宇宙開発再考プロジェクト これからの活動プランについて

投稿者: | 2004年4月12日

宇宙開発再考プロジェクト
これからの活動プランについて

文責:河野弘毅 hiroki@kawano.net http://kawano.net

doyou82_kawano.pdf

宇宙開発再考プロジェクトは(1)宇宙開発政策を市民の立場から考える、(2)小型衛星の手作りに挑戦する、という二つの活動に取り組んでいます。このうち(1)については本年度、プロジェクトチームで検討した内容を一冊の本にまとめるという目標をたてて取り組んできましたが、当初想定した四人チームでの分担執筆は予定どおりに進まず、スケジュールの見直しが必要となっています。当初のお約束通りに原稿執筆できずにすみません!>編集のTさん。(2)の手作り衛星への挑戦については今年は東大中須賀研究室のARLISS2004参加チームに参加させてもらい開発現場を見学できました(『どよう便り』9月号参照)。

この現状をうけて、来年度については単行本執筆計画の見直しや新メンバーの募集を検討中です。検討のなかで現在考えているプランを、一部に提案も含めて以下に報告します。

(1)「手作り衛星勉強会(マイコン工作編)」の開始

手作り衛星への挑戦はほそぼそとではありますが今年で三年目の活動となり、少しずつ試行錯誤を行って「前の年より一歩ずつ」進歩してきました(と思います)。初年度(2002年)は「手作り衛星勉強会」という名前で東大工学部の教室を借り、講師を招いた講演を計7回実施しましたが、これをやってみた結果「人の話を聞いているだけでは衛星はいつまでたっても作れない」ということがよく分かったので、二年目(2003年)は市民科学研究室内に手作り衛星プロジェクトを設立し、上田さん、上村さん、河野の三名でその年の「板倉カムバックコンペティション」への参加を目指してカンサット(=円筒形の筒に収まる小さな実験機)の開発に取り組みました。この開発では展開翼の自主開発という今考えるとチャレンジング(無茶とも言う)な目標をたてたために短期間の割には苦労し、結果的に実験機の完成を見届けることなく時間切れとなってしまいました。この経験から学んだことは「新規技術をゼロから自主開発するのはとても大変だ」という当たり前といえば当たり前の教訓でしたが、その教訓を身にしみて実感できたことは有益だったと思います。この教訓から、今年(2004年)は「まず先達に学ぼう」という目標をたて、ARLISS2004(米国で毎年開催される小型衛星のコンペティション)に参加する東大の修士1年生諸君のチームに混ぜてもらい、彼らが実際にどのようにして小型衛星を設計開発しているのか、身近に見学しました。

この経験から「小型衛星の開発にはマイコン工作の技能が不可欠」という事実をよく納得することができたので、来年度はできるだけ早い時期からマイコン工作に取り組む勉強会を立ち上げたい、と考えています。具体的には日立が開発したマイコンH8が工作業界(?)ではスタンダードであることも分かったので、秋月電子通商より発売されているフラッシュメモリ搭載のH8/3069Fの工作キットを実際に作って動かしながら、来年の夏までにマイコン工作技術を習得し、ARLISS2005への参加を仮想目標にし、来年夏には工作会メンバーによるカンサット設計ができたら、と考えています。

(2)宇宙開発政策の再考は枠組みを拡げて

もうひとつの課題である宇宙開発政策への市民の立場からの検討(再考)については「私見?を本にまとめよう」という煮詰まった状況から一歩もどして、科学技術政策のひとつとしての宇宙開発政策を、枠組みを拡げ、他の科学技術と比較検討もしながら現状よりもう少し多いメンバー(5~7人くらい)で継続的に議論する機会を作りたいと考えています。

宇宙開発政策に限定せず、枠組みを拡げて議論したい理由について少し述べます。「宇宙開発政策」というテーマに限定して、それでも5名ほど熱心なメンバーが集まるほど広報や勧誘がうまくできるならば「宇宙開発政策」限定の勉強会でもいいのですが、現状ではそれだけの人数がこのテーマに限定して継続的に集まる期待が持てないという問題があります。ですがそういう消極的理由とは別の、もっと積極的な理由もあります。宇宙開発政策について考えていくときに問題となるいろいろなテーマ、たとえば軍事目的への利用の是非や政治的意図の予算配分への介入の妥当性や公共事業の非効率性の問題や関連業界による国家予算私物化の問題などは、実は宇宙開発に限ったことではなく科学技術の別の分野で似た構造の問題があちこちに生じているように思います。そういうテーマに関しては、議題を上手に設定できれば、特に市民科学研究室のように科学技術政策に対する関心が高い人が多く参加しているNPOの場合、積極的に議論に参加してくれる人がある程度は集まるのではないかと期待しています。その場合、勉強会を新たにたてる必要はなく、電磁波や生命操作など、市民科学研究室のいろいろな分野の勉強会にスポット的に参加したり、ジョイント企画したりといった臨機応変な活動により、活発な議論の場を持てると考えています。たとえば宇宙開発政策を検討する場合には航空宇宙産業の軍事技術への関与について議論する必要がありますが、その場合に日本の国家としての安全保障政策についての検討を下敷きにしたうえで議論を展開しないと技術論に費やす時間がムダになる、というようなケースがあります。そういうときに、たとえばピースデポのような、安全保障政策に関して市民的視点から独自の知見を蓄積してきたNPOの胸をかりて、そのメンバーの方たちの話を聞いたり議論をしたりできれば、成果を期待できることでしょう。

好奇心旺盛で、科学技術のいろいろな分野に興味を持つのは市民科学研究室の気風でもあると思うので、今後具体的な可能性を議論できればよいと考えています。■

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