水と土のプロジェクト
土のバーチャル博物館 その1 旅の始まり
文責:森 元之
旅の始まり
NPO法人化へむけての動きが定まった市民科学研究室のプロジェクトとして、2003年に行った「めぐる水・不思議な水を知る」連続講座を引き継ぎ、来年からはインターネットを活用して、「土のバーチャル博物館」構想を進めていきたいと考えています。
そこで去る10月16日から24日まで、東京‐富山‐金沢‐青森‐東京と、美術館や博物館などをめぐってきました。私事になりますが、今年のお正月以来、郷里に帰省していないこと。また、土との関連で言えば青森県の「三内丸山遺跡」に一度行ってみたかったので、上記のようなルートになりました。その旅の中で「土のバーチャル博物館」(さらにはバーチャルではない本当の博物館構想)の参考になるような企画や展示方法を見、また見た中からアイデアや刺激を受けました。そこで、「水と土のプロジェクト」の担当ページとしては、私の旅から得た感想や着想・アイデアなどを、3~4回に分けてつづりたいと思います。
つながり、流れ、誘われる旅
この間に訪れたのは以下の展覧会(施設)です。
東京・「人体の不思議展」(東京国際フォーラム)
金沢・金沢21世紀博物館
青森・太宰治記念館「斜陽館」
青森・三内丸山遺跡(縄文時遊館)
青森・野坂徹夫展
青森・青森市森林博物館
青森・みちのく北方漁船博物館
東京・野又 穫「カンヴァスに立つ建築」展
(東京オペラシティアートギャラリー)
東京・ヴォルフガング・ティルマンス展
(東京オペラシティアートギャラリー)
ちなみに、この旅の間に台風23号の通過により、富山から青森へ向けて乗るはずだった寝台特急「日本海」(大阪発)が運休になり、旅の予定が一日ずれました。また青森の宿で新潟での地震の報に接するなど自然災害の合間を縫っての旅ともなりました。
また、今回の旅で上記の展覧会や施設を訪れるにあたり、人や情報などの不思議なつながりがありました。それが偶然なのか必然なのかわかりませんが、結果として訪れたそれぞれの場所でたくさんの刺激を受けました。その不思議さに感謝したいと思っています。
人体の不思議展
この展覧会は2002年に大阪で行われて以来、全国の主要都市を巡回している展覧会です。東京では昨年2003年9月から2004年2月までに一度行われ、札幌、浜松での開催の後、再び東京に戻ってきたものです。まだ見にいっていない方は、2005年1月16日まで開催しているのでぜひ足を運んでください。(「人体の不思議」展ホームページ http://www.jintai.co.jp/main.html)
この展示会は今まで私たちが絵本や図鑑、あるいは医学的な写真で見てきた人体の内部構造を、「プラストミック標本」という手法によって、立体的に、そして人体が生きている状態にほぼ完全に近い形で展示されていることです。もともとは医学特に解剖学の分野で研究のために開発された手法ですが、それを公開した展示会です。「新技術で作られたプラストミック標本は匂いもなく、また弾力性に富み、直に触れて観察でき、常温で半永久的に保存できる画期的な人体標本」(上記ホームページより)なので、とてもきれいな標本として見ることができます。あまりに清潔でどちらかというと無機的な印象を受ける部分もあり、「気持ち悪い」という印象はさほどありませんでした。私が訪れた時も、年齢を問わず女性の来訪者がとても多くいました。
全身標本だけでなく、神経系、消化器系、呼吸器系、循環器系、泌尿器系、生殖器系、各月齢段階の胎児など部位別の標本もあり、自分の体内構造を知るにはとても有効です。特に持病がある人や、気になる部分がある人は、そこの部位の標本のところでじっくり見るとよいでしょう。
また同じ全身標本でも、CTスキャンで撮影したように頭からつま先までを輪切り状態にした展示方法や、筋肉や表皮などをいろいろな角度から切り開いた状態で展示してあるので、非常に人体の詳細を知ることができます。
さて、土との関連で言えば、この「人体の不思議展」からは「きれいに見せる」ことの重要さを痛感しました。ここで言う「きれい」とは、清潔と美しさの両方の意味です。
土とか泥というのはどうしても、現実にあるものをそのまま持ってくると不潔感や汚さが目立ちます。また色も黒とか茶色のイメージが強く出てしまいます。ですからとくに都市生活で土に触れる機会の少ない現在の人々には、まず土の美しさを感じてもらうことが重要と感じました。その参考としては、すでに栗田宏一さん(山梨県在住の美術家)が各地で土を美しく見せる展覧会やパフォーマンスを行っていらっしゃいます。「土のコレクション」(フレーベル館)という本もとてもきれいで、土の展示方法の参考になると思います。
次回は金沢21世紀博物館の訪問記です。■