため、調査票の集計を行っております。■

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